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最終章 We are Free !
元次期龍神は想いの波に漂う
しおりを挟む私は今、暗闇の中で海のような場所に身を任せて漂っている。
____疲れた、もうクタクタで、動ける気がしない。
私は結局、自由にはなれなかった。
絶対自由になってやろうと決めていたのに。
絶対誰よりも幸せになってやろうと思ったのに。
その願いは、叶えられなかった。
私が選んだのは、初代龍神と共に爆死すること。私の身体は肉片すら残らず爆ぜただろう。
何も残らなかった。
けど、後悔はしていない。
こんな気持ちで死ねてよかったとも思う。
誰かを想いながらこうして穏やかな気持ちでいれる。
……………………もう、いいよね?
頑張らなくて、いいよね?
私、もう頑張った。
寝てしまおう。こんなに気持ちいい波に揺られながら眠れるのなら、きっと私は幸せなんだ。
『幸せ?本当にそれは幸せなの?』
………………?
目を開けると、海の妖精神・マリンが気取りながらそう言っていた。なんで、ここにマリンが居るの?
『永遠に眠るのが、幸せってやっぱりアルティアはズレているね』
マリンが消えたと思ったら、次は水の精霊・アクアがくすくす笑って現れた。
………………なんで、ここにいるの?
『わたくしは_____アルティア様に救われました。貴方のおかげで、グランドと再び共に居れるようになったのです』
森の妖精神・リーファが前で祈るように手を合わせている。
……………………そんなことも、あったねえ。
でもそれは私の気まぐれだよ。
『そのきまぐれで俺は殺されかけたんだけどな。
うだうだ言ってないでさぁ、正直になれよ。本当に可愛げのねえ女』
ドゥルグレ……………あの時はアンタがクソだったから私が暴れただけなんだから、悪いのはどちらかと言うとアンタでしょ。
………………正直になれ、ってなんだろう。
『貴方が思うこと、心の底から望んでいること』
土の精霊グランドが抑揚のない声でそういった。
私の望んでいること……………?
『アルティア様の夢は、なんですか?』
聖の精霊・カーバンクルが珍しくオドオドせずに私を真っ直ぐ見据える。
私の夢____それは、自由になることだった。
もう私、自由だよ?
死んだのだから、私は自由なんだ。
もう肉体からも開放された。完全な自由だ。
『では、なぜそんなに嬉しそうじゃない?』
星の妖精神・ゼグスがいつものおっとりした口調でそう聞いてきた。
私、そんな顔してた?
嬉しいよ。嬉しい。………………嬉しい?
『…………………お前の願いはそれだけなのか?嬢ちゃん。もっと欲張ってみろよ、いつもみたいにさ』
氷の精霊・シヴァがポリポリと頭を掻きながらぶっきらぼうにいう。
……………私、今世ですごいワガママだった。
ワガママが全部許された。
それは何故?当然、答えはひとつだ。
みんなが、____ラフェエルが、傍に居てくれたから。
ラフェエルが叱ってくれて、話を聞いてくれて………………私はどんどんわがままになったんだ。自分でも驚くくらい、とっても自由だった。
……………………ラフェエル。
口に出してみる。
静かな空間に、愛しい人の名前が響く。
『………………そんなに想っているのなら、逢いに行けばいいだろう』
空の妖精神・スカイが素っ気なくそういった。
………………無理だよ。
だって、私は死んだんだよ?
何も言わずに死んだんだ。
きっと……………怒っているよ。
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