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魔王の大会と予選開始
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【屋敷の外】
朝日が昇り始めた頃。
「ふ~、終わった。いつも、ありがとう。ジャンヌ、ウルミラ」
いつもの朝練が終わった大成は、タオルで汗を拭きながら片方の手で水筒を持って水分補給していた。
「き、気にしないで良いわよ。そ、それよりも、ほら、大成。あなた、今日は大会なのよ。疲れが残るわよ」
「そ、そうですよ。予選も大変なのです」
昨夜の大浴場の件があり、ジャンヌとウルミラは顔を真っ赤にしてぎこちなかった。
本当は恥ずかしくて大成と顔を合わせたくはなかったが、でも、それ以上に大成に優勝して貰いたい気持ちが勝っていた。
「2人の言う通りかも知れないけど。緊張ほぐす為にも、いつも通りが一番だと思うからね」
「フフフ…。大成、あなたも緊張するのね。意外ね」
「そうですね。意外です」
「2人とも酷いな」
このまま一時の間は気まずくなったままかと思った2人だったが、大成はいつも通りでホッとした。
そして、大成も自分達と同じで緊張することもあると知ってジャンヌとウルミラも変な緊張がなくなり自然と笑顔になった。
大成も、そんなジャンヌとウルミラを見てホッとした。
【過去・屋敷2階・大広間】
昨日の夜、大浴場の事件後に夕食があり、全員が集まったところで明日に行われる魔王の大会についての説明があった。
ジャンヌとウルミラは、大浴場の件で未だに顔が真っ赤になっており、口をパクパクさせていて説明できる状態ではなかった。
他の者達は、そんな2人が気になっていた。
ローケンスは、黙ってシリーダに視線を向ける。
「ハァ…。仕方ありませんわね。では、私が大会について説明します」
ローケンスの視線に気付いたシリーダは溜め息をし、上の空になっているジャンヌの代わりに話を進めることにした。
予選ブロックは、16に分かれている。
バトルロイヤルを形式。
武器と魔法の使用可。
生死を問わず。
降参、リングの外、気絶、死亡した場合は負けとなる。
各ブロック、生き残った1人だけが明日の本選に出れる。
本選は、くじ引きでトーナメント式。
武器と魔法の使用可。
優勝した者がラーバスの魔王代表になり、約3カ月後に開催される魔人の国全土の魔王を名乗る者達が集まって魔人の国の魔王を決める大会に出場できるということだ。
わかりやすく言えば、今回の大会はラーバス国の代表を決める大会なのだ。
今のところ、予選の各ブロックの参加人数は40~50人程度だと予想をしている。
優勝候補は、ヘルレウス・メンバーのローケンスと魔王候補のグランベルク、ルーニング、ガディザム、そして、大成の5人。
他のヘルレウス・メンバーは、出場はしなかった。
一応、それぞれ各ブロックに配置して、予選では当たらないようにするとのことだった。
「以上よ。何か質問とかある方はいるかしら?」
シリーダは、大成達を見渡したが誰も何も言わなかったので解散した。
【屋敷二階・大広間】
朝練が終えた大成達は、朝食のため大広間に向かっていた。
メイド達は、救急箱を持って忙しそうに走り回っている。
箱の中には、包帯やポーションが沢山入っていた。
大会当日、朝食を済ました大成は、先に選手達の待機室で自分がどのブロックか探していた。
「どこかな?」
大成が指をさしながら探していると、入り口のドアが開きローケンスが入って来た。
「小僧、貴様は棄権しろ。そんな脆弱な魔力では死ぬのが落ちだぞ」
ローケンスは、大成の背後から声を掛ける。
「ご忠告ありがとうございます、ローケンスさん。ですが、僕は出場しますよ」
大成は振り向き、ローケンスの目を見て答えた。
「ローケンス様。大成殿の実力は私が保証します」
ローケンスの後ろからニールが現れて笑顔で告げる。
「ほう。ニールに、そこまで言わすとは見物だな。ワハハ…。先程の言葉は忘れてくれ。それでは、期待しているぞ。いや、楽しみにしているぞ!ククク…」
ローケンスは、笑いながら部屋から出ていった。
「ニールさん、ありがとうございます」
「いえいえ、ですが…。予選だからといって油断は禁物です、大成殿」
「わかってます。僕もそろそろ会場に向かいますね。では、失礼します」
「はい、ご武運を」
部屋から出ていく大成を、ニールは笑顔で見送った。
【屋敷の外・会場】
会場は屋敷の裏にある大勢いる騎士団達が鍛錬に使用している複数あるリングを使うため大きく、沢山の人が入ることが可能だった。
各リングの上では、試合が始まるのを待っている選手がウォーミングアップしており観客席も溢れるほど多く集まっている。
大成も自分のブロックのリングに上がり、周りを見渡すと大体30人ぐらいの選手がいた。
「おい、やはり人間の子供じゃないか?」
「何で人間が出場しているんだ?」
「この機会に殺そうぜ!」
「人間なんて死んじまえ!殺せ~!」
「なら、作戦通りにいくぞ」
「ブーブー」
大成がリングに上がると、同じリングの選手や観客から罵倒や避難される。
そんな中、一部の観客席からエターヌやおばさん、ナイディカ村の人達が大成を応援する。
「が、ガンバって~!お兄ちゃん~!」
「頑張るのだよ~!大成君」
「小僧、応援に来たぞ~!」
大成は、笑顔で手を振るった。
そして、音楽が流れ始め会場は静まり返る。
屋敷の二階のベランダから、黒のドレスを着たジャンヌが現れた。
「皆様、おはようございます。これより、歴史に残るラーバス国の魔王代表を決める大会を開始しますので、是非この日、いえ今を忘れぬよう目に焼き付けて下さい。なお、今回は特別に1名だけ人間の参加を認めてます。彼は私が召喚した異世界人です。何かご不満があればお聞きます。それでは、選手の皆様、準備は宜しいでしょうか?では、只今より試合開始の宣言をします。試合開始です!」
「「ウオォォ~!」」
ジャンヌはマイクみたいな魔法道具で声を大きく響かせ、会場は盛大に盛り上がり選手達は戦いを始めた。
大成はリングの端におり、周りを見ていた。
派手に闘っているリングが数ヶ所あった。
第1ブロック
「エア・スラッシュ」
ローケンスは、風魔法エア・スラッシュを唱えると握っている大剣の刀身に風が纏う。
風を纏っている大剣をローケンスは横に凪ぎ払い、剣から突風が巻き起こした。
その一撃で、周りの殆どの選手を場外に吹っ飛ばした。
エア・スラッシュは、本来は鎌鼬(かまいたち)みたいに切りつける魔法なのだが、今回は突風だけにしてできる限り相手選手が怪我をしないようにローケンスは配慮していた。
第2ブロック
「魔剣よ、我に力を!」
グランベルクは、持っていた魔剣を上に掲げると黒い霧を発生させ自身を覆う。
そして、黒い霧は霧散しグランベルクの姿が見えた。
右手に変化のない魔剣だったが、グランベルクは黒い鎧を装着していた。
グランベルクは、一気に接近して一振りで複数の選手を切り捨て周囲に血が飛び散った。
ただ殺害しただけでなく、切りつけた時に魔力を吸収している様だった。
第3ブロック
「次は、ライトニング・シャワーだぞ。ほれ、ほれ若いのに、そんなものかのホホホ…」
ルーニングは、雷魔法ライトニング・シャワーを唱えると上空に異次元の空間ができ発生して雷があちらこちらに落雷する。
直撃した者は真っ黒に焦げ、倒れた体から煙が出ている。
そして、ルーニングは、次々にいろんな様々な広範囲の魔法を繰り出して弄ぶ様に倒していく。
第4ブロック
「ナンダ?ソノ、ヒンジャクナコウゲキハ!オシエテヤル!コウゲキトイウノハ、コウイウモノダ!ワハハハ…」
選手達は、ガディザムに魔法攻撃や武器で攻撃しているが大したダメージを与えられないでいた。
ガディザムは選手達を殴って吹っ飛ばしたり、ゴミのように握りつぶしていく。
第7ブロック
大成が気になる選手がいた。
その選手は同い年ぐらいの少女だったが、短剣を使った戦いは、大成が所属していた特殊部隊の戦い方に酷似していたのだ。
他のブロックはバランスがある程度とれており、代表が決まるのに時間が掛かりそうだった。
そして、大成のいる第5ブロック。
「おいおい、坊主!他のブロックを気する必要がないだろ?どうせ、お前はココで死ぬのだからな。って、おい!いい加減、こっちを向け糞ガキ!」
声を掛けられたので、大成は振り向いた。
「とっとと、死ね!」
大男は、大声を出しながら斧を振り下ろす。
大成は左前に出て斧を避けて、右手で大男の後ろ首に手刀した。
「うぐっ」
大男は、気絶して両膝をつき倒れたことで辺りがざわつく。
大成のリングは、大男が攻撃するまで誰も闘っていなかった。
選手達は皆、出場選手の書かれていた紙を見て人間である大成を先に殺すと相談して決めていたのだ。
そして、大成の近くの選手達が一斉に大成に襲い掛かる。
大成は、下がってリングの端に移動した。
正面から2人が襲い掛かり、2人は剣を振り上げる。
大成は、振り下ろされる前に2人の間を素早く動いて通り抜けて2人の背中を押してリングの外に出した。
そして、次は選手5人が同時に大成に襲いかかる。
まず、中央の槍使いがリーチを生かして突きを放ってきたので、大成は避けながら槍を掴んで引っ張り、槍使いは体勢を崩して前屈みになり大成と他の4人の間で倒れた。
他の4人は、目の前で槍使いが倒れたことで慌てて立ち止まり間合いとタイミングがズレたので攻撃が鈍った。
「ハッ!」
大成は、その隙をついて攻撃される前に接近して顎、鳩尾、心臓付近を殴ったり蹴ったりして3人を気絶させ、もう一人は剣を振り下ろしてきたが、大成は相手の手首を左手で下から抑えて途中で止めて右拳で鳩尾を殴って気絶させる。
「糞~っ。がはっ」
その間に倒れていた槍の使いは立ち上がり、転がった槍を拾おうとしたが、大成に槍を踏まれ阻止されて顔を蹴り飛ばされた。
その時、第1、2、3、4ブロックの予選通過者が決まり、大きな声援が聞こえた。
第1ブロック、ローケンス。
第2ブロック、グランベルク。
第3ブロック、ルーニング。
第4ブロック、ガディザム。
大成は声援が気になり、周りのブロックを見渡した。
そして、視線を感じた屋敷の2階に視線を向けるとジャンヌが不満そうに自分のブロックを見ていることに気付き、大成は苦笑いを浮かべた。
予選は、なるべく魔法や魔力を使わずに済ませるという計画を大成は立てていたのだ。
「弟よ、いくぞ!」
「わかったぜ兄貴!」
「「よそ見してんじゃねぇ~!」」
大男の兄弟は叫びながら、ハンマーを振り回そうとする。
大成は前に出て、弟がハンマーを振り回す前に右足のハイキックで弟の顎を蹴って気絶させる。
「弟よ!くっそ!」
兄は大成に向けてハンマーを振り回したが、大成はジャンプして兄の頭上を跳び越え、背後から後ろを向いたまま兄の背中を蹴り飛ばした。
「うぉ、お、お…。糞~!」
兄はリング端で落ちそうになり、ハンマーを捨てて必死に手を振ってバランスとろうとしていたが努力むなしく場外に出てしまった。
「ま、魔法だ!魔法で倒せ!」
誰かが大きな声で指示を出した。
「「うぉぉぉ」」
掛け声とともに、ファイア・アロー、アイス・ミサイル、アース・ショットなど、いろいろな魔法が大成に向かって飛んでくる。
「そろそろ、こちらから攻めるか」
大成は魔法を避けながら走り、集団へと向かった。
大成に接近された選手達は混乱して仲間が近くにいるにも関わらずに魔法で攻撃をし、同士討ちなどが起き、結果、あっという間に終わり、大成が第5ブロックの予選通過者に決定した。
「お兄ちゃん~!お兄ちゃん~!すっご~い!かっこい~い!大好き~!」
エターヌは、前屈みになり上半身は柵から乗り越えて手を一生懸命に振っている。
大成の戦いを見たエターヌは、テンションが高くなっていた。
「本選も頑張るから応援よろしく」
大成は、エターヌに答える様に手を振った。
おばさんや村の人達は、魔力を使わずに戦う大成の姿を見て唖然としていが、我に返って大成を激励(げきれい)する。
「本選も頑張って、大成君!」
「頑張れ、小僧~!」
「本選も応援するよ~」
だが、可愛い天使が爆弾を落とす。
「また、一緒にお風呂入ろうね!お兄ちゃん~!」
「ゴホッゴホッ」
エターヌの爆弾発言を聞いた大成はむせる。
いつの間にか大成の声援はなくなっていた。
異様な視線が気になった大成は周りを見渡すと、観客席にいるおばさん以外の村の人達と屋敷の2階にいるジャンヌ、リングの端で出場選手の手当てをしているウルミラは冷たい目で大成を見ていた。
いや、その目は、まるでゴミを見るような目だった。
それから、1時間ほど過ぎて他のブロックも予選通過者が決まったのだった。
朝日が昇り始めた頃。
「ふ~、終わった。いつも、ありがとう。ジャンヌ、ウルミラ」
いつもの朝練が終わった大成は、タオルで汗を拭きながら片方の手で水筒を持って水分補給していた。
「き、気にしないで良いわよ。そ、それよりも、ほら、大成。あなた、今日は大会なのよ。疲れが残るわよ」
「そ、そうですよ。予選も大変なのです」
昨夜の大浴場の件があり、ジャンヌとウルミラは顔を真っ赤にしてぎこちなかった。
本当は恥ずかしくて大成と顔を合わせたくはなかったが、でも、それ以上に大成に優勝して貰いたい気持ちが勝っていた。
「2人の言う通りかも知れないけど。緊張ほぐす為にも、いつも通りが一番だと思うからね」
「フフフ…。大成、あなたも緊張するのね。意外ね」
「そうですね。意外です」
「2人とも酷いな」
このまま一時の間は気まずくなったままかと思った2人だったが、大成はいつも通りでホッとした。
そして、大成も自分達と同じで緊張することもあると知ってジャンヌとウルミラも変な緊張がなくなり自然と笑顔になった。
大成も、そんなジャンヌとウルミラを見てホッとした。
【過去・屋敷2階・大広間】
昨日の夜、大浴場の事件後に夕食があり、全員が集まったところで明日に行われる魔王の大会についての説明があった。
ジャンヌとウルミラは、大浴場の件で未だに顔が真っ赤になっており、口をパクパクさせていて説明できる状態ではなかった。
他の者達は、そんな2人が気になっていた。
ローケンスは、黙ってシリーダに視線を向ける。
「ハァ…。仕方ありませんわね。では、私が大会について説明します」
ローケンスの視線に気付いたシリーダは溜め息をし、上の空になっているジャンヌの代わりに話を進めることにした。
予選ブロックは、16に分かれている。
バトルロイヤルを形式。
武器と魔法の使用可。
生死を問わず。
降参、リングの外、気絶、死亡した場合は負けとなる。
各ブロック、生き残った1人だけが明日の本選に出れる。
本選は、くじ引きでトーナメント式。
武器と魔法の使用可。
優勝した者がラーバスの魔王代表になり、約3カ月後に開催される魔人の国全土の魔王を名乗る者達が集まって魔人の国の魔王を決める大会に出場できるということだ。
わかりやすく言えば、今回の大会はラーバス国の代表を決める大会なのだ。
今のところ、予選の各ブロックの参加人数は40~50人程度だと予想をしている。
優勝候補は、ヘルレウス・メンバーのローケンスと魔王候補のグランベルク、ルーニング、ガディザム、そして、大成の5人。
他のヘルレウス・メンバーは、出場はしなかった。
一応、それぞれ各ブロックに配置して、予選では当たらないようにするとのことだった。
「以上よ。何か質問とかある方はいるかしら?」
シリーダは、大成達を見渡したが誰も何も言わなかったので解散した。
【屋敷二階・大広間】
朝練が終えた大成達は、朝食のため大広間に向かっていた。
メイド達は、救急箱を持って忙しそうに走り回っている。
箱の中には、包帯やポーションが沢山入っていた。
大会当日、朝食を済ました大成は、先に選手達の待機室で自分がどのブロックか探していた。
「どこかな?」
大成が指をさしながら探していると、入り口のドアが開きローケンスが入って来た。
「小僧、貴様は棄権しろ。そんな脆弱な魔力では死ぬのが落ちだぞ」
ローケンスは、大成の背後から声を掛ける。
「ご忠告ありがとうございます、ローケンスさん。ですが、僕は出場しますよ」
大成は振り向き、ローケンスの目を見て答えた。
「ローケンス様。大成殿の実力は私が保証します」
ローケンスの後ろからニールが現れて笑顔で告げる。
「ほう。ニールに、そこまで言わすとは見物だな。ワハハ…。先程の言葉は忘れてくれ。それでは、期待しているぞ。いや、楽しみにしているぞ!ククク…」
ローケンスは、笑いながら部屋から出ていった。
「ニールさん、ありがとうございます」
「いえいえ、ですが…。予選だからといって油断は禁物です、大成殿」
「わかってます。僕もそろそろ会場に向かいますね。では、失礼します」
「はい、ご武運を」
部屋から出ていく大成を、ニールは笑顔で見送った。
【屋敷の外・会場】
会場は屋敷の裏にある大勢いる騎士団達が鍛錬に使用している複数あるリングを使うため大きく、沢山の人が入ることが可能だった。
各リングの上では、試合が始まるのを待っている選手がウォーミングアップしており観客席も溢れるほど多く集まっている。
大成も自分のブロックのリングに上がり、周りを見渡すと大体30人ぐらいの選手がいた。
「おい、やはり人間の子供じゃないか?」
「何で人間が出場しているんだ?」
「この機会に殺そうぜ!」
「人間なんて死んじまえ!殺せ~!」
「なら、作戦通りにいくぞ」
「ブーブー」
大成がリングに上がると、同じリングの選手や観客から罵倒や避難される。
そんな中、一部の観客席からエターヌやおばさん、ナイディカ村の人達が大成を応援する。
「が、ガンバって~!お兄ちゃん~!」
「頑張るのだよ~!大成君」
「小僧、応援に来たぞ~!」
大成は、笑顔で手を振るった。
そして、音楽が流れ始め会場は静まり返る。
屋敷の二階のベランダから、黒のドレスを着たジャンヌが現れた。
「皆様、おはようございます。これより、歴史に残るラーバス国の魔王代表を決める大会を開始しますので、是非この日、いえ今を忘れぬよう目に焼き付けて下さい。なお、今回は特別に1名だけ人間の参加を認めてます。彼は私が召喚した異世界人です。何かご不満があればお聞きます。それでは、選手の皆様、準備は宜しいでしょうか?では、只今より試合開始の宣言をします。試合開始です!」
「「ウオォォ~!」」
ジャンヌはマイクみたいな魔法道具で声を大きく響かせ、会場は盛大に盛り上がり選手達は戦いを始めた。
大成はリングの端におり、周りを見ていた。
派手に闘っているリングが数ヶ所あった。
第1ブロック
「エア・スラッシュ」
ローケンスは、風魔法エア・スラッシュを唱えると握っている大剣の刀身に風が纏う。
風を纏っている大剣をローケンスは横に凪ぎ払い、剣から突風が巻き起こした。
その一撃で、周りの殆どの選手を場外に吹っ飛ばした。
エア・スラッシュは、本来は鎌鼬(かまいたち)みたいに切りつける魔法なのだが、今回は突風だけにしてできる限り相手選手が怪我をしないようにローケンスは配慮していた。
第2ブロック
「魔剣よ、我に力を!」
グランベルクは、持っていた魔剣を上に掲げると黒い霧を発生させ自身を覆う。
そして、黒い霧は霧散しグランベルクの姿が見えた。
右手に変化のない魔剣だったが、グランベルクは黒い鎧を装着していた。
グランベルクは、一気に接近して一振りで複数の選手を切り捨て周囲に血が飛び散った。
ただ殺害しただけでなく、切りつけた時に魔力を吸収している様だった。
第3ブロック
「次は、ライトニング・シャワーだぞ。ほれ、ほれ若いのに、そんなものかのホホホ…」
ルーニングは、雷魔法ライトニング・シャワーを唱えると上空に異次元の空間ができ発生して雷があちらこちらに落雷する。
直撃した者は真っ黒に焦げ、倒れた体から煙が出ている。
そして、ルーニングは、次々にいろんな様々な広範囲の魔法を繰り出して弄ぶ様に倒していく。
第4ブロック
「ナンダ?ソノ、ヒンジャクナコウゲキハ!オシエテヤル!コウゲキトイウノハ、コウイウモノダ!ワハハハ…」
選手達は、ガディザムに魔法攻撃や武器で攻撃しているが大したダメージを与えられないでいた。
ガディザムは選手達を殴って吹っ飛ばしたり、ゴミのように握りつぶしていく。
第7ブロック
大成が気になる選手がいた。
その選手は同い年ぐらいの少女だったが、短剣を使った戦いは、大成が所属していた特殊部隊の戦い方に酷似していたのだ。
他のブロックはバランスがある程度とれており、代表が決まるのに時間が掛かりそうだった。
そして、大成のいる第5ブロック。
「おいおい、坊主!他のブロックを気する必要がないだろ?どうせ、お前はココで死ぬのだからな。って、おい!いい加減、こっちを向け糞ガキ!」
声を掛けられたので、大成は振り向いた。
「とっとと、死ね!」
大男は、大声を出しながら斧を振り下ろす。
大成は左前に出て斧を避けて、右手で大男の後ろ首に手刀した。
「うぐっ」
大男は、気絶して両膝をつき倒れたことで辺りがざわつく。
大成のリングは、大男が攻撃するまで誰も闘っていなかった。
選手達は皆、出場選手の書かれていた紙を見て人間である大成を先に殺すと相談して決めていたのだ。
そして、大成の近くの選手達が一斉に大成に襲い掛かる。
大成は、下がってリングの端に移動した。
正面から2人が襲い掛かり、2人は剣を振り上げる。
大成は、振り下ろされる前に2人の間を素早く動いて通り抜けて2人の背中を押してリングの外に出した。
そして、次は選手5人が同時に大成に襲いかかる。
まず、中央の槍使いがリーチを生かして突きを放ってきたので、大成は避けながら槍を掴んで引っ張り、槍使いは体勢を崩して前屈みになり大成と他の4人の間で倒れた。
他の4人は、目の前で槍使いが倒れたことで慌てて立ち止まり間合いとタイミングがズレたので攻撃が鈍った。
「ハッ!」
大成は、その隙をついて攻撃される前に接近して顎、鳩尾、心臓付近を殴ったり蹴ったりして3人を気絶させ、もう一人は剣を振り下ろしてきたが、大成は相手の手首を左手で下から抑えて途中で止めて右拳で鳩尾を殴って気絶させる。
「糞~っ。がはっ」
その間に倒れていた槍の使いは立ち上がり、転がった槍を拾おうとしたが、大成に槍を踏まれ阻止されて顔を蹴り飛ばされた。
その時、第1、2、3、4ブロックの予選通過者が決まり、大きな声援が聞こえた。
第1ブロック、ローケンス。
第2ブロック、グランベルク。
第3ブロック、ルーニング。
第4ブロック、ガディザム。
大成は声援が気になり、周りのブロックを見渡した。
そして、視線を感じた屋敷の2階に視線を向けるとジャンヌが不満そうに自分のブロックを見ていることに気付き、大成は苦笑いを浮かべた。
予選は、なるべく魔法や魔力を使わずに済ませるという計画を大成は立てていたのだ。
「弟よ、いくぞ!」
「わかったぜ兄貴!」
「「よそ見してんじゃねぇ~!」」
大男の兄弟は叫びながら、ハンマーを振り回そうとする。
大成は前に出て、弟がハンマーを振り回す前に右足のハイキックで弟の顎を蹴って気絶させる。
「弟よ!くっそ!」
兄は大成に向けてハンマーを振り回したが、大成はジャンプして兄の頭上を跳び越え、背後から後ろを向いたまま兄の背中を蹴り飛ばした。
「うぉ、お、お…。糞~!」
兄はリング端で落ちそうになり、ハンマーを捨てて必死に手を振ってバランスとろうとしていたが努力むなしく場外に出てしまった。
「ま、魔法だ!魔法で倒せ!」
誰かが大きな声で指示を出した。
「「うぉぉぉ」」
掛け声とともに、ファイア・アロー、アイス・ミサイル、アース・ショットなど、いろいろな魔法が大成に向かって飛んでくる。
「そろそろ、こちらから攻めるか」
大成は魔法を避けながら走り、集団へと向かった。
大成に接近された選手達は混乱して仲間が近くにいるにも関わらずに魔法で攻撃をし、同士討ちなどが起き、結果、あっという間に終わり、大成が第5ブロックの予選通過者に決定した。
「お兄ちゃん~!お兄ちゃん~!すっご~い!かっこい~い!大好き~!」
エターヌは、前屈みになり上半身は柵から乗り越えて手を一生懸命に振っている。
大成の戦いを見たエターヌは、テンションが高くなっていた。
「本選も頑張るから応援よろしく」
大成は、エターヌに答える様に手を振った。
おばさんや村の人達は、魔力を使わずに戦う大成の姿を見て唖然としていが、我に返って大成を激励(げきれい)する。
「本選も頑張って、大成君!」
「頑張れ、小僧~!」
「本選も応援するよ~」
だが、可愛い天使が爆弾を落とす。
「また、一緒にお風呂入ろうね!お兄ちゃん~!」
「ゴホッゴホッ」
エターヌの爆弾発言を聞いた大成はむせる。
いつの間にか大成の声援はなくなっていた。
異様な視線が気になった大成は周りを見渡すと、観客席にいるおばさん以外の村の人達と屋敷の2階にいるジャンヌ、リングの端で出場選手の手当てをしているウルミラは冷たい目で大成を見ていた。
いや、その目は、まるでゴミを見るような目だった。
それから、1時間ほど過ぎて他のブロックも予選通過者が決まったのだった。
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