異世界から魔王候補として召喚された

フミナベ

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口移しと無謀

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【会場】

ローケンスとの試合が終わり、試合の進行が止まっていた。
原因は大成VSローケンス戦でリングの損傷が激しく、修復のために時間が掛かっていたのだった。


【過去・リング】

大成とローケンスの闘いが終わった後…。

「ローケンス様っ!」
ローケンス隊の副団長は、慌てながらローケンスの下に駆けつけた。

「ハァハァ、俺は敗けはしたが…。は、恥じぬ闘いをしたつもりだ…。お、お前達には、どう見えたか?」

「は、はい!見とれるほどの立派な闘いでした!」

「そうか…」
ローケンスは笑顔見せながら意識が遠退き、副団長に担がれ医療室へと運ばれた。


一方、大成も意識が朦朧として、体が動かなかった。

「大成!大丈夫!?」
「大成さん!大丈夫ですか!?」
ジャンヌとウルミラが慌てて駆けつけた。

「…ん?ジャンヌとウルミラ…大丈夫と思う…。ただ凄く眠い…。試合…苦しかったけど、とても楽しかったよ…」
大成は、目を薄く開けてジャンヌとウルミラを見て笑って、再び目を閉じた。

ジャンヌとウルミラは、大成の体を見て息を呑んだ。

大成は試合に勝ったが、ローケンスよりも傷が多く、どの傷も掠り傷なのだが出血量は思っていたよりも多かったのだ。

そして、なにより昨日の予選が終えた後、参加者の手当てのために大量の魔力を使い果たして、まだ魔力が余り回復してないままの状態でこの試合に挑んでいる。

試合は死闘になったため、大成はより衰弱していた。


「は、早く、ポーションを…」
ジャンヌは大成の容態を見て顔が蒼白になり、慌てて自分のポーチからポーションを取り出そうとするが、手が震えてポーチのファスナーを上手く開けられなかった。

「い、今は喋らないで、これを飲みなさい」
大成の口元にポーションを差し出して、瓶を傾けて飲ませようとするが大成の口から零れるだけだった。

大成はポーションが飲めないほど衰弱しており、その姿を見たジャンヌとウルミラは涙が溢れる。

ジャンヌとウルミラは1つの方法が頭を過ぎり覚悟を決め、お互い真っ赤になっている顔を見て頷いた。

2人は、ポーションを自分の口に含ませ、最初にジャンヌが顔を真っ赤にしたまま大成に口移しする。

そして、続いて同じく顔を真っ赤にしたウルミラが口移しをした。

それを、交互に繰り返していく。

大成の顔色が徐々に良くなっていき、2人は大成の顔を見てホッと胸を撫で下ろした。

そして、周りから盛大な拍手が巻き起こった。
2人は大衆の前だったと気付き、真っ赤だった顔をさらに真っ赤に染まる。

そこへ、ニールが2人に歩み寄り、大成を担ぎ医療室に運んだ。

医療室には、沢山の人が集まったので面会謝絶にしてジャンヌとウルミラが看病することにした。



【医療室】

大成は意識を取り戻した。

「ん…ここは?ああ、そうか…。僕は、また倒れたのか。ジャンヌ、ウルミラ、ありがとう。おかげで助かったよ」

「き、き、気にしないで、い、良いわよ」

「そ、そ、そうですよ」

「僕が気を失っている間に何かあった?」
お礼を言った大成は、ジャンヌとウルミラの顔が真っ赤になっていたことに気付いた。

「な、何もなかったわよ!ねぇ、ウ、ウルミラ」

「は、はい!何もありませんでした」
話を掛けられたジャンヌとウルミラは、ビクッと反応して声が裏返る。

「まぁ、何もなかったなら良いけど。それより、気を失っていたけど、何か唇に柔らかいものが何回も触れていたような感じがしたけど。2人とも何か知らない?」
大成に質問されたジャンヌとウルミラは、真っ赤だった顔を更に真っ赤にした。

「ん?どうしたの?2人とも」
「べ、べ、別に何もないわよ!」
「あ、ありませんっ!」
「まぁ、気のせいだったかもしれないけど。気を失っている間、口元に何か柔らかい物に触れて気持ちよかったのだけど」
「「~っ!!」」
「ん?どうしたの?やっぱり、何かあった?」
大成は振り返ると、ジャンヌとウルミラは真っ赤な顔で口をパクパクさせて固まっていた。

大成はベットから降りて体を少し動かしてみる。

(万全な状態に戻るのに1週間ぐらいは掛かりそうだな…)
「明日の試合も不安だな…」
大成は自業自得なので苦笑いを浮かべたが、後悔はしていなかった。


他の試合が気になり、大成は部屋から退出しようとする。
「どこ行くのよ、大成」

「ん?次の試合を見たいから会場に行くけど?」

「安静にしていて下さい。それに、今はリングの修理をしてますので、試合の進行は止まってますよ」

「そうなんだ。じゃあ、もう少しだけ寝るよ」
大成は、再びベッドに戻ろうとした時だった。

「おい!貴様ら~!よくも俺達の娘たちを!」
「許せねぇ~ぞ!貴様ら!殺してやる!」
「ああ、コイツらを殺して、それで捕まっても構わねぇ!」
部屋の外から男達の物騒な声が聞こえ、気になった大成達は部屋を出て様子を見に行った。



【医療室の前・廊下】

一般人の男達3人と魔王候補のグランベルク、ルーニング、ガディザムの3人がいた。
男達は武器を持って激怒しており、一方の魔王候補3人は笑みを浮かべていた。

「貴様らのせいで、娘達は俺達の目の前で、自殺したんだぞ!」
男は涙ながしながら歯を食い縛り、魔王候補達を睨む。

「そんなこと知るか。だが、喜ぶがいい。良い娘達だったぞ」

「ホホホ…。確かに、良い娘達であったわい」

「ガハハハ、ソウダナ」
グランベルクは笑い、それに続くようにルーニングとガディザムも笑いながら肯定する。

「「貴様ら~!死ね!」」
男達は、魔王候補達に襲い掛かった。

「ふん、雑魚が」
「娘達は必死に声出さない様に我慢して頑張っていたが、親達は弱い癖に良く吠えるの~」
「ガハハハ、ダナ」
魔王候補達は殺気を放ったので、大成達は迷わず動いた。


グランベルクは、接近した男が上から振り下ろした剣を魔剣で弾いて横から凪ぎ払う。
ウルミラは2人の間に入り、伸縮自在の矛を取り出してグランベルクの魔剣を防いだ。

ルーニングは、近づいてくる男に右手の掌を向けて魔力を集中させる。
ジャンヌは2人の間に入り、双剣で2人の首元に剣先を止めて2人を停止させた。

ガディザムは、斧を振ってくる男に殴りかかった。
大成は2人の間に入り、片手で男の手首を下から抑えて受け止め、もう片方の手で迫ってくるガディザムの大きな拳を横から押して攻撃を受け流したことで、ガディザムの拳は壁に当たり、大きな音が響きかせながら壁が崩壊した。

「そこまでだ!これ以上、暴れるつもりならば俺が相手してやる」
大成の瞳の光が消えて冷酷な瞳になり、殺気を放ちながら睨みつける。

「「~っ」」
大成が放つ殺気を前にしたジャンヌ達は息を呑み、魔王候補達は大きく瞳を見開き無言になり、辺りは静かになった。

「フン!興が逸れた」
「そうじゃの!ホホホ…」
「オレノ、コウゲキヲ、イナストハ。ガハハハ…オモシロイ」
魔王候補達は、その場を離れようとする。

「おい!待てよ。俺が試合していた時、お前達は居なかったよな?」
大成は、試合中に魔王候補達が見に来ているかどうか気になり、観客席を見渡していたが3人の姿はなかった。

「ああ、そうだ。すぐに、お前が負けると思っていたからな。それが、どうした?どうせ、次の試合で俺様に負けるんだ」
グランベルクは獰猛な笑みを浮かべており、他の魔王候補2人も笑みを浮かべていた。

「そうだ、次の試合は俺1人とお前ら3人で戦わないか?」
「大成!やめなさい!無謀だわ!」
「大成さん!無茶です!無理です!」
大成の提案を聞いたジャンヌとウルミラは、慌てて大成を止めようとしたが…。

「勝てば、問題ないだろう?」
「「~っ!?」」
大成の声音は低く、そして、氷の様に冷たく感じたジャンヌとウルミラは何も言えなくなった。


「ああっ!黙っていれば、調子に乗るのもいい加減にしろ!」
激怒したグランベルクは、大成に向けて殺気を放つ。

「ホホホ…良いではないか、グランベルク。この機会に生きていたことを後悔させればよい。ホホホ…」
笑っているルーニングは目を細め大成を睨んだ。

「ガハハハ…ソレハ、イイナ!」
ガディザムは純粋に笑っていた。


「なら。決まりだな!今日中に、リングの修理が終わり次第に試合が始まる。逃げるなよ」
魔王候補達を睨みながら大成は話を進める。

「フン!」
魔王候補達3人は、崩壊した壁から外へと出ていった。


「もう!大成、どうなっても知らないわよ」
「大成さん!どうするのてますか?」
呆れたジャンヌとオドオドするウルミラ。

そして、一般人の父親達は呆然としたまま、ただ眺めているだけだった。
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