異世界から魔王候補として召喚された

フミナベ

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戦闘と衝突

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【パルシアの森・人間の国側】

【時の勇者】達は、魔人の領土のパルシアの森に足を踏み入れていた。

森の中は、まるで自然が人を寄せ付けないように木の太い根が盛り上がっていたりして、アップダウンが激しくなっている。

先頭は、騎士団の団長マールイ率いる騎士団達、その後方に勇者達がいるが、勇者達のパーティには、最近、異世界から召喚されたばかりの冒険すらしたことない少女が2人いるためマールイ達との距離が広がっていく。

しかし、勇者は気にしておらず、少女2人のスピードとペースに合わせていた。



【過去・バルビスタ国】

少し前、バルビスタ国から出国する時…。
「俺達が、先導するいいな?」
マールイは、勇者を睨んだ。

「何でよ!マールイ。あなた、何で勝手に決めているのよ!」
「メルサ、落ち着け。マールイ、お前達が1つだけ条件を呑んでくれるなら、別に構わない」
メルサはマールイに言い詰めるが、勇者に止められたのでそれ以上は何も言わなかった。

勇者は、条件付きでマールイに交渉を持ち掛ける。


「何だ?」
「そう身構えるなよ、大したことではない。ただ、俺達はお前達と離れるかもしれないが気にするなということだけだ。そう、怪訝な表情するな。別に、手柄を横取りしようとは思っていない。ただ、俺達は狩りをしながら新人2人に経験を積ませながら進行するつもりだ」
「フン、なるほどな。そういうことか、わかった。その代わり、先に言っておくが危なくなっても私達は責任は取らないし、手助けもしないからな」
マールイは、嫌味たらしく言った。

「構わない。だから、もうメルサも良いだろ?」
「わかったわ。あなたが、そう言うなら」
メルサは、まだ何か言いたいそうな顔をしていたが大人しく退いた。

そんなメルサの態度を見たマールイは苛つき舌打ちし、マールイ達が先導することとなった。



【パルシアの森・人間の国側】

森は険しい道のりだが順調に進んでいた頃、メルサが話しかける。
「ねぇ?そろそろ、教えてくれたって良いんじゃない?」
メルサは、勇者に振り向き笑みを浮かべる。

「ああ、やはり気づいていたか。流石だな」
「「えっ!?」」
最近召喚された少女2人は驚いた。

「そういえば、自己紹介はまだだったよな。まず、自己紹介から始めようか。俺は…」
「【時の勇者】で良いわよ」
「おい!」
勇者が自己紹介しようとしたら、メルサが横槍を入れなれ突っ込んでしまった。

「えっと…。では、次は私がします。私は橘ツカサです。えっと、魔法はユニーク・スキルでチャームです。チャームの能力は…」
「いや、能力まで言わなくって良い。自分の能力は隠しておくものだからな」
茶髪でツインテールの髪型のスタイルが良い13歳の女の子のツカサは自分の能力を教えようとしたら、勇者が手を前に出して止めた。

「えっ!?でも、チームの連携が…」
小さくブツブツ呟くツカサだった。

「では、最後は私ですね。私は…」
「奈々子だろ」
「「えっ!?」」
メルサ、ツカサ、奈々子3人は驚いた。

「あの…。なぜ、私を知っているのですか?」
勇者の顔を覗くように見る奈々子だったが、勇者はフードを深く被っており顔がわからなかった。

「ああ、それはだな…」
勇者が答えようとした時、騎士団の悲鳴と木が倒れる音が聞こえた。
勇者達は、騎士団がいる場所へ急いで向かった。



「ま、魔人だ!盗賊だ~!」
「くっ、こいつら強いぞ!特に3人は別次元の強さだ!油断するな!」
「ぐはっ」
「た、助けてくれ~」
「ぎゃ~っ」
勇者達が辿り着いたが、勇者達の前を進んでいた騎士団達が取り乱していた。



「ちょっと、ここで待機していてくれ。様子を見てくる」
勇者はジャンプして木に登り、上から辺りを見渡す。

「ほう…。アイツらは結構強そうだな」
だいたいの状況が把握したので、勇者はメルサ達がいる場所に音を立てずに飛び降りた。


「どうだったの?」
メルサは、心配な面持ちを浮かべて勇者に尋ねる。

「押されているな。敵側に3人だけ、段違いに強いのが居て苦戦を強いられているみたいだ。他は盗賊で騎士団達と五分五分ぐらいだ」
勇者は、包み隠さずに話した。

「「どうしますか?」」
心配そうな表情でツカサと奈々子は尋ねる。

「ああ、すまないが来て貰う。これも、いい経験になるだろう」
「ウフフ…。「すまないが」では、ないでしょう。初めから、大勢の人が死ぬところを見せるために、後方を選んだのでしょう?」
メルサが、【時の勇者】の顔を覗き込みながら確かめた。

「「え!?」」

「ふっ。流石、姫だけのことはあるな。いい読みをしている。そうだ、早く人の死というものを慣れて欲しいからな」

「でも、下手するとトラウマや再起不能になる可能性もあるわ。だから、まだ2人には早いと思うのだけど…」
メルサは、心配した表情でツカサと奈々子を見つめる。


「確かに正しい判断だが、絶対とは言い切れない。それに、人間が魔人の国に壊滅的ダメージを与えたことで、報復がいつ起こるかわからない。だから、できる限りの早さで急成長して貰い、自分の命は自分で守れるぐらいの強さを得て欲しい。しかし、そうだな…。決めるのは自分達で決めてくれ。強制はしない」
勇者は背を向けたまま、奈々子とツカサの返事を待つことにした。



【過去・パルシアの森・中央】

魔王候補達は、遠くにパルキ城が見えてきた所でマールイ達の騎士団と遭遇した。


「ん?人間か…。丁度、ストレス解消ができるな」
「ホホホ…。そうじぁのぅ~」
「ガハハハ…。チガタギル」
グランベルクは魔剣を解放して鎧を纏い、ルーニングは魔力を高め、ガディザムは身体強化して戦闘準備を整える。

魔王候補達は殺気を隠す気もなく、獰猛な笑みを浮かべて戦闘に入った。


「敵襲だ!戦闘準備しろ!相手は前方にいるぞ!」
騎士団の団長マールイが気付き、慌てて腰に掛けていた剣を抜きながら指示を出したが少し遅かった。


「エア・カッター」
先制攻撃をしたのは、ルーニングの風魔法エア・カッターだった。
カミソリの刃みたいに細く鋭い風の刃15本を放ち、木を切り裂きながら騎士団達を襲った。

「ふん、こんな攻撃は効かん。ぐはっ」
「ひっ、ひぃ~っ…。ど、どんな切れ味なんだよ」
「た、助けてくれ~」
騎士団達は、鋼鉄の盾で防ごうとするが盾ごと切断され倒れ、見ていた騎士団達は混乱する。


ルーニングが放った風の刃によって、木々が倒れてくる。
「巨木が倒れてくるぞ~!避けろ~!」
団長マールイと副団長ケルンが指示を出しているが、あまりに次々と事態が起こる状況に場が混乱して招集がつかない。

巨木で潰されたり、進路を閉ざされたり、後続にいる騎士団達も前衛を見て混乱し始める。


そして、混乱に乗じてグランベルク、ガディザム、盗賊達が騎士団達に接近して追い討ちする。

「人間なんて、下等な生き物は大人しく死んでいれば良いのだ」
グランベルクは、次々に騎士団達を魔剣で斬り殺しながら鎧を針に変化させ刺し殺していく。

「ガハハハ…。ナント、モロイ、イキモノナンダ」
ガディザムは騎士団達をゴミのように握り潰したり、殴って吹っ飛ばしたり、捕まえては投げつけたり、叩きつけたりして殺していく。

「死ねぇ~!」
「逃がさねぇぞ!」
盗賊達は、武器持ち魔王候補達に続いた。

騎士団達は不意討ちされ、魔王候補達の圧倒的な力を間近に見て恐怖する者、逃げる者が現れ、更に場が混乱して実力を出すことなく倒されていく。


そんな中…。

「オラァ!俺とケルンが強い奴を退治する。だから第5班7班、敵に背中を見せるな!死にたくなければ戦え!アース・ショット」
「マールイ団長、了解です!」
マールイは剣や魔法で盗賊を倒しながら指示を出し、ケルンは了承して剣で盗賊を倒しながら圧されている仲間のところへと駆けつける。


「「了解!」」
マールイとケルンの勇姿を見た周りの騎士団達も、気力を取り戻して立ち直っていく。

立ち直った騎士団達は盗賊と対等に渡り合い、それを確認したマールイとケルンは標的の魔王候補達に向かって進む。

マールイはガディザムに、ケルンはグランベルクに向かった。

騎士団達は、2人の邪魔が入らないように陣形をとり盗賊達と応戦する。


人数は、騎士団達の方が圧倒的だが、始めの混乱で被害者が100人を越えていた。

それでも、数で勝てると思った騎士団達だったが、盗賊達は森での戦いに慣れており、狭い場所で戦うため数の優勢があまり意味をなさなかった。

騎士団達も森での戦闘の訓練もしているが、盗賊達と比べ経験は少ない。
慣れや陣形も大切だが、大きな差は軽装備と重装備の差が大きかった。


平地なら、ほぼ毎日欠かさず訓練している騎士団の方が実力は上だったが、ここは魔人の国の森の中で人間の国の森より足場が悪く、重装備だと、なお動きが鈍くなり苦戦を強いられていた。

何よりも、固まればルーニングの魔法の餌食となり、騎士団1人に対して盗賊達は複数で襲ってくる。

それでも、自分達の実力以上の実力を出して、どうにか互角に渡り合えていたのは、マールイとケルンの勇姿を見たからであった。



ケルンは、グランベルクと戦っていたが押されていた。

「くっ、どうすれば良いんだ!?」
ケルンは、グランベルクの対応に焦っていた。

グランベルクに接近戦に持ち込んだら、鎧が無数の針に変化し攻撃を防がれると同時に攻撃をしてくる。
少しでも、負傷すると魔力を奪われていた。

かといって、魔法で遠距離で攻撃しても防がれたり、避けられたりして無駄に魔力を消費しするだけであった。

大魔法で攻撃ならダメージは与えられると思ったが、周囲にいる仲間達にも甚大な被害が出るので使用できなかった。

「フン、この程度か…。やはり人間は弱いな。俺様の足下にも及ばぬ」
グランベルクは笑みを浮かべながら、ケルンとの距離を縮めて大剣で連撃をし追い詰めていく。

徐々に傷が増え魔力も吸いとられていくケルンは、歯を食い縛った。



一方、マールイは逆に一方的に攻撃して押しているかの様に見えた。

「オラァ!オラァ!オラァ~!どうだ!俺の豪剣は岩をも砕く!」
力自慢のマールイは力強い剛剣で、ガディザムに連撃を与えている。

だが…。
「ガハハハ…。キカンナ!ヤハリ、オレノニクタイハ、サイキョウダ」
ガディザムはゲラゲラ笑いながら棒立ちしたまま反撃は愚か防御もせず、わざと攻撃を食らって自分の肉体の強さを再確認して喜んでいた。

マールイは、ガディザムの笑い声と態度に苛ついた。
「くっ。ならば、これならどうだ!くたばれトカゲ野郎!シャイニング・スラッシュ!」
マールイは、自分の切り札、光魔法シャイニング・スラッシュを唱えると剣が光に包まれた。

光輝く剣で、ガディザムを剣を上から振り下ろし攻撃した。


「ムッ!」
ガディザムは、両手に魔力を込めガードする。
光が周囲を照らした。

「どうだ!手応えはあったぞ!」
マールイは、技が決まり自信満々で言った。


場の光が徐々に弱まっていき、巨大な人影が見えた。
「う、嘘だろ…。おい…。なぜ、効いてないのだ…。さては、不発だったか!?」
マールイは、再びシャイニング・スラッシュを放つ。
今度はガディザムは無防備で攻撃を食らうが、結果は変わらなかった。

「ガハハハ…。ムイミダ!」
今度は、ガディザムが右拳でマールイを殴る。

「ガハッ」
マールイは、剣でガディザムの大きな拳を防いだが吹っ飛ばされて背中から木に激突した。

「ぐはっ、糞」
マールイは立ち上がろうとした際、違和感に気付いた。
目を向けると両腕が折れていたのだ。


「ガハハハ…。オモシロカッタゾ、ニンゲン。サラバダ」
ガディザムは、右手を振り上げ、上から叩き潰すように振り下ろす。

「無念…」
マールイは、死ぬ覚悟を決め目を閉じた。

「「マールイ団長~!」」
周りの騎士団の悲痛な叫びが聞こえる。


だが、いつ経っても痛みが襲ってこない。
目を開けると目の前に勇者がおり、勇者はガディザムの大きな拳を剣で受け止めていた。

「よう、大丈夫か?いや、大丈夫じゃないな。とりあえず、あとは任せろ。俺がコイツらを瞬殺してやる!だから安心しろ!」
勇者は、顔だけマールイの方を見て不敵に笑った。
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