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各戦いと想い
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【ナイディカ村・東口門付近】
東口門の担当のローケンスは待機しており、合図があるまで大成の強さを思い出しながら考えていた。
(魔王を決める大会で闘う前にニールに言われたが、闘った時は気のせいだと思っていた…。しかし、今回あの異常な強さと殺気は、まるで勇者と戦った時と同じ感じがした。いや、大会の時も…何となく雰囲気や闘い方が似ていた…。もしかして、俺やニールは、自分より強い奴は全て勇者と似ていると思い込んでいるかもな)
「フッ、考え過ぎか…。今は、目の前のことに集中しないとな」
ローケンスは、小さく笑いながら頭を掻いた。
偶然にも同じ異世界、年を見ても兄弟や親の関係ではない。
纏めて召喚されたら理解できるが、時期も別々で召喚される。
そんな、とても確率の低い可能性が起こるわけがないと思い。
結局、ローケンスは【時の勇者】と大成は無関係だと結論した。
そして、村から戦いが始まった様な音が響いた。
「始まったみたいだな…。よし、作戦開始だ!」
ローケンスは、気を引き締めて門に向かって走った。
「「敵襲!」」
見張り役が鐘を鳴らし知らせ、門から大勢の騎士団達が出てきた。
「エア・スラッシュ」
ローケンスは、鞘を付けたままの大剣を持って、横に振りながら風魔法エア・スラッシュを唱えて鎌鼬を飛ばした。
今回のエア・スラッシュは、遠くに飛ばすための維持を弱め、その代わり範囲を強化した。
建物を破壊しないように気遣い、届かないようにしたのだ。
「ファイア・アロー」
「アイス・ミサイル」
「アース・ニードル」
兵士達も魔法を、それぞれ唱えたが、幅横50mほどの暴風は騎士団達の魔法をかき消し、そのまま鎧が砕きながら兵士達ごと吹っ飛ばすほど驚異だった。
「「ぐぁ」」
吹き飛ばされた騎士団達は気絶をしていく。
ローケンスは油断することなく、気絶していない騎士団達に接近した。
残りの騎士団達が慌てて陣形を整えようとしていたが、陣形が整う前にローケンスに接近されてしまい、迎撃しようと剣を抜くが全く歯が立たないまま、次々にローケンスの鞘がついている大剣で叩きつけられて倒されていった。
「やっと、粗方片付いたか」
「うっ」
「くっ」
ローケンスは大剣を肩に担いで周りを見渡した。
周りは、倒れて蠢く騎士団達が辺り一面に広がっていた。
ローケンスは娘のイシリアが心配で、すぐにイシリアとマキネがいる北口門へと向かった。
【ナイディカ村・西口門付近】
西口門、担当のジャンヌは、同じ場所を小さく円を描くようにクルクル歩きながら回っており大成のことを考えていた。
(何か最近、大成の周りに女の子が増えてきている気がするわ…。まぁ、大成は強いし、かっこいいから仕方ないけど。まさか、あの堅物なイシリアも…?あり得ない。ううん、十分、あり得るわね…)
「というより、大成の女誑し~!浮気者~!」
考えていたらどんどんストレスが溜まり、いつの間にかジャンヌは大声を出ていた。
ジャンヌはハッと我に返り、慌てて門の方を見たが何も変化がなかったのでホッとした。
その瞬間、村の方から大きな音が聞こえた。
「いいタイミングね。ちょうど、ストレスが溜まっていたから良かったわ」
ジャンヌは殺気を立ち、不適な笑みを浮かべながら鞘が付いたままの双剣を両手に持って門に向かって走る。
「「て、敵襲!ヒィッ…」」
見張り役は、ジャンヌを見て恐怖し言葉が詰まった。
門に大勢の騎士団達が続々と集まる。
「ファイア・ウォール」
騎士団達が魔法を唱えるよりも早く、ジャンヌが先制で炎魔法ファイア・ウォールを唱えた。
騎士団達の周りに、高さ3メートル近くある炎の壁が左右前方を囲んだ。
「あっちぃ!」
「こ、このままだと焼け死んでしまう!」
前衛にいる騎士団達は村の中へ戻ろうとして、後衛にぶつかり合い混乱する。
ジャンヌは、前衛が後ろを向いている隙に前側の炎の壁を消して斬り込み、次々に倒していく。
騎士団達は慌てて振り向いて迎撃しようとするが、ジャンヌは止まらない。
そして、あっという間に制圧したジャンヌ。
「もう、少し粘りなさいよ!私は、まだ全然足りないわよ」
ジャンヌは言い放ちながら、新たな敵を探しに村の中央へと向かった。
【ナイディカ村・南口門付近】
南口門の担当のウルミラは、学園のランキング戦のことを思い出して赤く染まった頬に手を当て悶えていた。
(た、大成さんに、む、胸を揉まれただけでなく、顔をう、埋められてしまいました…はうぅ…)
つい、昨日のことなので、どうしても意識してしまう。
時々、無意識に自然と思い出しては今の状態に陥っていた。
他の人なら嫌だが、相手が大好きな大成なら嫌ではない。
しかし、恥ずかしいのは恥ずかしく、そして何より大成にどう感じられたかが気になっており一人で悶えている。
それと同時に、大成は自分のことをどう思っているのかが気になり溜め息をつくウルミラ。
思い出しては急激にテンションが上がり、すぐに下がる。
その繰り返しをしていた。
溜め息をついていた時、大きな音と砂煙が見えた。
ウルミラは、自分の頬を両手で軽く叩き任務に集中する。
「作戦開始ですね!」
ウルミラは気配を殺して擁壁の死角まで移動し、屈んでそっと右手で地面に触れた。
「フリーズ」
ウルミラは、氷魔法フリーズを唱えて地面を凍らしていく。
真夜中で視界が悪く中央で戦いが始まったことで、見張り役の意識が中央に向かっており、全く気付かず一瞬で足元から凍りつき、近くに居た騎士団達も次々に凍っていく。
気付いた騎士団達も、突然のことで対応が遅れ凍った。
そして、暫く経ち、ウルミラは指を鳴らしてフリーズを解除した。
騎士団達は、その場に気絶して倒れた。
「思ったよりも簡単でしたね。とりあえず、大丈夫だと思いますが姫様の所に行きましょうか」
ウルミラはあっという間に制圧し、ジャンヌのいる西口門へと向った。
【ナイディカ村・北口門付近】
北口門、担当のマキネとイシリアの2人はお互いに自己紹介をした後、お互いのことを話していた。
「ねぇ、マキネさんは、大成君のことダ、ダーリンと言っているけど…。そ、その、2人は、け、結婚しているの?」
イシリアは、右手の人差し指で横髪の毛をクルクルと絡めたりしてソワソワする。
「フフフ…。狼狽えるイシリアさんは可愛いね。ダーリンとは、まだ結婚はしてないけど。でも、そのうち結婚するよ。あと、私のことはマキネって呼んで良いよ」
口元に手を当て、マキネはクスクス笑った。
「そ、そうなの?で、でも、大成君は…たぶんジャンヌ。姫様と結婚するわよ。あと、私も「さん」付けはいらないわ。イシリアで良いわ」
話していくうちにイシリアの表情が暗くなっていった。
「だね。でも、一夫多妻可能だし側室があるし。まぁ、ダーリンの一番は私だけどね。私は、好きな人の傍に居られるのならどんな形だって良いと思うよ」
マキネは、夜空を見上げて星を眺めながら話した。
「好きな人の傍に…か…。そうよね!マキネありがとう。私は、もう迷わない。マキネにだって負けないわ」
「ダーリンの一番は譲らないよ。イシリア」
「「フフフ…」」
迷いが晴れたイシリアは笑顔になり、マキネも笑顔を浮かべ、お互い笑った。
それから、大成の何処が好きになったかの話題になり、問題の話がでてしまった。
「そうそう、大成君ってエッチよね」
イシリアは、笑いながら話題を出した。
「そうだね。この前、大浴場でダーリンにタオルを取れって言われて、私とエターヌ裸になったんだよね」
思い出したマキネは、少し頬を赤く染めて笑いながら話した。
「えっ!?」
イシリアは固まったと同時に何か崩れる音がした。
それから、すぐに大成から精神干渉魔法レゾナンスで、コンタクトが来た。
(マキネ、イシリア、そっちに一人向かった。取り押さえろ)
(わかったよ、ダーリン)
(わかったわ、大成君。あと、少し聞きたいことがあるの)
ちょうど大成と話せるので、イシリアは確かめようと思った。
(ん?何だ?)
(大浴場でマキネとエターヌちゃんを脱がして、裸を見たのは本当なの?)
(~っ!い、今は話すことじゃないから…)
大成は、一方的にレゾナンスを解除した。
そのことで、イシリアは本当のことだと悟り、にっこり笑っていたがドス黒いオーラーが見えそうなほど凄みを増した。
「い、行こうよ、イシリア。そ、その…と、とりあえず、ここに向かって来ている人にぶつければスッキリするから…」
流石のマキネもドン引きな感じになり、取りあえず頬を引き攣りながら話す。
「そうね…。そうよね…。フフフ…」
イシリアは、笑いながらマキネを置いて一人で門に向かう。
「ま、待って!イシリア!」
マキネは、慌てながらイシリアのあとを追った。
「「敵襲!」」
門から大勢の騎士団達が出て来て集まってくる。
「ダウンホース」
イシリアは風魔法ダウンホースを唱え、騎士団達の頭上に空気を圧縮した層を落として動けなくした。
「うぉぉ…何て圧力だ。ぐっ、押し潰されそうだ…」
イシリアより魔力値が低い騎士団達は、必死に耐えることしかできず身動きがとれなかった。
「アース・ショット」
「「ぐっ」」
「「痛って」」
イシリアはダウンホースを解除して圧縮した土の弾丸を放ち、無防備な騎士団達を気絶させていく。
「一旦、退避だ!退避して陣形を整えるぞ!」
(ここを何としても突破しなければ…)
「タスト副総隊長!?」
「おお!タスト副総隊長だ!」
「「うぉぉ!」」
「喜ぶのは後だ!すぐに行動に移せ!」
「「ハッ!」」
「一時、撤退だ!」
逃げて来た副総隊長のタストは残りの騎士団達に指示を出し、騎士団達を立ち上がって逃げようとする。
「逃さないよ!」
マキネは、手裏剣を投擲する。
マキネの手裏剣が騎士団達の関節部分に刺さり、刺さった瞬間に手裏剣から電流が流れて騎士団達は感電して気絶をしていく。
そして、マキネは取り押さえるのが間に合いそうになくなったと思った瞬間、騎士団達の周りにクナイを5本を取り出して投擲し、騎士団達を囲う様に等間隔で地面に突き刺した。
「ペンタグラム・サンダー・スパーク」
マキネが唱えた瞬間、地面に刺したクナイからクナイに電撃が流れて五芒星の魔法陣が出来上がり魔法陣内に電撃が激しく迸った。
「「グァァ…」」
魔法陣の中にいる騎士団達は、感電して気絶した。
間近で見たイシリアは我に返り、マキネの傍に駆けつけた。
「見ていたけど。凄いわね…」
「でしょう!ダーリンがプレゼントしてくれた武器と練習方法が記載されている本のお陰なんだよ。」
マキネは、頬を緩ませながら本を取り出して抱き締めた。
大成が渡した武器は、手裏剣とクナイ、それに短剣の3種類だった。
大成は本を読んでいたら新しい武器の開発に興味が出たので、そこで、時間がある時にオリジナルの武器を試行錯誤して色々と作っていた。
その中の3つだった。
3つとも魔鉱石が使われている。
手裏剣は魔力を込めて投げると、当たった衝撃でその術者の魔力の属性が数倍に増幅して効果が出る仕組み。
クナイも同じで魔力を込めて投擲したりして使用するが、手裏剣との違いは呪文を唱えると発動する仕組みが備わっている。
主にクナイの数と投げて配置により、様々な大規模な魔法陣の発動が可能。
最後の短剣は魔力を込めると、その属性が剣に出る仕組みで、何処の武器屋で売っている品物と効果は変わらないが大成が造った短剣には魔力増幅能力がついており、市販されている物より威力が比べ物にならないほどに高い。
だが、この武器には弱点がある。
もともと、膨大な魔力の持ち主が使用すると、武器が膨大な魔力に耐えきれずに壊れるということ。
あと練習方法が記載されている本は、基本的な練習方法だけでなく、クナイで魔法陣を発動させるための配置なども細かく記載されている。
「なるほどね。大成君は、ただの脳筋じゃなく頭も良いのね。しかも、雷属性はイメージが難しいから、他の属性よりも弱いと言われ続けてきたけど。その武器があれば、十分に汚名返上できるわね」
イシリアは、大成を惚れ直した。
「そうだね。私もダーリンの武器に出会わなければ、今も魔法を使用しないまま戦っていたと思う」
この世界では雷属性が一番イメージが難しいので、威力が弱く発動も遅いので使えない属性との認識が常識になっていた。
術者の中には、極めている強者もいるが滅多にいないのが現状だった。
理由は簡単で、魔法の威力は魔力だけでなく想像も必要なので、雷魔法は他の魔法と比べて想像できにくので自身の体に直に受けてみようとするのだが、ビリビリする物は自然の雷か魔物ぐらいしかいないためだった。
自然の雷を受けたら確実にほぼ死ぬので、魔物しかいない。
だが、この辺りの魔物だとビリビリというより、ちょっとビリッとした威力の攻撃しかしてこない。
結局、どうしてもイメージが湧かないということで、どうしても威力が弱くなるのだ。
だから、マキネは今まで魔法を使用しないで、武術だけで戦ってきた。
しかし、大成とルーニングの戦いを見てイメージができる様になったことが一番成長できた要因だった。
マキネとイシリアは、マキネの魔法を見て呆然と立ち尽くしている残りの騎士団達に襲い掛かり全員を取り押さえた。
「よっと、これで終わったね。イシリア、早くダーリンの所に行こうよ」
マキネは電撃を帯びた短剣で最後の騎士団を倒し、イシリアに振り向いた。
「ええ、そうね」
「あっ、そういえば、こっちに来た人って誰かな?」
「そういえば、大成君がそんなこと言っていたわね。おそらく、副総隊長とか呼ばれていた人だと思うけど、何処かしら?」
マキネとイシリアは、副総隊長であるタトスを探した。
そして、イシリアが地面に倒れているタトスを見つけた。
「あっ、居たわマキネ。服装が他の人よりも立派だから、多分、この人だと思うけど…」
タトスの姿を見たイシリアは、言い淀んだ。
タトスはイシリアにあっちこっちレイピアで刺されており、まるで拷問されたかの様な状態になっており見るのも痛々しいほどの姿だった。
「……。」
流石のマキネもタトスの姿を見た瞬間、何も言葉がでなかった。
とりあえず魔法でタトスと騎士団達を拘束したマキネとイシリアは、大成を探しに向かった。
東口門の担当のローケンスは待機しており、合図があるまで大成の強さを思い出しながら考えていた。
(魔王を決める大会で闘う前にニールに言われたが、闘った時は気のせいだと思っていた…。しかし、今回あの異常な強さと殺気は、まるで勇者と戦った時と同じ感じがした。いや、大会の時も…何となく雰囲気や闘い方が似ていた…。もしかして、俺やニールは、自分より強い奴は全て勇者と似ていると思い込んでいるかもな)
「フッ、考え過ぎか…。今は、目の前のことに集中しないとな」
ローケンスは、小さく笑いながら頭を掻いた。
偶然にも同じ異世界、年を見ても兄弟や親の関係ではない。
纏めて召喚されたら理解できるが、時期も別々で召喚される。
そんな、とても確率の低い可能性が起こるわけがないと思い。
結局、ローケンスは【時の勇者】と大成は無関係だと結論した。
そして、村から戦いが始まった様な音が響いた。
「始まったみたいだな…。よし、作戦開始だ!」
ローケンスは、気を引き締めて門に向かって走った。
「「敵襲!」」
見張り役が鐘を鳴らし知らせ、門から大勢の騎士団達が出てきた。
「エア・スラッシュ」
ローケンスは、鞘を付けたままの大剣を持って、横に振りながら風魔法エア・スラッシュを唱えて鎌鼬を飛ばした。
今回のエア・スラッシュは、遠くに飛ばすための維持を弱め、その代わり範囲を強化した。
建物を破壊しないように気遣い、届かないようにしたのだ。
「ファイア・アロー」
「アイス・ミサイル」
「アース・ニードル」
兵士達も魔法を、それぞれ唱えたが、幅横50mほどの暴風は騎士団達の魔法をかき消し、そのまま鎧が砕きながら兵士達ごと吹っ飛ばすほど驚異だった。
「「ぐぁ」」
吹き飛ばされた騎士団達は気絶をしていく。
ローケンスは油断することなく、気絶していない騎士団達に接近した。
残りの騎士団達が慌てて陣形を整えようとしていたが、陣形が整う前にローケンスに接近されてしまい、迎撃しようと剣を抜くが全く歯が立たないまま、次々にローケンスの鞘がついている大剣で叩きつけられて倒されていった。
「やっと、粗方片付いたか」
「うっ」
「くっ」
ローケンスは大剣を肩に担いで周りを見渡した。
周りは、倒れて蠢く騎士団達が辺り一面に広がっていた。
ローケンスは娘のイシリアが心配で、すぐにイシリアとマキネがいる北口門へと向かった。
【ナイディカ村・西口門付近】
西口門、担当のジャンヌは、同じ場所を小さく円を描くようにクルクル歩きながら回っており大成のことを考えていた。
(何か最近、大成の周りに女の子が増えてきている気がするわ…。まぁ、大成は強いし、かっこいいから仕方ないけど。まさか、あの堅物なイシリアも…?あり得ない。ううん、十分、あり得るわね…)
「というより、大成の女誑し~!浮気者~!」
考えていたらどんどんストレスが溜まり、いつの間にかジャンヌは大声を出ていた。
ジャンヌはハッと我に返り、慌てて門の方を見たが何も変化がなかったのでホッとした。
その瞬間、村の方から大きな音が聞こえた。
「いいタイミングね。ちょうど、ストレスが溜まっていたから良かったわ」
ジャンヌは殺気を立ち、不適な笑みを浮かべながら鞘が付いたままの双剣を両手に持って門に向かって走る。
「「て、敵襲!ヒィッ…」」
見張り役は、ジャンヌを見て恐怖し言葉が詰まった。
門に大勢の騎士団達が続々と集まる。
「ファイア・ウォール」
騎士団達が魔法を唱えるよりも早く、ジャンヌが先制で炎魔法ファイア・ウォールを唱えた。
騎士団達の周りに、高さ3メートル近くある炎の壁が左右前方を囲んだ。
「あっちぃ!」
「こ、このままだと焼け死んでしまう!」
前衛にいる騎士団達は村の中へ戻ろうとして、後衛にぶつかり合い混乱する。
ジャンヌは、前衛が後ろを向いている隙に前側の炎の壁を消して斬り込み、次々に倒していく。
騎士団達は慌てて振り向いて迎撃しようとするが、ジャンヌは止まらない。
そして、あっという間に制圧したジャンヌ。
「もう、少し粘りなさいよ!私は、まだ全然足りないわよ」
ジャンヌは言い放ちながら、新たな敵を探しに村の中央へと向かった。
【ナイディカ村・南口門付近】
南口門の担当のウルミラは、学園のランキング戦のことを思い出して赤く染まった頬に手を当て悶えていた。
(た、大成さんに、む、胸を揉まれただけでなく、顔をう、埋められてしまいました…はうぅ…)
つい、昨日のことなので、どうしても意識してしまう。
時々、無意識に自然と思い出しては今の状態に陥っていた。
他の人なら嫌だが、相手が大好きな大成なら嫌ではない。
しかし、恥ずかしいのは恥ずかしく、そして何より大成にどう感じられたかが気になっており一人で悶えている。
それと同時に、大成は自分のことをどう思っているのかが気になり溜め息をつくウルミラ。
思い出しては急激にテンションが上がり、すぐに下がる。
その繰り返しをしていた。
溜め息をついていた時、大きな音と砂煙が見えた。
ウルミラは、自分の頬を両手で軽く叩き任務に集中する。
「作戦開始ですね!」
ウルミラは気配を殺して擁壁の死角まで移動し、屈んでそっと右手で地面に触れた。
「フリーズ」
ウルミラは、氷魔法フリーズを唱えて地面を凍らしていく。
真夜中で視界が悪く中央で戦いが始まったことで、見張り役の意識が中央に向かっており、全く気付かず一瞬で足元から凍りつき、近くに居た騎士団達も次々に凍っていく。
気付いた騎士団達も、突然のことで対応が遅れ凍った。
そして、暫く経ち、ウルミラは指を鳴らしてフリーズを解除した。
騎士団達は、その場に気絶して倒れた。
「思ったよりも簡単でしたね。とりあえず、大丈夫だと思いますが姫様の所に行きましょうか」
ウルミラはあっという間に制圧し、ジャンヌのいる西口門へと向った。
【ナイディカ村・北口門付近】
北口門、担当のマキネとイシリアの2人はお互いに自己紹介をした後、お互いのことを話していた。
「ねぇ、マキネさんは、大成君のことダ、ダーリンと言っているけど…。そ、その、2人は、け、結婚しているの?」
イシリアは、右手の人差し指で横髪の毛をクルクルと絡めたりしてソワソワする。
「フフフ…。狼狽えるイシリアさんは可愛いね。ダーリンとは、まだ結婚はしてないけど。でも、そのうち結婚するよ。あと、私のことはマキネって呼んで良いよ」
口元に手を当て、マキネはクスクス笑った。
「そ、そうなの?で、でも、大成君は…たぶんジャンヌ。姫様と結婚するわよ。あと、私も「さん」付けはいらないわ。イシリアで良いわ」
話していくうちにイシリアの表情が暗くなっていった。
「だね。でも、一夫多妻可能だし側室があるし。まぁ、ダーリンの一番は私だけどね。私は、好きな人の傍に居られるのならどんな形だって良いと思うよ」
マキネは、夜空を見上げて星を眺めながら話した。
「好きな人の傍に…か…。そうよね!マキネありがとう。私は、もう迷わない。マキネにだって負けないわ」
「ダーリンの一番は譲らないよ。イシリア」
「「フフフ…」」
迷いが晴れたイシリアは笑顔になり、マキネも笑顔を浮かべ、お互い笑った。
それから、大成の何処が好きになったかの話題になり、問題の話がでてしまった。
「そうそう、大成君ってエッチよね」
イシリアは、笑いながら話題を出した。
「そうだね。この前、大浴場でダーリンにタオルを取れって言われて、私とエターヌ裸になったんだよね」
思い出したマキネは、少し頬を赤く染めて笑いながら話した。
「えっ!?」
イシリアは固まったと同時に何か崩れる音がした。
それから、すぐに大成から精神干渉魔法レゾナンスで、コンタクトが来た。
(マキネ、イシリア、そっちに一人向かった。取り押さえろ)
(わかったよ、ダーリン)
(わかったわ、大成君。あと、少し聞きたいことがあるの)
ちょうど大成と話せるので、イシリアは確かめようと思った。
(ん?何だ?)
(大浴場でマキネとエターヌちゃんを脱がして、裸を見たのは本当なの?)
(~っ!い、今は話すことじゃないから…)
大成は、一方的にレゾナンスを解除した。
そのことで、イシリアは本当のことだと悟り、にっこり笑っていたがドス黒いオーラーが見えそうなほど凄みを増した。
「い、行こうよ、イシリア。そ、その…と、とりあえず、ここに向かって来ている人にぶつければスッキリするから…」
流石のマキネもドン引きな感じになり、取りあえず頬を引き攣りながら話す。
「そうね…。そうよね…。フフフ…」
イシリアは、笑いながらマキネを置いて一人で門に向かう。
「ま、待って!イシリア!」
マキネは、慌てながらイシリアのあとを追った。
「「敵襲!」」
門から大勢の騎士団達が出て来て集まってくる。
「ダウンホース」
イシリアは風魔法ダウンホースを唱え、騎士団達の頭上に空気を圧縮した層を落として動けなくした。
「うぉぉ…何て圧力だ。ぐっ、押し潰されそうだ…」
イシリアより魔力値が低い騎士団達は、必死に耐えることしかできず身動きがとれなかった。
「アース・ショット」
「「ぐっ」」
「「痛って」」
イシリアはダウンホースを解除して圧縮した土の弾丸を放ち、無防備な騎士団達を気絶させていく。
「一旦、退避だ!退避して陣形を整えるぞ!」
(ここを何としても突破しなければ…)
「タスト副総隊長!?」
「おお!タスト副総隊長だ!」
「「うぉぉ!」」
「喜ぶのは後だ!すぐに行動に移せ!」
「「ハッ!」」
「一時、撤退だ!」
逃げて来た副総隊長のタストは残りの騎士団達に指示を出し、騎士団達を立ち上がって逃げようとする。
「逃さないよ!」
マキネは、手裏剣を投擲する。
マキネの手裏剣が騎士団達の関節部分に刺さり、刺さった瞬間に手裏剣から電流が流れて騎士団達は感電して気絶をしていく。
そして、マキネは取り押さえるのが間に合いそうになくなったと思った瞬間、騎士団達の周りにクナイを5本を取り出して投擲し、騎士団達を囲う様に等間隔で地面に突き刺した。
「ペンタグラム・サンダー・スパーク」
マキネが唱えた瞬間、地面に刺したクナイからクナイに電撃が流れて五芒星の魔法陣が出来上がり魔法陣内に電撃が激しく迸った。
「「グァァ…」」
魔法陣の中にいる騎士団達は、感電して気絶した。
間近で見たイシリアは我に返り、マキネの傍に駆けつけた。
「見ていたけど。凄いわね…」
「でしょう!ダーリンがプレゼントしてくれた武器と練習方法が記載されている本のお陰なんだよ。」
マキネは、頬を緩ませながら本を取り出して抱き締めた。
大成が渡した武器は、手裏剣とクナイ、それに短剣の3種類だった。
大成は本を読んでいたら新しい武器の開発に興味が出たので、そこで、時間がある時にオリジナルの武器を試行錯誤して色々と作っていた。
その中の3つだった。
3つとも魔鉱石が使われている。
手裏剣は魔力を込めて投げると、当たった衝撃でその術者の魔力の属性が数倍に増幅して効果が出る仕組み。
クナイも同じで魔力を込めて投擲したりして使用するが、手裏剣との違いは呪文を唱えると発動する仕組みが備わっている。
主にクナイの数と投げて配置により、様々な大規模な魔法陣の発動が可能。
最後の短剣は魔力を込めると、その属性が剣に出る仕組みで、何処の武器屋で売っている品物と効果は変わらないが大成が造った短剣には魔力増幅能力がついており、市販されている物より威力が比べ物にならないほどに高い。
だが、この武器には弱点がある。
もともと、膨大な魔力の持ち主が使用すると、武器が膨大な魔力に耐えきれずに壊れるということ。
あと練習方法が記載されている本は、基本的な練習方法だけでなく、クナイで魔法陣を発動させるための配置なども細かく記載されている。
「なるほどね。大成君は、ただの脳筋じゃなく頭も良いのね。しかも、雷属性はイメージが難しいから、他の属性よりも弱いと言われ続けてきたけど。その武器があれば、十分に汚名返上できるわね」
イシリアは、大成を惚れ直した。
「そうだね。私もダーリンの武器に出会わなければ、今も魔法を使用しないまま戦っていたと思う」
この世界では雷属性が一番イメージが難しいので、威力が弱く発動も遅いので使えない属性との認識が常識になっていた。
術者の中には、極めている強者もいるが滅多にいないのが現状だった。
理由は簡単で、魔法の威力は魔力だけでなく想像も必要なので、雷魔法は他の魔法と比べて想像できにくので自身の体に直に受けてみようとするのだが、ビリビリする物は自然の雷か魔物ぐらいしかいないためだった。
自然の雷を受けたら確実にほぼ死ぬので、魔物しかいない。
だが、この辺りの魔物だとビリビリというより、ちょっとビリッとした威力の攻撃しかしてこない。
結局、どうしてもイメージが湧かないということで、どうしても威力が弱くなるのだ。
だから、マキネは今まで魔法を使用しないで、武術だけで戦ってきた。
しかし、大成とルーニングの戦いを見てイメージができる様になったことが一番成長できた要因だった。
マキネとイシリアは、マキネの魔法を見て呆然と立ち尽くしている残りの騎士団達に襲い掛かり全員を取り押さえた。
「よっと、これで終わったね。イシリア、早くダーリンの所に行こうよ」
マキネは電撃を帯びた短剣で最後の騎士団を倒し、イシリアに振り向いた。
「ええ、そうね」
「あっ、そういえば、こっちに来た人って誰かな?」
「そういえば、大成君がそんなこと言っていたわね。おそらく、副総隊長とか呼ばれていた人だと思うけど、何処かしら?」
マキネとイシリアは、副総隊長であるタトスを探した。
そして、イシリアが地面に倒れているタトスを見つけた。
「あっ、居たわマキネ。服装が他の人よりも立派だから、多分、この人だと思うけど…」
タトスの姿を見たイシリアは、言い淀んだ。
タトスはイシリアにあっちこっちレイピアで刺されており、まるで拷問されたかの様な状態になっており見るのも痛々しいほどの姿だった。
「……。」
流石のマキネもタトスの姿を見た瞬間、何も言葉がでなかった。
とりあえず魔法でタトスと騎士団達を拘束したマキネとイシリアは、大成を探しに向かった。
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