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小さな国ニラミスと少女ユピア
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【ラゴゥバルサ国付近】
ニールは大成達をラゴゥバルサ国に案内し、大成達は離れた崖の上からラゴゥバルサ国を見下ろしていた。
「あれが、ラゴゥバルサ国か…。思っていたより大きい国だな」
大成は額に手を当て、ラゴゥバルサ国の建物や地形を確認する。
「はい」
ニールは、頷きながら肯定する。
「「やはり、我々も手伝います」」
騎士団達は、一斉に片膝を地面につけて大成に敬礼した。
その瞬間、大成は騎士団達に振り向いた。
「俺は1人で十分だと言ったはずだ。俺を信用できないのか?」
「「ひっ、も、申し訳ありません」」
騎士団達は、怯え謝罪をした。
大成は魔力、威圧感、殺気は出てないが、その瞳や纏う雰囲気は、騎士団に有無を言わせないほど恐怖を与えるには十分だった。
「た、大成、騎士団達は、あなたの心配しているだけなのよ」
怯みながらジャンヌは騎士団を庇った。
「すまない、気が立っていた」
大成は素直に謝罪をし、再びラゴゥバルサ国内じゃなけ、その周囲を見下ろした。
大成が気が立ってているのは、自分達より先に他国の兵士達が500人ほど近くに待機しているのだが、いつまで経ったても一向に誰一人、動く気配がない。
(気配の消し方が下手なのと未だにこちらに気付いていないことを考えると、大した実力がない連中の集まりだとわかるが何故何もしないんだ?いつまで、そこでボーとしている?何がしたいんだ?勝てないと悟ってボーとしているだけなら他の国と共闘して戦おうとか思わないのか?)
大成は、色々と思いイライラしていた。
他にも2~4人組が4ヶ所ぐらい散らばっている。
こちらは、偵察だろうと考えられたが誰も何もしない状態であった。
そして、大成が一番イライラさせているのは、ここに来る途中の事件が主な原因だった。
【過去・ニラミス国付近】
ラゴゥバルサ国に来る途中、町ぐらいの大きさの小さな国があった。
「ニール、あれは町か?」
「あれは、ニラミスという国です。修羅様」
案内で先頭を進行していたニールは、大成に尋ねられたので振り向き敬礼して説明した。
「ニラミスか…。あんなに小さな国もあるんだな」
「そうです」
大成は少し興味を持ち、ニラミスを眺めながら進んでいたが何だか胸騒ぎがした。
「ニール、待て。お前達はここで、1度待機して休憩をとっていてくれ。俺1人で、少しニラミス国の様子を見てくる」
大成は、軍隊を止めて振り返りながら指示をする。
「畏まりました」
「わかったわ」
「わかりました」
「わかりましたわ」
おそらくニラミス国で何か事件が起きており、大成が気付いたのかと思ったニール、ジャンヌ、ウルミラ、シリーダは心配した表情で了承した。
「「了解」」
一方、騎士団達は、誰もがただの休憩だと思っていた。
大成は、急いでニラミス国へと向かった。
【過去・ニラミス国・北口門】
大成は、木の影から様子を窺い疑問に思った。
(何で、ここにラゴゥバルサの兵士達がいるんだ?)
門番の2人は、ニラミスの鎧ではなく、ラゴゥバルサの鎧を着ていたのだ。
(大した奴は居ないみたいだな。事情も聞くためにも、今回は正面から堂々と入るか)
大成はローブを鞄にしまい、旅人を演じて北口門に近づく。
「この国に何か用か?」
門番2人は、大成に気付き尋ねる。
「ん?あれ?あの、何故ここにラゴゥバルサ国の皆さんが?ここは、ニラミス国だったと思いますけど?」
大成は首を傾げながら尋ねる。
笑いながら門番は抜刀する。
「一昨日から、ニラミス国は我々の国。ラゴゥバルサの国になったのさ。それと、可愛そうだが秘密事項を知ったお前を生かして帰すことはできない。だが、そうだな…。選択肢を与えてやろう。ここで今、死ぬか、一生この国で奴隷として生きるかだ。ナハハハ…」
「今日はこれで何人目か?まぁ、奴隷は増えるのは良いが、俺は遊べる女の方が良いな。ワハハハ…」
「ちげぇーねや。ナハハハ…」
門番2人は盛大に笑った。
「なるほど。では、もう1つ選択肢を作っても良いですか?」
「ん?先に言っとくが、持ち金を全部出すから見逃して下さいは駄目だぞ。ワハハハ…」
「いえ、違います」
「では、何だ?他にどんな選択肢があるというんだ?ナハハハ…」
「それはですね。ここで…お前達を殺すという選択肢だ。死ね」
笑顔を浮かべた大成の表情が一変した。
「「ぐぁっ…」」
大成は右手に魔力を集中させて村雨を発動し、門番2人に何もさせないまま斬り捨てた。
門番2人を殺した大成は、急いで中に入った。
【過去・ニラミス国・北側付近】
ニラミスの国民がラゴゥバルサの兵士達に囲まれ、食糧など荷台に積み込みをしていた時、1人の少女がラゴゥバルサの兵士に襲われていた。
「い、嫌~!離して!お父さん、お母さん助けてぇ~!」
少女ユピアは、強引に兵士達に連れ去れそうになり、家の柱にしがみついて必死に抵抗し助けを求めていた。
「た、頼む、娘には何もしないでくれ!」
「だ、誰か娘を助けて下さい!」
少女の両親は必死に助けようとしたがラゴゥバルサ兵士達に地面に倒され押し付けられており、ニラミス国の人達は怖じ気づいて視線を逸らして誰も動かなかった。
「糞!離せ!娘に手を出すな!」
押さえつけられている父親は、一生懸命に必死にもがく。
「チッ、こいつはウザイな。見せしめに殺すとするか」
兵士の1人が腰にかけていた剣を抜き、父親へと近づいていく。
「ゆ、ユピアは、何でも言うこと聞くから、お父さんとお母さんを殺さないで!お願い!お願いします!」
泣きながら娘・ユピアは懇願した。
「良い心がけだ。しかし、残念だが、お前の父親は見せしめになってもらおう」
兵士は笑いながら剣を両手で持って頭上に振り上げた。
そして、剣を振り下ろそうとする。
「死ねぇ!」
「嫌~!」
ユピアは目を瞑り叫び、ニラミス国の人達も皆が目を瞑った。
「「うぁ」」
「「ぎゃ」」
「ぐぁっ」
男達の悲鳴が聞こえた。
「うっ、うぐっ、お父さん…」
恐る恐るユピアは目を開いた。
ユピアが見えた光景は、父親に剣を振り下ろそうとしたラゴゥバルサの兵士の背後に、黒いローブを羽織った大成がおり、大成の手が兵士の胸を貫通していた。
大成は手を抜き、刺された兵士はその場に倒れた。
大成は腕を振り、手についた血を飛ばした。
倒れた兵士の周りには、両親を押さえつけていたラゴゥバルサ兵士も血を流しながら倒れていた。
両親も周りの皆も目の前の光景が理解できず、ただ呆然としており場は静まり返っていた。
「修羅様…?」
ユピアは、魔力を纏う大成の顔に見覚えがあった。
家族で隣国のラーバスの祭に行った時、そこでラーバスの魔王を決める大会もあると知り、ついでに見に行ったのだ。
自分より少し年上の少年なのに、大人達を次々に倒していく。
その姿を見た時、この世界を変えてくれる人かもしれないとユピアは感じていた。
「お前達は大人しく、あの世に帰れ。グリモア・ブック」
大成は冷徹な瞳になり、右手には村雨を発動したままグリモアを召喚した。
「なっ、何だ?このガキは、アイス・ミ…」
兵士1人が大成の不気味さを感じとり接近戦を止め、大成に向かって魔法を唱えようとする。
「遅い」
だが、大成は一瞬で間合いを詰め、兵士の首を切断した。
「アース・ウェイブ・ニードル」
大成は地面に手をつき、続けて土魔法アース・ウェイブ・ニードルを唱え発動した。
その瞬間、地面から針が出現しながらラゴゥバルサの兵士達に向かう。
「「うぉっ!」」
「「ぎゃーっ」」
兵士の何人かは横に跳び回避したが、回避できなかった兵士は串刺しになり息絶えた。
「調子にのるなよ、ガキが!」
兵士の1人が、胸に掛けてある笛を取り鳴らす。
沢山の建物や路地から兵士達が、あちらこちらと出てきて続々と集まる。
「ガ、ガキを殺せぇ~!」
笛を鳴らした兵士は、指示を出した。
「ウォォ~!」
次々に、大成に襲いかかるラゴゥバルサの兵士達。
大成は後ろを振り向き、建物に向かってジャンプし三角飛びで、ユピアの元へ一気に駆けつけた。
「な、何だと!?」
「くっ」
「「ぐぁ」」
ユピアを連れ去らおうとしたラゴゥバルサの兵士達は腰に掛けてある剣を抜こうとしたが、その前に大成に斬られた。
「あ、あの、あ、ありがとうございます…」
ユピアは、両手で大成の手を握り頬を赤く染め感謝した。
「気にすることはないよ。それより、ここから早くはなれて」
「う、うん」
大成に言われてユピアは慌てて離れ、大成は人の気配がない場所へと向かう。
「に、逃げたぞ!」
「追え~!」
「何としても、殺せ!」
ラゴゥバルサ兵士達は、逃げる大成を追いかけた。
【過去・ニラミス国・東側付近】
大成は、ラゴゥバルサの兵士達がついてこられる速さで暫く走り、家の角を曲がった所で立ち止まった。
「「待ちやがれ!」」
「や、やっと追い詰めたぜ」
ラゴゥバルサの兵士達は息を切らし、肩を上下に動かしていた。
「わざわざ、追って来てくれて助かる。ここには、俺とお前達しか居ない」
「それが、どうした?」
「いや、フッと思いついたことがあってな。周りにニラミス国の人達がいたら巻き込む恐れがあった。ここでなら、安心して試すことができる」
大成は教えながら、再び右手に村雨を発動した。
だが、大成は更に魔力を村雨に注ぎ込むと、村雨がスーと伸びていき8メートルの長さになった。
「う、嘘だろ…」
「「に、逃げろ~!」」
ラゴゥバルサの兵士達は、一斉に後ろに振り向いて逃げようとした。
「逃がすわけがないだろ。死ね」
大成は、巨大化した村雨を横に振った。
「「ひっ…」」
「「ぐぁっ…」」
大成の村雨の前では、ラゴゥバルサの兵士達の剣も鎧も意味をなさず兵士達を一網打尽した。
その後、ニラミスの人達は少し怯えながら、大成の傍に集まり感謝した。
「この度は、国を救って頂き、誠にありがとうございます。私は、この国、ニラミス国の王ジェミラと申します。あ、あなた様は、近日ラーバスの魔王にお成りになった。魔王修羅様ですか?」
国王と名乗ったお爺さんのジェミラ。
「そうだが。それより、説明してくれないか?」
「はい。わかりました」
ゆっくりと頷いたジェミラは、深刻な表情に変わり話し出した。
ジェミラの話を聞くと、一昨日にラゴゥバルサ国の兵士達に襲われ食糧やお金などの物資を奪われた。
そして、国内の強い男達は、自らラゴゥバルサの仲間となり女性は襲われた。
定期的に物資を渡さないと滅ぼすと脅され、他国に助けを求めようとしても見張りが居り、この国の者ではなくとも外出が出来なくなったとのことだった。
「なるほど。もう、ラゴゥバルサ国の兵士達はいなくなった。すまないが、俺は急用があるから、これで…」
「何処か、行かれるのですか?」
ジェミラは、大成に少しでも滞在して貰い、この国を守って欲しかった。
「今から、ラゴゥバルサ国を滅ぼしに行く予定だ。だから、今は時間が惜しい。そういうことだ、そろそろ行く」
大成はバルダー達、ラゴゥバルサ国を制圧するために立ち去った。
ジェミラ達は、一国を滅ぼすと聞いて驚きを通り越して時が止まったかの様に立ち尽くしていた。
【ラゴゥバルサ国付近】
大成はラゴゥバルサ国に来る途中に、そんなこともあったので、他国も被害にあっていると思ったら、何故、何も行動しない兵士達に気が立った。
「やはり、あいつらは動く気配が全くないか…。それなら、そろそろ行くか」
他国の兵士達は動く気配が全くなかった。
(アイツら、何のために来ているんだ?)
大成は、ウォーミングアップしながら思った。
「大成、油断は禁物よ。気をつけなさい」
ジャンヌと皆は、大成を心配した。
「ああ、大丈夫だ。だから、心配する必要はない。じゃあ、行ってくる。よっと…」
大成は、気配を完全に消して崖から飛び降りた。
「グリモア・ブック。エア・クッション」
大成は、地面が近づいた瞬間、風魔法エア・クッションを唱え発動した。
足元に圧縮した空気の層を作り出し、落下スピードを殺して着地した。
「ローケンス様、ほ、本当に修羅様、お一人で大丈夫なのでしょうか?」
騎士団が、ローケンスに尋ねる。
「今日は月は雲に覆われ、奇襲をするには良い。それに、お前達も修羅様と少しだけだが、ナイディカの森の近くで戦っただろう」
ローケンスは、自分の隊の騎士団達に思い出させた。
「は、はい。確かに…。修羅様には、我々が何人、いえ何百人束になっても勝てそうにありませんでした」
あの時の騎士団達は、大成の殺気だけで死を実感させられて気絶する者、腰が抜ける者、体が震えて動けない者しか居らず、まともに動けた者は皆無だった。
殺されるのを、ただ待つことしかできずにいた。
あの時の絶望的な恐怖を再び思い出し、背筋がゾッとし体が震えた。
「そういうことだ」
ローケンスは、頷きながら肯定した。
ジャンヌ、ウルミラ、マキネ、イシリアの4人は、瞳を閉じて胸元の前で両手を握り締め、大成の無事を祈る。
大成を信用しているが、それでも心配だった。
ニールは大成達をラゴゥバルサ国に案内し、大成達は離れた崖の上からラゴゥバルサ国を見下ろしていた。
「あれが、ラゴゥバルサ国か…。思っていたより大きい国だな」
大成は額に手を当て、ラゴゥバルサ国の建物や地形を確認する。
「はい」
ニールは、頷きながら肯定する。
「「やはり、我々も手伝います」」
騎士団達は、一斉に片膝を地面につけて大成に敬礼した。
その瞬間、大成は騎士団達に振り向いた。
「俺は1人で十分だと言ったはずだ。俺を信用できないのか?」
「「ひっ、も、申し訳ありません」」
騎士団達は、怯え謝罪をした。
大成は魔力、威圧感、殺気は出てないが、その瞳や纏う雰囲気は、騎士団に有無を言わせないほど恐怖を与えるには十分だった。
「た、大成、騎士団達は、あなたの心配しているだけなのよ」
怯みながらジャンヌは騎士団を庇った。
「すまない、気が立っていた」
大成は素直に謝罪をし、再びラゴゥバルサ国内じゃなけ、その周囲を見下ろした。
大成が気が立ってているのは、自分達より先に他国の兵士達が500人ほど近くに待機しているのだが、いつまで経ったても一向に誰一人、動く気配がない。
(気配の消し方が下手なのと未だにこちらに気付いていないことを考えると、大した実力がない連中の集まりだとわかるが何故何もしないんだ?いつまで、そこでボーとしている?何がしたいんだ?勝てないと悟ってボーとしているだけなら他の国と共闘して戦おうとか思わないのか?)
大成は、色々と思いイライラしていた。
他にも2~4人組が4ヶ所ぐらい散らばっている。
こちらは、偵察だろうと考えられたが誰も何もしない状態であった。
そして、大成が一番イライラさせているのは、ここに来る途中の事件が主な原因だった。
【過去・ニラミス国付近】
ラゴゥバルサ国に来る途中、町ぐらいの大きさの小さな国があった。
「ニール、あれは町か?」
「あれは、ニラミスという国です。修羅様」
案内で先頭を進行していたニールは、大成に尋ねられたので振り向き敬礼して説明した。
「ニラミスか…。あんなに小さな国もあるんだな」
「そうです」
大成は少し興味を持ち、ニラミスを眺めながら進んでいたが何だか胸騒ぎがした。
「ニール、待て。お前達はここで、1度待機して休憩をとっていてくれ。俺1人で、少しニラミス国の様子を見てくる」
大成は、軍隊を止めて振り返りながら指示をする。
「畏まりました」
「わかったわ」
「わかりました」
「わかりましたわ」
おそらくニラミス国で何か事件が起きており、大成が気付いたのかと思ったニール、ジャンヌ、ウルミラ、シリーダは心配した表情で了承した。
「「了解」」
一方、騎士団達は、誰もがただの休憩だと思っていた。
大成は、急いでニラミス国へと向かった。
【過去・ニラミス国・北口門】
大成は、木の影から様子を窺い疑問に思った。
(何で、ここにラゴゥバルサの兵士達がいるんだ?)
門番の2人は、ニラミスの鎧ではなく、ラゴゥバルサの鎧を着ていたのだ。
(大した奴は居ないみたいだな。事情も聞くためにも、今回は正面から堂々と入るか)
大成はローブを鞄にしまい、旅人を演じて北口門に近づく。
「この国に何か用か?」
門番2人は、大成に気付き尋ねる。
「ん?あれ?あの、何故ここにラゴゥバルサ国の皆さんが?ここは、ニラミス国だったと思いますけど?」
大成は首を傾げながら尋ねる。
笑いながら門番は抜刀する。
「一昨日から、ニラミス国は我々の国。ラゴゥバルサの国になったのさ。それと、可愛そうだが秘密事項を知ったお前を生かして帰すことはできない。だが、そうだな…。選択肢を与えてやろう。ここで今、死ぬか、一生この国で奴隷として生きるかだ。ナハハハ…」
「今日はこれで何人目か?まぁ、奴隷は増えるのは良いが、俺は遊べる女の方が良いな。ワハハハ…」
「ちげぇーねや。ナハハハ…」
門番2人は盛大に笑った。
「なるほど。では、もう1つ選択肢を作っても良いですか?」
「ん?先に言っとくが、持ち金を全部出すから見逃して下さいは駄目だぞ。ワハハハ…」
「いえ、違います」
「では、何だ?他にどんな選択肢があるというんだ?ナハハハ…」
「それはですね。ここで…お前達を殺すという選択肢だ。死ね」
笑顔を浮かべた大成の表情が一変した。
「「ぐぁっ…」」
大成は右手に魔力を集中させて村雨を発動し、門番2人に何もさせないまま斬り捨てた。
門番2人を殺した大成は、急いで中に入った。
【過去・ニラミス国・北側付近】
ニラミスの国民がラゴゥバルサの兵士達に囲まれ、食糧など荷台に積み込みをしていた時、1人の少女がラゴゥバルサの兵士に襲われていた。
「い、嫌~!離して!お父さん、お母さん助けてぇ~!」
少女ユピアは、強引に兵士達に連れ去れそうになり、家の柱にしがみついて必死に抵抗し助けを求めていた。
「た、頼む、娘には何もしないでくれ!」
「だ、誰か娘を助けて下さい!」
少女の両親は必死に助けようとしたがラゴゥバルサ兵士達に地面に倒され押し付けられており、ニラミス国の人達は怖じ気づいて視線を逸らして誰も動かなかった。
「糞!離せ!娘に手を出すな!」
押さえつけられている父親は、一生懸命に必死にもがく。
「チッ、こいつはウザイな。見せしめに殺すとするか」
兵士の1人が腰にかけていた剣を抜き、父親へと近づいていく。
「ゆ、ユピアは、何でも言うこと聞くから、お父さんとお母さんを殺さないで!お願い!お願いします!」
泣きながら娘・ユピアは懇願した。
「良い心がけだ。しかし、残念だが、お前の父親は見せしめになってもらおう」
兵士は笑いながら剣を両手で持って頭上に振り上げた。
そして、剣を振り下ろそうとする。
「死ねぇ!」
「嫌~!」
ユピアは目を瞑り叫び、ニラミス国の人達も皆が目を瞑った。
「「うぁ」」
「「ぎゃ」」
「ぐぁっ」
男達の悲鳴が聞こえた。
「うっ、うぐっ、お父さん…」
恐る恐るユピアは目を開いた。
ユピアが見えた光景は、父親に剣を振り下ろそうとしたラゴゥバルサの兵士の背後に、黒いローブを羽織った大成がおり、大成の手が兵士の胸を貫通していた。
大成は手を抜き、刺された兵士はその場に倒れた。
大成は腕を振り、手についた血を飛ばした。
倒れた兵士の周りには、両親を押さえつけていたラゴゥバルサ兵士も血を流しながら倒れていた。
両親も周りの皆も目の前の光景が理解できず、ただ呆然としており場は静まり返っていた。
「修羅様…?」
ユピアは、魔力を纏う大成の顔に見覚えがあった。
家族で隣国のラーバスの祭に行った時、そこでラーバスの魔王を決める大会もあると知り、ついでに見に行ったのだ。
自分より少し年上の少年なのに、大人達を次々に倒していく。
その姿を見た時、この世界を変えてくれる人かもしれないとユピアは感じていた。
「お前達は大人しく、あの世に帰れ。グリモア・ブック」
大成は冷徹な瞳になり、右手には村雨を発動したままグリモアを召喚した。
「なっ、何だ?このガキは、アイス・ミ…」
兵士1人が大成の不気味さを感じとり接近戦を止め、大成に向かって魔法を唱えようとする。
「遅い」
だが、大成は一瞬で間合いを詰め、兵士の首を切断した。
「アース・ウェイブ・ニードル」
大成は地面に手をつき、続けて土魔法アース・ウェイブ・ニードルを唱え発動した。
その瞬間、地面から針が出現しながらラゴゥバルサの兵士達に向かう。
「「うぉっ!」」
「「ぎゃーっ」」
兵士の何人かは横に跳び回避したが、回避できなかった兵士は串刺しになり息絶えた。
「調子にのるなよ、ガキが!」
兵士の1人が、胸に掛けてある笛を取り鳴らす。
沢山の建物や路地から兵士達が、あちらこちらと出てきて続々と集まる。
「ガ、ガキを殺せぇ~!」
笛を鳴らした兵士は、指示を出した。
「ウォォ~!」
次々に、大成に襲いかかるラゴゥバルサの兵士達。
大成は後ろを振り向き、建物に向かってジャンプし三角飛びで、ユピアの元へ一気に駆けつけた。
「な、何だと!?」
「くっ」
「「ぐぁ」」
ユピアを連れ去らおうとしたラゴゥバルサの兵士達は腰に掛けてある剣を抜こうとしたが、その前に大成に斬られた。
「あ、あの、あ、ありがとうございます…」
ユピアは、両手で大成の手を握り頬を赤く染め感謝した。
「気にすることはないよ。それより、ここから早くはなれて」
「う、うん」
大成に言われてユピアは慌てて離れ、大成は人の気配がない場所へと向かう。
「に、逃げたぞ!」
「追え~!」
「何としても、殺せ!」
ラゴゥバルサ兵士達は、逃げる大成を追いかけた。
【過去・ニラミス国・東側付近】
大成は、ラゴゥバルサの兵士達がついてこられる速さで暫く走り、家の角を曲がった所で立ち止まった。
「「待ちやがれ!」」
「や、やっと追い詰めたぜ」
ラゴゥバルサの兵士達は息を切らし、肩を上下に動かしていた。
「わざわざ、追って来てくれて助かる。ここには、俺とお前達しか居ない」
「それが、どうした?」
「いや、フッと思いついたことがあってな。周りにニラミス国の人達がいたら巻き込む恐れがあった。ここでなら、安心して試すことができる」
大成は教えながら、再び右手に村雨を発動した。
だが、大成は更に魔力を村雨に注ぎ込むと、村雨がスーと伸びていき8メートルの長さになった。
「う、嘘だろ…」
「「に、逃げろ~!」」
ラゴゥバルサの兵士達は、一斉に後ろに振り向いて逃げようとした。
「逃がすわけがないだろ。死ね」
大成は、巨大化した村雨を横に振った。
「「ひっ…」」
「「ぐぁっ…」」
大成の村雨の前では、ラゴゥバルサの兵士達の剣も鎧も意味をなさず兵士達を一網打尽した。
その後、ニラミスの人達は少し怯えながら、大成の傍に集まり感謝した。
「この度は、国を救って頂き、誠にありがとうございます。私は、この国、ニラミス国の王ジェミラと申します。あ、あなた様は、近日ラーバスの魔王にお成りになった。魔王修羅様ですか?」
国王と名乗ったお爺さんのジェミラ。
「そうだが。それより、説明してくれないか?」
「はい。わかりました」
ゆっくりと頷いたジェミラは、深刻な表情に変わり話し出した。
ジェミラの話を聞くと、一昨日にラゴゥバルサ国の兵士達に襲われ食糧やお金などの物資を奪われた。
そして、国内の強い男達は、自らラゴゥバルサの仲間となり女性は襲われた。
定期的に物資を渡さないと滅ぼすと脅され、他国に助けを求めようとしても見張りが居り、この国の者ではなくとも外出が出来なくなったとのことだった。
「なるほど。もう、ラゴゥバルサ国の兵士達はいなくなった。すまないが、俺は急用があるから、これで…」
「何処か、行かれるのですか?」
ジェミラは、大成に少しでも滞在して貰い、この国を守って欲しかった。
「今から、ラゴゥバルサ国を滅ぼしに行く予定だ。だから、今は時間が惜しい。そういうことだ、そろそろ行く」
大成はバルダー達、ラゴゥバルサ国を制圧するために立ち去った。
ジェミラ達は、一国を滅ぼすと聞いて驚きを通り越して時が止まったかの様に立ち尽くしていた。
【ラゴゥバルサ国付近】
大成はラゴゥバルサ国に来る途中に、そんなこともあったので、他国も被害にあっていると思ったら、何故、何も行動しない兵士達に気が立った。
「やはり、あいつらは動く気配が全くないか…。それなら、そろそろ行くか」
他国の兵士達は動く気配が全くなかった。
(アイツら、何のために来ているんだ?)
大成は、ウォーミングアップしながら思った。
「大成、油断は禁物よ。気をつけなさい」
ジャンヌと皆は、大成を心配した。
「ああ、大丈夫だ。だから、心配する必要はない。じゃあ、行ってくる。よっと…」
大成は、気配を完全に消して崖から飛び降りた。
「グリモア・ブック。エア・クッション」
大成は、地面が近づいた瞬間、風魔法エア・クッションを唱え発動した。
足元に圧縮した空気の層を作り出し、落下スピードを殺して着地した。
「ローケンス様、ほ、本当に修羅様、お一人で大丈夫なのでしょうか?」
騎士団が、ローケンスに尋ねる。
「今日は月は雲に覆われ、奇襲をするには良い。それに、お前達も修羅様と少しだけだが、ナイディカの森の近くで戦っただろう」
ローケンスは、自分の隊の騎士団達に思い出させた。
「は、はい。確かに…。修羅様には、我々が何人、いえ何百人束になっても勝てそうにありませんでした」
あの時の騎士団達は、大成の殺気だけで死を実感させられて気絶する者、腰が抜ける者、体が震えて動けない者しか居らず、まともに動けた者は皆無だった。
殺されるのを、ただ待つことしかできずにいた。
あの時の絶望的な恐怖を再び思い出し、背筋がゾッとし体が震えた。
「そういうことだ」
ローケンスは、頷きながら肯定した。
ジャンヌ、ウルミラ、マキネ、イシリアの4人は、瞳を閉じて胸元の前で両手を握り締め、大成の無事を祈る。
大成を信用しているが、それでも心配だった。
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