異世界から魔王候補として召喚された

フミナベ

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ギガントと審判の剣

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【クラスマッチ】

女子の魔法カードバトルも無事にジャンヌ達も優勝し、男女の魔法カードバトルが終わった。

次の競技は射的と同進行のペア戦があるので、大成は出場登録するために南側の競技会場に向かっていた。



【南の会場】

「何とか優勝したのは良いけど、思っていたよりも僕は嫌われているな」
大成は、ランドニーから握手を拒否されたことを思い出して苦笑いを浮かべる。


大成は、最後のランドニーの言葉が気になっていた。

(朝からずっと魔法カードバトルの時も、そして、今も見られているな。いや、監視されていると言った方が良いか。相手がいる方角はわかるけど、これほど周りに沢山の人達が居たら誰なのか判別するのは難しいな)
大成は相手の気配の消し方で結構な実力者だと知り、向こうから仕掛けて来ないので無闇に捜索すると周りに被害が出るかもしれないので放置している。


(ランドニー先生と関係ある可能性は高いな。それに、ジャンヌ達と離れて自然にわざと隙を作っているのに襲ってこないところをみると仲間との合流を待っているのか、それとも、こちらの実力を見極めようとしているのか、あとは競技中に仕掛ける予定なのか、ただの偵察だけなのかのどれかだな)
大成は考えながら警戒を怠らないまま歩き、選手の控え室でルネルと待ち合わせしていたので向かった。

「大和君、こっちだよ!」
大成を見つけたルネルは、手を大きく振りながら呼び掛ける。

「ごめん、待たせたかな?」

「ううん、大丈夫よ。私も今さっき来たところだから。それより、こっちよ大和君」
ルネルは、頬赤く染めながら大成の手を取り受付に向かった。


受付には大勢の生徒達が集まっており、大成達も並ぶ。

そして、やっと大成達の番がきた。

「大和君、ここにサインするのよ」
ルネルと大成は、出場名簿にサインする。

サインしている大成に気付いた生徒達は、大成に注目していた。

「あれが、噂の例の人間だな」

「そうみたいね。だけど、大したことなさそうね」

「ああ、やっぱり、マーケンスやイシリアに勝ったっていう噂はただの噂だったみたいだな」
周りからヒソヒソと小さな声で会話をしているのが聞こえる。


そんな中、サインしているルネルは嬉しそうに小さく笑っていた。

「フフフ…。あとで皆の驚く顔が見られるわね。大和君」

「僕は、あまり目立ちたくないけど」
全力は出さないが、それでも実力を見せるのは好きではない大成は溜め息をする。

「大和君らしいわね。でも、普通こういう大きな晴れ舞台は目立った方が良いよ。将来、騎士団から推薦がきたり、騎士団に入団しやすくなったり、希望した職業の内定が決まりやすくなるから」
ルネルは口元に手を当て、クスクスと笑いながら説明する。

「そうなんだ。でも、僕は普通ぐらいで良いかな。あまり、目立つと敵が増えそうだし。でも、試合は真面目にするよ」
「言わなくても大和君は手を抜かないって、知っているから大丈夫よ」
大成とルネルは、サインをしてクジを引いた。


大成達は第1試合に決まり、ホワイトボードに大成達の名前が書かれた瞬間だった。

「よっしゃ~!確実に1勝だぜ」

「そうね。初戦の相手が落ちこぼれのクラスで良かったわ。緊張を解くのに最適な相手ね」
大成達の背後から男女2人の声がして振り向いた大成達。

「あの人達は?」
何を騒いでいるのかと思いながら、大成はルネルに振り向きながら尋ねた。

「フフフ…。私達と初戦で当たる5組よ。名前はナイサーとルナシーで、双子よ。2人とも魔力値5だから強いわ。でも、馬鹿にされるのは我慢できないわね。私達との闘いを忘れない思い出にしてやりましょう。ねぇ、大和君。フフフ…」
ルネルは威圧感が増し、笑顔なのだが目が笑っていなかった。
いや、ギラついていた。

「う、うん。そうだね」
(忘れない思い出にって、拷問でもするのかな…)
とりあえず、ルネルに話を合わせた大成は苦笑いした。

そして、大成達は1回戦なのでリングに向かう。



【リング】

リングの隣に多くの武器が用意されており、大成達は武器を選んでいた。

今回使用する武器は、大成は木のナイフ20本を取り、2本は両手に持ち、残りはポシェットの中に入れた。
ルネルは木の剣を選び、素振りをして感覚を確認していた。

「ねぇ、ところで大和くん。そんなに、ナイフ持って何に使うの?」
大成が沢山のナイフをポシェットに入れていたので、ルネルは気になった。

「まぁ、いろいろとね」

「いろいろねぇ」
ルネルは笑みを浮かべて、それ以上何も聞かなかった。



大成は、リングに上がり周りを見渡す。

「あれ?」
リングには、まだ対戦相手の5組の姿が見えなかった。
観客達もザワザワと騒ぎだしている。

大成がジャッジの先生に聞こうとした時、観客席から声がした。

「「トォ!」」
観客席から身体強化したナイサーとルナシーが高く跳びクロスしながら前宙をし、その軌道の真ん中から担任のマイクも高く跳び空中でムーンサルトを決めリングに着地した。

「「5組、ブラック・ジャスティス!ここに参上!」」
((決まった!))
リングの上で、息の合った掛け声とポーズを決めたマイク達は満足した表情を浮かべる。

だが、会場はシーンと静まり返っていた。


(これは、ツッコミを入れるべきか…)
どうするか悩んだ大成は、とりあえずジャッジの先生に向き、どうするかの対応を待つことにした。

ジャッジをしている先生も呆気に捕らわれていたが、大成の視線に気付いて直ぐに我に返った。

「え、えっと、ゴッホン。それでは揃いましたので早速、試合を始めたいと思います。代表者の選手は前へ」
ジャッジの先生は苦笑いをし、進行を進めることにした。

マイク達は、周りの反応に物足りなさそうな表情をしながら仕方なく前へ出る。

大成達も前へ進み、それぞれ握手をした。

マイクは大成と握手した時、怪訝な顔になり何かに気が付いた様だった。

「ん?君…」

「な、何でしょうか?マイク先生」

「その手、マメが沢山のあり皮が分厚くなっている。まさに、努力している者の手だ。良い手だ!」

「いえ…その…ありがとうございます」
大成は強さを偽っていることに気が付かれたと思い、内心ドキドキしながらお礼を言った。

「ワハハハ…。隠す必要はないぞ!魔力値が低いことを理由にし、すぐ諦める奴は嫌いだが、諦めずに努力し続ける頑張る奴は好きだ。いや、大好きだぞ!どうだ俺のクラスに来ないか?俺のクラスは、魔力値が低いでも馬鹿にする奴はいないぞ」
マイクは、盛大に笑いながら大成を勧誘する。

マイクの言葉を聞いたナイサーとルナシーは、ビックと肩を震わした。


「嬉しいのですが、今のクラスも見くびる人は居ないので遠慮させて頂きます。お誘いありがとうございます、マイク先生」
大成は魔王という正体がバレずに済み、内心ホッとしながら笑顔で答える。

ナイサーとルナシーは、大成に報告されるかと思ったが大成の言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろした。


「そうか、それは残念だ。だが、俺のクラスに来たくなったらいつでも言ってくれ。いつでも歓迎するぞ」
マイクは白い歯を見せ、人差し指と中指を立てて額の前にピッと少し前に出した。

そして、後ろ振り向き自軍ベンチへと向かう。



「大和くん。正直に、受付で馬鹿にされたと言えば良かったと思うけど」
ルネルは、大成の耳元で不服そうな顔で言う。

「可哀想だったから、ついね…」

「フフフ…。やはり、大和君って優しいのね」
ルネルは苦笑いをする大成を見て、肩を1度下げて不服そうな顔から頬を緩めて笑顔を浮かべた。


「それでは、試合開始!」
ジャッジの先生が合図した瞬間、身体強化をしたナイサーとルナシーは、後ろに下がりながら魔法を唱えようとした。

それを阻止するかの様に大成は魔力で部分強化をしてナイサーに、ルネルは全身を強化してルナシーに接近する。

「ば、馬鹿な!この速さは魔力値2の強化を超えているぞ!?だが、それでも間に合うわけないだろ!」

「そうね」
ナイサーとルナシーは大成の動きの速さに驚いたが、それでも余裕があり魔法を唱えようとした。

ルネルは間に合わないと思い、どうするのか聞こうと大成の方を見る。

大成はルネルの視線に気付いて無言で頷き、ルネルは迷わずにそのまま全力でルナシーに迫る。

大成は、左右の手に握っている木のナイフを2人に投擲する。

「エア・カッ…」

「ファイヤー・ボー…」
ナイサーが握っている木の剣の周囲に風が少しだけ纏い、ルナシーの杖の先端に炎が渦巻く。

しかし、ナイサーとルナシーはあと少しで魔法が発動できる時に大成が投擲した木のナイフは物凄いスピードで迫ってきた。

「わぁっ」

「きゃっ」
ナイサーとルナシーは、慌てて飛んでくるナイフを避けたが集中力が切れてナイサーの木の剣に纏っていた風とルナシーの杖の先端に渦巻いていた炎は霧散して魔法の発動に失敗した。


大成は近づきながらポシェットの中から次々に木のナイフを投擲し、ナイサーとルナシーが魔法を唱える余裕をなくしていく。

「くっ、この!」

「しつこいわよ」
ナイサーとルナシーは、木のナイフをどうにか避けたり防いだりしているが魔法を唱えられずにいた。

「これでも喰らえ、エア・カッター!くっ、駄目か…」
痺れを切らしたナイサーは、風魔法エア・カッターを唱えたが発動できず不発に終わった。

魔法を使う時には、イメージ力、集中力、魔力コントロールが必要で、ただ唱えれば発動するわけではない。

そして、失敗した場合は不発に終わり魔力だけが消費する。


そして、ナイサーとルナシーの視線は木のナイフを投擲する大成に釘付けになり、完全にルネルのことを忘れてしまっていた。

ルネルは気配を消して、ルナシーの死角になっている真横から近づいていた。

「私を忘れないで欲しいわね!」

「え!?きゃっ!」
ルナシーはルネルの声を聞いて直ぐに振り向いたが、ルネルに剣の柄で鳩尾を殴られ倒れた。

「くそっ!」
ルナシーの悲鳴を聞いたナイサーは振り向く。

その隙を見逃さなかった大成は、ナイサーが木の剣を持っている右肘関節を狙って木のナイフを投擲して当てる。

「ぐっ…」
ナイサーは、大成の木のナイフが右肘に当たり右肘から右手にかけて痺れてしまい握っていた木の剣を地面に落とした。

「うぁ」
ナイサーは慌てて痺れた右肘を押さえた左手で剣を拾おうとしたが、大成の木のナイフが次々に体中に当たり痛みが我慢ができず離れようとしたがルネルに接近されており、目の前に木の剣の剣先を突きつけられた。

「これで、おしまいよ。どうする?まだする?」

「ま、参った…」
ナイサーは、両手を挙げて素直に負けを認めることしかできなかった。

魔法は不発になるほど追い込まれ、武器は落とされ、終いには接近されて何もできずに決着がついてしまった。

誰が見ても、ナイサーとルナシーの完全な敗北だった。

「勝者、2組チームイーター」
勝利宣言が響き、会場がざわついた。


観客達が盛り上がっている中、観客席には騎士団の上官達がおり1人1人の手元には書類の様な紙を持って評価をして推薦する人材を探していた。

「おいおい、魔法を使わないで勝ったぞ!?」

「ああ、それにしても、このルネルという少女はとても素晴らしいな。普通、素人や経験不足な冒険者や部下達だったら相手に接近する際にスピードを重視て最短距離を走る人が多いが、ルネルという少女は落ち着いて死角を走って接近するだけでなく、あの年で気配まで消すことができるとはな。技術もそうだが、冷静な判断力も大したものだ」

「そうですね。でも、私はこの大成君もセンスはあると思いました。大成君は魔力値は低い様ですが、それを部分強化で補ってました。あの部分強化は、修羅様に匹敵すると私は感じました」

「そうだな、でも、ルネルという少女と見比べたら劣っているのは確かだ。優先度は落ちるな」

「まぁ、そうですね」

「今年は、有能な人材が豊作ですな!」

「ああ」

「ええ」
騎士団の上官達は大成やルネルの動きを見て称賛して評価5点満点中、大成は3、ルネルは4を記載する。


そんな騎士団の上官達の近くを、偶然に通りかけていたマキネとシリーダは足を止めていた。

「あの人達、何様のつもりで上から目線で魔人の国の王である魔王修羅と言われているダーリンを評価してルネルって子より劣っているって…。馬鹿なの?私より弱いのに、ダーリンを馬鹿にして!」
会話を聞いていたマキネは、殺気までは出ていないが冷酷な瞳で騎士団の上官達を一瞥しながら冷え切った声で話した。

「お、落ち着いて、マキネちゃん。仕方ないわよ、修羅様はわざと弱者を演じているのだから。私達ぐらいの実力者じゃないと気付かないわ。だから、不機嫌にならないで。ねぇ、マキネちゃん」
シリーダは、マキネを諭す。


リングの上では…。

「あ、あのさ、その受付で言ったことは撤回する。すまなかった」
ナイサーは頭を下げ、大成とルネルに謝罪した。

「僕は特に気にしてなかったから、別に良いけど…」
受付の時、激怒していたルネルに大成は目線を向けた。

ナイサーも、大成と同じくルネルに視線を向ける。

「はぁ、仕方ないわね。許してあげるわ」
ルネルは、やれやれといった感じで肩を竦めた。

「ありがとう、本当にすまなかった。これからは、お前達のことは馬鹿にしない約束する」
ナイサーは感謝し、倒れているルナシーを担いでリングから離れた。

ナイサーがリングを降りた時、ルナシーはゆっくりと目を覚ました。

「私達、負けたのね…」
ルナシーがポッツリと呟き、2人の瞳から涙が溢れる。

マイクは、そんな2人に近づいた。

「「す、すみませんでした…マイク先生」」

「いや、試合には負けたが誇って良い試合だったぞ。ナイスファイトだった!得られるものもあっただろ?」
マイクは右手の親指を立てて自身の心臓部に当ててウィンクし、そして、ナイサーとルナシーを強く抱き締めた。

「「マイク先生…」」
ナイサーとルナシーは、マイクの胸に顔を押し付けて泣いた。

そして、3人は会場を跡にした。


そんなマイク達を、大成とルネルは呆然と見送った。

「なんか、とても暑苦しい人達だったけど。良い人だった…のかな?」

「そうね」
大成とルネルは、お互いに苦笑いを浮かべた。

会場から声援がある中、大成達は手を降りながら会場を跡にした。



【観客席】

観客席の入口の影から、大成の闘いを見ていた2つの影があった。

「魔力値が低いから魔法を使用せずに、代わりにナイフを投擲するのか…」
ドトールは、大成達の戦いを観戦しながら顎に手を当てて暗殺や殺害の手順を考えていた。

「ドトール、それだけじゃないわよ。ターゲットが身体強化した時、普通の全身強化ではなく部分強化だったわ。ごく稀に見るけど、あの歳でできる子は初めて見たわ。しかも、今まで見たことがないほどの精密さだったわね。魔力コントロールだけなら神童よ。まぁ、元々の魔力値が2だから所詮は4程度の性能が限界みたいわね。だから、今は大したことないけど、大人になれば魔力値が上がり勇者や英雄、魔王に成れたかも知れないわね。本当に可哀想ね」
ミシナが気の毒そうに言う。

「そうだな。だが、これも運命だ。仕方あるまい。ターゲットの近くには【ヘルレウス】がいる任務だから手こずるよりかは遥かにマシだしな」

「ウフフフ…。それは言えてるね」

「そろそろ移動するぞ、ミシナ」

「ええ、わかったわ」
ドトールとミシナが人混みに紛れようとした時、精神干渉魔法レゾンナスが発動し2人の頭の中に声が響いた。

「ドトール、ミシナ聞こえるか?」
相手は2人が所属している闇組織【ノルダン】のボス・ダビルドだった。

「はい、ダビルド様」

「はい、聞こえます。それで、どうされましたか?ボス」
ミシナとドトールは、片膝を床につけて対応する。

「すまないが、依頼主の意向により少し予定が変更になった。今、獲物がペア戦という競技に出ているはずだ。その競技中に、できるならば始末することになった。もし、失敗しても気にするな。まぁ、失敗した場合は【ヘルレウス】が動き出し面倒になるのは確かだが依頼主が考えた作戦だからな。お前達は、依頼主の言う通りに動けば良い。失敗しても、例え【ヘルレウス】が動き出しても午後から同胞30人と合流すれば確実にターゲットを始末でき、その後も逃げ切ることは可能だ」
ダビルドの話を聞き、そのあと作戦も聞いたドトールとミシナ。


「で、どうだ?依頼主の作戦通り動くか?断っても別に構わないぞ」

「「もちろん、します」」
ドトールとミシナは、やる気十分な声で答えた。

「わかった。急で、すまないが頼むぞ」

「「ハッ!」」
2人が返事をして、レゾンナスが解けた。

「楽しくなってきたわね」

「ああ、そうだなミシナ。お前の風魔法と俺の氷魔法が十分に生かせる作戦だしな」

「そうね。ウフフフ…」
ドトールとミシナは、クスクス笑いながら闇の中へ消えて行った。



【南会場】

その頃、大成はジャンヌ達と合流していた。

「大成、お疲れ様」

「大成さん、お疲れ様です」

「ダーリン、お疲れ様」

「大成君、お疲れ様」
ジャンヌ、ウルミラ、マキネ、イシリアが笑顔で大成を迎えた。

エターヌとユピアというと…。

エターヌはおばさんと、ユピアは両親と一緒に学園を回っていた。


「ところで大成。あなた、何で手を抜いたの?」
ジャンヌは、怪訝な顔をして尋ねた。

「そうよ、ナイサー君の時よ。大成君1人でも接近して倒せたでしょう?」
イシリアは身を乗り出し、ジャンヌに賛同する。

「ああ、そのことなら説明するよ。あと、皆に頼みがあるのだけど。まぁ、保険だけどね」

「「何?」」

「何ですか?」
ジャンヌ達は、大成に頼られていると感じがして嬉しく感じて弾んだ声を出す。

「ありがとう」
(あれ?頼みごとなのに、何でこんな嬉しそうな表情になるんだろう?普通なら嫌がるはずなのに?)
目を輝かせているジャンヌ達を見て訳がわからず、大成は苦笑いした。


「頼みごとというのは、ジャンヌ、ウルミラ、イシリアの3人でルネルを警護して欲しいんだ。そして、マキネには…」
大成は自分が監視されていることを説明し、標的は自分だと判断したが、念のためルネルの警護を頼むことにした。

「「なるほどね」」

「わかりました」
ジャンヌ達は、笑顔で快く引き受けた。

「お礼は、僕が出来ることなら何でもするということで良いかな?」

「え!?本当!ダーリン!なら、私はダーリンの子供が欲しいな。だから、子作りがいい!」
マキネは、目を輝かせながら話す。

「「なっ!!」」
マキネの発言に皆は顔を真っ赤にして驚きの声を上げた。

「そ、それは、法律的に年齢が足らないから…」

「愛さえあれば、法律や年齢なんて関係ないよ。ダーリン!」
たじろぐ大成に、マキネの追撃が襲う。

「だ、駄目よ!せめて、デートにしなさい!」

「そうよ、マキネ」

「そうです、マキネさん」
ジャンヌが止めに入り、イシリアとウルミラが肯定する。

「え~、何で反対するのかわからないのだけど。ジャンヌ達もダーリンと子作りすれば良いのに」

「「~っ!!」」
マキネの発言に、ジャンヌ達は真っ赤だった顔をさらに真っ赤にし口をパクパクさせた。

それから、どうにかマキネを説得し、皆はデートすることになった。


「あっ、そろそろ2回戦が始まるから行ってくるよ。あとは頼んだよ。皆」

「手を抜いて、負けたら承知しないわよ。大成」

「頑張って下さい。大成さん」

「優勝してね。ダーリン」

「応援しているわ、大成君」
大成は、ジャンヌ達の応援を受けながら待機室に向かった。



【待機室】

ルネルは、手を振りながら大成の傍に駆けつけた。

「お待たせ、大和君。待たせたかな?」

「大丈夫。今、来たとこ」

「良かった」
それから、大成達は何事もなく順調に勝っていき、ルネルの評価が鰻登りになった。

しかし、ベスト8で大成達のクラスのマルチス、ユニペアはランドニーが率いるチームに負けた。

こういうバトル競技は進行するにつれて怪我等で、優勝候補が棄権や負けたりして番狂わせが起こる。

準決勝、大成達と当たる1組のチームはドクターストップで棄権をし、大成達は不戦勝で決勝戦に進出した。

反対ブロックを勝ち抜けたのは、やはりマルチスとユニペアに勝利したランドニーが率いる1組だった。



会場が盛り上がっている中、相変わらずランドニーは見下すような目で大成達を見ている。

「相変わらずだな。ランドニー先生は」

「ええ、そうね。今回は、ギャフンと言わせないといけないわね。大和君」

「そうだね」
ランドニーの態度に激怒するルネルと、そんなルネルを見て苦笑いする大成。

今回の武器は、ルネルは今まで通りに木の剣、大成は木のナイフ20本と木の剣を選んだ。

1組の男子・ギシマムと女子・ラシカは、2人とも木の剣を選んだ。


「それでは、男女ペア戦の決勝戦を始めます。試合開始!」
ジャッジの先生が開始の合図をした瞬間、一斉に魔力強化した。

「サンド」

「ウィンド」
ギシマムは土魔法サンドを唱え、ラシカは風魔法ウィンドを唱えて2つの魔法を合成させて砂煙を発生させる。

「アース・ウォール」
大成とルネルは視界を遮断されたが、大成は魔力を感知してギシマムとラシカに木のナイフを投擲し、ルネルは念のために土魔法アース・ウォールを唱え発動し土の防御壁を作り出した。

「ぐっ」
「きゃっ」
大成は長年の経験でナイフを当てた手応えがあり、砂煙の向こうからギシマムとラシカの悲鳴が聞こえた。

しかし、大成達の上空からアイス・ミサイルが、雨の様に降り注いだ。

「えっ!?」
砂煙で視界が悪く、ルネルは予想外の攻撃に対応できず、ただその場で上を向いたまま硬直していた。

「ルネル~っ!」

「きゃっ」
大成は魔力値2のまま全力で、駆け寄りルネルに飛び付いて押し倒し氷の矢を間一髪で避けた。

ルネルは我に返り、自分の居た場所に視線を向けたら数多の氷の矢が地面に刺さっていた。


「あ、ありがとう。大和君」
ルネルは頬を赤く染め、間近にいる大成にお礼を言った。

「無事で良かった。それより、ウィンドを唱えて砂埃を払って欲しいかな」
大成は、ルネルの手を取って走って空から降り注ぐ氷の矢を回避していく。

「でも、私はジャンヌ様達みたいに器用に氷の矢を避けながら魔法を唱えられないわ」

「大丈夫、これならどう?」
大成は、ルネルを引き寄せてルネルをお姫様抱っこをして氷の矢の雨を避けていく。

「えっ!?あ、あの…」
ルネルは、顔を真っ赤にして言い淀む。

「ごめん、マーケンスじゃなくって。でも、我慢して欲しいかな」
大成は、苦笑いしながら謝る。

「う、ううん、気にしてない。ウィンド」
ルネルは恥ずかしいそうに俯いた後、両手を上に伸ばして風魔法ウィンドを唱えて砂煙を吹っ飛ばした。

「チッ…。だが、まぁ予想の範疇だ」
ベンチではランドニーが舌打ちをし、懐からマジックアイテム、アイス・シールドを発動した。

ランドニーの周囲に半球状の氷の壁が展開された。

アイス・シールドは、氷魔法の攻撃を無力化する貴重で高価なアイテムだった。



砂煙が消え、リングにはギシマムとラシカは気絶し倒れていた。

会場がざわき出し、全員は上空を見つめた。

今もアイス・ミサイルが降り注いでいたからだった。


「やはりな…」
大成は、氷の矢を回避しながらボソッと呟いた。

「えっ!?」
ルネルは、大成が知っていたかのような発言に驚く。

そして、アイス・ミサイルが途切れたので、大成はルネルを降ろすと、ルネルは少し残念そうな表情を浮かべた。


上空にミシナの風魔法エア・バーストで空中に浮かんでいたドトールとミシナの姿があった。

ミシナは、額に手を当て見下ろしている。

「あ~あ、バレちゃったね」

「仕方ないな、アレをやるぞ」
やれやれと言う感じのドトールだったが口元が笑っており、ミシナと距離を取って両手をミシナの前に出し魔力を放出する。

「了解~!」
明るく元気に返事をしたミシナも両手をドトールの前に出し魔力を放出する。


そして、2人の間にはお互いの魔力が混じり合い、共鳴しながら魔力は膨大に増大していく。

そして、会場を覆うほどの巨大な氷塊ができた。

「「ユニゾン氷魔法、アイス・マウンテン・フォール」」
ドトールとミシナは、大勢の観客が居るにも関わらず容赦なく巨大な氷塊を落とす。


「「に、逃げろ~!」」

「どっけ~っ!」

「きゃ~!」
巨大な氷の塊が落ちてくるのを見て、観客達は慌てる。

そこに、黒のローブを羽織った人物が2階の観客席から飛び出してリングに着地した。

「誰だ?あれは…修羅様だ!」
観客の1人が名前を呼ぶと、我先にと逃げていた観客は立ち止まりパニックになっていたのが収まった。

黒のローブの者は、リングにいる大成に駆け寄る。


「ありがとう、マキネ」
黒のローブを纏っていたのはマキネだった。

大成はマキネにお礼を言った。

「流石、ダーリン。予想的中だね!」
マキネは、大成にウィンクする。

「当たって欲しくなかったけどね…。まぁ、それは良いとしてアレをどうにかしないとね。グリモア・ブック、アース・ガーディアン・ギガント」
大成は溜め息をして皆を危ない目に合わしたドトールとミシナを睨み付け、グリモアをマキネの近くに出すことでマキネがグリモアを出した様に見せる。

そして、小さな声で土魔法禁術アース・ガーディアン・ギガントを唱えた。

グリモアは光輝き、周囲を照らした。

グリモアは大成の頭上より少し高めに黒い魔力の塊を放出し、塊は重力を帯びておりリングや会場石板や壁、土などを吸い込む様に集まっていき、その速度は徐々に増していく。

そして、あっという間に観客席の壁がなくなり、リングに大きく深いクレーターができたので大成とマキネ以外、リングの上にいるルネル達は尻餅をついた。

「イタッ…」
ルネルは地面で打った自分のお尻を擦り、ふと見上げると目の前には土で出来た巨大なゴーレムが立っていた。


ルネルは、ゴーレムに驚愕した。

「しゅ、修羅様の禁術が目の前で見られるなんて…」
小さく呟いたルネルや観客達は、ゴーレムを神を見るような目で見つめていた。


「ま、魔王修羅だと!」

「そ、そんなの、聞いてないわよ!」
ドトールとミシナは、予想外な出来事に慌てふためく。

「だ、だが、こっちはユニゾン魔法だ。勝てる見込みはあるぞ」

「そ、そうよね」

「「いっけ~!」」
ドトールとミシナは、逃げずに自分達の魔法を信じて立ち向かった。

「受け止めろ…」
大成は、小さな声でゴーレムに命令をした。

「ゴォォ~!」
ゴーレムは、両手を上げ巨大な氷塊を受け止めようとする。

ドシッと、ゴーレムの両足に負担が掛かり足元に居た大成達は振動で小さく跳ねた。

次第にゴーレムは巨大な氷塊に押され、体が反っていく。

「ゴォォ~!」
ゴーレムは目が赤く輝き、両手だけでなく胸も使って身体全体で巨大な氷塊を受け止める体勢になり巨大な
氷塊が止まった。


「殺れ…」

「ゴォォ~!」
再び、大成がゴーレムに命令を出すと、ゴーレムは巨大な氷塊をドトールとミシナに目掛け上空に投げた。


ドトールとミシナは、自分達のユニゾン魔法が止められたことが未だ信じられなく呆然としていた。

「う、嘘だろ…」

「う、嘘…」
目の前に自分達が放った巨大な氷塊が迫ってくる。

2人は、呆然としていたので反応が遅れた。

「ぐっぁ!」

「きゃっ!」
完全には回避できないまま、2人は巨大な氷塊に当たり、氷塊から離れようとするが氷塊の速度が速く、氷塊の勢いに何もできず押さえつけられた様に張り付いた状態で上空へと押し上げられた。

「ファイア・エンペラ・ジャッジメント・ソード…」
大成は、炎魔法禁術ファイア・エンペラ・ジャッジメント・ソードを唱える。

グリモアから真っ赤に燃え盛る巨大な大剣が出現した。
大剣の周囲には陽炎ができ、反対側が見えなくなるほど空間が湾曲している。

「終わらせろ…」

「ゴォォ~!」
大成の命令で、ゴーレムは片手で審判の大剣を逆さでやり投げするかの様に持ち上げて巨大な氷塊に向かって投擲した。

審判の大剣は風を切り裂き音速の速さで放たれ、あっという間に氷塊に突き刺さり、突き刺さった瞬間、大規模な水蒸気爆発を起こし大爆発した。

会場は、大きな爆音とともに衝撃波も発生し周囲を襲った。

ルネルや会場の皆は、両手で耳を塞ぎながらしゃがみ込んだ。


「あ~あ、ダーリン。それは、流石にやり過ぎだと思うな」
ルネルが耳を塞いでしゃがんでいる中、マキネは大成に抱きついて口を尖らせながら注意をしたが楽しそうな表情を浮かべていた。

「ごめん。それより、マキネ。予定通り姿を眩ませて」

「了解!約束は忘れないでね!」

「約束は守るから大丈夫」
マキネは大成の耳元で囁き、ウィンクをして観客席に跳び移り姿を消した。

大成、ジャンヌ、ウルミラ、イシリア以外の皆は呆然としていた。

ランドニーも呆然と立ち尽くしており、未だにマジックアイテム、アイス・シールドを解除せずに維持したままだった。
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