卒業まで、あと少し。

春瀬さくら

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第三話

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***
「ー…」

(さーやが引っ越す。…それも、遠くに…)


具体的にどこへ引っ越すとは聞いていない。
でも、きっと遠い。

涙が溢れても、止められなかった。


(アタシ達、もうダメかな…)


屋上の柵にもたれ掛かり、ショボくれていると、さーやが近付いてきた。 

「杏菜…。ゴメンね?」

「…遠距離になっちゃうよ。さーやが遠くに行くなんて…」

「ホントは、寮とか一人暮らしとか考えた。でも、高校生で一人暮らしは出来ないし…」

「…うん、わかってる」

「杏菜、大学では一緒に住もう?」

「へ…。大学?」

「そ。高校はお互い好きな事しよう。夏休みとかは、デートして。電話も、するよ。3年間だけは、…ごめんなさい…」


「うん…。さーや、浮気しないでね?」

「杏菜の、方こそ!杏菜モテるし…」

「さーやのがモテるし!」

「浮気」のワードにビックリしつつ、さーやのアタシがモテるとか言い出したのは、もっとビックリした。

暫く、どっちがモテるか言い合いした後、クスクス笑い合い、どちらかともなく「ちゅ」と短いキスをした。 

「好きよ、杏菜」

「アタシも好き。大好き!3年間なんて、あっという間だよね!寂しくなんか…。無い。…うそ!ホントは、凄く寂しいよ~!さーやのバカー!」

ギュウギュウと抱き合っていると、校内放送が聞こえてきた。 


『3年2組、二宮杏菜!至急職員室まで来なさい』

「吉岡先生?」

「杏菜、何かした?」

さーやの質問にプルプル首を振る。 
その後、二人手を繋いで職員室に。 


「吉岡先生」
「おお、来たか。二宮」

呼ばれた理由は、何と推薦入試が通ったとの事。


だけど…。

(こんなテンションじゃ、うれしくない…)


この推薦は、さーやと一緒に通おうと話してた高校だ。
別に、さーやがいないから行きたく無いとかでは無い。
でも、さーやがいるから楽しみだったのに。


曇らせた表情が、『落ちたと思ってた』と思われたのか、吉岡先生は続けて話す。


「二宮、正直に言うと、かなりギリギリだったらしい。高校に行ってからの事もあるから、次の試験はとにかく頑張れ」

「…はい。ありがとうございます!」

「望月も。・・・あぁ、望月は心配要らないな。だが、入試が終わるまでは、気を抜くなよ?」

「はい、先生」

「じゃあ、戻りなさい」


職員室を出ると「おめでとう、杏菜!」と言われたが「さーやと一緒じゃないなら、うれしく無いし」と返す。

本気の本音だ。




そのまま教室へ歩いてると、「おい、二宮!」と声をかえられた。

振り返ると、そこには幼なじみの栄治春人(えいじ はると)が立っていた。


「春人、何?」

「お前、さっき放送で呼び出されただろ?どうしたんだ?」

「ああ、あれ?



ー…何と、推薦が通ったのよ!」

ふふん、とドヤッと話す。

「おお!おめでとう!やるじゃん二宮!」
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