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第一部 エルマの町
第十八話 ロードメリナの特訓2
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休日も残り三日となった、最初の四日でほとんどやることがなくなったロードはメリナの部屋にやってきていた。
「メリナ♪、メリナ♪ あーそーぼ!」
「あらロード、いらっしゃい」
ロードにとってメリナはお姉さんみたいな存在で、リードに次いで親しい人物だ、以下にはウェイン、アレスと続く。
部屋に入ったロードはメリナのベッドの上に座って、何で遊ぶかワクワクしている。
「ねーねー、今日は何して遊ぶ?」
「今日は遊べないわ、今日は魔法の練習をしに行くから… よかったらあなたもどう?」
「うーん、どうしよう」
「カオスの遺子たちと戦いたいのでしょう? この前はウェインに拒否されたけど、今よりもっと強くなって見返してやりましょう!」
「うん、僕の頑張るよ! じゃあ早く行こうよ」
「焦らないの。その前に行く場所があるから」
「え、どこ?」
宿舎を出ると、メリナはロードを連れて軍が保有する図書館にやって来た。
図書館にはたくさんの魔導書が置かれており、軍が管理しているのもあってか半分ほどが魔物に対抗するための本であった。
これらの魔物に対抗するための魔導書は、兵士ならば簡単に借りることができるが、一般人には特別な許可がいる。
「本がこんなにたくさんあるなんてすごいよ、メリナ」
「コラ、大きな声で話さない。しっ!」
「はーい。で、何か借りるの?」
「ええ、ちょうど借りた本を読み終えたから新しい本を借りようと思ってね。今度は実践的なのをね」
メリナは借りていた本を受付に行って返した後、奥の方へ行って風魔法についての魔導書を見あさっていた。
ロード自身もメリナと離れて、自分に合う魔導書を探していた。
少しして、本を借り終えた二人は、図書館の前で借りた本を見せ合いっこしていた。
「メリナは何を借りたの?」
「この二冊よ、この本にはためになることがいっぱい書かれているわ。あなたはどうなの?」
「じゃじゃーん、見てよこれ。【魔物に必勝できる方法】だって。これがあればどんな魔物でも倒すことができるんだよ!!」
本をメリナの前に突き出して探し出した本がどれだけすごいか誇張するロードだったがメリナは、本のタイトルを聞いて誇張されたものだとすぐに気づいたが、本の表紙につられているロードが子供っぽくてかわいらしいなと思った。
また、この純粋な気持ちを壊さないように「へえ~、すごいわね。これならカオスの遺子も楽勝ね!」と言うと、「うん! じゃあ早く特訓しに行こ」と返事をしてメリナを手を引っ張っていった。
二日後、ロードとメリナは魔導書を読んだ後、書かれていたことを実践するためリードを連れて町から離れた平原にいた。
「なんで俺も誘ったんだ? 傷を治すためにか?」
「そうよ、それとリードにも何かアドバイスを貰おうと思ってね。ウェインのやり方は強くなれるけど強引すぎて…」
ウェインとの地獄の特訓を思い出して、メリナはブルリと体を震わせた。
「大丈夫だよ、兄さんの教え方はとってもわかりやすいんだよ!」
「はいはい、じゃあ俺は少し離れて見ているから何か質問したいことがあったら呼べ」
「「はーい」」
そうして、実戦練習が始まった。
メリナは最初と比べて魔力量が目を見張るほど増加したが、魔法の威力の調整が効かず、必要以上に魔力を使ってしまい、魔法を連発して放つとすぐに魔力が不足して体に大きな負担になることが多々あった。
戦いの経験から魔力コントロールができるようにもあるが、多くの場数をこなさなければならず、時間もかかりすぎるので効率が悪い。
しかし、意識して魔力コントロールの練習をすれば、習得するまでにかかる時間を大幅に短縮できる。
だから、今回魔力コントロールと上位の風魔法についての魔導書を借りた。
メリナは事前に読んでいた魔力コントロールの方法を頭の中で反芻しながら、取り組み始めた。
魔力コントロールに大事な点は以下の二つ
一つ、心を平穏に保つこと
二つ、体内に流れる魔力の流れを感じ取り、常に意識すること
上記の内容を日頃から行うことによって、魔力コントロールができるようになるのである。
メリナは魔導書を読んでから、二つのことを意識してこの二日過ごしてきた。
そして今、練習時間は短かったものの、どれほどの効果が表れているかワクワクしながら的になる木に向かって魔法を放った。
「クラリス!」
放たれた魔法の威力は練習をする前とほぼ同じだったが、若干、放った後の疲労感は以前に比べて少なく、練習の効果が出ているかもっとハッキリさせるために何発も同じ魔法を放った。
十二発ほど打ち終えた後、メリナはぐったりして座り込んだ。
「この前は、最高でも十発が限界だったのに… この短時間で二発も増やせるなんて」
「あ~最高の気分だわ。この調子でいけば、魔力の消費が激しい上位魔法も使えるようになるかも… よ~し、少し休憩したら上位魔法についても学ぼうかな~」
短時間で成長を感じ取れたメリナは喜びのあまり興奮して、早く次の練習に取り組みたいと考えていた。
(メリナはセンスがいいようだな、これなら俺の手を借りる必要はないだろう。問題は…)
メリナの練習をじっくり見ていたリードは、メリナのセンスの良さを見て自身の手助けが必要ないと思いロードの方を見ると、ロードはこの前買ったナイフを掛け声とともに振り回していた。
「おいロード、一体何をしている?」
「何ってナイフの練習だよ。アレスがこんなちっさいナイフ役に立たないとか言ってたけど、僕はそうは思わない。だから、練習してるんだ」
「いや、お前、魔法の練習はどうした? メリナと一緒に本を借りに行ったんだろ?」
ロードは動きを止めてリードの方を向くと、「だって、書いてある内容がよく分からなかったんだもん」
必勝の魔導書を借りたロードは帰ってすぐに魔導書を開いて内容を見たが、思っていた内容と違ってすぐに飽きてしまったようだ。
「だからといってナイフの練習なんて意味無いだろ?」
「意味あるよ!」
「そんな小さい武器じゃ、カオスの遺子どころか魔物でさえ倒せないぞ」
「でも武器使いたいもん…」
「ならこれを使ってみろ」
リードはおもむろに開いた空間から槍を取り出すと、ロードに手渡した。
「お、重い…」
渡された槍の重さでうまく動けないでいると、リードが槍をロードの手から取った。
「見ていろロード。これが武器と魔法の使い方だ」
そう言って、リードが右手に槍を構えると、槍全体が白い稲妻に包まれた。
直後、リードは槍を思いっ切り槍を空に向けて投げ、槍は大きな轟音をたてて、空の彼方に消えていった。
しかし、再び空間を開くと、さっき投げた槍をまた取り出してロードに向け、「まあ、こういうことだ」と言った。
様子を近くで見ていたロードは興奮してリードに詰め寄った。
「カッコいいー、僕にも教えて!」
「ダメ、お前にはまだ早い。でもいずれ使えるようになるから我慢しろ」
「ええ~、カッコいいのに…」
「お前にもお前だけの魔法があるだろ? まずそれを確実に相手に決められるようにしろ。そしたら、カオスの遺子にも対抗できるようになるかもしれないぞ?」
「でも、この魔法ってこれ以上強くならない気がする… だったら、他の魔法や武器を使いこなせるようにした方がいいんじゃないかな?」
「いいや、他の魔法とかは他人に任せとけばいい。お前は自身の利点を生かすために、欠点を補えるように努力するんだ」
「欠点…?」
「ああ、今からその欠点を治す練習をするから構えろ」
リードの言うとおりに、ロードは身構えると持っていた槍で攻撃した。
ロードの攻撃にビビッて顔を手で隠した。
「おい、よけろよ。俺が攻撃を止めていなかったら死んでいたぞ?」
「兄さんやめてよ、こんなの僕死んじゃうよ」
涙を浮かべながらリードの手に抱きついてこれ以上のことをさせないようにしたが、リードは無造作に振りほどいて
「これはお前に必要なことだ。この特訓は前回の延長だ。前の特訓は俺が本気でお前を殺そうとしなかったが、今回俺はお前を本気で殺すつもりでいく」
「まあ安心しろ。死んでなかったら治してやるから。それじゃあ、行くぞッ!!」
リードは再びロードに向けて攻撃を再開し、ロードの地獄の特訓が始まった。
二人が修行を開始してから数時間が経過し、お昼休憩となって三人は修行を中断した。
「ふええーん、痛いよ、もうやりたくないよー グスん…」
「うるさい!! 泣くな!! 静かにしてろ!!!
「うわぁああああんん!! 兄さんが恐ろしい化け物になったあああ!!! 前は優しかったのにぃ!!!」
ボロボロになったロードは座り込んで幼い子供のように手で目をこすりながら、大きな声を上げて泣き叫んでおり、リードは泣いてるのを無視して足の傷を魔法で癒している。
「リード! これはあまりにも可哀そうよ。こんなんじゃロードが不憫で見ていられないわ」
ロードがあまりにも泣き叫んでいる様子を見たメリナは、リードに向かって行きロードへの特訓が厳しすぎやしないかと指摘した。
「黙っていろ」
リードはメリナを睨み返すと続けて、「これはロードのためなのだから」と言った。
「でも、ロードを見てみなさいよ。泣きじゃくっているじゃないの。あなたがやっていることはロードのためだとは思えないわ」
「ロードがカオスの遺子と戦いたいと言っているからだ。それなのに、コイツには度胸も根性も実力もない」
「だから、この特訓で度胸と根性を鍛えてやるんだ。そうすりゃ、多少の強敵が現れても臆さず戦えるようになるはずだ」
リードはロードが強敵と対面した際、ビビッて敵に近づけないことをロードの欠点だと思っている。
戦いを恐れているようでは、カオスの遺子に挑むなんてことはあり得ない。
ロードを甘やかしすぎたことへの自責の念とロード自身が兵士となり、カオスの遺子たちと戦っていく意思を明確にしていることから、ロードの夢のためにも自身が心を鬼にして特訓を行わなければならないと決心した。
リード達が言い争っている間にけがの治療を終えたロードは、立ち上がってメリナのもとへと走っていくと、胸元にしがみついた。
「おーよしよし。どうやら嫌われてしまったようね、リード。」
ロードの頭を撫でながらリードの方へと目をやる。
「おいロード。傷が治ったならもう一回だ」
「いやッ!! こないで!!」
リードが近づこうとすると、ロードはメリナにさらに力強くしがみついた。
「もう小さい子を怖がらせてどうするのよ。まだロードは子供なんだから、もう少し成長してからにしなさいよ。ねー、ロード」
「いやダメだ。もう時間がない」
「時間がないってどういう意味?」
「それは…」
ピキッ!!
突然、鏡にひびが入ったような音がロード達の真上の空から聞こえた。
三人が見上げると、空に亀裂ができており、その亀裂から黒い靄のようなものが溢れ出している。
「な… 何よ、あれ?」
「あれは特異点だ」
リードは目を細めながら空を見て、当t所現れたものが特異点だといった。
「特異点?」
「ああ、人間界に突然現れて時が経てば消える。特異点が完全に開くと、魔界から様々な奴らがこっちの世界にやって来る。人間界と魔界をつなぐ門のようなものだ」
特異点からは黒い靄が時間と共に量を増してきている。
三人が特異点を不安と恐怖を抱きながら固唾をのんで見守っていると、空間が張り裂ける音と共に完全に特異点が開いた。
「ああ完全に開いてしまったな」
「まずいよ、早く逃げなきゃ。魔物たちがどんどんやって来るよ」
「私たちが逃げたら被害が大きくなってしまうからダメよ。一緒に戦いましょう、ロード」
「うん、わかった」
赤くなった目元をこすって戦うことを覚悟したロードは、二人と共に特異点に向けて身構える。
「来るぞ!!」
リードが叫んだとほぼ同時に特異点から二人の魔人が飛び出した。
「メリナ♪、メリナ♪ あーそーぼ!」
「あらロード、いらっしゃい」
ロードにとってメリナはお姉さんみたいな存在で、リードに次いで親しい人物だ、以下にはウェイン、アレスと続く。
部屋に入ったロードはメリナのベッドの上に座って、何で遊ぶかワクワクしている。
「ねーねー、今日は何して遊ぶ?」
「今日は遊べないわ、今日は魔法の練習をしに行くから… よかったらあなたもどう?」
「うーん、どうしよう」
「カオスの遺子たちと戦いたいのでしょう? この前はウェインに拒否されたけど、今よりもっと強くなって見返してやりましょう!」
「うん、僕の頑張るよ! じゃあ早く行こうよ」
「焦らないの。その前に行く場所があるから」
「え、どこ?」
宿舎を出ると、メリナはロードを連れて軍が保有する図書館にやって来た。
図書館にはたくさんの魔導書が置かれており、軍が管理しているのもあってか半分ほどが魔物に対抗するための本であった。
これらの魔物に対抗するための魔導書は、兵士ならば簡単に借りることができるが、一般人には特別な許可がいる。
「本がこんなにたくさんあるなんてすごいよ、メリナ」
「コラ、大きな声で話さない。しっ!」
「はーい。で、何か借りるの?」
「ええ、ちょうど借りた本を読み終えたから新しい本を借りようと思ってね。今度は実践的なのをね」
メリナは借りていた本を受付に行って返した後、奥の方へ行って風魔法についての魔導書を見あさっていた。
ロード自身もメリナと離れて、自分に合う魔導書を探していた。
少しして、本を借り終えた二人は、図書館の前で借りた本を見せ合いっこしていた。
「メリナは何を借りたの?」
「この二冊よ、この本にはためになることがいっぱい書かれているわ。あなたはどうなの?」
「じゃじゃーん、見てよこれ。【魔物に必勝できる方法】だって。これがあればどんな魔物でも倒すことができるんだよ!!」
本をメリナの前に突き出して探し出した本がどれだけすごいか誇張するロードだったがメリナは、本のタイトルを聞いて誇張されたものだとすぐに気づいたが、本の表紙につられているロードが子供っぽくてかわいらしいなと思った。
また、この純粋な気持ちを壊さないように「へえ~、すごいわね。これならカオスの遺子も楽勝ね!」と言うと、「うん! じゃあ早く特訓しに行こ」と返事をしてメリナを手を引っ張っていった。
二日後、ロードとメリナは魔導書を読んだ後、書かれていたことを実践するためリードを連れて町から離れた平原にいた。
「なんで俺も誘ったんだ? 傷を治すためにか?」
「そうよ、それとリードにも何かアドバイスを貰おうと思ってね。ウェインのやり方は強くなれるけど強引すぎて…」
ウェインとの地獄の特訓を思い出して、メリナはブルリと体を震わせた。
「大丈夫だよ、兄さんの教え方はとってもわかりやすいんだよ!」
「はいはい、じゃあ俺は少し離れて見ているから何か質問したいことがあったら呼べ」
「「はーい」」
そうして、実戦練習が始まった。
メリナは最初と比べて魔力量が目を見張るほど増加したが、魔法の威力の調整が効かず、必要以上に魔力を使ってしまい、魔法を連発して放つとすぐに魔力が不足して体に大きな負担になることが多々あった。
戦いの経験から魔力コントロールができるようにもあるが、多くの場数をこなさなければならず、時間もかかりすぎるので効率が悪い。
しかし、意識して魔力コントロールの練習をすれば、習得するまでにかかる時間を大幅に短縮できる。
だから、今回魔力コントロールと上位の風魔法についての魔導書を借りた。
メリナは事前に読んでいた魔力コントロールの方法を頭の中で反芻しながら、取り組み始めた。
魔力コントロールに大事な点は以下の二つ
一つ、心を平穏に保つこと
二つ、体内に流れる魔力の流れを感じ取り、常に意識すること
上記の内容を日頃から行うことによって、魔力コントロールができるようになるのである。
メリナは魔導書を読んでから、二つのことを意識してこの二日過ごしてきた。
そして今、練習時間は短かったものの、どれほどの効果が表れているかワクワクしながら的になる木に向かって魔法を放った。
「クラリス!」
放たれた魔法の威力は練習をする前とほぼ同じだったが、若干、放った後の疲労感は以前に比べて少なく、練習の効果が出ているかもっとハッキリさせるために何発も同じ魔法を放った。
十二発ほど打ち終えた後、メリナはぐったりして座り込んだ。
「この前は、最高でも十発が限界だったのに… この短時間で二発も増やせるなんて」
「あ~最高の気分だわ。この調子でいけば、魔力の消費が激しい上位魔法も使えるようになるかも… よ~し、少し休憩したら上位魔法についても学ぼうかな~」
短時間で成長を感じ取れたメリナは喜びのあまり興奮して、早く次の練習に取り組みたいと考えていた。
(メリナはセンスがいいようだな、これなら俺の手を借りる必要はないだろう。問題は…)
メリナの練習をじっくり見ていたリードは、メリナのセンスの良さを見て自身の手助けが必要ないと思いロードの方を見ると、ロードはこの前買ったナイフを掛け声とともに振り回していた。
「おいロード、一体何をしている?」
「何ってナイフの練習だよ。アレスがこんなちっさいナイフ役に立たないとか言ってたけど、僕はそうは思わない。だから、練習してるんだ」
「いや、お前、魔法の練習はどうした? メリナと一緒に本を借りに行ったんだろ?」
ロードは動きを止めてリードの方を向くと、「だって、書いてある内容がよく分からなかったんだもん」
必勝の魔導書を借りたロードは帰ってすぐに魔導書を開いて内容を見たが、思っていた内容と違ってすぐに飽きてしまったようだ。
「だからといってナイフの練習なんて意味無いだろ?」
「意味あるよ!」
「そんな小さい武器じゃ、カオスの遺子どころか魔物でさえ倒せないぞ」
「でも武器使いたいもん…」
「ならこれを使ってみろ」
リードはおもむろに開いた空間から槍を取り出すと、ロードに手渡した。
「お、重い…」
渡された槍の重さでうまく動けないでいると、リードが槍をロードの手から取った。
「見ていろロード。これが武器と魔法の使い方だ」
そう言って、リードが右手に槍を構えると、槍全体が白い稲妻に包まれた。
直後、リードは槍を思いっ切り槍を空に向けて投げ、槍は大きな轟音をたてて、空の彼方に消えていった。
しかし、再び空間を開くと、さっき投げた槍をまた取り出してロードに向け、「まあ、こういうことだ」と言った。
様子を近くで見ていたロードは興奮してリードに詰め寄った。
「カッコいいー、僕にも教えて!」
「ダメ、お前にはまだ早い。でもいずれ使えるようになるから我慢しろ」
「ええ~、カッコいいのに…」
「お前にもお前だけの魔法があるだろ? まずそれを確実に相手に決められるようにしろ。そしたら、カオスの遺子にも対抗できるようになるかもしれないぞ?」
「でも、この魔法ってこれ以上強くならない気がする… だったら、他の魔法や武器を使いこなせるようにした方がいいんじゃないかな?」
「いいや、他の魔法とかは他人に任せとけばいい。お前は自身の利点を生かすために、欠点を補えるように努力するんだ」
「欠点…?」
「ああ、今からその欠点を治す練習をするから構えろ」
リードの言うとおりに、ロードは身構えると持っていた槍で攻撃した。
ロードの攻撃にビビッて顔を手で隠した。
「おい、よけろよ。俺が攻撃を止めていなかったら死んでいたぞ?」
「兄さんやめてよ、こんなの僕死んじゃうよ」
涙を浮かべながらリードの手に抱きついてこれ以上のことをさせないようにしたが、リードは無造作に振りほどいて
「これはお前に必要なことだ。この特訓は前回の延長だ。前の特訓は俺が本気でお前を殺そうとしなかったが、今回俺はお前を本気で殺すつもりでいく」
「まあ安心しろ。死んでなかったら治してやるから。それじゃあ、行くぞッ!!」
リードは再びロードに向けて攻撃を再開し、ロードの地獄の特訓が始まった。
二人が修行を開始してから数時間が経過し、お昼休憩となって三人は修行を中断した。
「ふええーん、痛いよ、もうやりたくないよー グスん…」
「うるさい!! 泣くな!! 静かにしてろ!!!
「うわぁああああんん!! 兄さんが恐ろしい化け物になったあああ!!! 前は優しかったのにぃ!!!」
ボロボロになったロードは座り込んで幼い子供のように手で目をこすりながら、大きな声を上げて泣き叫んでおり、リードは泣いてるのを無視して足の傷を魔法で癒している。
「リード! これはあまりにも可哀そうよ。こんなんじゃロードが不憫で見ていられないわ」
ロードがあまりにも泣き叫んでいる様子を見たメリナは、リードに向かって行きロードへの特訓が厳しすぎやしないかと指摘した。
「黙っていろ」
リードはメリナを睨み返すと続けて、「これはロードのためなのだから」と言った。
「でも、ロードを見てみなさいよ。泣きじゃくっているじゃないの。あなたがやっていることはロードのためだとは思えないわ」
「ロードがカオスの遺子と戦いたいと言っているからだ。それなのに、コイツには度胸も根性も実力もない」
「だから、この特訓で度胸と根性を鍛えてやるんだ。そうすりゃ、多少の強敵が現れても臆さず戦えるようになるはずだ」
リードはロードが強敵と対面した際、ビビッて敵に近づけないことをロードの欠点だと思っている。
戦いを恐れているようでは、カオスの遺子に挑むなんてことはあり得ない。
ロードを甘やかしすぎたことへの自責の念とロード自身が兵士となり、カオスの遺子たちと戦っていく意思を明確にしていることから、ロードの夢のためにも自身が心を鬼にして特訓を行わなければならないと決心した。
リード達が言い争っている間にけがの治療を終えたロードは、立ち上がってメリナのもとへと走っていくと、胸元にしがみついた。
「おーよしよし。どうやら嫌われてしまったようね、リード。」
ロードの頭を撫でながらリードの方へと目をやる。
「おいロード。傷が治ったならもう一回だ」
「いやッ!! こないで!!」
リードが近づこうとすると、ロードはメリナにさらに力強くしがみついた。
「もう小さい子を怖がらせてどうするのよ。まだロードは子供なんだから、もう少し成長してからにしなさいよ。ねー、ロード」
「いやダメだ。もう時間がない」
「時間がないってどういう意味?」
「それは…」
ピキッ!!
突然、鏡にひびが入ったような音がロード達の真上の空から聞こえた。
三人が見上げると、空に亀裂ができており、その亀裂から黒い靄のようなものが溢れ出している。
「な… 何よ、あれ?」
「あれは特異点だ」
リードは目を細めながら空を見て、当t所現れたものが特異点だといった。
「特異点?」
「ああ、人間界に突然現れて時が経てば消える。特異点が完全に開くと、魔界から様々な奴らがこっちの世界にやって来る。人間界と魔界をつなぐ門のようなものだ」
特異点からは黒い靄が時間と共に量を増してきている。
三人が特異点を不安と恐怖を抱きながら固唾をのんで見守っていると、空間が張り裂ける音と共に完全に特異点が開いた。
「ああ完全に開いてしまったな」
「まずいよ、早く逃げなきゃ。魔物たちがどんどんやって来るよ」
「私たちが逃げたら被害が大きくなってしまうからダメよ。一緒に戦いましょう、ロード」
「うん、わかった」
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