転生した世界は滅びていました。えっ、これを救えって……?

改札口を盾にUターンしてください。

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君と手にする明日は血の色

南って右ですか、左ですか。

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 目を開くと、俺は横たわっているようだった。

 森の中。
 大きく開けた木々の間から、3羽の鳥が羽ばたいているのが見えた。

 ボーっとしながら眺めていると、鳥は1番大きな木の向こう側へと消えていった。
 上空の中央には青い空。
 目の端には、深緑の葉を垂らす大木が無数に見える。


 俺は、そんな大自然に囲まれていた。
 耳をすませば、木々のさやぐ音や、鳥のさえずりなんかも聞こえてくる。
 すーっと息を吸ってみると、澄んだ空気が肺を満たしていった。
 のどかで、静かな場所だった。

 鳥か……。腹減ったな……。
「って、……あれ?」
 がばっ! と起き上がる。

「なんで俺、生きてんだ……?」
 心の声を口にしながら、辺りを見渡す。
 そこは森だった。

 天国でも地獄でも、暗闇の世界でも、お花畑でもない。
 森だった。


【なんで俺、生きてんだ……?】
 そんな疑問は、体を見下ろして、かつ記憶を遡ることで氷解する。

 死んで、転生した……?
「俺の手、なんだよな……」


 その言葉を肯定するかのように、俺の肌は、青かった。
 紺色に近い色合い。
 視界に入る自分の腕や足――いや。
 体全体が、ムラなく同じ色合いの、紺色だった。

「テレビとかで色々な人種を見てきたが……青い人種ってのは…………。
 って、もしかしてこれが、転生体? ここが異世界?」
 口に出しながら、立ってみる。
「う、お」

 明らかに、いつもより目線が高い。
 しかも、体が軽い。
 どう考えても、使い古した自分の体ではなかった。
 余計な贅肉もなく、生前と違ってヒョロガリでもない。

 この体は、俺の知っている体じゃない。
 すげーな、健康的な筋肉がある体って、こんなに動きやすかったんだ。
 ……それにしても。


「……転生……か」

 まあ、しちゃったもんはしょうがない。
 とにかく、人間の町とやらに行ってみよう。
 確か、南にいけば良いんだよな。

 良しっ、と心の中で一旦折り合いをつけて、1歩目を踏み出し、立ち止まる。

「南って、どっちだ……?」
 周囲に生い茂る木々を見渡しながら、俺は愕然と立ち尽くすしかなかった。




 なにが南だ……。右とか左って言えよ……。
 幸い、地面には歩きつぶした草の跡――道のようなモノがあった。
 それを辿り、やっとの思いでゼニアらしき場所にたどり着く。


「…………なんか、思ってたのと違うな」

 辿り着いたゼニアは、まるで活気がなかった。

 見るからに人口が少なく、文明も発達していない様子だ。
 その証拠に、家屋はあばら家がほとんどで、チャリや車なんかも見当たらない。
 馬車もない。
 おまけに、通りを歩く人々の目が死んでいる。まるでゾンビだ。


「……これが、異世界……?」

 辺りを見渡せば、廃人しかいない。
 地面に転がりながら酒っぽいのをあおるヒト。
 口をあんぐりと開けて太陽を見つめるヒト。
 地面に絵を書きながらブツブツ言っているヒト……。

「あぁぁあぁあ。魔族が……太陽が……あっ、ぁぁぁぁぁああぁあ!」
「ク、クキュウウウフフ。ふふふフフ。イイィイイイ! し、死んじゃえばいいんだ……!みんな……ミンナっ!」
「僕がみんなを守る。だからみんなが僕を守ってよ。じゃないとぼく、俺、オイラ、おれ。へへ…………へへ」

 やばい。
 めっちゃやばい。変なとこ来ちゃった。

「異世界やばい。なにこれ怖い……」

 帰ろうと思って振り返ると、道端に座っていた廃人たちがユラユラと起き上がっていた。
 それも、1人2人ではない。ほぼ全員だ。

 俺の退路を塞ぐかのように横に並び、それが列を成して、まるでバリケードの如くになっている。
 しかも、ゆっくりと俺に向かって歩いてくるではないか!

 お、奥に行ってみよう。まともな人がいるかもしれない。
 俺は退路に背を向け、前に進むことにした。
 開けている道を猛ダッシュで走り抜ける。

 いったいどこまで逃げれば良いんだ。
 後ろを振り返って確認しようかとも思ったが、ゾンビが猛ダッシュで追い掛けてくる妄想が脳裏に浮かび、もうめっちゃ怖い。むりしんどい。後ろなんか振り向けない!

「だめだ……! もう! 走れないッ!」

 息切れを起こして立ち止まり、恐る恐る、ふと後ろを振り返れば……そこにゾンビの姿はない。
 どうやら、撒けたようだ。

「ど、どこかにマトモな人間は……! 話しができる人は……!」
 そう思いながら、ひたすら前を歩き続ける。

 どうやら俺は甘かったようだ。そう認識せざるを得なかった。
 ついに人を見なくなった。

 家はあるが、人影はない。ゴーストタウンだ。
 だが、先にはまだ家があり、道がある。
 来た道を戻るのも怖いので、俺は歩き続けることに決めた。
 というか、それしかなかった。

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