稀有ってホメてる?

紙吹雪

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第1章 出会い

買い付け #5

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村長によるとどうやら一頭引きの馬車を貸し出したそうだ。
それは馬の数が少ないからと、本人達が村で使う馬のことを考えて決めたらしい。
一頭引きにしたから帰りが遅いのでは?と村人達が言っているが一頭引きでもゆっくりペースで往復6日ほどだ。

討伐依頼を出すほど危険が迫っているのに今は7日目の昼前だ。
あまりにも遅すぎる。


おそらく一頭引きの馬車にしたのは目立たないためだ。


馬一頭なら頑張れば買えない額ではないので一頭引きの馬車を使っている人は案外多い。
しかし三人がそれぞれ馬に乗っているような状況は街ではかなり目立つ。

冒険者チームにパーティ全員が馬に騎乗している者達がいるが街に入った途端噂の対象になる。
そのチームはそれを売りにしているので問題ない。

急ぎの依頼で慌てていれば冒険者が釣れたりもするので馬で行く方が利点が多い。


(目立ちたくない理由?)


「いや、おそらく依頼金とその馬車を盗んだんだ。依頼しに行くだけなら馬3頭で行く方が馬車より速い。それに急ぎの依頼かもしれないと思ってもらえる。なのに一頭引きの馬車を選んだということは、目立ちたくないからだ。一頭引きならよく見かけるからな。ちなみに馬車でゆっくりでも6日もあれば往復して帰って来れる。通常依頼だろ?」

リミルは1番可能性が高いと思われる内容を話した。
通常依頼かどうかの確認は指名依頼だと依頼するのに時間がかかるからだ。
通常依頼では依頼内容を話して報酬を渡せば終わりなので割と早い。

『通常依頼だ。でもあいつらが窃盗なんて…』

村では全員が顔見知りだったりする。
少なくとも村長と行方の知れぬ三人は知り合いだったようだ。
信じられないと首を左右に振っている。

「そいつらが窃盗と思ってやったとは限らないが少なくとも依頼が出ていたら俺がここに来る事を知っていたギルドマスターが俺に言わないわけがないだろ?既に冒険者がこちらに来ていたとしても」

『ギルドの仕組みはいまいち理解出来ていないが村からの魔物の討伐依頼は優先度が高い事は知っている。確かについでだし言うかもしれない。だがそれでもそれが窃盗に繋がらないんだ。もしかしたら道中何かあったのかも知れないし、それに魔物は?あの三人がなんとか倒してくれていたから助かっていたし…』

道中何かあった可能性は無いとは言いきれない。
だが窃盗は確実だった。
しかし村長の言いたいことも理解出来た。
何故窃盗と言い切るのか分からないのだろう。

ここを出たあとの事は推測でしかないがここから出る時の三人に明確な目的があったのは確実だと思われる。
リミルはそう思い至った理由を説明することにした。

「まず、その魔物だ。この村に魔物がくるには森からある程度距離がある上、森とこの村の間にも村が存在する。もしこの辺り一帯を襲っているならそちらからの依頼も出ているはずだ。だがそれすら言われていない」

『この村だけ襲撃されたということか?それは有り得ないな…』

魔物は獲物を見つけると片っ端から襲いかかる。
どこかを狙ってとなると上位種がいるはずだ。
しかし村の戦力だけで上位種とは渡り切れない。
村人だけであれば全滅必至だ。

ここまでは皆納得してくれたようで頷いている。

「そうだ。これは確実にこちらに手引きした者がいる、ということになる。この村に魔物が襲撃して得をする者がいるのか?」

村を襲撃されて得をするものはいない。
ギルドのポイント稼ぎをしたい冒険者がいないとは限らないし今回のこともあっていないとは言い切れなかった。

『いないな…農園の新種も種や苗自体も売っているからやっかみを受けることも無いしな?』

『ああ、ないな』

村長が農園主に聞くと即答で否定していた。

「そうなると誰が誘き寄せたのかという事だが、毎回ギリギリ倒せる程度というのが気になる。魔物が毎回同じ程度の戦力で襲ってくるなど有り得ない。ダンジョンですら毎度違うのに」

『確かに。職業クラスを変えている様子もなかったし…』

職業クラスのレベルによっては多少の違いはあるかも知れない。
使い慣れているかどうかや特殊能力スキルの数などは変わってくるだろうから。

しかし──。

「村を守るために自信の無い職業クラスは使えないだろ?最も自信のある職業クラスで戦ったはずだ」

『それもそうだな。だからハラハラしながら必死に皆で応援したんだ』

そして毎回ギリギリ勝利を収めたと。

「だからこそその三人が連れてきたと思える。そうなってくると次に気になるのが魔物を誘き寄せた理由だ」

『…依頼させるため?』

「村を危険にさらす必要があるのはそれ以外にない。更に、魔物が弱ければその三人で事足り、ギルドに依頼する程でもないし、かと言って強いと対処できず被害が出る。だからこそ"ギリギリ勝てる程度"なんだろう」

それを聞いて皆苦い顔をして黙ってしまった。
理解出来たのかもしれない。
理由が何であれ村を危険に曝した事実を。

「馬車より早く移動出来る馬3頭ではなく"一頭引き"の馬車というのもおかしな話だ。馬が少ないからと言ったが6頭程はいるようだな?馬なら往復4日あれば依頼出来ただろう。いつ強い魔物がくるかも分からないのに遅い一頭引きを使ったのか。それになぜ三人のうち一人でもいいから残らない?2日後に魔物が来なくなったのは何故だ?」

皆薄々理解し始めていたのだろう。
最後まで言った時には一頭引きの馬車が頑張れば買えないことはないと言った理由も理解しているようだった。

そこでピロンッと音がなるがそれどころではないため確認は後にして、
今更気休めにもならないかもしれないが可能性と三人の処遇について話す。

「そこまでしてなぜ依頼させたいかだが、もしかしたら旅をしたくなったが反対されると思って言えなかったから強硬手段に出たのかも知れない…それは本人達に聞くしかないな。どちらにしろ一応ギルドに報告するが、所在を確認して本当に窃盗だった場合、被害者が処遇を決めることになってるから三人への罰はあんたら次第だ」

旅をしたくなってというのは自分の思いつく理由がそれしか無かっただけだ。

『所在の確認?ルスタフから移動している可能性もあるのか…』

「それもあるが道中何かあった可能性は捨てきれないし、お金や馬車を騙し盗ったことについてはほぼ確定だろうがお金の用途については分からないからな」

もし旅が目的なら宿代や食事代になるだろう。

『無事だといいが…』

盗みをしたにも関わらず、心配をして貰えるような間柄に少し羨ましくなったがその感情は隠した。



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