好きな人に「喘ぎ声汚そう」って言われたから可愛い嬌声を目指します

このえりと

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後編

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 だけどその日。酔っぱらった翠にお願いされ、肩を貸し一緒に家に入ったところまではよかった。だけど、彼がなにを思ったのか――急に玄関の壁に俺を押しつけ、キスをしてきたのだ。がっつり舌まで入れて。
 しばらく驚いて固まっていたけど、我に返った瞬間翠を突き飛ばしてマンションを飛び出した。翌日突き飛ばしたことを謝ろうかと思ったけど、いつものごとく覚えていなかったと思うと連絡できなくて。
 次に会ったときには何事もなかったかのように接してきた翠に、ホントに覚えていないんだ、と悲しいようなほっとしたような気持ちになった。

(それ以来、翠に誘われても家に行かなくなったんだよな……あのときのキスを思い出しそうで……)

「……あーきら。だめだよぉ? キスのときに考えごとなんてー……」
「んっ!? んぅ゛……っ♡」

 人生で初めてのキスのほろ苦い記憶を思い出していたら、唇を離した翠が囁いてくる。そしてまた舌を絡められると、ぢゅるるるっと舌を吸われビクンと身体が跳ねた。気を抜いていたから一瞬だけ声が濁ってしまったが、気づかれていないだろうか。
 それからまたねっとりと舌を絡められたあと、翠の顔が離れていった。

「……ねー、明良ぁ。今の声、汚くなかったぁ?」
「……ま、さか。びっくりして、たまたま、変な声になっただけだし……」

 しっかりと気づかれていたようでクスクスと笑いながら指摘される。顔を背けながらたまたまを強調して答えると、ちゅ、と頬に口づけられた。

「ふぅん? じゃあもっとちゃんと確かめないとねぇ」
「ちゃんとって……どうするんだよ?」

 期待を込めながら尋ねると、翠がすり、と俺の腰を撫でる。

「えー、決まってるでしょー?」

 俺の耳元に顔を寄せた翠は腰を撫でていた手を下に這わせていき――俺の尻の割れ目あたりをジーンズの上から指でなぞった。もう片方の手は、俺の胸の上に置かれる。

「ぜーんぶ。全部確認しないとねー。知ってる? ここが一番、声が出るんだってー」
「ん……っ♡」

 ふう、と耳に息を吹きかけながら、とん、とん、尻穴のあたりを指で叩かれる。顔を上げると、とろんとした瞳で楽しげに微笑んだ翠と視線が絡んだ。

「声、汚くないって言うなら……確認させてくれるよねー?」
「ぁっ♡ んんっ♡ もち、ろん……ふっ♡」

 Tシャツの上から指で乳首を撫でられ、小さく声を漏らす。乳首の練習なんてしてないけど、くすぐったいだけだから大丈夫だろう。
 声に意識を向けていると、尻を撫でていた手が俺のベルトのバックルを外し始めた。俺は慌てて彼の手に自分の手を重ねる。

「ちょ、待って、翠……っ」
「えー? 今さらやっぱりナシはだめだよー?」
「そうじゃなくて……確認するなら、準備しないといけなくて……」

 一応家で綺麗にしてきたけど、ホントに触られるならもう1回念入りに準備しなければ。使わないと思いながらも、もしかしたらと鞄に道具を入れておいてよかった。
 俺の言葉に、翠はじーっとこちらを見つめる。もしかして、酔っ払って話がちゃんと理解できていないのだろうか。

「……うん、そうだねー。シャワー浴びないとだねぇー」

 にこりと微笑む翠に、俺はうんうんと頷く。

「そういうことだから……風呂借りていい?」
「うん。向こうの、手前の方のドアのとこねー。タオルは棚にあるし、置いてあるの自由に使っていいからねー」

 ふにゃりと翠は笑って俺の身体から腕を離すと、風呂場の場所を指さしで教えてくれる。

「ありがと。じゃあ行ってくる」

 俺は礼を言って、風呂場へと向かった。
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