ループもの小説のモブに転生したがどうやら今世もループしそうなのでオレは肉便器になる

このえりと

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2:プロローグ②

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「怪我は?」
「あ、ありません。あの、エスター様……ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……」
「いいって。オレが勝手に首を突っ込んだんだし」

 部屋に入って早々頭を下げるリリオンに、オレは笑いかける。恐る恐る顔を上げたリリオンは、眉を下げて微笑んだ。

「ありがとうございます……あ、えっと。エスター様は訓練をされるつもりだったんですよね? ぼくのことはお気になさらずに……」
「ん? あ、あー……大丈夫。もう終わったから」

 そういえばそうだった。だがもう今日は別館にいる理由がなくなったのでそう伝えると、リリオンは首を傾げる。そんな仕草を可愛いと思いながら、オレは説明するべく口を開いた。

「オレ魔力過多症でさ。ここで魔力発散して帰ろうって思ってたんだけど……さっきのシールドの魔法で結構使ったから」
「そう、ですか……大変、ですよね……」
「はは、もう長いこと付き合ってるからなー。慣れた」

 心配そうな表情をするリリオンに、心配しなくていいという気持ちを込めてにへらと笑いかける。
 魔力過多症とは、必要以上に身体に魔力を溜め込んでしまう体質だ。溜まった魔力はだるさや熱っぽさなどの症状として現れ、放っておくとどんどん体調が悪くなってしまう。だから毎日一定以上の魔力を消費する必要があった。面倒な体質だと思っていたけど、今日ばかりは己の過分な魔力に感謝だ。

「じゃ、オレは用事もすんだし帰るわ。アミスももう帰る?」
「えっと、ぼくは……図書館に寄ってから帰ります」

 グレン殿下を追いかけて別館まで来たはずだけど、さすがに今日はリリオンも殿下に会いに行くのはやめたようだ。

「そっか。じゃあ本館まで一緒に行く?」
「は、はいっ。エスター様がよければ……お願いします」

 オレの提案に、リリオンはふわりとはにかむ。色づいた頬に髪の色が相まって、桜みたいで可愛いなとオレも頬が緩んだ。

 別館から外に出れば、穏やかな夕日が降り注いでいた。隣に並んで歩くリリオンに視線を向けると、彼の背はオレよりも少しだけ高いことに気づく。いつも自信なさげに背中を丸めているからわからなかった。
 夕日に照らされたピンクブロンドの髪は痛んでいるけど、手入れをすれば絶対に綺麗だろうな。なんて考えていると、いつの間にか本館の前に到着していた。
 本館に入ると、リリオンがオレの前に立って頭を下げる。

「エスター様、助けてくださってありがとうございました。ぼくのできる範囲でよければ、必ずご恩をお返しいたします」
「いやいや、そんな恩とかいいから。それにオレも……」
「……?」

 正直なところ、昨日まで……いや先ほど別館に入るまでのオレなら見ぬ振りしていただろう。だろうというか、していた。だってこれまでも似たような状況があっても、面倒ごとは御免だと傍観を決め込んでいたのだから。頭に流れてきた描写があまりにも痛々しいからとっさに庇って、結果的に助けたことになっていた。それだけ。だからオレは感謝されるような人間じゃない。
 ――なんて正直に言えるわけもないので、苦笑いでごまかす。

「……まあ、とにかく気にしなくていいからな」
「ですが……でも、そうですよね。ぼくに恩返しされたところで、逆にご迷惑になりますよね……」

 顔を上げたリリオンは、悲しげに眉を下げる。濃いピンク色の大きな瞳がうるうると濡れだしたのでオレは慌てて口を開く。

「いや! そうじゃなくて……全然迷惑じゃないから。あー……わかったよ。でも恩返しとかそんな大げさなことじゃなくて……」

 少し考えたあと、オレはふと思いつく。

「じゃあ、名前で呼んでくれよ。敬語もいらないからさ」
「……でも、エスター様は伯爵家の方ですし……」
「んー、別に家を継ぐわけじゃないし。それに、身分ならアミスの方がよっぽど……っと、悪い」

 言いかけて、オレは慌てて謝る。リリオンは困ったように笑いながらお気になさらず、と言った。

「……あー、とにかく。堅苦しいの苦手なんだ。だからさ……な? お礼として、オレからのお願いってことで」

 リリオンはオレの言葉に戸惑うそぶりを見せる。しばらくの沈黙ののち、彼はこくんと頷いた。

「わかりまし……わかった……け、ケイト」
「へへ、よろしくな。オレもリリオンって呼んでいいか?」

 そう尋ねると、リリオンは嬉しそうに破顔する。思わずドキッとしてしまうくらい可愛くて、それでいて綺麗な顔だ。境遇が違えば、彼は男女問わずモテていたに違いない。

「もちろん……! ありがとう。よろしくね、ケイト」
「ああ。よろしくな、リリオン」

 同じクラスで学び始めてから1年以上経っているのに、まるで初対面のような挨拶で思わず笑ってしまう。
 2人でくすくすと笑い合ったあと、図書館へ向かうリリオンを見送ってオレも帰路についた。
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