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3:プロローグ③
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「……さて、ようやく落ち着いたわけだが……」
家に帰り、夕食や入浴をすませたオレは、いつもより早めにベッドに入った。自分の考えを整理するために。
(どうやらオレは異世界転生したらしい……ループもの小説のモブとして)
先ほどリリオンたちを見た瞬間オレの頭に流れ込んできたのは、前世の記憶と前世で読んでいたウェブ小説の内容だった。
魔法が全く存在しない科学技術が発展した世界で、どこにでもいる普通の社会人だった前世のオレ。なんらかの理由で死んで、この世界に転生したらしい。死んだときの記憶はすっぽりと抜けているが、きっと事故とかだろう。文字通り死ぬほど痛かっただろうから思い出せなくてもいいや。
幸い性格や口調は前世も今世もほとんど同じだから、前世の記憶を思い出したことで性格が変わり周囲を困惑させる……みたいな展開は避けられそうだ。ケイトという名前も前世とよく似ているからありがたい。
(転生の方はいいとして……ここが小説の世界かあ)
頭では理解できても、なんとも変な感じだ。オレは今までこの世界の人間として生きてきたし、周りにいる人間も間違いなく生きた人間だから。今さらみんなを文字で書かれた二次元の人物だとはとても思えない。
とはいえ、この世界の出来事を小説として読んだのも事実。実際に今日、リリオンがいじめられる場面に遭遇したわけだし。
(まあ、オレは名前も出てこないモブっぽいから役割とかないけど……大変なのはリリオンだな……)
前世で読んだ小説――原作では、物語の主人公はリリオンなのだ。
(どんな話だったっけな……たしか……)
学園の入学式の朝、目を覚ましたリリオンは自分が何度も死んで世界がループしていたことに気づいた。突然頭に流れ込んできた記憶に驚きながらも、リリオンはループを繰り返した過去を回想していく……っていう出だしだったっけ。
オレは目を閉じて、原作の内容を脳内で再生し始めた。
*
アミス子爵の婚外子として生まれたリリオンは、父親である子爵や夫人、異母兄弟たちから虐げられ酷い扱いを受けていた。
母親とともにつらい日々を送っていたリリオンだったが、ある日彼が『神子』であることが判明する。神子とは神の声を聞くことができ、生涯に一度だけ神に願いを叶えてもらえる存在だ。
国によって神子の扱いが違うので、生まれた国が違えばリリオンは王と同じ地位にいて尊ばれていただろう。だけどこの国での神子は少し特別な存在でしかなかった。有事の際に力を借りる可能性があるから王族と婚姻させ保護はするけど、それだけ。
(しかもリリオンが婚外子という設定のせいで……)
普通に貴族の嫡出子として生まれていたら、リリオンも王女や王家の血を引く女性と婚姻していただろう。だけど婚外子や平民として生まれた神子は王族との間に子孫を残すことを許されず、同性の王族と婚姻しなければいけなかった。
だからリリオンも例に漏れず、第六王子のグレン・アルヴェリード殿下と婚約することになったのだ。グレン殿下が婚約者になった理由は、殿下の母親の身分が低かったから。
(原作のジャンルがほのぼの系とか溺愛系とかだったらリリオンとグレン殿下が仲良くなったんだろうが……)
歴代の神子の中にはもちろん平民や婚外子もいたが、彼らの中には結婚した同性の王族とラブラブになったりよき友人関係を築いた人も少なくはない。だからリリオンもグレン殿下と仲良くしようと頑張ったけど、努力も虚しく殿下との距離は縮まることはなかった。
(グレン殿下にも事情があったんだけど、当然リリオンはそれを知らないわけで……)
そのうえグレン殿下は学園の生徒からの人気が高かった。殿下を慕う生徒は、婚外子なのに神子だという理由で婚約したリリオンを罵倒し嫌がらせをしていく。しかもリリオンは神の声を聞くことができなかったから、出来損ないだ、偽物だと嘲笑われていた。
(そんな毎日が過ぎて……学園の卒業式の日。グレン殿下はリリオンとの婚約を破棄するんだよな……)
ほかの作品ならここで別の人と結婚し、子爵家の人間やグレン殿下たちをざまあ展開でぶっ飛ばしてハッピーエンドとなりそうなもんだが――残念なことに原作はループもの小説だ。王族と結婚もできない、本当に神子かどうかも疑わしい役立たずは使えないと、リリオンは卒業式のあとに子爵家が雇った暗殺者によって殺されてしまう。
幸せになりたいと願いながら息絶えたリリオンだったが――目を覚ますと入学式の日の朝だった。死ぬ直前に願った内容を叶えた神によって、リリオンは回帰することとなったのだ。
(だけどリリオンには回帰した記憶がなかった。だから同じような行動を取り、卒業式の日に婚約破棄され殺され何度も入学式の日に回帰することになるんだけど……)
本編が始まる直前……つまり1つ前のループの際になにかが起こり、リリオンはすべての記憶を宿したまま入学式の朝へと戻ってくる。すべてのループの回想を終え、同じように過ごせばまた殺されると理解した彼は、自分の生きたいように生きることを決意する。
そしてリリオンは、グレン殿下と婚約破棄をして無事に学園を卒業し、子爵家から離れ生きていく方法を模索していく――。
家に帰り、夕食や入浴をすませたオレは、いつもより早めにベッドに入った。自分の考えを整理するために。
(どうやらオレは異世界転生したらしい……ループもの小説のモブとして)
先ほどリリオンたちを見た瞬間オレの頭に流れ込んできたのは、前世の記憶と前世で読んでいたウェブ小説の内容だった。
魔法が全く存在しない科学技術が発展した世界で、どこにでもいる普通の社会人だった前世のオレ。なんらかの理由で死んで、この世界に転生したらしい。死んだときの記憶はすっぽりと抜けているが、きっと事故とかだろう。文字通り死ぬほど痛かっただろうから思い出せなくてもいいや。
幸い性格や口調は前世も今世もほとんど同じだから、前世の記憶を思い出したことで性格が変わり周囲を困惑させる……みたいな展開は避けられそうだ。ケイトという名前も前世とよく似ているからありがたい。
(転生の方はいいとして……ここが小説の世界かあ)
頭では理解できても、なんとも変な感じだ。オレは今までこの世界の人間として生きてきたし、周りにいる人間も間違いなく生きた人間だから。今さらみんなを文字で書かれた二次元の人物だとはとても思えない。
とはいえ、この世界の出来事を小説として読んだのも事実。実際に今日、リリオンがいじめられる場面に遭遇したわけだし。
(まあ、オレは名前も出てこないモブっぽいから役割とかないけど……大変なのはリリオンだな……)
前世で読んだ小説――原作では、物語の主人公はリリオンなのだ。
(どんな話だったっけな……たしか……)
学園の入学式の朝、目を覚ましたリリオンは自分が何度も死んで世界がループしていたことに気づいた。突然頭に流れ込んできた記憶に驚きながらも、リリオンはループを繰り返した過去を回想していく……っていう出だしだったっけ。
オレは目を閉じて、原作の内容を脳内で再生し始めた。
*
アミス子爵の婚外子として生まれたリリオンは、父親である子爵や夫人、異母兄弟たちから虐げられ酷い扱いを受けていた。
母親とともにつらい日々を送っていたリリオンだったが、ある日彼が『神子』であることが判明する。神子とは神の声を聞くことができ、生涯に一度だけ神に願いを叶えてもらえる存在だ。
国によって神子の扱いが違うので、生まれた国が違えばリリオンは王と同じ地位にいて尊ばれていただろう。だけどこの国での神子は少し特別な存在でしかなかった。有事の際に力を借りる可能性があるから王族と婚姻させ保護はするけど、それだけ。
(しかもリリオンが婚外子という設定のせいで……)
普通に貴族の嫡出子として生まれていたら、リリオンも王女や王家の血を引く女性と婚姻していただろう。だけど婚外子や平民として生まれた神子は王族との間に子孫を残すことを許されず、同性の王族と婚姻しなければいけなかった。
だからリリオンも例に漏れず、第六王子のグレン・アルヴェリード殿下と婚約することになったのだ。グレン殿下が婚約者になった理由は、殿下の母親の身分が低かったから。
(原作のジャンルがほのぼの系とか溺愛系とかだったらリリオンとグレン殿下が仲良くなったんだろうが……)
歴代の神子の中にはもちろん平民や婚外子もいたが、彼らの中には結婚した同性の王族とラブラブになったりよき友人関係を築いた人も少なくはない。だからリリオンもグレン殿下と仲良くしようと頑張ったけど、努力も虚しく殿下との距離は縮まることはなかった。
(グレン殿下にも事情があったんだけど、当然リリオンはそれを知らないわけで……)
そのうえグレン殿下は学園の生徒からの人気が高かった。殿下を慕う生徒は、婚外子なのに神子だという理由で婚約したリリオンを罵倒し嫌がらせをしていく。しかもリリオンは神の声を聞くことができなかったから、出来損ないだ、偽物だと嘲笑われていた。
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(だけどリリオンには回帰した記憶がなかった。だから同じような行動を取り、卒業式の日に婚約破棄され殺され何度も入学式の日に回帰することになるんだけど……)
本編が始まる直前……つまり1つ前のループの際になにかが起こり、リリオンはすべての記憶を宿したまま入学式の朝へと戻ってくる。すべてのループの回想を終え、同じように過ごせばまた殺されると理解した彼は、自分の生きたいように生きることを決意する。
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