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第1章 シンデレラはガラスの靴をk点に向かって全力で投げた
very✕Berry✕heavy<61>
しおりを挟む「あれ、課長から着信……。すみません。急ぎかもしれないので電話してきます」
「分かった」
私はベランダに出て、会社に連絡した。
「おはようございます、石崎です」
電話が繋がり、名乗ると電話口から後輩で隣の席のマナベちゃんが出た。
「センパイ。マキさん怒らせませんでした。課長に有給だって言ってるのに、センパイが営業一課に頼まれてた新規の与信審査報告書が出来てなくて仕事始められないって、ボロクソに言ってるんです」
同じ営業部なのに、一課と二課じゃ獲得成績が倍違う。
一課は花形、バンバン新規開拓して案件を取ってくる。
二課は泥仕事、バンバン新規開拓されて溜まる案件の良いところも悪いところも受け止めて、管理する。
あと、あんまりやんちゃな会社と契約して、資金回収困難にならない様、仮審査も担っていて、サブチーフの私が唯一専属としている業務である。
「はあっ?……また? マナベちゃんも覚えてるよね?月曜の午後に送って来た依頼だよね? 」
「ウケますよね? 絶対、長期休暇前に頼み忘れてたんじゃないかって、それも、顔も見せずにメールにデータ添付して至急お願いって……。センパイが来てたらメール原文転送してやるのに。悔しい。マキさん今すぐ来いって言ってますけど。あんまり、好き放題させないで下さい。また、営業二課を目の敵にされる」
マキさんを筆頭に、社内では営業一課上げ、二課下げの力関係で社内の行事や飲み会での役割が違ってくる。
成績の実情は、及ばない。でも、内容は違えど評価はとんとん。どんだけ営業一課の負債のケツ持ってやっているかって話だ。
ある意味、得意が不得意。不得意が得意。もちず持たれずだったのだけど。
それは、マキさんが営業一課に、私が営業二課に転属になってからは本当にマウントがきつい。
「課長に変わって。お願い、何とかうまくやるから、取り敢えず絶対マキさんに変わらないでね。こっちの話を課長にでっち上げそうだから」
「分かってます。マキさんが離れてから変わります」
私はしばし待って課長に電話を繋いでもらった。
「すみません、石崎です」
「ごめんね。有給のところ。悪いけど、今日今から出勤して貰えないかな。ボイコットしているんだって、営業一課が。兎に角、担当の君に謝りに来て欲しいんだと…」
課長は私に対して怒っていると言うより面倒なクレーマーに絡まれたみたいな口ぶりだった。
「そうですが、すみません。でしたら、まず件の与信審査報告書の納期は木曜です。 今日は火曜ですよね?」
「そうだけど、じゃあ、マキチーフは寝ぼけてるのかね?」
「それは分かりかねます。どうしても、急ぎ必要であれば、最終チェックのデータをマキさんのとこの課長が持ってます。 そのチェックデータはメールで送りました。 依頼者のマキさんからの依頼日依頼時間などのすべての内容まで原文のまま送ってますのでその内容で私個人に不信な点が、もしあれば、ご連絡頂ける様、お伝えいただけますか?」
「相変わらず、バチバチやるね。何か彼女を刺激する様な事した? 最近は大人しかったのに」
そりゃ入社で一番最初にマキさんにたげられて、された嫌がらせは数知れない。
さすがに、飽きてからと、一時期冬野さん絡みで、人目に壮絶と言わしめる嫌がらせをされて来たけど、やっと大人しくなってたのに。
あれか、うちの妹が彼女を豚呼ばわりしたことか?
それとも、彼女の上着に盛大に酒を吹き出した事だろうか?
今度会ったら面倒だから土下座シテヤロウカ?
面倒なんで許して下さいって。
「本当に スミマセン。 報連相(ほうれんそう)が間に合わず、課長に御迷惑をおかけしました」
「いや、予言者でもなければ、報告しないだろ」
最初沈んだ様子だった課長の声がいつもの張りを取り戻して聞こえたので、私は心底ほっとした。
「いえ、私が至りませんでした。なので、自分の課長に確認しなかったマキさんの不手際、きちんと指導して頂ける様、お伝えいただけますか?」
「分かった。営業二課の面子にかけて、今回の事はちゃんとしておくよ。良い有給を」
「ありがとうございます」
「君、不死身じゃなくて、無敵なんじゃないかな」
最後の一言。
余計だよ。
何だよ。
全く。
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