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50 白ユリの騎士
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木々の葉が赤く黄色く色づく晩秋、涼しい風が騎士団の鍛錬場を吹き抜けていく。
「行きます!」
闘技場の中央に立つ小さな騎士が声を上げた。
周囲の壁には黒い騎士団の制服を着た騎士たちが、盾を構えて並んでいる。
細く美しく輝くサーベルを構えた中央の騎士だけが、白い制服を着ていた。
「はい!」
白い小さな騎士がサーベルを優雅に振り下ろす。
「はい! はい!」
踊るように立て続けに剣を振る。
その度にバリバリと鋭い音を立てた衝撃波が、右へ左へ中央へと放たれた。
「ひいぃぃ!!」
壁際の騎士たちは悲鳴を上げて盾を構える。
しかしその衝撃は盾には届かず、衝撃波が巻き上げる砂埃が騎士たちの直前まで迫った後、静寂が訪れた。
「やったー! 誰にも当たらなかった!」
白い騎士が細い身体を跳ねさせて喜んでいる。
地面には、その小さく細い身体から放たれたとは思えない衝撃波の軌道が、三方に向かって鋭く刻まれていた。
「すげー! ルイーズ嬢! 距離調整完璧だ!」
騎士たちから歓声が上がった。
サーベルを腰の鞘に納めた白い騎士、ルイーズは満面の笑顔で手を振って歓声に答えた。
「うっ! 今の精神攻撃が一番えぐい」
「なんなのあれ? 舞踏? 舞踊? どっちにしても可憐が過ぎる」
ハートにブスブスと矢を受けた騎士たちが身悶えた。
「今日は終わるぞ。ほら、動けー」
ルイーズの従兄弟アルベールが、白い騎士の精神攻撃にしてやられてしまった皆に発破をかける。
太陽は沈みかけ、周囲にはうっすら夜の気配が近づいていた。
「ふぅ、疲れた」
私が闘技場の中央で座り込むと、アニーが掛け依って来て疲労回復ジュースを差し出す。
一気に飲むと体中に小さなエネルギーが広がった。
「ルイーズ嬢ちゃん、上達早ぇな。もうここまで来たか」
騎士たちが片付けでせせこましく動く中、大公将軍がお父様とビクトリア様を従えてこちらへ向かって来た。
私は立ち上がって騎士の礼を取る。
「ルイーズ、制服似合うわぁ。どう、お父様。白にして正解だったでしょう?」
私はお三方に上から下まで眺められて恥ずかしくなる。
「そうだな。ガルガンも白い鎧を纏っていたというしな」
「ガルガンは『白い災い』と呼ばれていたのでしょう? ルイーズは『白ユリの騎士』って呼ばれているのよ」
ビクトリア様は自分の事のように誇らしげに言う。
大公親子の会話に私は本格的に顔が赤くなった。
「やめてください、ビクトリア様。それより、判決が出たのですか?」
私はお父様に尋ねた。
「うん。今日で全ての結果が出たよ」
そう。今日が数日続いた貴族裁判の最終日だった。
元宰相、バルリ候のお粗末な謀反が全て晒され、判決が下されたのだ。
それに伴うリリア妃の行いにも沙汰が下されたはずだ。
テオドリック様、エルミナ様も、親の判決により今後の身の振り方が変わるだろう。
「教えて下さい」
私が大公様の目を見て言うと、大公様は青い目を温かく緩ませた。
「じゃあ、食事でも一緒にするか。着替えて家族でうちに来な」
「やった! ルイーズ、私のドレスを貸すわ」
ビクトリア様が私の腕に絡みつく。
最近は大公様のお屋敷でお世話になる事も多く、ビクトリア様は私をコーディネートするのが楽しくて仕方が無いようだ。
「では私は妻を迎えに行きます」
お父様はとっとと帰ってしまう。
「う~ん。ビクトリア様、今日は控え目にお願いしますわ」
毎回これでもか! とおしゃれをさせられるので、あらかじめ希望を出しておく。
「ふっ、ふっ、ふっ。任せて。今日のテーマは決まっているの」
ビクトリア様は私の腕を引っ張って邸宅へ促す。
その青い瞳がキラリと輝いた事に、私は気が付かなかった。
「行きます!」
闘技場の中央に立つ小さな騎士が声を上げた。
周囲の壁には黒い騎士団の制服を着た騎士たちが、盾を構えて並んでいる。
細く美しく輝くサーベルを構えた中央の騎士だけが、白い制服を着ていた。
「はい!」
白い小さな騎士がサーベルを優雅に振り下ろす。
「はい! はい!」
踊るように立て続けに剣を振る。
その度にバリバリと鋭い音を立てた衝撃波が、右へ左へ中央へと放たれた。
「ひいぃぃ!!」
壁際の騎士たちは悲鳴を上げて盾を構える。
しかしその衝撃は盾には届かず、衝撃波が巻き上げる砂埃が騎士たちの直前まで迫った後、静寂が訪れた。
「やったー! 誰にも当たらなかった!」
白い騎士が細い身体を跳ねさせて喜んでいる。
地面には、その小さく細い身体から放たれたとは思えない衝撃波の軌道が、三方に向かって鋭く刻まれていた。
「すげー! ルイーズ嬢! 距離調整完璧だ!」
騎士たちから歓声が上がった。
サーベルを腰の鞘に納めた白い騎士、ルイーズは満面の笑顔で手を振って歓声に答えた。
「うっ! 今の精神攻撃が一番えぐい」
「なんなのあれ? 舞踏? 舞踊? どっちにしても可憐が過ぎる」
ハートにブスブスと矢を受けた騎士たちが身悶えた。
「今日は終わるぞ。ほら、動けー」
ルイーズの従兄弟アルベールが、白い騎士の精神攻撃にしてやられてしまった皆に発破をかける。
太陽は沈みかけ、周囲にはうっすら夜の気配が近づいていた。
「ふぅ、疲れた」
私が闘技場の中央で座り込むと、アニーが掛け依って来て疲労回復ジュースを差し出す。
一気に飲むと体中に小さなエネルギーが広がった。
「ルイーズ嬢ちゃん、上達早ぇな。もうここまで来たか」
騎士たちが片付けでせせこましく動く中、大公将軍がお父様とビクトリア様を従えてこちらへ向かって来た。
私は立ち上がって騎士の礼を取る。
「ルイーズ、制服似合うわぁ。どう、お父様。白にして正解だったでしょう?」
私はお三方に上から下まで眺められて恥ずかしくなる。
「そうだな。ガルガンも白い鎧を纏っていたというしな」
「ガルガンは『白い災い』と呼ばれていたのでしょう? ルイーズは『白ユリの騎士』って呼ばれているのよ」
ビクトリア様は自分の事のように誇らしげに言う。
大公親子の会話に私は本格的に顔が赤くなった。
「やめてください、ビクトリア様。それより、判決が出たのですか?」
私はお父様に尋ねた。
「うん。今日で全ての結果が出たよ」
そう。今日が数日続いた貴族裁判の最終日だった。
元宰相、バルリ候のお粗末な謀反が全て晒され、判決が下されたのだ。
それに伴うリリア妃の行いにも沙汰が下されたはずだ。
テオドリック様、エルミナ様も、親の判決により今後の身の振り方が変わるだろう。
「教えて下さい」
私が大公様の目を見て言うと、大公様は青い目を温かく緩ませた。
「じゃあ、食事でも一緒にするか。着替えて家族でうちに来な」
「やった! ルイーズ、私のドレスを貸すわ」
ビクトリア様が私の腕に絡みつく。
最近は大公様のお屋敷でお世話になる事も多く、ビクトリア様は私をコーディネートするのが楽しくて仕方が無いようだ。
「では私は妻を迎えに行きます」
お父様はとっとと帰ってしまう。
「う~ん。ビクトリア様、今日は控え目にお願いしますわ」
毎回これでもか! とおしゃれをさせられるので、あらかじめ希望を出しておく。
「ふっ、ふっ、ふっ。任せて。今日のテーマは決まっているの」
ビクトリア様は私の腕を引っ張って邸宅へ促す。
その青い瞳がキラリと輝いた事に、私は気が付かなかった。
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