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最初の夫婦と最初の娘たちの話
この世界で最初の仕立屋さん
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広い広い大地には、人が最初の夫婦の二人と最初の夫婦の最初の娘と最初の双子の娘とこの世で最初の逆子の娘しかおりませんでした。
夫の人はこの世で最初のお父さんで、この世で最初のお百姓さんでした。
妻の人はこの世で最初のお母さんで、この世で最初の機織り職人さんでした。
最初の娘はこの世で最初の赤ん坊で、この世で最初のお医者さんで、この世で最初のお産婆さんでした。
次の娘たちはこの世で最初の双子で、先に生まれた方はこの世で最初の猟師さんでした。
後に生まれた方はこの世で最初の料理人さんでした。
その次に生まれた娘はこの世で最初の逆子で、この世で最初の仕立屋さんになる人でした。
この世には最初の織り子がいて、いろいろな布が織られておりましたが、それを着る物に縫い上げられる者がまだおりませんでした。
ですから、この世で最初の夫婦とその子供たちは、みな一枚の布や一枚の皮を体に巻き付けていたのです。
一枚の布を体に巻いて畑の仕事をしますと、動く内に解けて裸になってしまいます。
一枚の布を体に巻いて機織りの仕事をしますと、動く内に糸車や織機に巻き込まれて破れてしまいます。
一枚の布を不自由な体に巻いて仕事をしておりますと、動く内に折り目が片側に依ってかさばってしまいます。
一枚の布を体に巻いて狩りに出かけますと、身を隠すときに端が茂みの外へ出て獲物に見つかってしまいます。
一枚の布を体に巻いて料理をしますと、鍋の上に手を伸ばしたときに端が火にふれて焦げてしまいます。
みなが不便にしておりましたので、ポイベはみなが働きやすい衣服を作らなければなりませんでした。
この世で最初の逆子で生まれた娘のポイベはまず一番最初に鹿の角で針を作りました。
それからこの世で最初の機織り職人さんが織り上げた布と撚った糸を取って、ちくりちくりと縫い合わせました。
麻で織った布をたたんでは縫い合わせ、羊毛で織った布をたたんでは縫い合わせ、綿で織った布をたたんでは縫い合わせました。
それに、この世で最初の猟師さんが仕留めて剥がした獣の皮も、たたんで揃えて縫い合わせました。
何分この世で最初の仕立屋さんですから、何が仕事着に良い布で、どれが寝間着に良い布なのかが判りません。どこをどれほど縫い止めればよいのか、何処をどのように断ち切ればよいのか判りません。
何もかも一人で全部やらなければならないのです。何しろこの世に仕立屋さんは一人きりしかいないのですからね。
誰も知らぬことをこの世で最初に試すのですから、間違って布を裂いてしまうこともありました。間違って手に針を刺すこともありました。
そういったわけで、この世で最初の逆子の娘は、生まれたときのおとなしさをそのままに、こつこつ黙々と無口な人になりました。
それでもこの世で最初の仕立屋さんのポイベは、少しずつ脱げづらいズボンの作り方を憶え、破れにくい袖の付け方を憶え、引き攣れない身頃の形を憶え、引っ掛からない上着の作り方を憶え、火に強い前掛けの作り方を憶えました。
ポイベは針山を腕に巻き付けて、色々な衣服を作って、この世で最初の夫婦が住まいにしている岩の洞窟の中に並べました。
夫の人はこの世で最初のお父さんで、この世で最初のお百姓さんでした。
妻の人はこの世で最初のお母さんで、この世で最初の機織り職人さんでした。
最初の娘はこの世で最初の赤ん坊で、この世で最初のお医者さんで、この世で最初のお産婆さんでした。
次の娘たちはこの世で最初の双子で、先に生まれた方はこの世で最初の猟師さんでした。
後に生まれた方はこの世で最初の料理人さんでした。
その次に生まれた娘はこの世で最初の逆子で、この世で最初の仕立屋さんになる人でした。
この世には最初の織り子がいて、いろいろな布が織られておりましたが、それを着る物に縫い上げられる者がまだおりませんでした。
ですから、この世で最初の夫婦とその子供たちは、みな一枚の布や一枚の皮を体に巻き付けていたのです。
一枚の布を体に巻いて畑の仕事をしますと、動く内に解けて裸になってしまいます。
一枚の布を体に巻いて機織りの仕事をしますと、動く内に糸車や織機に巻き込まれて破れてしまいます。
一枚の布を不自由な体に巻いて仕事をしておりますと、動く内に折り目が片側に依ってかさばってしまいます。
一枚の布を体に巻いて狩りに出かけますと、身を隠すときに端が茂みの外へ出て獲物に見つかってしまいます。
一枚の布を体に巻いて料理をしますと、鍋の上に手を伸ばしたときに端が火にふれて焦げてしまいます。
みなが不便にしておりましたので、ポイベはみなが働きやすい衣服を作らなければなりませんでした。
この世で最初の逆子で生まれた娘のポイベはまず一番最初に鹿の角で針を作りました。
それからこの世で最初の機織り職人さんが織り上げた布と撚った糸を取って、ちくりちくりと縫い合わせました。
麻で織った布をたたんでは縫い合わせ、羊毛で織った布をたたんでは縫い合わせ、綿で織った布をたたんでは縫い合わせました。
それに、この世で最初の猟師さんが仕留めて剥がした獣の皮も、たたんで揃えて縫い合わせました。
何分この世で最初の仕立屋さんですから、何が仕事着に良い布で、どれが寝間着に良い布なのかが判りません。どこをどれほど縫い止めればよいのか、何処をどのように断ち切ればよいのか判りません。
何もかも一人で全部やらなければならないのです。何しろこの世に仕立屋さんは一人きりしかいないのですからね。
誰も知らぬことをこの世で最初に試すのですから、間違って布を裂いてしまうこともありました。間違って手に針を刺すこともありました。
そういったわけで、この世で最初の逆子の娘は、生まれたときのおとなしさをそのままに、こつこつ黙々と無口な人になりました。
それでもこの世で最初の仕立屋さんのポイベは、少しずつ脱げづらいズボンの作り方を憶え、破れにくい袖の付け方を憶え、引き攣れない身頃の形を憶え、引っ掛からない上着の作り方を憶え、火に強い前掛けの作り方を憶えました。
ポイベは針山を腕に巻き付けて、色々な衣服を作って、この世で最初の夫婦が住まいにしている岩の洞窟の中に並べました。
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