フレキ=ゲー編ガップ民話集

神光寺かをり

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最初の夫婦と最初の娘たちの話

この世で一番最初の牧童

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 広い広い大地には、人が最初の夫婦の二人と最初の夫婦の最初の娘と最初の双子の娘とこの世で最初の逆子の娘とこの世で最初の掌に乗るほどに小さな体で生まれた娘しかおりませんでした。

 夫の人はこの世で最初のお父さんで、この世で最初のお百姓さんでした。
 妻の人はこの世で最初のお母さんで、この世で最初の機織り職人さんでした。
 最初の娘はこの世で最初の赤ん坊で、この世で最初のお医者さんで、この世で最初のお産婆さんでした。
 次の娘たちはこの世で最初の双子で、先に生まれた方はこの世で最初の猟師さんでした。
 後に生まれた方はこの世で最初の料理人さんでした。
 その次の娘はこの世で最初の逆子で、この世で最初の仕立屋さんでした。
 そのまた次に生まれた娘はこの世で最初の掌に乗るほどに小さな体で生まれた赤ん坊で、この世で最初の牧童さんになる人でした。

 この世には最初の機織り職人さんがいて、最初の料理人さんがおりましたので、毛を取るための毛玉牛も乳を捕るための毛無牛も飼われておりましたけれども、機織り職人さんは機を織るのに忙しく、料理人さんは料理を作るのに忙しいので、牛たちの世話をする者がいなかったのです。
 ですから、この世で最初の夫婦とその子供たちが飼っている牛たちは、ときどき酷く飢えて、ときどき酷く渇いて、ときどき遠くへ逃げ出して、ときどき山犬に襲われました。
 そういったわけで、牛たちの数が増えることはありませんでしたし、採れる毛の量は増えませんでしたし、採れる乳の量は少ないままでした。

 この世で最初の掌に乗るほどに小さな体で生まれた娘のディーヴィはまず一番最初にハシバミの木で持ち手が丸く曲がった杖を作りました。
 それから、その杖を持って良く草の生えた場所を探して出かけました。

 この世で最初の牧童さんは、昼は杖で牛たちを導いて餌やり水やりをして、夜は杖で山犬たちを追い払いました。
 しかし何分この世で最初の牧童さんですから、何処へ放牧すればよいのか、何処が近づけてはいけない場所なのか判りません。いつにどれほど毛を刈って良いのか、どれがどれほど乳を出すのか判りません。
 何もかも一人で全部やらなければならないのです。何しろこの世に牧童さんは一人きりしかいないのですからね。
 誰も知らぬことをこの世で最初に試すのですから、間違って牛たちを弱らせてしまうこともありました。間違って山犬に噛まれてしまうこともありました。

 そういったわけで、この世で最初のこの世で最初の掌に乗るほどに小さな体で生まれた娘は、小柄ながらも利発な人になりました。

 この世で最初の牧童さんのディーヴィは、少しずつ季節毎の牧草の生える場所を憶え、何カ所かの水場を憶え、毛を刈るのによい時期を憶え、乳を搾るのに良い方法を憶え、山犬の追い払い方を憶えました。
 ディーヴィはたくさん生まれた牛の子供たちを連れて、この世で最初の夫婦が住まいにしている岩の洞窟に戻ってきました。
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