76 / 77
小さな坊やと小さなおじいさんのお話
おおそうじ
しおりを挟む
よく遊んでたくさんご飯を食べたその日。
坊やは予定通り一回夢を見たトコロで目を覚ましました。
今夜は三日月。早寝早起きなこのお月様と、南向きの窓からお話しするには、ちょうど良い時間です。
ところが!
「大変だ、お月さまがいない!」
空は真っ黒でした。ほっそり月の柔らかい明かりは、どこを見ても見つかりません。
空いっぱいに広がっているはずの、きらきら星の光も、一粒だってありません。
不思議なことに、月も星もないのに、外はいつも通り、いえ、いつもより明るいのです。
窓から首を出すと、坊やの眠たさが、パンとはじけ飛びました。
普段は空にいる星が、庭の芝生の上で、空にいるのと同じように、きらきら楽しく輝いていたのです。
そしてそのきらきらの間を、おじいさんと犬のシロが、ふんわりと歩いていました。
坊やは大急ぎで庭に出ました。
「おじいさん、おじいさん、いったいどうしたの?」
「可愛い坊や。お星様達はみんな、雑巾がけが終わるのを待ってるのさ」
おじいさんは空を指さしました。いくつもの白や灰色の雲が、真っ黒けの空を、行ったり来たりしていました。
尖った星や丸い星が、坊やの周りにそっと寄ってキラキラ光を放ちます。
それはとても美しい景色でした。でも、坊やの心は心配に満ちていました。
「お星様はみんなお庭にいるのに、お月さまはどこにもいないよ?」
するとおじいさんは、今度上の方を指さしました。ただし、指先はさっきよりも低い、斜め上に向いています。
坊やがおじいさんの指が指している方を見ると、坊やの目は高い高い木の枝の上ににたどり着きました。
そして、そこにはほっそり月が腰掛けていたのです。
お月様はいつもよりずっと近いところから、坊やの顔を見下ろしています。
そうしてこの夜は――。
ほっそりお月さまとたくさんのお星さま達は、雑巾がけが終わって、お掃除係がお迎えに来ても、空には帰りませんでした。
みんなは、お日様に叱られるまで、坊やのそばで優しく輝いていました。
坊やは予定通り一回夢を見たトコロで目を覚ましました。
今夜は三日月。早寝早起きなこのお月様と、南向きの窓からお話しするには、ちょうど良い時間です。
ところが!
「大変だ、お月さまがいない!」
空は真っ黒でした。ほっそり月の柔らかい明かりは、どこを見ても見つかりません。
空いっぱいに広がっているはずの、きらきら星の光も、一粒だってありません。
不思議なことに、月も星もないのに、外はいつも通り、いえ、いつもより明るいのです。
窓から首を出すと、坊やの眠たさが、パンとはじけ飛びました。
普段は空にいる星が、庭の芝生の上で、空にいるのと同じように、きらきら楽しく輝いていたのです。
そしてそのきらきらの間を、おじいさんと犬のシロが、ふんわりと歩いていました。
坊やは大急ぎで庭に出ました。
「おじいさん、おじいさん、いったいどうしたの?」
「可愛い坊や。お星様達はみんな、雑巾がけが終わるのを待ってるのさ」
おじいさんは空を指さしました。いくつもの白や灰色の雲が、真っ黒けの空を、行ったり来たりしていました。
尖った星や丸い星が、坊やの周りにそっと寄ってキラキラ光を放ちます。
それはとても美しい景色でした。でも、坊やの心は心配に満ちていました。
「お星様はみんなお庭にいるのに、お月さまはどこにもいないよ?」
するとおじいさんは、今度上の方を指さしました。ただし、指先はさっきよりも低い、斜め上に向いています。
坊やがおじいさんの指が指している方を見ると、坊やの目は高い高い木の枝の上ににたどり着きました。
そして、そこにはほっそり月が腰掛けていたのです。
お月様はいつもよりずっと近いところから、坊やの顔を見下ろしています。
そうしてこの夜は――。
ほっそりお月さまとたくさんのお星さま達は、雑巾がけが終わって、お掃除係がお迎えに来ても、空には帰りませんでした。
みんなは、お日様に叱られるまで、坊やのそばで優しく輝いていました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる