2 / 13
第2話 兵部
しおりを挟む
聞きなじんだ声だ。不機嫌を隠さない声音だ。
源五郎はさらに背を反り返らせた。
真っ逆さまの世界では、戸障子が開け放たれていた。四角く切り取られた淡い逆光の中に、二つの人型の影がある。
一つは、戸障子の向こう側にあって、おびえた青白い顔で室内をのぞき込んでいる。これは源五郎に仕える若党の筧十兵衛だ。
もう一つ、戸障子の内側に入りつつある、不満を満たした赤い顔で、刀痕のような細く鋭い目をしている。源五郎を睨むこの若者は、
『室賀兵部』
源五郎は口の中で彼の名を呟いた。覚えず口元がゆがむ。
「何がおかしい?」
兵部は床を踏みならして源五郎に近寄った。ドスンと大きく音を立てて尻を落とし、袖を態とらしく大きく翻した大きなな動きの所作で、源五郎の背後に胡座する。
背後といっても、このときの源五郎は海老反りに後ろを向いていたのだから、兵部の不機嫌顔をまともに――真っ逆さまに――見ていることになる。
「何もおかしくはない」
源五郎は背のそりをゆっくりと戻し、体をゆっくりと反転させ、室賀兵部と向き合いに座り直した。座り直したが、いらつきの度を増しつつある兵部の顔は見ていない。
まず源五郎が見たのは、戸口の向こうで当惑し、不安げに若い主人の顔色をうかがっている十兵衛であった。
「十よ」
呼びかけて、目顔で下がる様に命じると、十兵衛の顔にぱっと安堵の色が広がった。
一礼して小走りに去って行く十兵衛の背から、これもゆっくりと兵部の渋っ面へと目を移した源五郎は、
「貴殿こそ、某に何かご用か?」
もったいぶった丁寧さで訊き返した。
室賀兵部大夫正武は、真田源五郎昌幸と同じく信濃国人衆であり、源五郎と同様に武田家に差し出された証人だ。
年頃も源五郎と近い。境遇も幾分似ている。源五郎は三男坊だが、兵部もまた上に兄が――源五郎が知る限りでは二人――いる。
武家の三男といえば、長じれば兄の家来となり、あるいは他家に養子に出される立場である。
実際、源五郎は養子に出ることが決まっている。
他方、兵部は実質的な嫡男であった。
彼の長兄は若くして急逝している。次兄は同じ村上氏の一族で、峠を一つ超えた隣郷の領主である屋代家へ養子に入っていた。
跡継ぎのお鉢は、彼の元に回されてきたのだ。
室賀家は清和源氏村上氏の支流で、信濃国小県郡の室賀鄕を治めている。その郷は、千曲川の左岸であり、上田盆地の南側が勢力域だ。居城は山裾にある。
真田家の所領であった真田鄕は、同じ小県郡だが、千曲川という暴れ川を一つと、太郎山という面倒な山と、それらが創り出した盆地とを挟んで、北側に位置している。
二つの家は、遠い様な近い様な、実に持って微妙な距離で向かい合っていた。
しかし、境を接していないからといって、争いがないという訳ではない。お互いに勢力圏を広げようとして、間に点在する小豪族を巻き込んでの小競り合いが度々起きている。
今は両家とも武田家に従っているから、直接に斬り合う様な争い事は止んでいるが、水面下での確執は「全くない」とは言い切れぬ物がある。
室賀郷と屋代郷の間にある室賀峠は、万葉の昔には既に京から越後へ抜ける街道の要所であった。幾人もの公卿、あるいは有名無名の歌人たちが、この地を歌に吟じている。
時は過ぎ、戦国乱世となっても、この地の重要性は変わらない。
彼の地は、甲斐武田の勢力が越後上杉のそれとぶつかる境界線の最先端だからだ。
故に武田方としては、室賀家が上杉方へ付いてしまっては困る。
何分、室賀家の本家は長く敵対している村上氏で、これは上杉と親しい。絶対に裏切らないと確信出来る重要な人質を取っておかねばならない。
室賀家としても、武田に攻め立てられては困る。
なにしろ周囲の信濃国衆は殆ど武田の麾下にあるのだ。万が一の時は、全方位から矢玉が飛んでくることになる。絶対に裏切らないと信用されるに足る重要人物を証人にせねばならぬ。
双方の思惑によって、室賀の実質的な嫡男は証人として武田に差し出され、躑躅ヶ崎館に棲み暮らすことを余儀なくされていた。
向き合いに座った二人は、しばらく言葉を発しなかった。
部屋の中の火は、小袖をかぶった火桶の埋め火だけだ。
床板が冷たい。
どれほど黙りこくっていたものか。当人達が思うほどは長くはない時が流れた後、しびれを切らしたのは兵部であった。
「餞別をよこせ」
出し抜けに言う。
源五郎の片方の眉が僅かに持ち上がった。
「おぬし、どこかへ行くのか?」
「信濃に帰る」
「それは、お屋形様のご命で?」
「お屋形様からはお許しを得ている」
「つまり、ご命令ではないのだな?」
「お屋形様に行って良しと言われたのだから、同じ事だ」
「何事のために?」
「父が……寝込んだ」
「一葉軒殿が?」
源五郎の背筋が伸びた。
室賀満正も真田幸綱がそうしたのと同じように、信玄の出家に伴って頭を丸めて、一葉軒入道を号している。
「父も高齢ゆえ、道号が戒名になるやも知れない」
冗談や軽口で言っているのはないことが、源五郎にもすぐに知れた。兵部の顔色が青白く変じている。
「急な事だ」
源五郎は低い声を絞り出した。
「下の弟の源七郎がわしの代わりに証人として出される。というか、もうわしの代わりにわしの部屋に入っておる」
「さすがに名家・室賀家のすることだ。早手回しだな」
「ほざくな」
「なんの。本心そう思って、感心して言っているのだ」
「抜かせ」
吐き捨てるかの如くいい、兵部は口を固く結んだ。何か別にいいたいことがありそうなのだが、それを言葉に出来ない、いい出せない、そんなもどかしさが、ヒクヒクと動く唇の端から見て取れる。
黙り込んでいる兵部の様子に、かえって源五郎の方がじれったくなって、
「で、いつ出立する?」
呼び水を入れた。兵部は間髪を入れずに、
「今、すぐにだ。迎えが外で待っている」
この答えには源五郎も驚かざるをえない。
「それは……さすがの名家・室賀家のすることでも、いささか早手回しに過ぎないか?」
「うるさい」
小さく、鋭く、くしゃみのように言って、兵部は奥歯を強くかみしめた。こめかみが拍動している。
確かに、人質暮らしは気苦労が多い。
送られてきた証人は、敵対していた、あるいは味方ではなかった勢力からやってきた、言ってみれば「訳ありの新参者」であるのだから、武田家の旗本である甲斐衆からの風当たりも無いではない。
その辛さはあったにしても、人才済々たる武田信玄の幕屋内にあれば、故郷の、それこそ山奥の片田舎である信濃小県では、まず見聞きすることも学び取ることも出来ない事柄と出会う喜びが山とある。人質とならねば親しく知り合う事も無かったであろう人々が、ここはいる。
兵部は甲府を離れたくないのだろう。
少なくとも、これほど急に、慌ただしく引き戻されるような帰還は、望んでいないに違いない。
源五郎は大きく息を吐き出した。
源五郎はさらに背を反り返らせた。
真っ逆さまの世界では、戸障子が開け放たれていた。四角く切り取られた淡い逆光の中に、二つの人型の影がある。
一つは、戸障子の向こう側にあって、おびえた青白い顔で室内をのぞき込んでいる。これは源五郎に仕える若党の筧十兵衛だ。
もう一つ、戸障子の内側に入りつつある、不満を満たした赤い顔で、刀痕のような細く鋭い目をしている。源五郎を睨むこの若者は、
『室賀兵部』
源五郎は口の中で彼の名を呟いた。覚えず口元がゆがむ。
「何がおかしい?」
兵部は床を踏みならして源五郎に近寄った。ドスンと大きく音を立てて尻を落とし、袖を態とらしく大きく翻した大きなな動きの所作で、源五郎の背後に胡座する。
背後といっても、このときの源五郎は海老反りに後ろを向いていたのだから、兵部の不機嫌顔をまともに――真っ逆さまに――見ていることになる。
「何もおかしくはない」
源五郎は背のそりをゆっくりと戻し、体をゆっくりと反転させ、室賀兵部と向き合いに座り直した。座り直したが、いらつきの度を増しつつある兵部の顔は見ていない。
まず源五郎が見たのは、戸口の向こうで当惑し、不安げに若い主人の顔色をうかがっている十兵衛であった。
「十よ」
呼びかけて、目顔で下がる様に命じると、十兵衛の顔にぱっと安堵の色が広がった。
一礼して小走りに去って行く十兵衛の背から、これもゆっくりと兵部の渋っ面へと目を移した源五郎は、
「貴殿こそ、某に何かご用か?」
もったいぶった丁寧さで訊き返した。
室賀兵部大夫正武は、真田源五郎昌幸と同じく信濃国人衆であり、源五郎と同様に武田家に差し出された証人だ。
年頃も源五郎と近い。境遇も幾分似ている。源五郎は三男坊だが、兵部もまた上に兄が――源五郎が知る限りでは二人――いる。
武家の三男といえば、長じれば兄の家来となり、あるいは他家に養子に出される立場である。
実際、源五郎は養子に出ることが決まっている。
他方、兵部は実質的な嫡男であった。
彼の長兄は若くして急逝している。次兄は同じ村上氏の一族で、峠を一つ超えた隣郷の領主である屋代家へ養子に入っていた。
跡継ぎのお鉢は、彼の元に回されてきたのだ。
室賀家は清和源氏村上氏の支流で、信濃国小県郡の室賀鄕を治めている。その郷は、千曲川の左岸であり、上田盆地の南側が勢力域だ。居城は山裾にある。
真田家の所領であった真田鄕は、同じ小県郡だが、千曲川という暴れ川を一つと、太郎山という面倒な山と、それらが創り出した盆地とを挟んで、北側に位置している。
二つの家は、遠い様な近い様な、実に持って微妙な距離で向かい合っていた。
しかし、境を接していないからといって、争いがないという訳ではない。お互いに勢力圏を広げようとして、間に点在する小豪族を巻き込んでの小競り合いが度々起きている。
今は両家とも武田家に従っているから、直接に斬り合う様な争い事は止んでいるが、水面下での確執は「全くない」とは言い切れぬ物がある。
室賀郷と屋代郷の間にある室賀峠は、万葉の昔には既に京から越後へ抜ける街道の要所であった。幾人もの公卿、あるいは有名無名の歌人たちが、この地を歌に吟じている。
時は過ぎ、戦国乱世となっても、この地の重要性は変わらない。
彼の地は、甲斐武田の勢力が越後上杉のそれとぶつかる境界線の最先端だからだ。
故に武田方としては、室賀家が上杉方へ付いてしまっては困る。
何分、室賀家の本家は長く敵対している村上氏で、これは上杉と親しい。絶対に裏切らないと確信出来る重要な人質を取っておかねばならない。
室賀家としても、武田に攻め立てられては困る。
なにしろ周囲の信濃国衆は殆ど武田の麾下にあるのだ。万が一の時は、全方位から矢玉が飛んでくることになる。絶対に裏切らないと信用されるに足る重要人物を証人にせねばならぬ。
双方の思惑によって、室賀の実質的な嫡男は証人として武田に差し出され、躑躅ヶ崎館に棲み暮らすことを余儀なくされていた。
向き合いに座った二人は、しばらく言葉を発しなかった。
部屋の中の火は、小袖をかぶった火桶の埋め火だけだ。
床板が冷たい。
どれほど黙りこくっていたものか。当人達が思うほどは長くはない時が流れた後、しびれを切らしたのは兵部であった。
「餞別をよこせ」
出し抜けに言う。
源五郎の片方の眉が僅かに持ち上がった。
「おぬし、どこかへ行くのか?」
「信濃に帰る」
「それは、お屋形様のご命で?」
「お屋形様からはお許しを得ている」
「つまり、ご命令ではないのだな?」
「お屋形様に行って良しと言われたのだから、同じ事だ」
「何事のために?」
「父が……寝込んだ」
「一葉軒殿が?」
源五郎の背筋が伸びた。
室賀満正も真田幸綱がそうしたのと同じように、信玄の出家に伴って頭を丸めて、一葉軒入道を号している。
「父も高齢ゆえ、道号が戒名になるやも知れない」
冗談や軽口で言っているのはないことが、源五郎にもすぐに知れた。兵部の顔色が青白く変じている。
「急な事だ」
源五郎は低い声を絞り出した。
「下の弟の源七郎がわしの代わりに証人として出される。というか、もうわしの代わりにわしの部屋に入っておる」
「さすがに名家・室賀家のすることだ。早手回しだな」
「ほざくな」
「なんの。本心そう思って、感心して言っているのだ」
「抜かせ」
吐き捨てるかの如くいい、兵部は口を固く結んだ。何か別にいいたいことがありそうなのだが、それを言葉に出来ない、いい出せない、そんなもどかしさが、ヒクヒクと動く唇の端から見て取れる。
黙り込んでいる兵部の様子に、かえって源五郎の方がじれったくなって、
「で、いつ出立する?」
呼び水を入れた。兵部は間髪を入れずに、
「今、すぐにだ。迎えが外で待っている」
この答えには源五郎も驚かざるをえない。
「それは……さすがの名家・室賀家のすることでも、いささか早手回しに過ぎないか?」
「うるさい」
小さく、鋭く、くしゃみのように言って、兵部は奥歯を強くかみしめた。こめかみが拍動している。
確かに、人質暮らしは気苦労が多い。
送られてきた証人は、敵対していた、あるいは味方ではなかった勢力からやってきた、言ってみれば「訳ありの新参者」であるのだから、武田家の旗本である甲斐衆からの風当たりも無いではない。
その辛さはあったにしても、人才済々たる武田信玄の幕屋内にあれば、故郷の、それこそ山奥の片田舎である信濃小県では、まず見聞きすることも学び取ることも出来ない事柄と出会う喜びが山とある。人質とならねば親しく知り合う事も無かったであろう人々が、ここはいる。
兵部は甲府を離れたくないのだろう。
少なくとも、これほど急に、慌ただしく引き戻されるような帰還は、望んでいないに違いない。
源五郎は大きく息を吐き出した。
1
あなたにおすすめの小説
高遠の翁の物語
本広 昌
歴史・時代
時は戦国、信州諏方郡を支配する諏方惣領家が敵に滅ぼされた。
伊那郡高遠の主、諏方頼継は惣領家家族のうち、齢十一歳の姫君を、ひょんなことから保護できた。
頼継は豪傑でもなければ知将でもない。その辺の凡将だろう。
それでも若き姫を守りながら、滅びた惣領家の再興を叶えるため、死に物狂いで強大な敵に立ち向かっていく歴史物語。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる