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俺、今、女子オタ充
俺、今、女子夏休み突入
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気づけば夏休みであった。しかしその始まりは祝日。会社員の方には海の日という祝日で重宝する日であるが、学生にはにはもともと夏休みとして設定されているその日。
なんとなく無駄というか、勿体無い日であった。休みの途中に祝日あるのは許容しよう。でも最初の日がそれと言うのは、どうにもテンションが下がらざるをえないカレンダーである。
国民の祝日をつくる偉い人も少しは学生のことを考えてほしいものだ。海だとか、山だとか——祝日作るなら、夏休みとか冬休みと違う時に設定してもらえないだろうか。
特に、できれば六月。
六月に祝日が欲しい。
以前、親の実家にお盆に泊まりに行った時に暇で読んだ——年の離れた親戚のお兄さんの子供の頃にコンプリートで買った——ドラえもんのマンガで、のび太が同じことを嘆いていたのを覚えているが……。
本当に六月はいつまでたっても祝日が無い。
——祝日が無い月の仲間としては、八月があったが、……そこにも山の日などが制定されるし。聞けば、——その山の日の前に作られた祝日も海の日の七月!
まあ海の日は、自分が生まれる前のことであまり実感はないが、山の日のついでに調べたら、……そうだった。
——なんだこれは?
俺は少々の憤りとともに思うのだった。
なんで新しい祝日をつくるのに、二回連続で夏休み期間を狙うのだろう?
なんで、何もない六月に祝日を作ってくれないのだろう?
確かに、梅雨で雨ばっかのイメージのあるその月には、海にも山にもあまりふさわしくなさそうだが……じゃあ雨の日でも良いじゃないか!
雨の祝日作れば良いじゃないか。
雨! 雨重要だよ。雨!
雨が降らなくて水が足りないと作物が育たないんだよ。
水道から水でないと困るよ。取水制限とか言われるとなんか気を使うじゃないか。本当に水でなくなったことはまだ経験ないけど、——そんな時が来たらパニックだよね。風呂入るのに何使えば良いんだ?
いや、水ない時に風呂なんて悠長な事言ってる場合じゃないかもしれないけど、日照りの起きる暑い時に風呂は入れないなんて嫌だな——だから雨!
雨重要でしょう? だから雨の日を、俺が学生のうちに六月に作ってくれと俺は思う……。
「でもまあ、今年の六月はもう過ぎてしまったから、今年は良いか——それに、この六月は、それどころじゃなかったからな」
俺は、この体入れ替わり現象のせいで、祝日のことなんてとても考える余裕もなかった六月のことを思い出し、——嘆息をする。
ここは、多摩川の河原。
早朝ジョギングする喜多見美亜と待ち合わせる為にやってきたこの場所で、俺はきらきらと光る水面を眺めながら、まさしく疾風怒涛のごとく通り過ぎたのこの数ヶ月を思い起こすのだが、
「確かに……大変でしたね」
どうやら、横に座る百合ちゃんも、同じことを考えているようなのだった。彼女にも、様々な事件が起きた、いや俺が起こしてしまった六月。
俺は、そこで俺が起こしてしまったことの取り返しのつかなさに、思い出すと暗い気持ちになって顔を伏せてしまうのだが、
「でも——感謝しています。向ケ丘くんには……」
百合ちゃんは、下から覗き込むように、優しい目で俺を見ながら言う。
しかし……。
感謝? 俺は、本当にそうされるべきことをしたのだろうか?
俺は、学校で孤立していた百合ちゃん、触れられない者となっていた彼女の境遇をなんとかしようと奮闘して、その大元の問題にたどり着きそれを排除しようとしたまでは良かったが……。
「あのままじゃダメだったんです。さっちゃんとは、ちゃんとしないといけなかったんです」
彼女が、自分をそんな状況に貶めてまで守ろうと思った、親友、沙月との繋がりは、その問題の本質と一体だったがため、——解決と一緒に溶けて消えてしまったのだった。沙月との繋がりこそが百合ちゃんの問題であったが、それこそが彼女が守ろうとしたもの、そのものであったのだった。
だから、
「まだ、——会えてないんだよね」
何年も続いた歪んだ親友との関係を正したならば、「関係」そのものが消えてしまったのだった。彼女は、守るものを消してしまったのだった。
俺のせいで。
それを思うと俺の頭はますます俯いてしまう。
「はい。会ってません」
だが、首肯する百合ちゃんの顔は意外とさわやかで、
「……時間がかかると思いますが……絶交したわけじゃなくて……私もさっちゃんも、あのままじゃダメだったんです。言ったじゃないですか、向ケ丘くん。感謝してますって」
「でも……」
百合ちゃんは、俺がさらに続けようとした、自責の言葉を制するように首を横に振る。
「気にしないでください。今回のことで……失くしてしまわないと、分からないものがあるって、私わかったんです。今回のことから……もちろん失くすことが良いことじゃないですけど……それは私が——自分じゃできなかったことなんです」
失う。百合ちゃんの言ったその言葉は、ズシンと、俺の腹に重い一撃をくらわすのだった。胃に鈍痛を感じて、俺は顔を無意識に歪めていただろう。
すると、そんな俺を見て、百合ちゃんは、気にしないでと言った風な優しい微笑みを向ける。
でも、それが、ますます俺の自責の念を強めるのだった。
百合ちゃんは——失った。
それは、何を失ったのだろう。
俺のせいで……。
「何まで」失ったのだろう。
親友との関係のほかに、——百合ちゃんがいままで築いてきた「関係」、彼女が彼女足るべくあった、コミュニティー全部がめちゃくちゃになってしまったのではないか?
特に、彼女の最愛の……沙月の兄。
あの病院には弟の柿生くんの治療があるから今も通っているのだろうが……。
院長の娘である沙月との関係を絶って、その兄との関係までおかしくならないだろうか。百合ちゃんが子供の頃から大好きであったその人との関係までおかしくなってはいなだろうか。
と、そんなことを思えば、逆に、
「だめだ……俺、最低だ」
「…………?」
「いや……何でもなくて……でも……」
俺は、しどろもどろの言葉を漏らしながら、百合ちゃんが思い人とうまくいかなくなるかもって考えた時に心の底に湧きだした、いやらしくも甘美な感情を、必死に抑え込む。しかし、どうしても、それを期待する俺の気持ちを抑えることができない。
「いいんですよ……なんだかとってもすっきりしました」
その俺の気持ちに気づいてか、気づかなくてか、——言った、彼女の次の言葉は俺の心を少し楽にさせる。
「全部考えなおして見れば……どこまでが自分が惰性でやってしまっていたことかなって思うんです。無くなってしまうことって、決して無じゃなくて……失いたくなくて閉じてしまったしまっていた未来の——何かもっと豊かなもの始まりじゃないのかなって思えるんです」
無? それは、
「だから……今回も……」
百合ちゃんは、言いかけた言葉を止めて、ただ微笑む。
それは言葉にできない思い。たぶん言葉にすると壊れてしまう感情。でもそれは俺に確かに伝わって、
「よし、やるか!」
俺は、朝の人気のない多摩川に向かって叫ぶのだった。
今日、この後ここに毎日のジョギングで走って来る喜多見美亜と最終打ち合わせをしたら、俺たちは計画を実行に移す。
下北沢花奈に、無の豊穣さを教えてあげる——そのために代々木と赤坂のお姉様方にあることをやってもらう。
それは……。
なんとなく無駄というか、勿体無い日であった。休みの途中に祝日あるのは許容しよう。でも最初の日がそれと言うのは、どうにもテンションが下がらざるをえないカレンダーである。
国民の祝日をつくる偉い人も少しは学生のことを考えてほしいものだ。海だとか、山だとか——祝日作るなら、夏休みとか冬休みと違う時に設定してもらえないだろうか。
特に、できれば六月。
六月に祝日が欲しい。
以前、親の実家にお盆に泊まりに行った時に暇で読んだ——年の離れた親戚のお兄さんの子供の頃にコンプリートで買った——ドラえもんのマンガで、のび太が同じことを嘆いていたのを覚えているが……。
本当に六月はいつまでたっても祝日が無い。
——祝日が無い月の仲間としては、八月があったが、……そこにも山の日などが制定されるし。聞けば、——その山の日の前に作られた祝日も海の日の七月!
まあ海の日は、自分が生まれる前のことであまり実感はないが、山の日のついでに調べたら、……そうだった。
——なんだこれは?
俺は少々の憤りとともに思うのだった。
なんで新しい祝日をつくるのに、二回連続で夏休み期間を狙うのだろう?
なんで、何もない六月に祝日を作ってくれないのだろう?
確かに、梅雨で雨ばっかのイメージのあるその月には、海にも山にもあまりふさわしくなさそうだが……じゃあ雨の日でも良いじゃないか!
雨の祝日作れば良いじゃないか。
雨! 雨重要だよ。雨!
雨が降らなくて水が足りないと作物が育たないんだよ。
水道から水でないと困るよ。取水制限とか言われるとなんか気を使うじゃないか。本当に水でなくなったことはまだ経験ないけど、——そんな時が来たらパニックだよね。風呂入るのに何使えば良いんだ?
いや、水ない時に風呂なんて悠長な事言ってる場合じゃないかもしれないけど、日照りの起きる暑い時に風呂は入れないなんて嫌だな——だから雨!
雨重要でしょう? だから雨の日を、俺が学生のうちに六月に作ってくれと俺は思う……。
「でもまあ、今年の六月はもう過ぎてしまったから、今年は良いか——それに、この六月は、それどころじゃなかったからな」
俺は、この体入れ替わり現象のせいで、祝日のことなんてとても考える余裕もなかった六月のことを思い出し、——嘆息をする。
ここは、多摩川の河原。
早朝ジョギングする喜多見美亜と待ち合わせる為にやってきたこの場所で、俺はきらきらと光る水面を眺めながら、まさしく疾風怒涛のごとく通り過ぎたのこの数ヶ月を思い起こすのだが、
「確かに……大変でしたね」
どうやら、横に座る百合ちゃんも、同じことを考えているようなのだった。彼女にも、様々な事件が起きた、いや俺が起こしてしまった六月。
俺は、そこで俺が起こしてしまったことの取り返しのつかなさに、思い出すと暗い気持ちになって顔を伏せてしまうのだが、
「でも——感謝しています。向ケ丘くんには……」
百合ちゃんは、下から覗き込むように、優しい目で俺を見ながら言う。
しかし……。
感謝? 俺は、本当にそうされるべきことをしたのだろうか?
俺は、学校で孤立していた百合ちゃん、触れられない者となっていた彼女の境遇をなんとかしようと奮闘して、その大元の問題にたどり着きそれを排除しようとしたまでは良かったが……。
「あのままじゃダメだったんです。さっちゃんとは、ちゃんとしないといけなかったんです」
彼女が、自分をそんな状況に貶めてまで守ろうと思った、親友、沙月との繋がりは、その問題の本質と一体だったがため、——解決と一緒に溶けて消えてしまったのだった。沙月との繋がりこそが百合ちゃんの問題であったが、それこそが彼女が守ろうとしたもの、そのものであったのだった。
だから、
「まだ、——会えてないんだよね」
何年も続いた歪んだ親友との関係を正したならば、「関係」そのものが消えてしまったのだった。彼女は、守るものを消してしまったのだった。
俺のせいで。
それを思うと俺の頭はますます俯いてしまう。
「はい。会ってません」
だが、首肯する百合ちゃんの顔は意外とさわやかで、
「……時間がかかると思いますが……絶交したわけじゃなくて……私もさっちゃんも、あのままじゃダメだったんです。言ったじゃないですか、向ケ丘くん。感謝してますって」
「でも……」
百合ちゃんは、俺がさらに続けようとした、自責の言葉を制するように首を横に振る。
「気にしないでください。今回のことで……失くしてしまわないと、分からないものがあるって、私わかったんです。今回のことから……もちろん失くすことが良いことじゃないですけど……それは私が——自分じゃできなかったことなんです」
失う。百合ちゃんの言ったその言葉は、ズシンと、俺の腹に重い一撃をくらわすのだった。胃に鈍痛を感じて、俺は顔を無意識に歪めていただろう。
すると、そんな俺を見て、百合ちゃんは、気にしないでと言った風な優しい微笑みを向ける。
でも、それが、ますます俺の自責の念を強めるのだった。
百合ちゃんは——失った。
それは、何を失ったのだろう。
俺のせいで……。
「何まで」失ったのだろう。
親友との関係のほかに、——百合ちゃんがいままで築いてきた「関係」、彼女が彼女足るべくあった、コミュニティー全部がめちゃくちゃになってしまったのではないか?
特に、彼女の最愛の……沙月の兄。
あの病院には弟の柿生くんの治療があるから今も通っているのだろうが……。
院長の娘である沙月との関係を絶って、その兄との関係までおかしくならないだろうか。百合ちゃんが子供の頃から大好きであったその人との関係までおかしくなってはいなだろうか。
と、そんなことを思えば、逆に、
「だめだ……俺、最低だ」
「…………?」
「いや……何でもなくて……でも……」
俺は、しどろもどろの言葉を漏らしながら、百合ちゃんが思い人とうまくいかなくなるかもって考えた時に心の底に湧きだした、いやらしくも甘美な感情を、必死に抑え込む。しかし、どうしても、それを期待する俺の気持ちを抑えることができない。
「いいんですよ……なんだかとってもすっきりしました」
その俺の気持ちに気づいてか、気づかなくてか、——言った、彼女の次の言葉は俺の心を少し楽にさせる。
「全部考えなおして見れば……どこまでが自分が惰性でやってしまっていたことかなって思うんです。無くなってしまうことって、決して無じゃなくて……失いたくなくて閉じてしまったしまっていた未来の——何かもっと豊かなもの始まりじゃないのかなって思えるんです」
無? それは、
「だから……今回も……」
百合ちゃんは、言いかけた言葉を止めて、ただ微笑む。
それは言葉にできない思い。たぶん言葉にすると壊れてしまう感情。でもそれは俺に確かに伝わって、
「よし、やるか!」
俺は、朝の人気のない多摩川に向かって叫ぶのだった。
今日、この後ここに毎日のジョギングで走って来る喜多見美亜と最終打ち合わせをしたら、俺たちは計画を実行に移す。
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