俺、今、女子リア充

acolorofsugar

文字の大きさ
66 / 99
俺、今、女子パリポ

俺、今、女子だらだら中

しおりを挟む
 忙中閑あり。パーティ続きの経堂萌夏としての俺の生活にもなんと休みの日があった。体が萌さんと入れ替わって以来ずっと昼も夜もパーティ漬け。週末がずっと踊りっぱなしの日々を過ごした俺は、目が覚めた瞬間、また今日もどこかに出かけないといけない? と焦ってベットから飛び起きてしまうが、
「あっ、今日は何もないか……」
 今日はもう平日であった。
 大学生である萌さんや、その入れ替り先である喜多見美亜あいつなんかは夏休みなので関係ないが、社会人の皆さまは今日も仕事のはずである。
 いや、社会人もそろそろ夏休み取っている人とかいるかもしれないが、お盆にかかるにはまだ一週を残した今週、大半の社会人は俺の親たちのように、まだ一生懸命に働いているのだろう。
 だから、こんな日に昼からパーティとかもないので、今日の俺は寝不足で慌てて出かけるなんてことをする必要もない。
 オフ。
 確か、夜もあまり好みのパーティはないと言うことでどこにも出かける必要がないはずだ。
 完全なオフ。
 なんか拍子抜けと言うか、……萌さんに入れ替わって以来、毎日毎日どこかにでかけて騒ぎまくると言う生活が続いていたので、それが突然、今日はどこにも行かなくて良いと言われると、ホッとすると同時に、なんだか本当に何もしなくて良いのかと言うあせりみたいな感情に俺は襲われる。
 本当に? 本当に今日はどこも行かなくて良いのか?
 俺は自分い問いかけるが、
 ——そうだ。
 立ち上がり、一度離れたベットに俺は腰掛ける。
 寝転がり何気なくもう一度ベットに体を任せる。
 一回転してシーツの少しざらっとした心地よい感覚をほっぺたで楽しむ。
「へへ……」
 なんだか気持ち悪い笑い声を立ててしまう。
 だって、こんな風にごろごろしてていいんだ。このままだらだらしてて良いんだ。
 これだ。これが望んだ夏休みだ。アニメみたりラノベ読んだりすることさえめんどくさくなるような怠惰な気持ち。灼熱の外を冷房の聞いた部屋の中から眺めながらだらだらしたい。それが俺が望む、ささやかであるが必要にして十分の、理想の夏休みであった。
「ふふ……」
 俺は、突然そんな夏休みが、今日目の前に現れたことに喜びさらにシーツにひたいを擦り付けながら愉悦の声をあげてしまうが、
「あれ、萌夏起きたの?」
 そんなふうに、がざごそしているに気づいたのか、俺に呼びかけるよし子さんの声が聞こえる。
 その出どころは——ダイニングキッチンの方かな?
 俺は返事をすると、そのまま寝室を出て。続き部屋のそちらへに向かうが、
「ぶっ!」
 俺は部屋をでたところで固まる。腰を引きながら立ち止まる。
 というのも、
「どうしたの? もうすぐご飯炊き上がるよ。ああ……あと塩ジャケ焼こうと思うけど、ベーコンエッグとかの方が良い? それとも両方食べちゃう?」
 と、キッチンに立っているよし子さんこと湯島佳奈ゆしまよしなさんが言う。振り返り、爽やかな笑みを振りまき、味噌汁の味見をしていたお玉をもちながら。情が深く、人の良さそうな、でも真は強そうな瞳で、なぜへんな体制で立ち止まっているのだと疑問符がいっぱいついてそうな様子で、よし子さんは俺を見つめている。
 顔を傾げてポニーテールにまとめられた髪がちょこんと揺れる。ちょうどご飯が炊き上がった、炊飯器のチャイムの音が聞こえた。ご飯と、味噌汁の良い匂いが漂うキッチン。その前にたつよし子さんは将来の良妻賢母と言った感じの雰囲気を漂わせていた。
 いや、そんなよし子さんの様子はなんとも好ましく、なんの問題もないのだが……。
 しかし、
「どうしたの?」
 相変わらず立ち止まっている俺を不思議そうに眺めるよし子さん。
「いえ……」
 彼女の顔、首筋、パジャマがわりに着た大きめのシャツの襟口から覗く鎖骨、ぱんと張った胸と、俺は視線を順番に下に落としていく。もちろんそこまででも十分に扇情的でダイナマイトなよし子さんであったが。
「ぶっ……!」
 履いてないのであった。いやパンティーは履いているが、スカートもズボンも履かずに下半身はパンティー一枚の姿でキッチンで料理を作っているよし子さんなのであった。
 冷房かけていても寝苦しい。そんな夜——と言うかもう昼も過ぎているが——であったあったから、料理で火のそばにいくし、どうせ女どうしだから、丸見えでもかまわないと思ったのかもしれないが……。
 理想のお嫁さんみたいなオーラを出している上半身と下半身のギャップがすご過ぎて、俺はジリジリとしか動けないほどの衝撃を受けてしまっていたのだった。
 どうしようか? このまま目をそらしながら食卓につくか?
 それは不自然すぎるか? 今は女になっている俺なんだから堂々と見るか?
 いや。だめだそれでは。俺は、そしたら、自分の目が明らかに不審者のものになってしまう自信がある。ギラギラした目がずっとそこパンティーに行ってしまい、よし子さんに「萌夏は何かおかしい」と疑われてしまうだろう。
 さすがに、何か変だと思っても、体入れ替わりみたいな超常現象に思い至ることはないだろうが、一度疑われ始めてしまったら、俺はどんどんとボロをだしてしまうことだろう。すると、そのボロでますます疑われ……。俺は、こんな風に泊まり込みでずっと一緒にいる相手に、猜疑心をもたれながらなんとも気まずい雰囲気で過ごさねばならなくなる。
 それを避けるには、——静鏡止水。俺は、パンティーを丸出しの女子大生を前に俺は曇りのない鏡のように、止まった水のように静かで迷いのない心でいなければならないのだが……。

 ——できるか!

 俺は、心の中で思春期男子の限界を大声で叫び、訴えた。そこに無防備に、エロスをさらけだしている魅力的な女性がいて、それに反応せずに平然としていることができる男子高校生などいるだろうか? いやない! と俺はさらに心の中で理性に向かって野生の雄叫びのような声で叫ぶのだった。
 しかし……。
 でも、はてさて、このまたなる難局をどう乗り切るか?
 いっそのこと自分もパンティー丸出しになろうか? なんなら全裸になって例の倫理基準発動で意識を飛ばしてしまおうか?
 でもいきなり脈略もなく脱ぎ出したらさらにおかしく思われてしまうか?
 などなど、……愚案を弄ぶしかできない状態ピンチであったのだが、
「あれ?」
 それは食卓の上で震えるスマホの着信によって救われたのであった。

 電話のかけ主は喜多見美亜あいつであった。
 内容によってはよし子さんに聞かれてはまずいと、寝室に戻って小声で電話を続ける俺。
「なんだ? 今日はどこも行かないんじゃなかったのか?」
 俺は、なんか嫌な予感がしながら、探るような声でそう言う。
「そう……今日は高校生は入れそうな昼のパーティはないわよ……行かない」
 うん。いきなり何か行くパーティができたとかではないようだ。そこは一安心。
「なら、俺は今日はこのままゴロゴロしていたいんだが? 明日はまた夜のパーティに行くみたいだし、今週もゆっくりできるのは今日くらいみたいなんだけど」
 だから、俺はまずは先制して俺の希望を主張するが、
「まあ、それもいいけど……めったになさそうな経験が今日できるんだけど?」
 めったにない? なんか浮かれてそうな声の喜多見美亜こいつだが?
 こいつがそんな風に喜ぶことと言ったら?
「結構面白そうなのよ。予算がないからあんまりお金はもらえないみたいだけど……」
 お金? なにかバイトか? でもただのバイトにしてはウキウキしてるな。バイド代もそんな高いわけじゃなさそうだし。
 なにか美味しい話? お金でなく他の……?
「それはね……」
 勿体つけるように一拍置いた様子から、なんとなく俺の安寧が今日も乱される予感を抱きながら聞いた、
「私たち、プロモーションビデオに出れるのよ!」
 目立ちたがりのリア充脳の言葉で、
「……さあ、さっさと青山までやってきなさい!」
 本日もまた騒がしい一日となることが確定してしまうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

処理中です...