俺、今、女子リア充

acolorofsugar

文字の大きさ
81 / 99
俺、今、女子リア重

俺、今、ビル好き女子

しおりを挟む
 そして、新宿西口で他の連中と別れ、そこから続く高層ビル街。その摩天楼の下を歩きながら、俺は初めてこの街に来たときのことを思い出す。
 それは、物心がついたかつかないかの頃のこと。
 確か家族で出かけた新宿南口のデパートで買い物の後、
『高層ビル街でも見に行くか?』
 となんだか自慢げな顔で言う父親の言葉に頷いて、てくてくと歩いて四角いビルの続くビル街をただ無為に歩き、
『勇ちゃんすこごかったよね? ビル高かったね? 面白かった?』
 とか母親に言われて微妙な気持ちで頷いたのを覚えている。

 でも、正直、ただビル見せられただけで多白いわけないよね。

 でも、その頃は愛想の良い子供だった俺は、
『おっきい! おっきい!』
 とか妙に喜んでみせて親をニッコリとさせたのを覚えている。
 ——ああ、やな子供!
 親を機嫌よくさせれば、その後なんか買ってもらえそうなのわかってたからね俺。幼いながらも、策略を持って……まあそんな当時ゲットできるなんて帰りのアイスクリームくらいだけど。
 まあ、いいや。
 そんな天使のふりをすればなんでももらえる幼年時代もいつのまにか終わる。
 天使のふりをするのにも無理があるひねくれた小学生に成長した俺は、会社で中途半端な役がついて社畜に磨きがかかり、休みの日でもさっぱり家にいなくなってくた両親にそもそもなにかねだる機会もなくなったまま、そのまま立派な孤高の男に成長したと言うわけだ。
 しかし、ね、そういうこだわりひねくれ高校生になった俺は逆に、今度はこの高層ビル街を歩くのが本気で興味深く思えるようになっていた。
 昨日、今日新宿の高層ビル街に行くから、そもそも高層ビルってなんなの? 高いビルのこと言うのは間違いないんだろうけど、何階から高層ビルなの?
 とか、とか。色々気になったのだった。
 ならば、当然、あっさりスマホに頼って検索して、いろいろ知識を溜め込んでからあるく高層ビル街は——なんか違って見えて楽しくなくもない?
 いや、いやかなり興味深い摩天楼……って。
 あ、そもそも、摩天楼ってどんな意味か知ってるかい?
 元々はアメリカの高層ビルを表現したスカイスクレーパー。つまり空(スカイ)を削る(スクレーパー)ようなビルの日本語訳って言われてるみたいだね。
 天をさする楼。
 楼は「複数階の建物」「高い建物」とか言う意味なので、空をこすって削るような高い建物って意味のようだ。本当に直訳だね。
 ただね。今このビル街歩いて空を見上げても、空を摩るってほど高いってインパクトはないよね。
 多摩川の向こうになる地元でも、そりゃこんなに密集してないけど、同じような高さのマンションとか結構あるしね。このくらいのは見慣れているのかあんまりびっくりはしない。
 都庁とかはなんかさすがに異様な感じで存在感あるけど、それでも天にそびえるって感じはしない。
 幼年時代の俺は、きっと同じように思ってたんだろうね。親が『大きいね』とか言うから話し合わせたけど、実際その頃には四、五十階のビルとか結構見てたし、横浜行った時に見たランドマークタワーの方が高いしね……。

 で、まあ、というわけで高さ的には今となっては特筆すべきところのないこの西新宿のビル群だけど、地震国日本で高層ビルを実現するために様々な努力を重ねたその結果——技術革新の最前線となった場所であったらしい。
 とはいえ、日本の高層ビルの最初は新宿ではなく、官庁街の霞ヶ関、そこに建てられた霞が関ビルディングとのことだ。このビルがちょうど東京オリンピックのころ建てられて、初めて高さ百メートルを超えた。これが超高層ビルの初めてとなっているらしい。
 その前の日本では、百尺規制という、百尺(約三十メートル)の建物の高さ規制があってそれを超える建物は法律上、建てられなかったそうだ。それは、あんまり高いビル建てられて日陰ばかりの街になると困るとか、昔の建築技術の耐震限界とかもろもろの要因から決められてた規制だったんだけど、日照は他の規制方法で確保して、また技術の向上で地震国日本でも高いビルが建てられるようになってきた。
 高度成長期で人も物も増えてた日本は、超高層ビルという入れ物をつくってそれを収容する必要があったということのようだ。
 そして、空へ向かって伸びる都市の最前線として選ばれたのが新宿。ここが、丸の内から霞ヶ関あたりの都心への都市機能の集中を緩和するため、副都心として開発されることになったのだった。
 駅のすぐそばに浄水場があったのを移転することにできた東京としては広大な土地に、百尺規制がなくなり高さ二百メートル級のビルが建てられていくことになる。それが日本の摩天楼の始まり。
 一度、関東大震災による被害などにより途絶えた都市の空への発展がはじあったのであった。

「へえ、そうなの。生田さんは物知りなのね。お姉さんずっと新宿で働いているけどそんな歴史しらなかったわ」
「いえ……」
 で、新宿西口から歩き出した俺は、高層ビルのことを考えながら歩いていたらいつの間にかついていた今日の目的地。会食という名のお見合いの場所。ある外資系高級ホテルまで到着していた。
 そしてそのホテルの中にあるヘアサロンでメイクをされている途中であった。
 美容師のお姉さんは、ホテルの中の敷居のたかそうな店に珍しく女子高生がやってきたというので、その素性に興味を持っていろいろと話しかけてくるのだった。

 ——今日ホテルで結婚式やってる家の人?
 ——違う?
 ——夜の財界のパーティに参加……のわけないか。
 ——あ? 親族で食事?
 ——ああ……そうだよね。それか。
 ——やっぱりね。
 ——もう少し年齢上だったら、お見合いかな? とか思っちゃうけど。
 (ギクッ)
 ——はは、そうだよね。女子高生でお見合いはないよね。
 (汗)
 ——あれ、なんか表情がこわばってますね。少しフェイスマッサージ……
 ——え、西新宿で働いていたら高層ビルは興味があるかって?

 というわけで、微妙に核心に達してしまいそうな美容師のお姉さんから話をそらすためにし始めた高層ビルのウンチクが妙に興味を持たれてしまって、その後ずっと話続け……、

「はい。終了です。もっと高層ビルの話が聞きたいところだけど。お疲れさまでした……」

 俺は目の前の鏡の中の超美人の姿にびっくりしながら、その肩口後ろにうつる店の入り口に、生田緑のじいさんの秘書が現れたのを見る。
 ……ああ、そろそろ見合いの時間だ。
 ぎりまで、そのことを深く考えないようにしていたけど、来るものは来る。
 俺は、なんの因果か、ついに男と見合いまでしなければならなくなった我が身の不遇を嘆きながら、大きな嘆息のあと、

 ——やるしかないか。

 心の中で諦念の心でそう呟くのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

処理中です...