90 / 99
俺、今、女子リア重
俺、今、女子作戦開始中(失敗気味)
しおりを挟む
俺は、駅前でイケメンの顔をみながら固まった。
——この人はわかっている?
何がって……。
今日の国際展示場がコミケだってわかっている?
生田緑の見合い相手である現役政治家の息子。リア充オーラバリバリのイケメンが……。
——実はオタク?
『あ、コミケですか』
ゆりかもめの駅から出るやいなや、あっさりとそう言ってのけた渋沢家御曹司。
「緑さんはこういうの好きなんですか」
予想外の発言にあっけにとらている俺に向かって彼は何にも他意のなさそうな爽やかな顔のまま会話を続ける。
「それは……」
俺は一瞬口ごもった。もちろん俺はドオタクなわけだが、今俺が入れ替わっているクラスのリア充の頂点、女帝生田緑にオタク成分はまるでない。ここで彼女がオタクだと思われないように振る舞わねばならない。と思うくらいの分別は俺はある。
しかし、
「はい、大好きです!」
俺は自分にできるめいいっぱいの笑顔でそう答える。
——なにしろ女帝生田緑に俺は許可をもらっていたのだ。
どんな、手をつかってもこのイケメンから嫌われろ。相手から断らせろ。
——生田緑がかなりキモいドオタクだと思わせて断らせるのも可。
俺が生田緑から許可を受けた手段の中にはそんなものも含まれていた。
でも、それじゃ、女帝がドオタクだと思われるのは本人的にどうなのかと思ったのだが、
『私は生田緑。それはどんな行動をとっても、世界がどんなに変わっても私は私。生田緑よ。たかだか下賤な趣味を持つと誤解されるくらいでゆらぐものではないわ』
とのことであった。
まあ、あまり深く考えていないというか、俺がしようとしてることの実態がどんなものなかとかあまり考えないまま言っている可能性もあるが、それが今後の女帝の人生にどんな影を落とそうが自己責任としてなんとかしてもらって……。
——さて問題はこの後の御曹司のリアクションである。
生田緑、自分のお嫁さん候補がオタクだとカミングアウトしてきたこの事態にどんな度量を示すことができるか?
もしかして実はこの人は隠れオタクで、そのまま大喜びでコミケに向かわれてしまうのならば、俺のキモオタ作戦は即刻中止とせねばならないのだが、
「うん。興味深いですね」
興味深い?
「正直、緑さんがこういうサブカルの趣味をもっているというのは予想してませんでしたよ。意外です。でも意外だから……」
御曹司は俺=生田緑の顔をじっと見つめ言った。
「より緑さんのことを知りたくなりました」
*
駅から国際展示場まで歩く途中、御曹司が語るには、彼はどうやらオタクと言うわけではなさそうだった。
でも、
「日本の将来を考えるのならば、こう言うコンテンツのことを考えないわけにはいかないですからね。自分にそんな素養がないのが残念ですが……」
政府もクールジャパンだとか(ちょっと滑ってると思うが)言っているこのご時世。政治家の卵のこのイケメンも日本のオタクコンテンツに対する一定の知識は必要と思っていたようだった。だから、今日がコミケだってことも知っていたようだったが、
「そんなことをサポートしてくれる人が身近にいるのなら心強いかもしれませんね……」
おいおい。
なんだかむしろ進展させちゃったぞ。俺のキモオタ作戦が二人の仲を。
生田緑がオタクコンテンツに詳しければその力を借りて、日本の文化力をあげる活動ができてラッキー。これはますます生田緑と結婚しなければならないかな。とか、思ってそうな御曹司であった。
これは、俺のキモオタ作戦は失敗?
生田緑はガチオタだと政界の関連者に思わせることだけに成功して縁談は成立?
それだと、——まずいな。
生田緑にへんな評判だけつけて、結婚話はそのまま続いていく。
このままだと、俺は元の体に絶対に戻れないな。そしたら、このまま生田緑として生きていかなきゃならなくなって、もしかしたらこのイケメンと夫婦になって、そして……。
「…………ぶ」
「どうかしましたか?」
夫婦生活の一シーンを思い浮かべてしまい、背筋がスッと寒くなった俺だった。生活の夜の方の件だが。
その、怖気を誘うシーンを頭の中から早急に振りはらいながら、やはりなんとしてでも、このイケメンに縁談を断らせないといけないのだな、と俺は決意も新たに思いながら、
「今、震えてましたけど?」
「む、武者震いです。ここからいくのは戦場でござるからな」
と、思いついた言い訳にあわせて、突然ござるキャラに変身して、下卑た笑みを突然浮かべる俺であった。
昨日は、ござるに変身した喜多見美亜を冷たい目で見ていた俺であったが、——もう決心がついた。女帝が、相手にどう思われるかなんて考えずに、なるべくキモく見えるようにいこう。
「……」
無言になった御曹司に向かって、追い打ちをかける俺。
「どうしたのかえ? 黙っておってはわからぬぞ。妾の言葉にびびったのかえ?」
「……」
相変わらず黙りこむ御曹司。俺=生田緑の急な変化に少し戸惑っているような感じだ。まだ、忌避してるって感じじゃないが、——もうひと押しだな。
「ぐへへ……素人が引き返すならここが最後ですよ」
「……」
「へへへ……」
「……?」
よし。感触あり。もっとキモくいくぞ。
「ぎゅふふ……さあどうするのです——かしら? あきらめるのです——かしら?」
「……?」
「ふふ、さあどうするのか……ですぞ? 迷うならここでおわりにするの……ですぞ」
「……ふふ」
ん?
御曹司はなんか楽しそうな微笑みを浮かべ、
「……どうかしましたか」
俺は現実につかうとキモいキャラ語尾のバリエーションのストックも切れて素にもどり、
「いえ、こういうところの熟練者はそんな風に気分を盛り上げるのかなって思って……いたで——ござる!」
「……!」
「さあ、拙者もお供するでござる! 討ち入りに参ろうではござらぬか!」
「は……はい」
俺は、イケメンがやるとオタク語尾というよりは時代劇の主役みたいになって見える、なんだかとても楽しそうな渋沢家御曹司とともにコミケに討ち入り……じゃなくて会場に戻るのだった。
なんだか、ペースを御曹司にずっと取られてしまいながら。
でも、まだまだだ。俺のキモさをもっと見せつけるには舞台がなければダメ。
そう、幕が開く。
俺の今までのオタク経験、つまりは全人生をかけての、残酷劇の!
——この人はわかっている?
何がって……。
今日の国際展示場がコミケだってわかっている?
生田緑の見合い相手である現役政治家の息子。リア充オーラバリバリのイケメンが……。
——実はオタク?
『あ、コミケですか』
ゆりかもめの駅から出るやいなや、あっさりとそう言ってのけた渋沢家御曹司。
「緑さんはこういうの好きなんですか」
予想外の発言にあっけにとらている俺に向かって彼は何にも他意のなさそうな爽やかな顔のまま会話を続ける。
「それは……」
俺は一瞬口ごもった。もちろん俺はドオタクなわけだが、今俺が入れ替わっているクラスのリア充の頂点、女帝生田緑にオタク成分はまるでない。ここで彼女がオタクだと思われないように振る舞わねばならない。と思うくらいの分別は俺はある。
しかし、
「はい、大好きです!」
俺は自分にできるめいいっぱいの笑顔でそう答える。
——なにしろ女帝生田緑に俺は許可をもらっていたのだ。
どんな、手をつかってもこのイケメンから嫌われろ。相手から断らせろ。
——生田緑がかなりキモいドオタクだと思わせて断らせるのも可。
俺が生田緑から許可を受けた手段の中にはそんなものも含まれていた。
でも、それじゃ、女帝がドオタクだと思われるのは本人的にどうなのかと思ったのだが、
『私は生田緑。それはどんな行動をとっても、世界がどんなに変わっても私は私。生田緑よ。たかだか下賤な趣味を持つと誤解されるくらいでゆらぐものではないわ』
とのことであった。
まあ、あまり深く考えていないというか、俺がしようとしてることの実態がどんなものなかとかあまり考えないまま言っている可能性もあるが、それが今後の女帝の人生にどんな影を落とそうが自己責任としてなんとかしてもらって……。
——さて問題はこの後の御曹司のリアクションである。
生田緑、自分のお嫁さん候補がオタクだとカミングアウトしてきたこの事態にどんな度量を示すことができるか?
もしかして実はこの人は隠れオタクで、そのまま大喜びでコミケに向かわれてしまうのならば、俺のキモオタ作戦は即刻中止とせねばならないのだが、
「うん。興味深いですね」
興味深い?
「正直、緑さんがこういうサブカルの趣味をもっているというのは予想してませんでしたよ。意外です。でも意外だから……」
御曹司は俺=生田緑の顔をじっと見つめ言った。
「より緑さんのことを知りたくなりました」
*
駅から国際展示場まで歩く途中、御曹司が語るには、彼はどうやらオタクと言うわけではなさそうだった。
でも、
「日本の将来を考えるのならば、こう言うコンテンツのことを考えないわけにはいかないですからね。自分にそんな素養がないのが残念ですが……」
政府もクールジャパンだとか(ちょっと滑ってると思うが)言っているこのご時世。政治家の卵のこのイケメンも日本のオタクコンテンツに対する一定の知識は必要と思っていたようだった。だから、今日がコミケだってことも知っていたようだったが、
「そんなことをサポートしてくれる人が身近にいるのなら心強いかもしれませんね……」
おいおい。
なんだかむしろ進展させちゃったぞ。俺のキモオタ作戦が二人の仲を。
生田緑がオタクコンテンツに詳しければその力を借りて、日本の文化力をあげる活動ができてラッキー。これはますます生田緑と結婚しなければならないかな。とか、思ってそうな御曹司であった。
これは、俺のキモオタ作戦は失敗?
生田緑はガチオタだと政界の関連者に思わせることだけに成功して縁談は成立?
それだと、——まずいな。
生田緑にへんな評判だけつけて、結婚話はそのまま続いていく。
このままだと、俺は元の体に絶対に戻れないな。そしたら、このまま生田緑として生きていかなきゃならなくなって、もしかしたらこのイケメンと夫婦になって、そして……。
「…………ぶ」
「どうかしましたか?」
夫婦生活の一シーンを思い浮かべてしまい、背筋がスッと寒くなった俺だった。生活の夜の方の件だが。
その、怖気を誘うシーンを頭の中から早急に振りはらいながら、やはりなんとしてでも、このイケメンに縁談を断らせないといけないのだな、と俺は決意も新たに思いながら、
「今、震えてましたけど?」
「む、武者震いです。ここからいくのは戦場でござるからな」
と、思いついた言い訳にあわせて、突然ござるキャラに変身して、下卑た笑みを突然浮かべる俺であった。
昨日は、ござるに変身した喜多見美亜を冷たい目で見ていた俺であったが、——もう決心がついた。女帝が、相手にどう思われるかなんて考えずに、なるべくキモく見えるようにいこう。
「……」
無言になった御曹司に向かって、追い打ちをかける俺。
「どうしたのかえ? 黙っておってはわからぬぞ。妾の言葉にびびったのかえ?」
「……」
相変わらず黙りこむ御曹司。俺=生田緑の急な変化に少し戸惑っているような感じだ。まだ、忌避してるって感じじゃないが、——もうひと押しだな。
「ぐへへ……素人が引き返すならここが最後ですよ」
「……」
「へへへ……」
「……?」
よし。感触あり。もっとキモくいくぞ。
「ぎゅふふ……さあどうするのです——かしら? あきらめるのです——かしら?」
「……?」
「ふふ、さあどうするのか……ですぞ? 迷うならここでおわりにするの……ですぞ」
「……ふふ」
ん?
御曹司はなんか楽しそうな微笑みを浮かべ、
「……どうかしましたか」
俺は現実につかうとキモいキャラ語尾のバリエーションのストックも切れて素にもどり、
「いえ、こういうところの熟練者はそんな風に気分を盛り上げるのかなって思って……いたで——ござる!」
「……!」
「さあ、拙者もお供するでござる! 討ち入りに参ろうではござらぬか!」
「は……はい」
俺は、イケメンがやるとオタク語尾というよりは時代劇の主役みたいになって見える、なんだかとても楽しそうな渋沢家御曹司とともにコミケに討ち入り……じゃなくて会場に戻るのだった。
なんだか、ペースを御曹司にずっと取られてしまいながら。
でも、まだまだだ。俺のキモさをもっと見せつけるには舞台がなければダメ。
そう、幕が開く。
俺の今までのオタク経験、つまりは全人生をかけての、残酷劇の!
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる