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俺、今、女子リア充
俺、今、女子家族団らん中
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その日——麻生百合と昼食を一緒に食べた日——恒例の神社での喜多見美亜からの説教タイムでは、意外なことに、彼女と昼に一緒にご飯を食べた話はまったくでなかった。
あいつはずいぶん驚いていたようだから、きっと何か説教が来るのかと思っていたのだが、言って来たのは、中間試験にむけての勉強の計画だとか、少し体形が緩んでるように見えるから寝る前の腹筋の回数ふやせとか、そう言ういつもの小言ばかりだった。
——昼にリア充グループを差し置いて、麻生百合と昼飯を食べに行ったことに関しては、一切触れてこなかったのだった。
でも、逆にそのことに不安になった俺は、帰り際に、
「……良かったのか?」
と聞くが、
「良かったのか? って突然なによ」
と少しキレ気味であいつ。
「今日の昼……」
「麻生さんと昼一緒にしたこと?」
首肯する俺。
「何? あんたなんか悪いことしたの? 麻生さんと昼一緒に食べるのって悪いことなの?」
「まさか!」
おもいっきり首を降る俺。
「そう? じゃあ良いんじゃないのそれ」
「……」
「後は何もない? じゃあ……」
俺が次の言葉をかける隙間も無く、喜多見美亜は俺に背を向けて歩き出していった。その剣幕に一瞬立ちすくむが、すぐにあわてて追いかける俺。なんか微妙にもやもやするあいつの反応の真意をもっと確かめたいと思ったからなのだが……
しかし、神社の入り口で追いついたときには、あいつはもう自転車に乗って走り出しているところだった。
すると追いかけてまでさらに問い詰めるのもなんなので、
「帰るか……」
と俺は呟いた。
そう帰るのだった。
あいつの家に。
*
「ただいま」
俺はそういいながら喜多見美亜の家に入る。
「おかえり!」
そういいながら飛び出してきたのは喜多見美唯。今年中学一年のあいつの妹だった。
あいつの妹は俺が靴を脱ぎ家に入るなり、抱きついてくると、そのまま手を引っ張りながら俺の周りをくるくると回る。
「美唯、目が回るって」
つられてくるくる回ってしまう俺。
「へへへ、帰りが遅いからこんなことになるんだよお姉ちゃん。明日はもっと早く帰って来てね」
回転をとめ、にっこりと笑いながら、美唯が言う。
「……うん」
俺の生返事にも美唯はうれしそうに首肯しながらそのまま手をひっぱり言う。
「さあ、夕飯出来ているよ。一緒に食べよ」
すると、
「……あれ美亜帰って来た? 直ぐにご飯食べる?」
玄関横のダイニングからはあいつの母親の声。
「あっ……うん」
俺は鞄を玄関に置くとそのままダイニングに入り、食卓の自分の席に座る。
「この頃、少し遅いわね。なんか部活でも始めたの?」
と、あいつの母親はキッチンから今日の晩御飯のハンバーグを持ってきながら言う。
「違うけど……ちょっといろいろね」
「ふうん……お友達と?」
ハンバーグの皿をテーブルに置き、俺の横に座りながら、あいつの母親が少しニヤニヤしながら言う。
俺はその何か探るような視線にびくりとしながら横を向くが、そちらにはむすっとした顔の美唯。
「お姉ちゃん。男でしょ……」
ぎくっとする俺。
ばれた?
「ななな何? 私は女に決まって……」
「……今日も男に会ってたでしょ」
「えっ?」
ああ、喜多見美亜の中身が男と見破られたわけじゃないのか。
ちょっと一安心。
でも、
「こら、美唯。君はまだそんなこと言う歳じゃないぞ」
と母親。
「だって、お姉ちゃんなんかこの頃あやしいんだもん。美唯と遊んでくれないし」
と美唯。
で、
「そりゃ、美亜だってお年頃だし……仲の良い男子の一人や二人ね」
母親のつっこみ。
それを聞いて、俺は……ありゃりゃこれは問題だ。
あいつの体が、俺の体と入れ替わって——俺に会ってたことがそんな風に取られてしまうのはあいつの名誉のためには、さすがに否定しておかなくては。
そう思って俺は言うが、
「そ……そんなんじゃないんだから」
「あはは、お母さんは美亜のこと信じてるから——でも清く正しい交際してると思ってるけど、正直少し不安だから一回くらい見てみたいかな? 美亜のボーイフレンドって……」
俺の言葉など全く無視して話すあいつの母親。
「だから違うって。そんなんじゃ……」
だから俺はさらに否定するのだが、
「おっ、そんなんじゃと言うことは男の子と会っていたのは本当かな? 確かに最近のあなたは様子おかしいのよね」
ギクっ! あれひっかけられた?
俺は少し焦りながら言う。
「そそ……そんなこと無いんじゃないかな」
すると、
「そうかな、この頃なんかあったでしょ。最近のあなたって、昔の美亜見てる感じがしてならないのなんかきっかけあって昔の自分取り戻す——となるとあやしいのは男よね」
とあいつの母親。
「違うよ。絶対違うって!」
昔の? 何だそれ? と思いながらも俺は全力で否定する。
「そうかなあ? 隠さなくても良いんじゃないかな……」
焦る俺を面白そうな表情で俺を見つめるあいつの母親。
「そ、そんな……ことないって。それよりもうご飯食べるから」
俺はあいつの母親の追及をさえぎろうと、あわてて、ご飯を盛り、パクパクと食事を食べ始める。
それをニコニコした表情で見つめる母親。対照的に、姉がこのごろ遊んでくれないのを怒っているのか少しブスっとした顔で睨んでいる妹。そして、二人に注目されて、少し下向き加減で夕食を食べる俺だった。
——ここには、俺だけちょっと緊張感漂いながらも、それも優しく包み込むような暖かな空間が作り出されていた。
俺は二人の見つめる視線から逃げるように少しうつむきながらも——思った。
ああ、まったく——良い家族。
一人っ子で鍵っ子だった俺が世の中の家族団らんはこんな感じなのかなと子供の頃に理想を思い描いたそのものがここにあった。
それは事前のあいつの様子や評判から想像してた家族のイメージとは大違いだった。
地元有力者の家系だの聞いてお高くとまった一族の想像をしていたのだが、意外にも、あいつはこんな良い人たちに囲まれて日常を過ごしていたのだった。
四歳下で中一の(シスコン気味なのが多少怖いが)とても素直で可愛い妹。要所要所では厳しいところはあるが、思春期の少女のやることにとても理解があり、やさしく包み込んでくれる母親。
いつも、帰りが遅く今日もまだ帰ってこない父親。こいつは娘にメロメロのなさけない親父様ではあるが——全身全霊で家族を愛しているのが伝わってくる良い人だった。
もっと上流階級然としたつんつんした人達を想像していたのだが——いやそもそもあいつがお嬢様だとか思ってたのが過度の思い込みだった。
先祖代々地元有力者とかいうのは本当のようだし、この家も父親は名の知れた企業の管理職で今の日本で決して裕福でないと言うようなところではないのだが——実家の家系を継いだわけでもなく、次男で家を出て、自分で家も建てて、月々の給料で暮らしているこの家族の様子は、両親が共働きで稼いでいるうえに、おじいさんから受け継いだ持ち家に住む俺の家と、別に大きな差があるわけではなかった。
給料前には節約をするし、時には少し贅沢してみて後悔したり、子供のこの後の学費の心配をしたり……
いや、考えてみれば、あいつがお嬢様お嬢様みたいな行動を学校でとってたわけではない。これって、もしかして俺は少しねたみみたい感情も入って、あいつは違うんだって思ってしまっていなかっただろうか……
と、俺はそんなことを考えながら、夕食を食べ、いつのまにか深刻そうな顔つきにでもなってしまっていたのだろう。
「あれ、何か考え事してるの」
それを見たあいつの母親に言われる。
その言葉に。俺ははっとして、
「ううん……なんでも」
と言う。
ああ、しまった。考え事してたら夢中になってぼおっとしていたらしい。
なので母親に変に思われないように、今は食事に集中しようと箸を持ち直すが、その瞬間、
「あらあら本当に恋煩いかしら? 心ここにあらずといった感じだけれども、でもまあ今日は全部食べてくれたからそっちは追求しないであげよっか」
「……え?」
全部?
俺はいつの間にか空になった皿を見る。
あれ、いつのまにか俺、出されたの全部食べちゃってた。
ハンバーグもつけあわせのポテトも、ご飯も気づいたら全部食べていて……
「ご馳走様……」
俺は少しっぽっこりとした気のする腹を見て青くなりながら、あいつに明日々言い訳しようかなと考えて部屋に戻るのだった。
*
そしてしばらく経って……
「そろそろお風呂入ったら……ああ美唯も一緒に」
夕食の後、あいつの部屋にひっこんで春アニメの評判をチェックするために一心不乱にネットを見ていた俺に母親がドアの向こうから声をかけてきていた。
時計を見る。
いつの間にかもう九時を回っていた。でも少し作業の切れ目が悪い。もうちょっとで新作の評判のチェックが全て終わるのにと思って、
「もうちょっとしてから……」と俺。
しかし、
「今日は、もう少ししたらお父さんかえって来るって電話あったから、その前に入ってしまいなさい」と母親。
げげ、そうか。と俺はあいつに言われたお約束を思い出す
俺自身は、愛する娘にハブられ気味のかわいそうなお父さんが俺の前に風呂に入ろうが後に入ろうが、正直、まるで気にしないのだが、年頃の娘らしくあいつはそれを嫌がっている……
俺はその設定を演じなければならないのだ。
なので、
「うわあぁあ、直ぐ入る、待って、待って!」
この頃、すっかり上手くなった、あわてた風な演技で部屋を飛び出た俺に、
「わああ、私も入る!」と自分の部屋から飛び出して、後ろから飛びついてくる未唯をそのまま引きずって、風呂場に行く。
そして、普通ならここはさあお約束のお色気シーンとなるはずなのだが……
そうはならないのであった。
俺が巻き込まれた、この体入れ替わり現象が、いったい何物の企みで、何の目的のため行なわれているのかなんて皆目検討もつかないのだが、この入れ替えを行なった何者かは、俺たちのプライバシーや倫理に少しは気を使ってくれているようなのであった。
俺があいつに見られて恥ずかしいなあと思うようなものは、俺も見れないようになっているし——その逆も真。風呂やトイレそんな覗かれたらやばいようなものはみんな俺も覗けない——つまりその間は完全に記憶が飛ぶようになっていたのだった。
それは——この記憶の飛ぶ現象は——正直に言うとちょっと残念な感じがしないでもなかったが、もしこれが全部見えてしまっていたときの気まずさやら、そんな事態をあいつも俺もどう処理してよいのかとかを思えば、これはこの方が良かったななんて……思いながら——
風呂場のドアを開ければ、いつものように、この瞬間意識が……
あれ、消えない?
昨日まで、ドアを開けた瞬間意識が飛んで、知らないうちに風呂に入っていて、服を着て出てきて始めて意識が戻ってきていたのに。
今日はまだ俺は、意識を保っていた。
ちょっと待ってこれ。
「さあ、早く一緒に入ろ」
美唯は脱衣所に入るとさっさと上着を脱いでTシャツ姿になり、俺のスカートに手をかけて引き摺り下ろそうとしている。
あせってそれから逃げる俺。
「待って、美唯、自分で脱ぐから」
「ちぇ、早くしてよもう」
なんか中学生にスカート脱がされそうになっているという自分の状況にとても混乱している俺。
と言うか、なんだ、今日はこのままなのか?
なんでいつもみたいに意識が飛ばないんだ。
「お姉ちゃんどうしたの? 早く。それなら、やっぱり、脱がしちゃうよ」
「まてまて、すぐ脱ぐから」
俺はスカートに手をかけて脱ぎ、それでも飛ばない意識に——あせってはらはらとしてしまう。
いや、自分の服を自分で脱いでいるんだ。それに何の悪いわけがある。
でもなるべく下のほうをみないように上向き加減で——いやどうしても目だけ下にひっぱられるが……
だめだめ! こんなのがあいつにばれたら何を言われることか。
ああ、でも次はシャツを脱がないと。
と、俺はボタンをゆっくりと一つずつ外し、時間を稼ぐが意識は相変わらずはっきりとしていて……
「なんか今日はずいぶんぐずぐすしちゃってる……どうしたの」
不思議そうな顔で俺を見つめてる美唯……
——ってもう脱いでる!
あわてて目をつむり、マッパになった美唯を見ないように後ろを向く俺。
やばいつかまる。つかまる。妹でも中学生の裸なんて見たら情状酌量の余地無くつかまってしまう。確かそんな法律あったような無かったような……無いかな……いやどちらにしても、これはやばい。
だから何とかこの場はごまかして後で一人で風呂に入ってと俺はさりげなく風呂場から逃亡しようと一歩足を踏み出すが……
「もうさっさとして!」
しかし後ろから俺のシャツをひっぱる美唯。
すると、虚をつかれ引っ張られたせいで、なんのお抵抗も無くするりと脱げるシャツ。
あわててしゃがんで、
「やめて」と俺。
「へへへ、やめてで済むなら警察いらぬ」
とヤンデレ声の美唯。
「待て、美唯」
「へへへ、お姉ちゃん、次はそのブラを……」
「おい、ちょっと——話せば分る!」
「何がかな……お姉ちゃん、言葉なんて陳腐なものじゃなく、身体でお話ししましょ……」
と言う美唯の指先が俺のブラのホックにかかり……
そこで俺の意識は消えたのだった。
あいつはずいぶん驚いていたようだから、きっと何か説教が来るのかと思っていたのだが、言って来たのは、中間試験にむけての勉強の計画だとか、少し体形が緩んでるように見えるから寝る前の腹筋の回数ふやせとか、そう言ういつもの小言ばかりだった。
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でも、逆にそのことに不安になった俺は、帰り際に、
「……良かったのか?」
と聞くが、
「良かったのか? って突然なによ」
と少しキレ気味であいつ。
「今日の昼……」
「麻生さんと昼一緒にしたこと?」
首肯する俺。
「何? あんたなんか悪いことしたの? 麻生さんと昼一緒に食べるのって悪いことなの?」
「まさか!」
おもいっきり首を降る俺。
「そう? じゃあ良いんじゃないのそれ」
「……」
「後は何もない? じゃあ……」
俺が次の言葉をかける隙間も無く、喜多見美亜は俺に背を向けて歩き出していった。その剣幕に一瞬立ちすくむが、すぐにあわてて追いかける俺。なんか微妙にもやもやするあいつの反応の真意をもっと確かめたいと思ったからなのだが……
しかし、神社の入り口で追いついたときには、あいつはもう自転車に乗って走り出しているところだった。
すると追いかけてまでさらに問い詰めるのもなんなので、
「帰るか……」
と俺は呟いた。
そう帰るのだった。
あいつの家に。
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「ただいま」
俺はそういいながら喜多見美亜の家に入る。
「おかえり!」
そういいながら飛び出してきたのは喜多見美唯。今年中学一年のあいつの妹だった。
あいつの妹は俺が靴を脱ぎ家に入るなり、抱きついてくると、そのまま手を引っ張りながら俺の周りをくるくると回る。
「美唯、目が回るって」
つられてくるくる回ってしまう俺。
「へへへ、帰りが遅いからこんなことになるんだよお姉ちゃん。明日はもっと早く帰って来てね」
回転をとめ、にっこりと笑いながら、美唯が言う。
「……うん」
俺の生返事にも美唯はうれしそうに首肯しながらそのまま手をひっぱり言う。
「さあ、夕飯出来ているよ。一緒に食べよ」
すると、
「……あれ美亜帰って来た? 直ぐにご飯食べる?」
玄関横のダイニングからはあいつの母親の声。
「あっ……うん」
俺は鞄を玄関に置くとそのままダイニングに入り、食卓の自分の席に座る。
「この頃、少し遅いわね。なんか部活でも始めたの?」
と、あいつの母親はキッチンから今日の晩御飯のハンバーグを持ってきながら言う。
「違うけど……ちょっといろいろね」
「ふうん……お友達と?」
ハンバーグの皿をテーブルに置き、俺の横に座りながら、あいつの母親が少しニヤニヤしながら言う。
俺はその何か探るような視線にびくりとしながら横を向くが、そちらにはむすっとした顔の美唯。
「お姉ちゃん。男でしょ……」
ぎくっとする俺。
ばれた?
「ななな何? 私は女に決まって……」
「……今日も男に会ってたでしょ」
「えっ?」
ああ、喜多見美亜の中身が男と見破られたわけじゃないのか。
ちょっと一安心。
でも、
「こら、美唯。君はまだそんなこと言う歳じゃないぞ」
と母親。
「だって、お姉ちゃんなんかこの頃あやしいんだもん。美唯と遊んでくれないし」
と美唯。
で、
「そりゃ、美亜だってお年頃だし……仲の良い男子の一人や二人ね」
母親のつっこみ。
それを聞いて、俺は……ありゃりゃこれは問題だ。
あいつの体が、俺の体と入れ替わって——俺に会ってたことがそんな風に取られてしまうのはあいつの名誉のためには、さすがに否定しておかなくては。
そう思って俺は言うが、
「そ……そんなんじゃないんだから」
「あはは、お母さんは美亜のこと信じてるから——でも清く正しい交際してると思ってるけど、正直少し不安だから一回くらい見てみたいかな? 美亜のボーイフレンドって……」
俺の言葉など全く無視して話すあいつの母親。
「だから違うって。そんなんじゃ……」
だから俺はさらに否定するのだが、
「おっ、そんなんじゃと言うことは男の子と会っていたのは本当かな? 確かに最近のあなたは様子おかしいのよね」
ギクっ! あれひっかけられた?
俺は少し焦りながら言う。
「そそ……そんなこと無いんじゃないかな」
すると、
「そうかな、この頃なんかあったでしょ。最近のあなたって、昔の美亜見てる感じがしてならないのなんかきっかけあって昔の自分取り戻す——となるとあやしいのは男よね」
とあいつの母親。
「違うよ。絶対違うって!」
昔の? 何だそれ? と思いながらも俺は全力で否定する。
「そうかなあ? 隠さなくても良いんじゃないかな……」
焦る俺を面白そうな表情で俺を見つめるあいつの母親。
「そ、そんな……ことないって。それよりもうご飯食べるから」
俺はあいつの母親の追及をさえぎろうと、あわてて、ご飯を盛り、パクパクと食事を食べ始める。
それをニコニコした表情で見つめる母親。対照的に、姉がこのごろ遊んでくれないのを怒っているのか少しブスっとした顔で睨んでいる妹。そして、二人に注目されて、少し下向き加減で夕食を食べる俺だった。
——ここには、俺だけちょっと緊張感漂いながらも、それも優しく包み込むような暖かな空間が作り出されていた。
俺は二人の見つめる視線から逃げるように少しうつむきながらも——思った。
ああ、まったく——良い家族。
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四歳下で中一の(シスコン気味なのが多少怖いが)とても素直で可愛い妹。要所要所では厳しいところはあるが、思春期の少女のやることにとても理解があり、やさしく包み込んでくれる母親。
いつも、帰りが遅く今日もまだ帰ってこない父親。こいつは娘にメロメロのなさけない親父様ではあるが——全身全霊で家族を愛しているのが伝わってくる良い人だった。
もっと上流階級然としたつんつんした人達を想像していたのだが——いやそもそもあいつがお嬢様だとか思ってたのが過度の思い込みだった。
先祖代々地元有力者とかいうのは本当のようだし、この家も父親は名の知れた企業の管理職で今の日本で決して裕福でないと言うようなところではないのだが——実家の家系を継いだわけでもなく、次男で家を出て、自分で家も建てて、月々の給料で暮らしているこの家族の様子は、両親が共働きで稼いでいるうえに、おじいさんから受け継いだ持ち家に住む俺の家と、別に大きな差があるわけではなかった。
給料前には節約をするし、時には少し贅沢してみて後悔したり、子供のこの後の学費の心配をしたり……
いや、考えてみれば、あいつがお嬢様お嬢様みたいな行動を学校でとってたわけではない。これって、もしかして俺は少しねたみみたい感情も入って、あいつは違うんだって思ってしまっていなかっただろうか……
と、俺はそんなことを考えながら、夕食を食べ、いつのまにか深刻そうな顔つきにでもなってしまっていたのだろう。
「あれ、何か考え事してるの」
それを見たあいつの母親に言われる。
その言葉に。俺ははっとして、
「ううん……なんでも」
と言う。
ああ、しまった。考え事してたら夢中になってぼおっとしていたらしい。
なので母親に変に思われないように、今は食事に集中しようと箸を持ち直すが、その瞬間、
「あらあら本当に恋煩いかしら? 心ここにあらずといった感じだけれども、でもまあ今日は全部食べてくれたからそっちは追求しないであげよっか」
「……え?」
全部?
俺はいつの間にか空になった皿を見る。
あれ、いつのまにか俺、出されたの全部食べちゃってた。
ハンバーグもつけあわせのポテトも、ご飯も気づいたら全部食べていて……
「ご馳走様……」
俺は少しっぽっこりとした気のする腹を見て青くなりながら、あいつに明日々言い訳しようかなと考えて部屋に戻るのだった。
*
そしてしばらく経って……
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夕食の後、あいつの部屋にひっこんで春アニメの評判をチェックするために一心不乱にネットを見ていた俺に母親がドアの向こうから声をかけてきていた。
時計を見る。
いつの間にかもう九時を回っていた。でも少し作業の切れ目が悪い。もうちょっとで新作の評判のチェックが全て終わるのにと思って、
「もうちょっとしてから……」と俺。
しかし、
「今日は、もう少ししたらお父さんかえって来るって電話あったから、その前に入ってしまいなさい」と母親。
げげ、そうか。と俺はあいつに言われたお約束を思い出す
俺自身は、愛する娘にハブられ気味のかわいそうなお父さんが俺の前に風呂に入ろうが後に入ろうが、正直、まるで気にしないのだが、年頃の娘らしくあいつはそれを嫌がっている……
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なので、
「うわあぁあ、直ぐ入る、待って、待って!」
この頃、すっかり上手くなった、あわてた風な演技で部屋を飛び出た俺に、
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俺があいつに見られて恥ずかしいなあと思うようなものは、俺も見れないようになっているし——その逆も真。風呂やトイレそんな覗かれたらやばいようなものはみんな俺も覗けない——つまりその間は完全に記憶が飛ぶようになっていたのだった。
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「さあ、早く一緒に入ろ」
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なんか中学生にスカート脱がされそうになっているという自分の状況にとても混乱している俺。
と言うか、なんだ、今日はこのままなのか?
なんでいつもみたいに意識が飛ばないんだ。
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「まてまて、すぐ脱ぐから」
俺はスカートに手をかけて脱ぎ、それでも飛ばない意識に——あせってはらはらとしてしまう。
いや、自分の服を自分で脱いでいるんだ。それに何の悪いわけがある。
でもなるべく下のほうをみないように上向き加減で——いやどうしても目だけ下にひっぱられるが……
だめだめ! こんなのがあいつにばれたら何を言われることか。
ああ、でも次はシャツを脱がないと。
と、俺はボタンをゆっくりと一つずつ外し、時間を稼ぐが意識は相変わらずはっきりとしていて……
「なんか今日はずいぶんぐずぐすしちゃってる……どうしたの」
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すると、虚をつかれ引っ張られたせいで、なんのお抵抗も無くするりと脱げるシャツ。
あわててしゃがんで、
「やめて」と俺。
「へへへ、やめてで済むなら警察いらぬ」
とヤンデレ声の美唯。
「待て、美唯」
「へへへ、お姉ちゃん、次はそのブラを……」
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