ダンジョン・エクスプローラー

或日

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077:地下5階5

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 4階でジャイアント・アント・クイーン戦を終えたクリストたちは発見した下り階段を使って5階へとやってきた。階段を下りた場所は真っすぐな通路になっていて、そのまま進んでいくと丁字路に到達する。右側を調べにいったフリアはすぐに戻ってきた。
「少し先でまた丁字路。それで何だっけ、臭いやつ、あれがいる」
「マジか、ここから出ていたのか。俺たちは6階からだったか。さーて、そうなると左はどうだ?」
 名前はマネスといっただろうか。悪魔、デーモンの一種だったはずだが、とにかく臭かったという印象しかない。積極的にやる気にはなれず、ひとまず左側を確認してみようと決まってしまう。そちら側はしばらく直進が続いて右へ折れ、そしてまたしばらく進んだ先は部屋にたどり着いた。
「うれしいお知らせと残念なお知らせ」
「うれしいってのは何だ? 宝箱か?」
「当たり、宝箱発見。残念な方は、こっちも臭いやつ。数は1」
「あー、これはあれだな、本当はここから始まっていたんだな。仕方がない、あきらめてやっていくか」
 どうやらこのデーモンどもはこの5階から配置が始まっていたらしい。どうしてもやるしかないのならできるだけ臭くないように対処していくしかない。そうなるとやることは一つだ。フェリクスとカリーナが同時にファイアー・ボルトを放ち、炎上したところで待機。燃やしきれなかったらもう一度だ。
 実際この魔物は弱い。ファイアー・ボルト2発で炎上すると炎の中でうごうごと動いていた時間も短く、そのまま床の上で動かなくなった。これならば臭いもそこまで気になることはない。久しぶりの相手ではあったが、これで安定して倒していけるだろう。
「鍵なし、罠あり、うーん、押さえる! 開ける!」
 宝箱を調べ始めたフリアが手早く罠を解除し、蓋を開ける。中からはポーションが見つかり、中の液体は黄色く、渦巻くような黒い部分があることが確認できた。

 部屋を出ると引き返し、先ほどマネスがいたことで回避した丁字路へ向かう。すぐそこに交差点という場所まで進んだところでフリアが待つように指示、そこまで慎重と進んで気配を探ると戻ってきてマネスが近づいて来ていることを報告。そうなるとやることは決まっている。フェリクスとカリーナが魔法を用意して待ち、ゆっくりとした動きで交差点に姿を現したその魔物に対してファイアー・ボルトを放つ。今回もこの2発で戦闘は終了、マネスはすぐに動かなくなった。
 丁字路の左右はどちらも長く直進が続きそうで、まずは右側と進むことになる。だが先行して調べにいったフリアはすぐに引き返してきた。
「この先行き止まりなんだけど、たぶんね、一方通行の扉だと思う」
 一方通行の扉でふさがれる場所というのは2階からすでにあった。どうやらここもそういうエリアということのようで、扉の先を調べたければ別のルートを見つけなければならないだろう。今回はそれを探ることは目的ではないので、地図に書き込むだけ書き込んで、あとはいつか誰かが、だ。
 丁字路を反対側へ進むと、今度は扉にたどり着く。
「あー、これも何となく察し。たぶん一方通行だよ」
 気配を探ってから扉を開けたフリアが反対側を確認するとノブがなかった。全員が扉を抜けてから戻してみると、そこは扉の形に枠線こそあるものの、手をかけられるような隙間もなく、開けることはできなさそうだった。扉から出た場所は左右に通路が伸びていて、右はしばらく続き、左はすぐ先で右に折れていることが確認できる。折れる先を確認しに行ったフリアが戻ってきて、その先で部屋がありそうなことが分かり、まずはそこからと決めて移動する。
 右へ曲がり、また右へ曲がったところに扉がある。
「鍵なし、罠なし、気配あり、数は1。たぶん臭いやつじゃない悪魔の弱いの。なんだっけ、ブタみたいなの?」
 それならば大した相手ではない。扉を蹴破るように開けたエディとクリストが部屋に飛び込むと、左奥の方でうろうろとするブタのような姿の魔物、ドレッチを発見。二人がかりで剣で斧で攻撃すると、あっという間に動かなくなった。6階で戦って知っていたことではあるが、この悪魔も非常に弱かった。宝箱は鍵も罠もないことを確認したフリアがさっさと開け、中からはまたよく分からない魔法のスクロールを発見した。

 部屋を出て通路を引き返す。次は一方通行の扉を出たところから反対側へ。途中右側に扉が一つあった。調べたところ鍵あり罠ありと厳重に閉ざされていて、期待してそれを解除したフリアが開けてその先へ入ってみたところ、少し先で行き止まりで何もないことが分かった。運が良ければ宝箱がありそうな場所ではあったのだが、厳重に閉ざされていた割には今回はがっかりな結果だった。
 その先で通路は右へ曲がり、そしてすぐ先で左への分かり道、というところで再びマネスが接近。待ち構えて姿が見えたところにフェリクスとカリーナがファイアー・ボルトを当てて倒す方法で今回も事なきを得た。ただその分かれ道の方にもマネスがいるようで、足が遅いことも分かっていたので、今回はそのまま急いで通り過ぎることになった。
 その後しばらく直進が続いた通路は左へ折れ、その先で鍵の掛かった扉に到達、フリアが解錠してその先へ進むと左への分かれ道、そして通路はずっと長く直進が続いた。その通路を先行していたフリアがあわてて戻ってくる。
「ごめん、油断した、ゴブリン! 1!」
 後方へ駆け抜けるフリアの後を追うようにグギャーという声が聞こえてくる。すぐに姿を現したのはこん棒を振り回すゴブリンだった。待ち受けるのはエディとクリスト、駆け寄ってきたところを立て続けに攻撃を加えてあっさりと撃破だ。ゴブリン1体、どうということもない。
「ここでゴブリンか、さっきの扉でエリアが変わったってことだよな」
「5階のゴブリンのところだよね。えーっと、地図のこの辺か、うーん、そうすると、もしかしたらさっきの分かれ道のところ、4階の階段のところかもしれないね」
「どこだ? あー、ここか。なるほどな、ちょっと確認してみよう」
 引き返して分かれ道へ入る。その先で左に扉、右に分かれ道というところに差し掛かり、地図を頼りに右の分かれ道を確認すると、確かにそこには4階への階段があった。
「確定したな。ここへ戻ってきた。てことはここから昇降機まで魔物なしで行けるのか」
「そうだね、これで一安心だ。どうする?」
「せっかくだ、こことここの宝箱も見ながら行こう。それで階段室まで行って休憩だ」
 4階から下りてきた場所から6階への階段までのルートはすでに確立していて、そのルート上に魔物は出現しないことも分かっている。途中に罠こそあるが、宝箱もあるだろうと予想され、せっかくここまで来たのだからとそれを見ながらの移動となる。
 階段側から進み正面に扉を見て右へ進むと扉、開けた先は部屋になっていてえ四方に扉。ここは扉を見ることで反対側の扉からライトニング・ボルトが放たれるという罠があった。魔法の放たれる罠となると対処方法は決まっていた。リフレクト・ミラー・チャイムがあるのだ。それでエディの盾と念のためクリストの剣にも反射の鏡面を作りだし、互いに背後を守る形で部屋へ入り、左右の扉を見る。すると右の扉、クリストの側の扉からライトニング・ボルトが放たれ、剣の鏡面に当たるとそこから天上へ向かって飛び、当たってはじけて消えていった。これで罠の解除は完了だろう。あとはその左右の扉の先に宝箱があるかもしれないので確認だ。フリアが確認したところ、右の扉は鍵なし、罠なし、宝箱もなしと残念な結果だったが、左の扉は鍵あり、罠なし、そして宝箱はありだった。宝箱にも鍵はかかっていて、解錠したフリアが開けると宝石が5個見つかった。前回も宝石だったような気がするのだが、ここは宝石が出やすいのかもしれなかった。
 そこから正面の扉を開け、通路を進んだ先の扉を開けるとまた部屋だ。ここは右の扉だけが宝箱の可能性があり、正面は別のエリア、左の扉がボス部屋や階段室へつながっている。右の扉を調べ、鍵ありを確認したフリアが解錠、扉を開けてみるが宝箱はなかった。残念な結果だ。だがこれでとにかくやるべきことは終わった。左の扉を開けて長く続く通路を進み、途中のボス部屋でホブゴブリンと配下のゴブリンたちをちらりと確認、相変わらずこちらを見ているようではあるがまったく動こうとしない様子にある意味安心しながらそのまま6階への階段室へと到着した。

 ここで一度荷物を降ろし休憩を取る。今回は1階か5階までを一気に踏破した形だが、消耗はそれほどでもない。さすがにこの階層の魔物では自分たちの相手にはならず、せいぜい4階ボスのジャイアント・アントの群れが多少手間取りダメージも受けたことくらいしか見るべきところはないだろう。このまま昇降機まで行って地上へ戻ってしまっても良かったが、歩きづめだったこともあってとにかく安心安全なこの場所で休憩だ。
 部屋の奥、専用の鍵が必要な扉の先にまだ軍の兵士がいるかどうかは気になった。そこでフリアが気配を探り探り扉を慎重に開けると、イーグル・アイを使って通路の先、6階へ下りる階段の方向を確かめる。前回はそこに兵士の姿があったのだが、今回はそれは見当たらなかった。どうやら6階での視察は終わったのだろう。そうなると視察に来ていた国、軍、ギルドのお偉方は今頃地上で会議の最中だろうか。今戻ると鉢合わせる可能性も多少はある。別にいたからどうだという話ではあるのだが、何となく、何となくだが顔を合わせてあいさつを交わすことすら面倒だった。
 地上に戻った時にお偉方が皆ミルトかもっと先まで戻っていることを期待して、軍の連中も自分たち用に用意しているという馬場に作成中の陣地まで戻っていることを期待して、今回はここで一泊していくことに決めた。
 道中で削れていた体力の回復、傷んでいる装備もメンディングの魔法を使ってきっちり修理し、そしてゆっくりと休んで魔法も回復させていく。幸いここはいつもの水場のある階段室だ。きれいだと分かっている水で顔を洗い、タオルをぬらして体を拭き、火をたいたら水を湧かしてスープを作り、暖かい食事を取って、ゆっくりと寝たら地上を目指そう。このダンジョンは冒険者らしくないこういう優雅な時間も作れるところが本当にありがたかった。
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