ダンジョン・エクスプローラー

或日

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086:国軍、迷宮の悪意に挑む。

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 9階の様相はそれまでのフロアとはまた違っていた。
 明るい空間、高い天井、宮殿のような様式で作られた壁や柱、正面に見えるのは両開きの扉。左右に伸びる通路にはさあここで休憩してくださいと言わんばかりのスペース。さらに水場もありと至れり尽くせりだった。両開きの扉の先には立ち並ぶ鎧と柱に飾られた盾と剣。抜けられるものかと入ってみれば一斉に動き出すそれら。この部屋はどうやら並んでいる全てがアニメイテッド・オブジェクトであろうと考えられた。その部屋は奥にも両開きの扉が見えていてあれが進むべき先だろうとは分かるものの、いったん部屋から出て対策を練ることにする。さらに左右の通路の先に短い下り階段が見つかり、その先は10階というわけではなく、別のエリアになっているようだった。この9階から下りてきた場所には魔物の気配がないことから、短い階段の先が探索するべき場所として作られているのではないかと思われた。
 水場を利用して一時休憩として、一気にここまで進んできた披露の回復に努める。8階のアボレス相手に魅了のような状態に陥ってしまった2人の状態は回復していない。やはり効果の長い攻撃だったようだ。やむを得ず2人の管理はパキに任せ、部隊の構成を多少いじることになった。
「問題はあの中央を強引に突破するには盾と剣が邪魔だということだな」
「そうですねえ。アニメイテッド・オブジェクトが出たという報告は見ましたが、あの規模は想定していなかった。ちょっと準備が足りていませんね」
「金属糸を混ぜた網で引きずり下ろしてしまえばいいんですが、さすがに今回は持って来ていませんよ」
 両開きの扉の前に集まったマリウス以下各部隊の隊長が相談する。大量のアニメイテッド・オブジェクトを相手に強引に突破することも不可能というわけではないが、冒険者が1パーティーで突破する場所としてはおかしいだろう。突破させたくない場所という意味では分かるのだが、ここに彼らがいないということは突破できているのだ。
「どうもこのダンジョンには意図があるようだってのは報告に何度も出ています。これは一度下を見ておくべきなんでしょうな」
「何かの仕組みがある、そう考えるべきか。ではポーションと、あとは何がいる。各部隊に多少持たせた上で一つやる。イェレミアスとパキの部隊は待機、次が必要であれば入れ替えだ」
 方針が決定され、マリウス、フロカート、クウレルの部隊が集合する。両開きの扉から右へ進んだ先の、短い下り階段の先が今回の目的地だ。

 下り立った場所は普通の部屋のようで、通路が左と前に伸びている。前への通路へ進むことを決め、フロカートとクウレルの部隊が並び、盾と槍で通路を埋める形を作る。そこからしばらくは順調だった。ひたすら前進するだけで魔物の出現すらない。壁も床も継ぎ目すらない一枚岩のようで景色も変わらないのだ。変化が起きたのはしばらく先、変化というには小さいが、壁、床、天井と一本の線が入っていたからだ。何かしらはあるのだろうとそこまで進むがやはりそれ以上の変化はなかった。いまだに魔物の現れる気配すらない。何の意図があるのかいぶかしみながらその線、岩の継ぎ目を越えてさらに進む、そのさなかにガアンッという激しい音ともに、その継ぎ目に沿って迷宮そのものが激しく横へずれるようにして動いた。その動きの大きさに何人かは転倒し、何人かはしゃがみ込み、壁に手をついた。動きがあったのは一瞬だった。気がついたときには継ぎ目の向こう側は壁になっていた。
「何が起きた! ち、何人だ!?」
「6人。どうやら分断するための仕組みのようですね」
 身を起こしたマリウスの問いにアエリウスが答える。幸いだったのは分断された中にフロカートもクウレルも含まれていて指揮系統が乱れるということもないことだった。ただそちらには弓手のような支援のできるものがいない。
「おおい! 聞こえるか!」
 クウレルの部隊から取り残される形になったトラセレルが壁に耳を当てながら大声を上げる。
「お、音が聞こえる。これは壁を殴っている音ですかね。どうやらそこまで離れてはいないようですよ」
 バアンッとマリウスが盾を壁に一度たたきつけて返事とする。誰か聞き耳を立てていれば気がつくだろう。
「研究室の連中が言っていた音による通信手段というのはこういう時にも使えますね」
「ああ、そういえばそんな話もあったな。まあ今はいい。移動するぞ。次に動きがあるとすればまた継ぎ目を見つけたときだ」
 マリウスの側の移動できる方向はスタート地点に戻って別の通路に進むことしかない。そこまで魔物はいなかった。全力で戻り、また別のルートで分かれてしまった者と合流しなければならなかった。

 バアンッと何かを殴りつけるような音が聞こえた。
「向こうも無事は無事のようだ、音がする」
「よし、これは分断だけが目的だったってことだ。とはいえ向こうは戻るしかない。こっちと合流は難しいだろう」
「そうだな。どっちにしろ進むしかないか」
 壁に耳を当てていたクウレルが立ち上がる。
「やることは同じだ。並べ、このまま進むぞ」
 フロカートの指示で通路を横一列に並び、盾と槍を構える。魔物はいまだに出現していないが、こういう仕掛があった以上はただ進むだけという状況もすぐに変わるだろう。気をつけるべきは次の継ぎ目を越える時ということでいい。もっともそのタイミングはすぐに現れたのだが。
 継ぎ目を越える時は横一列に並ぶことになった。とにかくこれ以上の分断は避けなければならない。魔物がいないことを幸いとして肩を寄せ合い、フロカートの合図に合わせて足を動かし継ぎ目を越える。ガアンッという激しい音。そこまでは想定していたのだが、今回動く方向は下だった。ガアンッ、ズドンという激しい音とともに下へと動く迷宮に翻弄され、足が宙に浮く。姿勢を維持できなくなったことで鎧が盾がぶつかりあいガチャガチャと音をさせ、そして停止した迷宮の床に落下する。うまく足から下りられずに姿勢の崩れた者につられるように全員がその場に崩れ落ち、盾を槍を放り出して手を着き、完全に転倒することを防ぐのがやっとという状態だった。嫌な雰囲気がしたのはその時だった。
「お、おい」
 誰かが声を上げ、誰かの肩をたたく。
 背後からゴフーという鼻息のような吐息のような音が聞こえた。
「反転! 構え!」
 フロカートが大声を上げ、全員の意識を戦場に引き戻し、その音の方へと向かせる。
 盾をぐるりと頭上を越えさせて背後に立てる。槍を持ち上げてぐるりと回し背後に向かって穂先を立てる。
「げ、」
 そう言ったのは誰だろう。だが確かにそう言いたくなるものがそこにいた。牛頭の巨人、ミノタウロスだった。頭部には捻れた角、肩に胸に腕に脚に盛り上がった筋肉、両手で支える巨大なハンマー。ブフーという音とともに口の両脇から湯気が上がる。
 ガンッガンッとひづめを床にたたきつけ、ハンマーの頭を下げてこちらに向け、やや前傾の姿勢に変わる。
「槍、構え! ハンマーの位置は空けろ! 突撃に合わせ首、胸、腰だ!」
 後退するという選択肢もあるが、まずはこの場所のミノタウロスの強度を見たかった。1体であれば最終的にはぐちゃぐちゃな状況に持って行ってしまえばいい。突撃に合わせて槍を置いておき急所を狙う。そして突撃を回避した者は背後から残りは正面や左右から逆に突っ込んでしまえばいいのだ。
 ガツンッという音とともに床を蹴ったミノタウロスが、頭部の角とハンマーの頭をセットにして中央に突っ込んでくる。だがそこに並んでいるのは盾を支えて姿勢を下げた歴戦の兵士たちだ。激しい音をさせる衝撃がどれほどのものか。
 2枚の盾の間に割り込むように入り込んだミノタウロスにずりずりと押し下げられるが、別に完全に受け止める必要はないのだ。そのまま下がることで衝撃は逃がせ。当然そこに置かれていた槍の穂先が首元に潜り込んでいて血しぶきをまき散らし、引きずられないように手を離したことで自由を得た柄が盾を支える兵士の頭上で揺れる。
 腰に刺さった槍は左右に開いた兵士がそのまま引きつけ、傷口を開く。ミノタウロスの突撃を受けなかった兵士は槍を一度立てて背後に回り込み、そこからまた構え直し、見えている首の裏、そして腰に狙いを付けて力強く踏み込んでいった。
 立て続けに攻撃を受けたミノタウロスがそこからハンマーを振り回そうと動くが、察した兵士が角度を付けた盾の上を滑らされ、何もない空間へ行ってしまう。そうして身を起こしてしまったことで空いた首、そして胸へと槍が殺到した。
「まあ普通のミノタウロスですかね。近くに出たのは驚きましたが」
「そうだな、普通という評価でいいだろう。とはいえダンジョンの動きが分からんのはやりずらい。急に出てこられるのはさすがにな」
 崩れ落ちたミノタウロスを見下ろす。
 背後に出現してからすぐさま突撃されていれば対応できていたかは分からない。ダンジョンが下に動いたことで転倒に近い格好になっていたことも良くなかった。だがこれでこのエリアに出現する魔物の情報は得られたということだった。
 どこかでガアンッという音がした。
「お、これは向こうでも動きがありましたかね」
「おかしな分断のされ方をしていなければいいがな。さあわれわれも動くぞ」
 そこからは再び整列しての前進だった。

 分かれ道から突っ込んできたミノタウロスを回避したトラセレルがダンジョンの移動に巻き込まれ壁の向こうに消えていった。そこに継ぎ目があることは分かっていたのだが、ミノタウロスがそれを越えることによっても移動は引き起こされてしまったのだ。突っ込んでくる角、振り回されるハンマーを回避することを優先した結果ではあるが、これはトラセレルに警戒を任せていたことの失敗でもあるだろう。そもそも警戒活動に不向きなマリウスの部隊と、2列目3列目を担当する兵士ばかりが残ってしまったことの不運でもある。そこからミノタウロス自体は撃破することができたのだが、問題は1人で分断されてしまったトラセレルの方だった。壁を何かでたたく音はしているのだから無事は無事なのだろうが、ここからは警戒すらも難しくなる。
「やむを得ん。とにかく進むぞ。トラセレルには逃げ回ってもらうしかあるまい」
「負担をかけることになるのは分かっていましたが、この展開は考えていませんでしたね」
 ミノタウロスの体を貫いた剣を引き抜きながらマリウスとアエリウスが相談する。このエリアの奥の方が何かがある可能性は高いのでそちらを目指すことにはなるのだが、これ以上の分断は戦力の分散というよりも、兵種によってはミノタウロス相手では厳しいという問題の方が大きかった。マリウスが前、アエリウスが後に周り、その間を2列目3列目担当の兵士たちに任せる。これで不意の分断にも何とか対応できるだろうと考え、それで前進を再開した。
 途中またガアンッというダンジョンの動く音が何度か聞こえたが、マリウスの方では継ぎ目が現れない。分かれ道すらなくなった通路を進んでいくとようやく継ぎ目が見えてきたのだが、今度は近いところでガアンッという音がして、目の前の通路をふさぐように壁が現れる。どこかの移動に巻き込まれる形でこちらの形も変わってしまったのだ。やむを得ずアエリウスが先頭の形に変えて通路を引き返し始めると再びガアンッという音、そして左の壁が消え、そこに通路が現れた。その場所は部隊のちょうど真ん中、まさに2列目3列目の横だった。
「ミノタウロス!」
 その通路を見た誰かが声を上げる。
「速射! 即移動! 場所空けろ!」
 アエリウスの指示を受けた弓手が狙いも付けずに通路の方へと矢を放つと、そこから転がるようにして分かれて通路の前から待避する。その場所へゆっくりとミノタウロスが姿を現し、すでに振り上げていたハンマーを待避していく兵士の背に向かって投げつけた。そこへ割り込んだ兵士の盾にハンマーが衝突し、ドガアアンッと激しい音をさせてゆがんだ盾とともに宙を飛んで後ろの壁にぶち当たる。ミノタウロスが投げつけたハンマーを防ぎきれないと判断した兵士が盾に当て、そのまま盾ごと頭上へ逃がしたのだ。
 床に落ちたハンマーを持ち上げたマリウスがそれを持ったまま通路へと進む。拳を振り上げたミノタウロスの首と胸には槍が突き刺さり、そして振り下ろした拳が盾にぶつかって音を立てる。押し合う兵士の後ろまで来たマリウスが目の前の兵士の肩をぽんとたたくと、その兵士は半身になって場所を空ける。マリウスはハンマーを両手で頭上高くに振り上げると踏み込みながらそれをミノタウロスの頭上へとたたき込んだ。ぐしゃりという手応えとともにミノタウロスの頭部が落ちてくる、その首の下に手早く立てられた槍が潜り込み、首の後ろから穂先が突き抜けた。

 トラセレルは追われるままに通路をひたすらに逃げていた。
 背後のミノタウロスをどこかへ追いやるために継ぎ目を飛び越え、安心したところで正面に見えたミノタウロスを避けるために分かれ道へ飛び込み、横の壁が突然消えてその向こうにちらりと見えたミノタウロスから距離を取るために走り続ける。何度もダンジョンの変化を引き起こしてしまい、マリウスにもフロカートたちにも申し訳ないが悠長なことを言っている場合ではなかった。自分一人ではミノタウロスの相手は難しい。今は逃げることが最優先だった。
 そしていくつかの曲がり角を通過し、いくつかの分かれ道を選び、何体かのミノタウロスから逃げて飛び込んだ先は広い部屋だった。広い広い部屋に柱が何本か立っている。ここまではひたすら通路だった。そしてどう見てもスタート地点の部屋ではなかった。ゴフーという音が聞こえている。場所は、柱の向こう側。どう考えてもミノタウロスがいるだろう。
 ちらちらと周囲を見渡して、逃げ込めそうな通路を右の奥の方に一つ見つけると壁際をそろそろとそちらへと移動する。逃がしてくれるのならばありがたいのだが、このまま進めばどうしても柱の向こう側へ回ることになり、お互いその姿を視線に入れることになるだろう。
 ズドオン。
 目の前の壁にハンマーが突き刺さった。
 柱を通り過ぎる、すぐそこに通路の入り口、そういうタイミングだった。のけ反るような格好になったトラセレルがちらりと視線を向けたその先から、ゆっくりとした動きで赤褐色の肌をしたミノタウロスが姿を現した。先ほど見たものとは色が違う、体格も良さそうだ、そしてどう見ても鎧を身につけていて強そうだった。
 これはまずいと判断したトラセレルが後退する。ふっと目の前に影が差す。いつの間にか近くまで来ていたミノタウロスの手がハンマーの柄をつかんでいた。とっさに身を翻して柱の陰に飛び込んだ自分を褒めたかった。背後でハンマーが岩をたたく激しい音がする。振り回して柱にでもぶつけたのだろう。そのまま駆けだしたトラセレルが次の柱へたどりつく、その右側に茶褐色の塊がちらりと見えた。速すぎる。左へ切り返し頭から床に飛び込むように前のめりになって転がるその背後でまたハンマーが岩にたたきつけられる大きな音がした。

「左へ!」
 聞こえた声に手を突っ張ってそのまま横へ転がる。さっきまで自分がいたその場所に突き刺さるハンマーの頭が見えた。
 空気を切り裂く音、バシバシと何かが何かに当たる音が立て続けにする。
 最後にはバタバタとした動きになってしまったがそのまま前のめりな格好で駆けだしたトラセレルはどうにか次の柱を背に身を起こす。目の前では床に突き刺さったハンマーを持ち上げて振り返るミノタウロス。再び聞こえた空気を切り裂く音とバシバシとミノタウロスに命中する矢。肌に鎧に弾かれて突き刺さるものはないが、だがミノタウロスの動きを止めさせることには成功していた。
「大物だな。これがボスというやつか」
 ミノタウロスと同じハンマーを担いだマリウスが言う。報告にはたびたびエリアのボス、フロアのボスといった文言があった。通常の魔物とは明らかに脅威度の違うものがいたらそれがボスだという報告だ。目の前の赤褐色のミノタウロスは確かにそれのように見える。マリウスの背後でアエリウスがトラセレルの方を見て剣の柄をポンポンとたたいた。抜けということだろう。マリウスたちが正面に立ち、トラセレルは立つ位置が違う。攻めに転じるのならばいい位置だった。
 盾を構えた兵士たちがミノタウロスとの距離を詰めにかかる。ハンマーを振り上げ突撃しようという姿勢を見せるミノタウロスには矢が射かけられ、思うようには攻めさせない。そして盾の間から突き出された槍がミノタウロスに届いた。振られるハンマーが槍を払う。射かけられる矢が頭上から降り注ぐ。ゆっくりとした動きでマリウスが右側に回り始め、剣を抜いたアエリウスもそれに続く。ミノタウロスがそちらをちらりと見たところでトラセレルも動き始めた。
 盾が突き出され、槍が突き出されるが肌に鎧に遮られハンマーに振り払われる。そのミノタウロスに横から迫ったマリウスは、頭には届かないと判断してハンマーを小さく振って目の前の足先にたたき込んだ。確かな手応えとグオオオッという悲鳴。そこへ振られた拳を避け、マリウスはハンマーから手を離して後退する。変わって前に出たアエリウスが振り切られて伸びた手首に思い切り剣を振り下ろし半ばから切断する。その反対側ではトラセレルが振った剣が横腹を切り裂いた。怒りの表情を浮かべたミノタウロスは無事な右足を軸にハンマーを持った右手を振り回し、周囲の兵士を後退させた。
「突撃!」
 聞こえた声は別の通路の側からだった。
 一斉に迫る盾と槍の塊。それは柱の影から現れ、ミノタウロスの背後に殺到した。
 首の裏に背中に足裏に突き刺さる槍、盾に押し込まれのけ反る背、突き出される格好になった腹に突き刺さる正面からの槍。背後から殺到した兵士たちが左右に分かれるともんどり打つようにミノタウロスが背中から床へと落ちる。天井を見上げる格好になったミノタウロスの視線の中にマリウスのアエリウスのトラセレルの剣の切っ先が見えていた。

「済まんなトラセレル。よく逃げ切ってくれた」
「いやー、怖いですね、これ。冒険者1パーティーでやれるもんなんですかね」
「そこは魔法だろう。魔法でどうにかできるのならば戦える。そういうものなのだろう。われわれ向きの場所、われわれに適した場所ではなかったな」
 少人数で挑んでいたとしてそこで分断されたらどうするか。特に冒険者となると前衛と後衛とでは明らかに防御力、直接戦闘での攻撃力が違ってくる。分断する仕掛、その際の衝撃、突然現れるミノタウロス。少人数でミノタウロスを押し切れるのか。魔法がありさえすれば対策はいろいろとあるのだろうが、それも分断されなければの話だろう。どうやって突破したのか聞いてみたくはあった。
 とにかくこれでこのエリアのボスは撃破したということでいいだろう。一応戦利品として魔石と、ハンマーはマリウスが気に入ったようでボスが使っていたものを持っていくことになった。
 そこからの帰り道ではダンジョン内に継ぎ目が一切なくなっていて、そしてミノタウロスが現れるということもなかった。残念ながら宝箱を見つけることはかなわなかったが全員が無事に戻ることができ、そして待機していた者たちの無事も確認された。両開きの扉の先はといえば、柱に飾られていた盾と剣が消えていることが確認される。下の2つのエリアを攻略することでこのアニメイテッド・オブジェクトに変化があるということが分かったということだ。
 もう1エリアのクリアを試みてもいいのだが、正直なところ時間がもったいなかった。アニメイテッド・アーマーは軍隊の敵ではないのだ。頭上を舞う盾と剣がないのならば数が多いとはいえ恐れるほどのものではない。
 待機していた分だけ余裕のあるイェレミアスの部隊とマリウスの部隊が中央、右の柱より向こうにフロカート、左の柱の向こうにクウレルの部隊。盾と、穂先ではなく石突き側を正面に向けて並べ、そこから前進するだけだ。剣を振り上げて向かってくるアーマーに対して石突きを打ち付けて、そして盾で押し込む。ただそれの繰り返しで奥へ奥へと進んでいくだけの作業だった。ひっくり返ってしまったアーマーもそのまま押して押して奥へ奥へ。途中でいくつかのアーマーがガラガラと崩れ、そして追い詰められたアーマーも殴られ殴られ崩れていく。ミノタウロスどものエリアとは違い、この場所は非常に軍隊向きの場所だった。
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