転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

文字の大きさ
144 / 314
本編

【閑話】???年前のお話

しおりを挟む
 バルフたちが眠りについた後、リーナは1人涙を流した。先程までは堪えていた涙も限界を達していた。


「ーーっ。ぁあ…ふぅ…泣くなリーナ。覚悟は決めたはずでしょう。」


 リーナはフェンリルたちを撫でると涙を拭い前だけを向いた。


「よしっ。ダンジョンの契約者が命ずる。10階層ハウス、フェンリルの家を一時封印し、出口を閉じよ。今後、フェンリルの家へと辿り着く者が現れるまで封鎖せよ。ゴーレムたちに命ずる。契約者であるが帰るまでこのダンジョンを守りなさい。」


 ダンジョンは契約者リーナの意思を忠実に守るため、10階層への空間を封じ、ゴーレムへの指示も通った。


 リーナはダンジョンそのものも封鎖する為、ダンジョンへ入る扉までやってきた。


「この玄関扉も閉めなきゃね。んー。あれが必要か。」


 リーナは契約者たる証を刻んだ石碑を思い出した。


「契約の印、石碑よここに顕現せよ。」


 光の粒が現れ次第に石碑へと変わる。


「いや重いって!顕現したのはいいけどドーンって急に落とすのはやめて欲しいよっ!身体強化、少しでも遅れてたら私の足に絶対落ちてた!キャッチ出来て本当に良かったぁ。冷や汗やばっ。」


 石碑を持ったリーナはダンジョンの扉のそばに石碑を設置した。


「この石碑を読む事でダンジョン扉もとい、私たちの家への玄関扉が開く仕掛けにしてと…うん、いい感じ!これでダンジョンへ入る術は未来の私にしか出来なくなったわ。後はここまでの道よね。樹の中に入って、ダンジョン扉までの道は複雑でも単純でもなく、簡単と言えば簡単。罠はいくつか用意してるけど不安ね。樹自体にも認識魔法を使っておくか。」


 リーナは外へと出ると樹に認識魔法をかけた。効果は樹がそこにあるという認識を薄れさせるもの。どれほど持続するかは分からない。だがリーナほどの魔法師にかかればおそらく百年単位では保つだろう。


「これでやる事はやったわね。思い残す事なんて……あるに決まってるじゃない。なんでなのよ。なんで私なのよ。あーぁ。明日死ぬのかぁ。死にたく、ないなぁ。」


 空を見上げたリーナ。そこには空いっぱいに輝く星々たち。


「ははは…綺麗だなぁ。眩しいくらいに輝いてるや。この光景が見れる夜も今日が最後なんだよね。あっ、流れ星。叶う事はないけれど願うのは自由よね…」


 リーナは手を合わせ流れ星に願った。

(どうか私を死から救って下さい)
















 夜が明けた。リーナは国へと帰って来ていた。


「貴様は第一軍として戦いの最前線で敵を蹴散らせ。」


「仰せのままに…」


 リーナは王座に座る男の命令に返事をすると立ち上がり、そのまま戦場へと赴く。













「うぉおおお!!」


「あぁああ!!」


カキンカキンッ


 剣がぶつかり合う音、魔法のぶつかり合う音、そして命のぶつかり合う音。舞う血が地面を濡らし、動かなくなった生きていた者たち。地獄の戦場の中で一際動き回る影が一つあった。


「ーーっ!はぁぁあ!!」


 束になって掛かってくる者たちを1人で相手にしている少女がいた。他の戦士たちよりも一回り小さい彼女は誰よりも血に染まっていた。彼女の敵は隣国の戦士たち。だけではなかった。自国の戦士たちは敵を引きつけている少女諸共攻撃を仕掛けるのだ。広範囲攻撃魔法で少女ごと狙うこともある。その度に少女は防壁魔法を使って避けているが完全に回避する事は不可能であり、着々と傷が増えている。



「うぁ…はぁ、はぁ。」


 立っているのもやっとの状態の少女の名はリーナ。レイピアを杖代わりにして立ち上がり、周りを見渡す。


「これじゃあ、どっちが味方で敵か分からないじゃない。」


 リーナを取り囲むようにして攻撃を準備しているのは、自国と敵国両方の戦士たちである。


「いいわよ…どっちも相手してあげようじゃないの!!」


 リーナは痛む身体に鞭を打ち、眼を据えると雄叫びを上げて動き出す。


「アァァアア"ッ!!!」



フレイムトルネード炎の竜巻


 リーナは魔法を展開した。それは1つだけでなくいくつも発生させた。戦地の各地で炎の竜巻が現れ、敵味方関係なく命を奪っていく。リーナの近くにいた戦士が剣でリーナを斬った。


「ーーッ!グハッ…ま、まだよ。私はまだ生きてるッ!!」


 斬りつけてきた戦士を投げ払いトドメを刺す。


「はぁはぁ…ウグッ!嫌だ、死にたくない。生きたい。また私は生きてあの場所にッ!」


グサグサっ


「ぁ…」


 リーナは地中から突き出てきた土槍で串刺しにされた。


 魔力も空になり、傷だらけの身体では避けることは出来なかった。



「ははっ…やっぱり帰れそぅに…なぃや…」


 リーナ・クロレスの意識はここで途切れ、以後目醒めることはなかった。
しおりを挟む
感想 169

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。 しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。 オリバーはエミリアを愛していない。 それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。 子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。 それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。 オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。 一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...