転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

アルベルタとビス

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 グスングスンとはしているものの涙は止まった私は目の前のフードをとった少年を見た。


「ありゅ…アル…べりゅた…うぅ~」


 まだしっかり泣き止めていなかった事もあり、アルベルタという少年の名前をはっきり言えなかった。それにまた泣きたくなって目に涙が浮かぶ。


「お、おい、また泣くのか!?泣くな、ティアに泣かれると俺は悲しいぞ?」


「だ、だって~アル、べるちゃ…べりゅ…」


「アルでいい!俺のことはアルと呼ぶといい。」


 噛み噛みの私に妥協したアルベルタはアルと呼んでいいと言う。こんな状況じゃなきゃちゃんと言えたもん!なんか悔しい…


「アル、アル、アル!」


「そうだ、アルだ。で、こっちは俺の…護衛のビスだ。ビス、フードを脱げ。顔をティアに見せとけ。このままだと怖がられたままだぞ?」


「うぐっ…それは嫌ですね」


 ビスと呼ばれた人はフードを脱いで顔を出す。厳つい顔が現れるかと思っていたのだが、若い凛々しい顔だった。アルもビスも顔が整ってる系だったよ…自分のイメージと違い過ぎて涙なんて引っ込んだよ。


「ありゃ?頭にお耳ある~!獣人さんなの?」


「まてまて、俺にもあるぞ!俺はビスより先にフード脱いでただろう。見えていなかったのか!?俺にも立派な耳が付いてるだろう!」


「あ、ほんとだ。アルにも付いてる。」


 身長的にもアルの方が見えやすいのに気づかなかったよ。アルも獣人さんなんだね。


 不貞腐した表情になるアル。うん、可愛い。思わずちょっと爪先立ちになって、アルの頭を撫でてしまった。ただモフモフとした形のいいお耳が触りたかったわけじゃないからね!?(と心の中で言い訳するティアだが、がっつりアルの耳を撫でまくっている)


「なっ、なっ、何するんだっ!」


 少し吊り目であるアルは、顔を赤くして私を睨んでくるが怖くない。ビスさんはニヤニヤとこちらを見ている。はて?一体何故に?


「ティ、ティア!いつまで触っているんだ!お、俺の頭を…特に耳を!」


「…だめ?」


 意図せずとも身長により上目遣いになるティア。そのティアの仕草に口をパクパクさせるアル。それに対しティアは首を傾げ、その上目遣い&首傾げにさらに喉を詰まらせるアル。


「アルベルタ様、顔が真っ赤ですよ。」


「う、うるさいビス!俺は、赤くなってなんかないぞ!」


「アル、本当に真っ赤だよ?大丈夫?」


 ビスさんの言う通り、徐々に顔が赤くなっていったアルに流石に心配になって撫でるのを一旦やめ、おでことおでこをくっつけて熱をはかる。


「~~~ッ!!!」


「アル!?」


 アルは限界に達したのかガバッとティアから離れるとビスの傍へと移動した。


「ククッ…アルベルタ様もそんな表情なさるんですね。帰ったら報告ですかね。えーっとティアちゃんって呼んでもいいかな?先程は怖がらせて申し訳なかった。改めて、アルベルタ様の護衛をしているビスという。宜しくね。」


「私も泣いちゃってごめんなさい。ビスさんはアルの護衛の仕事をしただけなのに…こちらこそよろしくお願いします。」


 最初の出会いがアレ(剣を向けられた)だけにビスさんの印象がガラリと変わったよね。


 ここまで大人しく見守っていたスノウだったがビスさんが私と握手しようとした途端、ガブリとビスさんの手に噛み付いた。


「スノウ!?ビスさん大丈夫ですか!?」


 スノウはツンと知らんぷりして尻尾をパシパシ叩きつけている。


「びっくりしたな。ははっ、ティアちゃん大丈夫だよ。ほら、血も出ていない。そのウルフも本気で噛んでいないようだからね。歯形が残る程度に手加減されているし。」


 いや、歯形が残るってだいぶ痛いのではないだろうか。


「スノウ、メッ!だよ。」


〈………ぷんだ!ティアの浮気者。僕というモフモフがありながら、獣人のガキなんかに絆されるなんて。一応、身分が偉そうだからってのもあるし、ティアを泣かせた護衛獣人で我慢したんだからね!〉


 え、スノウが可愛いすぎる件について。モフるのは僕だけにしてよとさり気なく擦り寄ってくるとか可愛すぎない?もちろんビスさんの手そっちのけでスノウをモフり始めましたよ!


 スノウをモフるのに夢中なティアは、スノウがアルベルタにドヤ顔をしていたことに気付かなかった。アルベルタはスノウのドヤ顔にムッとした表情を浮かべ、ビスは面白そうに眺めるのだった。

 

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