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第一章
第二話 【護るもの】
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チュンチュン
朝が来た。昨日はいろいろあった。初めてお父さん、お母さんが出来た。お姉ちゃん、お兄ちゃんも出来た。そして何より初めて泣いた。
バルトさん……いや、お父さんの腕の中は心地が良くてすぐに寝てしまっていたらしい。少し申し訳ないと思ったがお父さんなら「気にするな。」って言う気がする。
「さてと、片付けが終わり次第出発するよ!!」
「はい!!」
「おう!!」
「わかりました。」
「…………はい!!」
「お!!少年!!いい返事だな!!」
褒められると何だか少し恥ずかしい、けどそれ以上に嬉しかった。
片付けが終わり出発しようとしたその時。
荷物が急に爆炎に包まれた。
「何事だい!?」
「わからねぇ!!」
「少年くん!!こっちへおいで!!」
「索敵魔法発動!!」
その時僕ら5人の影がそれよりも大きな影で塗りつぶされた。
上空には荷物を燃やした張本人《ドラゴン》がいた。
ドラゴンは増えない。何故か?ドラゴンは減らない。何故か?ドラゴンは群れない。何故か?
否、それらの必要が無いほどに脅威的な存在だからである。
荷物を全て焼き尽くした炎もドラゴンにとってはほんの少し鼻息をかけた程度なのである。それでも人には充分脅威なのだ。
そしてまた、彼らは気づくコイツは蟻を踏むのと同じ感覚で俺らの相手をしているのだと。
「あんた!!動けるかい!?」
「おう!!少年をたのんだぞ!!レイラ!!」
「はい!!ビリーさん!!お願いします!!」
「魔力壁発動!!」
二人は全力だった。僕を守るために。死ぬ覚悟で走り出した。
これらの動きは完璧と言っても良かっただろう。だがそれは相手を知っていた場合の話である。
彼らは知らなかった《ドラゴン》の脅威を、恐ろしさを。
「やだ!!お父さん、お母さん!!僕をおいていかないで!!」
「安心しな!!少年!!」
「アタシ達はあんたを置いてはいかないよ。」
「そうです!!怪我をしてもお姉ちゃんが治します!!」
「ああ!!その通りだ!!君は僕らの近くにいればいい!!」
魔物に遭遇し慣れてないパーティだったらここで心が折れていただろう。しかし彼らは慣れていた。このふざけた状況にはいくらでも遭っていた。
だがそれは普通の魔物だった場合である。ましてや、相手は《ドラゴン》。伝説の魔物である。
彼らは知らなかったこの魔物の理不尽さを。
それが彼らの敗因である。
少年は目の前で起きたことを実感できていなかった。
ドラゴンが着陸し、二人が距離をつめ、魔力壁で壁を作る。そして、レイラが回復魔法を常時発動している。
抜かりはなかった。
しかし彼らは瀕死の状態で倒れていた。
何故か?何が起きたのか?
《ドラゴン》は再び羽ばたいたのだ。それだけだった。
ドラゴンが羽ばたき飛び立つ瞬間の突風それに吹き飛ばされただけであった 。
『お父さん、お母さん……ダメだ………いなくなっちゃだめ!!僕を捨てないで!!また…一人ぼっちは嫌だよ!!』
『また?………またってなんで?………でも!!』
「そんなの嫌だ!!」
「!?少年くん!!だめ!!」
「戻ってくるんだ!!少年!!」
「少年!!来てはダメだよ!!!!」
「駄目だ!!逃げるんだ!!」
『嫌だ!!逃げない!!今度は僕が………俺がみんなを……ミンナを!!マモル!!』
走り出した少年の身体を黒い稲妻が覆った。
その時少年は青年へ変わった長い前髪は後ろへ、たてがみのように。
『混成魔獣【戦闘モード】』
「がるるるるるぁぁぁぁああ!!」
その雄叫びはどんな魔獣よりも力強く、恐ろしかった。
そしてその姿はどんな魔獣よりも醜く、気高かった。
「俺がみんなを護るッ!!」
「もう失わない!!捨てさせない!!」
そのプレッシャーは《ドラゴン》ですら呑まれかけていた。すかさずに少年はその隙を逃さず全力の一撃を与えた。
〈混成魔獣拳 激竜殺〉
その技は竜をも崩す一撃である。忘れたはずの過去からの贈り物。
しかしドラゴンも同時に伝説となる存在である。その一撃を喰らいながら起き上がったのだ。
しかし彼には敵意はなく静かに帰って行ったのであった。
予想だにしない襲撃からの少年の力の覚醒。
この少年を見た後でも彼らは親しくしてくれるのだろうか?
少年には分からない。
だが混濁とした意識の中思ったことは
『護れてよかった。』
であった。
朝が来た。昨日はいろいろあった。初めてお父さん、お母さんが出来た。お姉ちゃん、お兄ちゃんも出来た。そして何より初めて泣いた。
バルトさん……いや、お父さんの腕の中は心地が良くてすぐに寝てしまっていたらしい。少し申し訳ないと思ったがお父さんなら「気にするな。」って言う気がする。
「さてと、片付けが終わり次第出発するよ!!」
「はい!!」
「おう!!」
「わかりました。」
「…………はい!!」
「お!!少年!!いい返事だな!!」
褒められると何だか少し恥ずかしい、けどそれ以上に嬉しかった。
片付けが終わり出発しようとしたその時。
荷物が急に爆炎に包まれた。
「何事だい!?」
「わからねぇ!!」
「少年くん!!こっちへおいで!!」
「索敵魔法発動!!」
その時僕ら5人の影がそれよりも大きな影で塗りつぶされた。
上空には荷物を燃やした張本人《ドラゴン》がいた。
ドラゴンは増えない。何故か?ドラゴンは減らない。何故か?ドラゴンは群れない。何故か?
否、それらの必要が無いほどに脅威的な存在だからである。
荷物を全て焼き尽くした炎もドラゴンにとってはほんの少し鼻息をかけた程度なのである。それでも人には充分脅威なのだ。
そしてまた、彼らは気づくコイツは蟻を踏むのと同じ感覚で俺らの相手をしているのだと。
「あんた!!動けるかい!?」
「おう!!少年をたのんだぞ!!レイラ!!」
「はい!!ビリーさん!!お願いします!!」
「魔力壁発動!!」
二人は全力だった。僕を守るために。死ぬ覚悟で走り出した。
これらの動きは完璧と言っても良かっただろう。だがそれは相手を知っていた場合の話である。
彼らは知らなかった《ドラゴン》の脅威を、恐ろしさを。
「やだ!!お父さん、お母さん!!僕をおいていかないで!!」
「安心しな!!少年!!」
「アタシ達はあんたを置いてはいかないよ。」
「そうです!!怪我をしてもお姉ちゃんが治します!!」
「ああ!!その通りだ!!君は僕らの近くにいればいい!!」
魔物に遭遇し慣れてないパーティだったらここで心が折れていただろう。しかし彼らは慣れていた。このふざけた状況にはいくらでも遭っていた。
だがそれは普通の魔物だった場合である。ましてや、相手は《ドラゴン》。伝説の魔物である。
彼らは知らなかったこの魔物の理不尽さを。
それが彼らの敗因である。
少年は目の前で起きたことを実感できていなかった。
ドラゴンが着陸し、二人が距離をつめ、魔力壁で壁を作る。そして、レイラが回復魔法を常時発動している。
抜かりはなかった。
しかし彼らは瀕死の状態で倒れていた。
何故か?何が起きたのか?
《ドラゴン》は再び羽ばたいたのだ。それだけだった。
ドラゴンが羽ばたき飛び立つ瞬間の突風それに吹き飛ばされただけであった 。
『お父さん、お母さん……ダメだ………いなくなっちゃだめ!!僕を捨てないで!!また…一人ぼっちは嫌だよ!!』
『また?………またってなんで?………でも!!』
「そんなの嫌だ!!」
「!?少年くん!!だめ!!」
「戻ってくるんだ!!少年!!」
「少年!!来てはダメだよ!!!!」
「駄目だ!!逃げるんだ!!」
『嫌だ!!逃げない!!今度は僕が………俺がみんなを……ミンナを!!マモル!!』
走り出した少年の身体を黒い稲妻が覆った。
その時少年は青年へ変わった長い前髪は後ろへ、たてがみのように。
『混成魔獣【戦闘モード】』
「がるるるるるぁぁぁぁああ!!」
その雄叫びはどんな魔獣よりも力強く、恐ろしかった。
そしてその姿はどんな魔獣よりも醜く、気高かった。
「俺がみんなを護るッ!!」
「もう失わない!!捨てさせない!!」
そのプレッシャーは《ドラゴン》ですら呑まれかけていた。すかさずに少年はその隙を逃さず全力の一撃を与えた。
〈混成魔獣拳 激竜殺〉
その技は竜をも崩す一撃である。忘れたはずの過去からの贈り物。
しかしドラゴンも同時に伝説となる存在である。その一撃を喰らいながら起き上がったのだ。
しかし彼には敵意はなく静かに帰って行ったのであった。
予想だにしない襲撃からの少年の力の覚醒。
この少年を見た後でも彼らは親しくしてくれるのだろうか?
少年には分からない。
だが混濁とした意識の中思ったことは
『護れてよかった。』
であった。
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