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第一章
第三話 【少年の名】
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『お前は…………失…作だ!!』
そこだけ雑音が入って、なんて言ってるかわからない。
手のひらが見えた瞬間、目が覚めた。
そこは、レイラの膝の上だった。
「あっ!よかったぁー。起きたようね。」
「お父さんとお母さんは!?」
「大丈夫よ。私の回復魔法で傷は治したわ。ただね、少し疲れて横になっているの。」
「よかった…無事で、よかった………。」
少年は体を起こそうとしたが全身に激痛が走り起きれなかった。
「いっ…………つ……。」
「ああ!!無理しないでよ?」
「ビリーが見てくれてるから。」
「あなたは…一体【何者】なの?」
「その………僕………ホントは………。」
「…………えぇ。人ではなかったね……そう……まるで《キマイラ》だったわね………。」
《キマイラ》とは、伝説上の存在である。混沌の魔獣。
頭は獅子。山羊の角。尻尾は蛇。
少年が青年になった時、少なくともそれらの特徴があった。
獅子のたてがみのように逆立った髪。
額から生えた山羊の角。
そして蛇の頭の着いた尻尾。
だから認めざるを得なかった。
少年は自分の見た目にどんな変化があったのかは知らない。ただ……自分は人間ではないと知ってしまった。
少年は無言で頷いた。
「大丈夫よ。……取って売ろうなんて考えてないから。」
レイラは優しく続けた。
「それでね。私たちで考えたの。」
「あなたにいろいろ教えてあげようって。」
「あなたは強い。けどまだ子供なの。」
「だから……。私とビリーからは、魔法を教えてあげる。」
「ルーシィは、剣術を教えてくれる。」
「バルトからは、格闘術を。」
「あなたが無理をしなくても、自分の身を守れるように。」
少年は自然と泣いてしまった。
一度ならず、二度までもこの4人に助けられた。
「あら……。また泣いちゃったわね。」
「ありがとう…ござい………ます。」
「それとね、少なくとも私は、あなたが【何者】であろうとずっと一緒にいるよ。決して捨てたりしない、何があろうともね。ずっと一緒に旅をしようね。」
「はい……。」
「あっ!!もうこんな時間か……。」
レイラがそう言って。
僕が立ち上がろうとしたら、レイラが支えてくれた。
「あまり無理をしなくてもいいのよ?」
「…行きたいんです、お父さん、お母さんの所に。」
「えぇ………分かったわ…じゃあ一緒に行きましょ。」
そう言い僕らは二人が休んでいる簡易なテントの元へ行った。
僕は二人が僕のことを怖がらないかが心配だった。
だけどレイラお姉ちゃんは「大丈夫よ。」
と言ってくれた。
覚悟を決めテントへ入ったら……。
「あんた!!いつまで寝ているんだい!!」
「しょうがねぇだろう!?全身打ち付けたんだからよ!!」
「それはあんたが何も考えずに突っ込むからでしょ!!」
「うっ!!…………それは認めるけどよ……。」
「だったら起きて!!そこで正座して、反省していなさい!!」
すごい……何が起きてるのかは分からないけど。
これが…しゅらば?というやつ…だろうか?
僕がそれを見ていたら、二人が気づいた。
「「おー!!起きたか!!少年!!」」
息ぴったりだ。やはり仲がいいのだろう。
その様子を見て、僕は少し安心した。
「少年……あの姿は一体…。」
「あああーーーーーーー!!!」
急にレイラが叫び出した。
ビリーのメガネが割れた。相当ビックリしたのだろう。
「急に、なんて声を出しているんだよ!!あぁ…僕の眼鏡が………。」
「ん?どうした?レイラ。」
「なんだい?なんかあったのかい?」
レイラが震えている。
「少年君の………なまえぇ!!!」
ピキーン!!と三人に何かが走った。
「アタシとした事が……そんなに大事なことを忘れてるとは………。」
「しまったァ!!おれは父親失格だぁ!!」
「それは…一大事です!!僕の眼鏡よりもよっぽど大事ですよ!!」
そう言い出したかと思えば、四人で輪を作りコソコソ相談し始めた。
(いいかい?あんた達。これは今までで一番重要な任務だよ!!)
(おう。もちろんだ。)
(はい!!少年君にふさわしい名前を決めましょう。)
(ええ。その通りです。僕達が命名するのですからね。)
あーでもない…こーでもない、と喋り始めて、そこそこ時間がたった頃。
ルーシィが代表として僕の前へ来た。
「いいかい?少年。今からアンタの名前は《ライ》だ。」
「キマイラの後ろの二文字を取って、ライだ!!これであんたはアタシ達の家族だよ。」
《ライ》……お父さん、お母さん、お姉ちゃん、メガネ兄。みんなが考えてくれた名前。
やっと、自分が誕生した気分だった。
「………はいっ!!」
「すごく……気に入りました!!」
みんな少し照れくさそうにしていたが、僕を改めて受け止めてくれた気がした。
すると、ルーシィが。
「ちなみに言うと、アタシ達はあんたの事を絶対に捨てたりなんかしないからね?心配要らないさ。」
みんなの気持ちをルーシィが代表して言ってくれた。
『ああ、これが家族か…………何だかとても、暖かい。』
そして、少年はこの日から《ライ》と名乗った。
自分が【何者】であろうと【誰】であるのかは揺るがなくなった。
そこだけ雑音が入って、なんて言ってるかわからない。
手のひらが見えた瞬間、目が覚めた。
そこは、レイラの膝の上だった。
「あっ!よかったぁー。起きたようね。」
「お父さんとお母さんは!?」
「大丈夫よ。私の回復魔法で傷は治したわ。ただね、少し疲れて横になっているの。」
「よかった…無事で、よかった………。」
少年は体を起こそうとしたが全身に激痛が走り起きれなかった。
「いっ…………つ……。」
「ああ!!無理しないでよ?」
「ビリーが見てくれてるから。」
「あなたは…一体【何者】なの?」
「その………僕………ホントは………。」
「…………えぇ。人ではなかったね……そう……まるで《キマイラ》だったわね………。」
《キマイラ》とは、伝説上の存在である。混沌の魔獣。
頭は獅子。山羊の角。尻尾は蛇。
少年が青年になった時、少なくともそれらの特徴があった。
獅子のたてがみのように逆立った髪。
額から生えた山羊の角。
そして蛇の頭の着いた尻尾。
だから認めざるを得なかった。
少年は自分の見た目にどんな変化があったのかは知らない。ただ……自分は人間ではないと知ってしまった。
少年は無言で頷いた。
「大丈夫よ。……取って売ろうなんて考えてないから。」
レイラは優しく続けた。
「それでね。私たちで考えたの。」
「あなたにいろいろ教えてあげようって。」
「あなたは強い。けどまだ子供なの。」
「だから……。私とビリーからは、魔法を教えてあげる。」
「ルーシィは、剣術を教えてくれる。」
「バルトからは、格闘術を。」
「あなたが無理をしなくても、自分の身を守れるように。」
少年は自然と泣いてしまった。
一度ならず、二度までもこの4人に助けられた。
「あら……。また泣いちゃったわね。」
「ありがとう…ござい………ます。」
「それとね、少なくとも私は、あなたが【何者】であろうとずっと一緒にいるよ。決して捨てたりしない、何があろうともね。ずっと一緒に旅をしようね。」
「はい……。」
「あっ!!もうこんな時間か……。」
レイラがそう言って。
僕が立ち上がろうとしたら、レイラが支えてくれた。
「あまり無理をしなくてもいいのよ?」
「…行きたいんです、お父さん、お母さんの所に。」
「えぇ………分かったわ…じゃあ一緒に行きましょ。」
そう言い僕らは二人が休んでいる簡易なテントの元へ行った。
僕は二人が僕のことを怖がらないかが心配だった。
だけどレイラお姉ちゃんは「大丈夫よ。」
と言ってくれた。
覚悟を決めテントへ入ったら……。
「あんた!!いつまで寝ているんだい!!」
「しょうがねぇだろう!?全身打ち付けたんだからよ!!」
「それはあんたが何も考えずに突っ込むからでしょ!!」
「うっ!!…………それは認めるけどよ……。」
「だったら起きて!!そこで正座して、反省していなさい!!」
すごい……何が起きてるのかは分からないけど。
これが…しゅらば?というやつ…だろうか?
僕がそれを見ていたら、二人が気づいた。
「「おー!!起きたか!!少年!!」」
息ぴったりだ。やはり仲がいいのだろう。
その様子を見て、僕は少し安心した。
「少年……あの姿は一体…。」
「あああーーーーーーー!!!」
急にレイラが叫び出した。
ビリーのメガネが割れた。相当ビックリしたのだろう。
「急に、なんて声を出しているんだよ!!あぁ…僕の眼鏡が………。」
「ん?どうした?レイラ。」
「なんだい?なんかあったのかい?」
レイラが震えている。
「少年君の………なまえぇ!!!」
ピキーン!!と三人に何かが走った。
「アタシとした事が……そんなに大事なことを忘れてるとは………。」
「しまったァ!!おれは父親失格だぁ!!」
「それは…一大事です!!僕の眼鏡よりもよっぽど大事ですよ!!」
そう言い出したかと思えば、四人で輪を作りコソコソ相談し始めた。
(いいかい?あんた達。これは今までで一番重要な任務だよ!!)
(おう。もちろんだ。)
(はい!!少年君にふさわしい名前を決めましょう。)
(ええ。その通りです。僕達が命名するのですからね。)
あーでもない…こーでもない、と喋り始めて、そこそこ時間がたった頃。
ルーシィが代表として僕の前へ来た。
「いいかい?少年。今からアンタの名前は《ライ》だ。」
「キマイラの後ろの二文字を取って、ライだ!!これであんたはアタシ達の家族だよ。」
《ライ》……お父さん、お母さん、お姉ちゃん、メガネ兄。みんなが考えてくれた名前。
やっと、自分が誕生した気分だった。
「………はいっ!!」
「すごく……気に入りました!!」
みんな少し照れくさそうにしていたが、僕を改めて受け止めてくれた気がした。
すると、ルーシィが。
「ちなみに言うと、アタシ達はあんたの事を絶対に捨てたりなんかしないからね?心配要らないさ。」
みんなの気持ちをルーシィが代表して言ってくれた。
『ああ、これが家族か…………何だかとても、暖かい。』
そして、少年はこの日から《ライ》と名乗った。
自分が【何者】であろうと【誰】であるのかは揺るがなくなった。
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