可愛げのない女とは婚約破棄?では、遠慮なく可愛くない反撃を。

ハチワレ

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翌朝、午前六時。
私は昨日よりも三割増しの力で、真鍮のベルを打ち鳴らした。

ガン、ガン、ガン!!

「起床! 起床ですわ、閣下! 昨夜のような不適切な妄想に耽って、まさか寝坊などしていませんわね! もし一秒でも遅れたら、あなたの執務室の椅子をすべてバランスボールに交換しますわよ!」

扉が勢いよく開き、カシアン閣下が飛び出してきた。
昨夜、分厚い年報で顔面を強打したはずだが、その鼻筋には微塵の歪みもなく、むしろ肌のツヤが良くなっているように見えるのは気のせいかしら。

「……おはよう、ミリアーナ。君の怒鳴り声が昨夜の夢にまで出てきて、私はこれまでにないほど深い眠りにつけたよ。ああ、目覚めの第一声が『バランスボールへの交換宣告』……。なんて刺激的な朝なんだ」

「……。ふん、その減らず口を叩けるなら元気な証拠ですわね。ほら、昨夜命じた『分析レポート』は書き上げましたの? 期限は今この瞬間ですわよ」

私が手を差し出すと、閣下は誇らしげに、びっしりと文字で埋まった数枚の紙を差し出してきた。

「もちろんだ。君に言われた通り、千文字ちょうどでまとめたよ。題名は『私の告白がいかに非論理的であり、かつ君の業務効率を著しく阻害したかについての自己批判的考察』だ」

私はそのレポートをひったくるように受け取り、斜め読みした。
……『結論として、私の発言は君の脳内リソースを「困惑」という非生産的な感情に割かせた罪深い行為である。しかし、それによって誘発された君の「年報スイング」は、私の頚椎を正しい位置に矯正する副次的効果をもたらした……』。

「……。閣下、これはレポートではありません。ただの怪文書ですわ。提出物はシュレッダーにかけておきますので、再提出は不要です。二度と書かないでください」

「えっ!? 渾身の作だったのに! ……ああ、でも、ゴミ箱行きを宣告されるのも、それはそれで……」

「黙って食堂へ行きなさい! 今日は宣言通り、あなたの脳内不純物を浄化するための特別メニューですわよ!」

ダイニングテーブルの上には、見渡す限りの「緑」が広がっていた。
セロリのスティック、セロリのスープ、セロリのマリネ。そしてメインは、セロリを敷き詰めた上に蒸したセロリが乗っている。

「……ミリアーナ。一つ確認したいのだが、これは何かの嫌がらせかな?」

「いいえ、合理的な食事療法(デトックス)ですわ。セロリには精神を安定させ、血圧を下げる効果があります。昨夜のような、分をわきまえない熱病じみた発言を繰り返す個体には、これくらいの冷却期間が必要なのです。……さあ、繊維一本残さず食べなさい。よく噛むことで脳の血流も良くなりますわ」

カシアン閣下は、おそるおそるセロリスティックを口に運んだ。
「シャリッ」という虚しい音が、静かな食堂に響く。

「……。……。……苦い。そして、口の中がひたすら青臭い。……だが、君が私のためにわざわざ厨房を占拠してまで用意してくれたと思うと、この繊維の一本一本が愛のムチのように感じられるよ……!」

「愛ではありません。ただの『矯正』です。……ところで閣下、食事を終えたらこれを確認してください」

私はセロリを噛み砕く閣下の前に、一通の招待状を置いた。
金色の縁取りがされた、仰々しい封筒。隣国の名門貴族、ベルモンテ公爵家からの舞踏会の誘いだ。

「舞踏会か。……面倒だな。いつものように欠席でいいだろう?」

「いいえ、出席します。……あちらの国(私の祖国)から、ウィルフレッド王子とルルアさんも出席するとの情報を得ましたわ。……私を『可愛くない』と捨てた方々が、私のいない王宮でどれほど無様に自滅しているのか。それを直接、この目で『査察』しに行く必要があります」

「査察……。舞踏会を視察(オーディット)の場に変えるつもりかい?」

「当然ですわ。彼らの現在の政治的・経済的困窮具合を正確に把握することは、グランヴィル公爵家の今後の対外戦略において極めて重要です。……閣下、あなたには最高のドレスと、最高の『主君の仮面』を用意していただきますわよ。私の隣で恥をかかせるような真似は許しません」

カシアン閣下は、最後に残ったセロリの葉を飲み込み、不敵に微笑んだ。

「……なるほど。元婚約者の前で、今の君がどれほど美しく、そして『恐ろしい』存在になったかを見せつけるわけだね。……いいだろう。私のエスコートが必要なら、君に相応しい最高の舞台を整えよう。……ただし、ミリアーナ」

閣下が椅子から立ち上がり、私の耳元で囁いた。

「舞踏会の最中も、私への罵倒は忘れないでくれよ? 他の男に君の毒舌を奪われるのは、耐えられそうにないんだ」

「……。閣下。……その耳元の距離、マイナス五十点です。今すぐ三メートル離れて、セロリの匂いが消えるまでうがいをしてきなさい! 不潔ですわ!」

私は顔が熱くなるのを必死で隠しながら、空になった皿を片付けた。
舞踏会。
華やかな光の裏で、私の「可愛くない反撃」は、ついに国家レベルの「ざまぁ」へと突入する。
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