2 / 13
第二話
しおりを挟む
「おーい、ちょっと待ってくれ」
北の修道院に向かう馬車には碌に護衛がつけられなかった。道の途中で一度、盗賊に襲われて撃退した後だったせいもあり、新しい盗賊たちを蹴散らすことができなかった。馬車の中のスリスタは、恐怖でガタガタと震えていた。修道院はもうすぐで、馬車は王都を出て1か月が過ぎていた。スリスタは、自分は何もできずに死ぬだけなのかと悲しかったが、盗賊に捕まったら、また話は別だ。いったいどんな目にあわされるのか。
「さて、馬車には誰が乗っている?探し人がいるんだ。少し覗かせてほしい」
最初の盗賊とちがって、今度の盗賊たちは、口調が穏やかだ。もしかしたら、盗賊ではないのかもしれない。スリスタは自分から、馬車から顔を見せた。
「ビンゴ!スリスタちゃんじゃないか」
「お兄さん」
スリスタに知り合いはあまりいないが、旅の途中で出会ったお兄さんだった。スリスタ一行が泊まった宿で知り合った。お兄さんが怪我をしていたから、スリスタは手持ちの自作の塗り薬をあげたのだ。
「あの薬、スリスタちゃんが作ったんだろ?すごい効き目だった」
スリスタは、受けた教育の中でも怪我や病気を治す魔法を熱心に学んでいた。自力でも薬草から薬を作ったり、怪我を治す魔法を使えるように努力したりしていた。魔法はなかなか使えるようにならないが、薬を作るのは少しうまくなった。
「この馬車は北の修道院行きなんだろ?俺のラピス商会行きに乗り換えないか?」
護衛たちはあやしい男として、警戒しているが、スリスタはすぐ頷いた。
「お兄さんと行くわ。誰かの役に立って生きたいの」
「まだ名乗ってなかったな。リイマ・バリスだ。いい仕事仲間になろう」
手を差し出される。その手を握って握手すると、リイマはにっと笑った。
「この選択を後悔させない」
護衛を蹴散らしたスリスタいうところのお兄さんは、実はバリス公爵家の次男だった。公爵家に帰る途中だったが、スリスタの傷薬があまりに素晴らしいから、道を変えて、スリスタたちを追いかけたとリイマから聞いたスリスタは、不思議な気持ちになった。
公爵家に着くと、なぜか公爵夫妻と使用人全員が集まっていた。スリスタが怯えるのを見て、リイマは、言った。
「みんなどうしたんだよ?スリスタちゃんが驚いてるだろ」
「驚いてるのはこっちだ。手紙にはみんなが驚く新しい仲間を連れてゆくと書いてあった。普通に考えたら、未来の花嫁だと思うだろう?」
「まさかあなた、小さな娘さんしか好きになれないんじゃ‥」
「何言ってるんだよ。スリスタちゃんは小さいけど、すごい腕をもった薬師なんだよ」
北の修道院に向かう馬車には碌に護衛がつけられなかった。道の途中で一度、盗賊に襲われて撃退した後だったせいもあり、新しい盗賊たちを蹴散らすことができなかった。馬車の中のスリスタは、恐怖でガタガタと震えていた。修道院はもうすぐで、馬車は王都を出て1か月が過ぎていた。スリスタは、自分は何もできずに死ぬだけなのかと悲しかったが、盗賊に捕まったら、また話は別だ。いったいどんな目にあわされるのか。
「さて、馬車には誰が乗っている?探し人がいるんだ。少し覗かせてほしい」
最初の盗賊とちがって、今度の盗賊たちは、口調が穏やかだ。もしかしたら、盗賊ではないのかもしれない。スリスタは自分から、馬車から顔を見せた。
「ビンゴ!スリスタちゃんじゃないか」
「お兄さん」
スリスタに知り合いはあまりいないが、旅の途中で出会ったお兄さんだった。スリスタ一行が泊まった宿で知り合った。お兄さんが怪我をしていたから、スリスタは手持ちの自作の塗り薬をあげたのだ。
「あの薬、スリスタちゃんが作ったんだろ?すごい効き目だった」
スリスタは、受けた教育の中でも怪我や病気を治す魔法を熱心に学んでいた。自力でも薬草から薬を作ったり、怪我を治す魔法を使えるように努力したりしていた。魔法はなかなか使えるようにならないが、薬を作るのは少しうまくなった。
「この馬車は北の修道院行きなんだろ?俺のラピス商会行きに乗り換えないか?」
護衛たちはあやしい男として、警戒しているが、スリスタはすぐ頷いた。
「お兄さんと行くわ。誰かの役に立って生きたいの」
「まだ名乗ってなかったな。リイマ・バリスだ。いい仕事仲間になろう」
手を差し出される。その手を握って握手すると、リイマはにっと笑った。
「この選択を後悔させない」
護衛を蹴散らしたスリスタいうところのお兄さんは、実はバリス公爵家の次男だった。公爵家に帰る途中だったが、スリスタの傷薬があまりに素晴らしいから、道を変えて、スリスタたちを追いかけたとリイマから聞いたスリスタは、不思議な気持ちになった。
公爵家に着くと、なぜか公爵夫妻と使用人全員が集まっていた。スリスタが怯えるのを見て、リイマは、言った。
「みんなどうしたんだよ?スリスタちゃんが驚いてるだろ」
「驚いてるのはこっちだ。手紙にはみんなが驚く新しい仲間を連れてゆくと書いてあった。普通に考えたら、未来の花嫁だと思うだろう?」
「まさかあなた、小さな娘さんしか好きになれないんじゃ‥」
「何言ってるんだよ。スリスタちゃんは小さいけど、すごい腕をもった薬師なんだよ」
186
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
男の仕事に口を出すなと言ったのはあなたでしょうに、いまさら手伝えと言われましても。
kieiku
ファンタジー
旦那様、私の商会は渡しませんので、あなたはご自分の商会で、男の仕事とやらをなさってくださいね。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます
碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」
そんな夫と
「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」
そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。
嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう
本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?
もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。
政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。
王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。
王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。
オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
私の愛しいアンジュ
毒島醜女
ファンタジー
横暴でメンヘラなアンジュ。
でも唯一の妹だと思って耐え、支えてきた。
そんな時、妹が取り換えられた子だと判明した。
本物の私の妹はとてもいい子でこれからも上手くやっていけそう。
一方で、もう片方は……
私の、虐げられていた親友の幸せな結婚
オレンジ方解石
ファンタジー
女学院に通う、女学生のイリス。
彼女は、親友のシュゼットがいつも妹に持ち物や見せ場を奪われることに怒りつつも、何もできずに悔しい思いをしていた。
だがある日、シュゼットは名門公爵令息に見初められ、婚約する。
「もう、シュゼットが妹や両親に利用されることはない」
安堵したイリスだが、親友の言葉に違和感が残り…………。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる