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第三話
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「スリスタと言います。ファルガ伯爵家で育ちましたが、母は子爵令嬢で父は会ったことがありません。こんな私でも、ラピス商会で働けますか?」
リイマの父母は優しい目でスリスタを見つめた。2人には息子が2人いるが、娘はいない。2人の目にスリスタはまるで自分の娘のように映った。髪や目の色が似ているからかもしれない。まだ幼いのにしっかりしているのがかえって不憫にも思えた。特に夫人はスリスタちゃんと毎日何しようかしらという妄想が止まらなくなっていた。
「商会もいいけど、まだ令嬢教育が必要なんじゃないかしら」
正当な権利として、主張し出した。こうなるともうどうにもならないのをリイマはよく知っていた。
「じゃあ毎日午前中は商会で見習い、午後は母さんと令嬢教育でいいかな?」
スリスタはびっくりした。朝から晩まで働くつもりだったのに、勉強もできる。優しそうな夫人が先生だという。うれしかった。
「じゃあまず、ラピス商会で挨拶だな。作った薬を持ってきているかい?」
スリスタは頷いた。置いてきたら捨てられてしまうだろうと思ったから、全部持ってきた。
ラピス商会の事務所に着くと、リイマはみんなにスリスタを紹介し、薬を見せた。みんな驚いた。たった7歳の子が作れる品質と量ではない。即戦力になる出来栄えだった。実際軽い怪我をしていた職員が試しに使ったら、傷はすぐに癒えた。
「すごいですよ。こんな薬はどこにもない」
「そうだろう。スリスタはすごいんだ。うちとしては専属契約したいと思ってる」
「それはそうでしょう。こんな優秀な薬師なんていませんよ」
「魔法を使ってるんだよな?」
スリスタが驚いて言葉を出せないでいると、リイマはすまなそうな顔をした。
「企業秘密だったかな?」
スリスタは慌てて声を出した。
「魔法なんて使えないと思ってたから、驚いて」
「こんなに早く傷を治す薬は普通に作れるものではない。魔法が込められているのは間違いない」
スリスタは、驚きの後にじわじわとした喜びを感じた。自分にも魔法が使える。自己肯定感の低いスリスタにしては珍しいくらいの喜びだ。
その日は挨拶がメインで、仕事場に連れて行ってもらって、他の薬師たちを紹介された。
「よろしく」
みんな笑顔だった。スリスタはいつも睨まれて暮らしていたから、不思議な感じがした。
「よろしくお願いします」
丁寧におじぎをすると、ざわっと空気が変わった。スリスタが戸惑っていると、リイマは笑顔を見せた。
「スリスタ、お前もにっこり、してみな」
スリスタは笑おうとした。努力はしたのだ。
「まぁ、これからの課題ってことで」
リイマが優しく頭を撫でてくれた。スリスタは幸せだと思って泣きそうになった。
リイマの父母は優しい目でスリスタを見つめた。2人には息子が2人いるが、娘はいない。2人の目にスリスタはまるで自分の娘のように映った。髪や目の色が似ているからかもしれない。まだ幼いのにしっかりしているのがかえって不憫にも思えた。特に夫人はスリスタちゃんと毎日何しようかしらという妄想が止まらなくなっていた。
「商会もいいけど、まだ令嬢教育が必要なんじゃないかしら」
正当な権利として、主張し出した。こうなるともうどうにもならないのをリイマはよく知っていた。
「じゃあ毎日午前中は商会で見習い、午後は母さんと令嬢教育でいいかな?」
スリスタはびっくりした。朝から晩まで働くつもりだったのに、勉強もできる。優しそうな夫人が先生だという。うれしかった。
「じゃあまず、ラピス商会で挨拶だな。作った薬を持ってきているかい?」
スリスタは頷いた。置いてきたら捨てられてしまうだろうと思ったから、全部持ってきた。
ラピス商会の事務所に着くと、リイマはみんなにスリスタを紹介し、薬を見せた。みんな驚いた。たった7歳の子が作れる品質と量ではない。即戦力になる出来栄えだった。実際軽い怪我をしていた職員が試しに使ったら、傷はすぐに癒えた。
「すごいですよ。こんな薬はどこにもない」
「そうだろう。スリスタはすごいんだ。うちとしては専属契約したいと思ってる」
「それはそうでしょう。こんな優秀な薬師なんていませんよ」
「魔法を使ってるんだよな?」
スリスタが驚いて言葉を出せないでいると、リイマはすまなそうな顔をした。
「企業秘密だったかな?」
スリスタは慌てて声を出した。
「魔法なんて使えないと思ってたから、驚いて」
「こんなに早く傷を治す薬は普通に作れるものではない。魔法が込められているのは間違いない」
スリスタは、驚きの後にじわじわとした喜びを感じた。自分にも魔法が使える。自己肯定感の低いスリスタにしては珍しいくらいの喜びだ。
その日は挨拶がメインで、仕事場に連れて行ってもらって、他の薬師たちを紹介された。
「よろしく」
みんな笑顔だった。スリスタはいつも睨まれて暮らしていたから、不思議な感じがした。
「よろしくお願いします」
丁寧におじぎをすると、ざわっと空気が変わった。スリスタが戸惑っていると、リイマは笑顔を見せた。
「スリスタ、お前もにっこり、してみな」
スリスタは笑おうとした。努力はしたのだ。
「まぁ、これからの課題ってことで」
リイマが優しく頭を撫でてくれた。スリスタは幸せだと思って泣きそうになった。
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