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1、元婚約者
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私の名はメルシア・ソロシアン。ソロシアン侯爵家の長女であり、我が国の王太子であるダルダ殿下の元婚約者ですわ。
ええ、そう。『元』ですの。ふふふ、気にしないで下さいな、今は別の方との婚約をしておりますので嫁入り先はちゃんとありましてよ。お知りになりたい? ダメですわ、私の今の婚約者は置いておきまして、まずはダルダ殿下の元婚約者となった経緯をお話ししますわね。
――始まりは、王立学園に学生として入学してしばらくした時のこと。
王立学園は十五、十六歳になった貴族の子息達や、厳しい入学試験に合格した平民達が三年間通う学びの場所。私と殿下は同い年ですので、入学時も一緒でした。入学して、半月もしない内でしたかしら。殿下がある一人の女生徒と共に居る姿を、良く見かけるようになりました。
女生徒側には婚約者はおられませんでしたが、殿下には私という婚約者がおりますので、風紀を乱すという点において殿下の側近以外の方々や私からも注意しておりました。直接女生徒に? いえいえ、ダルダ殿下にですわ。学びは平等であると詠う学園と言えども、身分差の問題はあります。確認したところ、女生徒は子爵家の娘でしたので、王太子が傍に居る事を望めば断る事など出来ないでしょう。まぁ、女生徒の方も殿下との時間を楽しんでいたようですので、同罪なのでしょうけれど。
あら、嫉妬などしませんわ。私は六歳の時にダルダ殿下の婚約者として選ばれてから、淑女教育だけでなく王妃教育も受けておりました。殿下を支える為に様々な事を学び、一時期は完璧令嬢と呼ばれていたほどですのよ。それに卒業して二か月後には殿下との結婚式がすでに取り決められておりましたし、学生期間での火遊びくらいは見逃して差し上げてもよろしいではありませんか。我が国では王も一夫一妻制ですので側妃にも出来ませんしね。
納得出来ませんか? では私が嫉妬しない、とても大事な理由をお教えしましょう。確かに私は殿下の婚約者でした。ですが私は、これまで一度たりとも、ダルダ殿下に恋した事も愛した事もありませんのよ。精々が弟みたいな世話のかかる男子、という感覚でした。ほらこれでは嫉妬の仕様がありませんでしょう。
婚約も結婚も、このクニスキン王国の為。私はダルダ殿下ではなく、この愛しい祖国と添い遂げようと、そう真剣に考えておりましたの。この事は私の両親も、国王夫妻もご存知でしたので、頼めば証言者となって下さると思いますわ。
…そういう考えに至った訳、ですか。もちろんありますわ。私だって乙女ですもの。恋に憧れもありましたし、特に幼い頃はいずれ夫婦となるダルダ殿下と愛し愛される関係になりたいと思っても不思議ではないでしょう? そんな淡い想いが消えたのはすぐでしたけれど。
――婚約者であったダルダ殿下自身によって、ね。
ええ、そう。『元』ですの。ふふふ、気にしないで下さいな、今は別の方との婚約をしておりますので嫁入り先はちゃんとありましてよ。お知りになりたい? ダメですわ、私の今の婚約者は置いておきまして、まずはダルダ殿下の元婚約者となった経緯をお話ししますわね。
――始まりは、王立学園に学生として入学してしばらくした時のこと。
王立学園は十五、十六歳になった貴族の子息達や、厳しい入学試験に合格した平民達が三年間通う学びの場所。私と殿下は同い年ですので、入学時も一緒でした。入学して、半月もしない内でしたかしら。殿下がある一人の女生徒と共に居る姿を、良く見かけるようになりました。
女生徒側には婚約者はおられませんでしたが、殿下には私という婚約者がおりますので、風紀を乱すという点において殿下の側近以外の方々や私からも注意しておりました。直接女生徒に? いえいえ、ダルダ殿下にですわ。学びは平等であると詠う学園と言えども、身分差の問題はあります。確認したところ、女生徒は子爵家の娘でしたので、王太子が傍に居る事を望めば断る事など出来ないでしょう。まぁ、女生徒の方も殿下との時間を楽しんでいたようですので、同罪なのでしょうけれど。
あら、嫉妬などしませんわ。私は六歳の時にダルダ殿下の婚約者として選ばれてから、淑女教育だけでなく王妃教育も受けておりました。殿下を支える為に様々な事を学び、一時期は完璧令嬢と呼ばれていたほどですのよ。それに卒業して二か月後には殿下との結婚式がすでに取り決められておりましたし、学生期間での火遊びくらいは見逃して差し上げてもよろしいではありませんか。我が国では王も一夫一妻制ですので側妃にも出来ませんしね。
納得出来ませんか? では私が嫉妬しない、とても大事な理由をお教えしましょう。確かに私は殿下の婚約者でした。ですが私は、これまで一度たりとも、ダルダ殿下に恋した事も愛した事もありませんのよ。精々が弟みたいな世話のかかる男子、という感覚でした。ほらこれでは嫉妬の仕様がありませんでしょう。
婚約も結婚も、このクニスキン王国の為。私はダルダ殿下ではなく、この愛しい祖国と添い遂げようと、そう真剣に考えておりましたの。この事は私の両親も、国王夫妻もご存知でしたので、頼めば証言者となって下さると思いますわ。
…そういう考えに至った訳、ですか。もちろんありますわ。私だって乙女ですもの。恋に憧れもありましたし、特に幼い頃はいずれ夫婦となるダルダ殿下と愛し愛される関係になりたいと思っても不思議ではないでしょう? そんな淡い想いが消えたのはすぐでしたけれど。
――婚約者であったダルダ殿下自身によって、ね。
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