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時を同じくして
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レイもすぐさま目を凝らして辺りを見渡す。
神官が松明を持ってきてくれたが、手がかりは見つからなかった。神殿へ帰ってきた足跡はあっても、離れていくものは全く無かったのだ。神隠れとでも言うような不思議な現象ではあったが、想像はついた。ハルカはきっと追手に攫われたのだ。
「すまない」
うなだれるユウを、レイはそっと起こした。
「これだけ上手の追手では何の形跡も残さず、追うのは困難でしょう。一先ず神殿の中へ入って策を考えましょう」
二人は庭へと戻った。アンリとアマネも事情を分かっているようで、沈んだ表情をお互いに見合わせた。
「ぜんぶアマネがいけないの。ユウとハルカにお使いを頼んだから」
アマネはいつ泣き出してもおかしくないくらいの面持ちだった。姉姫は怒る気にもなれず、妹の背中をさすった。
「なぜハルカばかり?」
アンリも釣られて泣いてしまわないように、ぐっと堪えているようだった。質問を投げかけられたレイも、思いつめた顔で悩みこんでしまった。
「多分、ハルカが最もシュウト様の近いところにいるからでしょう」
シュウトが誰よりも強い存在だと知られてしまったのだろう。この旅の始めにレイが忠告した言葉が、四人の頭の中に蘇った。誰も何も言えず、俯いてしまった。
ばたばたと駆けてくる足音を、四人は揃って聞いた。この状況で考えられる人物は一人だった。シュウトは青ざめた顔で走ってきたかと思うと、勢いでユウの胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。姫とレイは突然の事に驚いて、ただ呆然とするしかなかった。慌てて止める事も出来たが、彼の心情が痛いほどに分かるため、ユウ当人でさえ口をつぐんでいた。
シュウトは絶望と不安の色を浮かべ、ありったけの力でユウを睨んでいたが、掴んだ手は大きく震えていた。そして、何も言葉にはしなかった。傍にいなかった悔しさ、自分自身をも責めているようだった。
「本当にすまなかった」
ユウはがっくりとうなだれたまま、声を振り絞って言った。さすがのシュウトも、彼の心情が分からない事はなかった。ただ、行き場のない思いをどうしても自分一人で処理する事ができなかった。
「ハルカはどこにいる」
苦しそうな声だった。聞いても無駄だと分かりきっていながら、声にせずにはいられなかった。ユウはただ静かに首を振っただけだった。
アマネは見ていられずに二人の間に割って入った。
「ごめんなさい。アマネが悪いの。ハルカにこっそりお使いを頼んじゃったから」
彼女も泣き出しそうな顔をしていた。誰にも負けず後悔している様子だった。
シュウトは思わず掴んでいたユウの衣を離した。自分が急に悪者になったような気がしたからだった。それでも気分は収まらず、不審な目を妹姫に向けた。
「明日は、お姉さまの誕生日なの。何か贈り物をしたいとハルカに相談したら、快く引き受けてくれたの」
「そうだったの」
すぐさま驚いた声を上げたのはアンリだった。「馬鹿な事を」とこぼしながらも、妹とハルカの気持ちも理解できない訳ではなかった。妹を責める事も慰める事も出来なかった。シュウトも同様で、ハルカのその時の言動が頭に浮かんできてしまう。彼が今どんな状況にあろうとも、きっと何一つ後悔はしていないだろう。
ただ、無事であるかどうかが案じられた。ユウはそっと持っていた小箱を姉姫に差し出した。アンリは苦しげな表情でそれを見つめた。
シュウトは、手に握りしめていた小さな紙をおもむろに開いた。
「ハルカを助けに行く」
彼はレイに言った。レイは機敏に反応して近づくと、その紙に書かれていたものを確認した。一度理解してから、ごくりと唾を飲み、皆に聞こえるように口にした。
「こう書かれてあります。王の命が落ちる時、時を同じくして仲間の捕われた檻に火を放つ。どちらを救うかは君次第だ」
神官が松明を持ってきてくれたが、手がかりは見つからなかった。神殿へ帰ってきた足跡はあっても、離れていくものは全く無かったのだ。神隠れとでも言うような不思議な現象ではあったが、想像はついた。ハルカはきっと追手に攫われたのだ。
「すまない」
うなだれるユウを、レイはそっと起こした。
「これだけ上手の追手では何の形跡も残さず、追うのは困難でしょう。一先ず神殿の中へ入って策を考えましょう」
二人は庭へと戻った。アンリとアマネも事情を分かっているようで、沈んだ表情をお互いに見合わせた。
「ぜんぶアマネがいけないの。ユウとハルカにお使いを頼んだから」
アマネはいつ泣き出してもおかしくないくらいの面持ちだった。姉姫は怒る気にもなれず、妹の背中をさすった。
「なぜハルカばかり?」
アンリも釣られて泣いてしまわないように、ぐっと堪えているようだった。質問を投げかけられたレイも、思いつめた顔で悩みこんでしまった。
「多分、ハルカが最もシュウト様の近いところにいるからでしょう」
シュウトが誰よりも強い存在だと知られてしまったのだろう。この旅の始めにレイが忠告した言葉が、四人の頭の中に蘇った。誰も何も言えず、俯いてしまった。
ばたばたと駆けてくる足音を、四人は揃って聞いた。この状況で考えられる人物は一人だった。シュウトは青ざめた顔で走ってきたかと思うと、勢いでユウの胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。姫とレイは突然の事に驚いて、ただ呆然とするしかなかった。慌てて止める事も出来たが、彼の心情が痛いほどに分かるため、ユウ当人でさえ口をつぐんでいた。
シュウトは絶望と不安の色を浮かべ、ありったけの力でユウを睨んでいたが、掴んだ手は大きく震えていた。そして、何も言葉にはしなかった。傍にいなかった悔しさ、自分自身をも責めているようだった。
「本当にすまなかった」
ユウはがっくりとうなだれたまま、声を振り絞って言った。さすがのシュウトも、彼の心情が分からない事はなかった。ただ、行き場のない思いをどうしても自分一人で処理する事ができなかった。
「ハルカはどこにいる」
苦しそうな声だった。聞いても無駄だと分かりきっていながら、声にせずにはいられなかった。ユウはただ静かに首を振っただけだった。
アマネは見ていられずに二人の間に割って入った。
「ごめんなさい。アマネが悪いの。ハルカにこっそりお使いを頼んじゃったから」
彼女も泣き出しそうな顔をしていた。誰にも負けず後悔している様子だった。
シュウトは思わず掴んでいたユウの衣を離した。自分が急に悪者になったような気がしたからだった。それでも気分は収まらず、不審な目を妹姫に向けた。
「明日は、お姉さまの誕生日なの。何か贈り物をしたいとハルカに相談したら、快く引き受けてくれたの」
「そうだったの」
すぐさま驚いた声を上げたのはアンリだった。「馬鹿な事を」とこぼしながらも、妹とハルカの気持ちも理解できない訳ではなかった。妹を責める事も慰める事も出来なかった。シュウトも同様で、ハルカのその時の言動が頭に浮かんできてしまう。彼が今どんな状況にあろうとも、きっと何一つ後悔はしていないだろう。
ただ、無事であるかどうかが案じられた。ユウはそっと持っていた小箱を姉姫に差し出した。アンリは苦しげな表情でそれを見つめた。
シュウトは、手に握りしめていた小さな紙をおもむろに開いた。
「ハルカを助けに行く」
彼はレイに言った。レイは機敏に反応して近づくと、その紙に書かれていたものを確認した。一度理解してから、ごくりと唾を飲み、皆に聞こえるように口にした。
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