52 / 62
使い
しおりを挟む
「ハルカ、起きてください」
声をかけられるなり、後ろにもたれ掛かって寝ていたハルカは飛び起きた。
目をぱちくりさせてレイを見返す。辺りはすっかり夜だった。見張りの兵士が手にしている小さな松明だけが、ここ一帯の輪郭を作っていた。
「ごめん。起きてるつもりだったのに」
レイは静かに首を振った。
「ここが牢屋でなければ、しっかり治療しなければいけない身体です。起こしたくなかったのですが」
ハルカはレイの様子を不思議そうに見つめた。
「これからどうするんだ?」
既に彼の中では答えが見つかっているようだった。レイはこの状況に似合わない、自信ありげな笑みを浮かべた。それと同時に遠くから歩いてくる足音が聞こえた。
ハルカは暗い彼方を注意深く見極めようとする。人物よりも早く、白い隼が矢のようにまっすぐこちらめがけて飛んできた。ハルカはとっさに身構えたが、隼は器用に檻をすり抜けると、レイの膝の上に止まった。無駄な作りが一つもない、しなやかで美しい、真っ白な鳥だった。遠くで燃える松明を浴びて、艶やかに輝いていた。
口をぽかんと開けているハルカを見て、レイは嬉しそうに笑った。
「僕の使いなんです。これから、アンリ様の跡を追ってもらいます」
レイは数秒隼と見つめ合ってから、「行け」と合図を送って、使いが空高く飛んでいくのを見送った。
ハルカが心配そうに姫の姿を思い浮かべているのを見たレイは、励ますように言った。
「絶対に会えますよ」
足音は気づけばすぐそこまで来ており、見張りの兵士は畏まってお辞儀していた。二人の視界に入ってきたのは、キヌンと同じような身なりの軍人だった。レイは既に顔見知りの相手だった。彼は緊迫した面持ちでレイ達の檻の前にかがんだ。
「セヌス様。ご足労いただきありがとうございます」
ハルカは状況が理解できず、首を傾げながら二人の様子を見守った。
「あの手紙に書いてあったことは本当なのか」
「ええ。ここへ来られたという事は、あなたもうっすらと感じておられたのではないですか?」
セヌスは何とも言えず俯いた。
「何を書いたんだ?」
ハルカがすかさず小声で訊ねた。
「キヌンの悪巧み全てですよ」
レイは真剣な表情で、悩んでいるセヌスを見た。包み隠さない神官の言葉に彼はぴくりと反応した。レイは更に畳み掛けた。
「時間がありません。これ以上遅れれば、彼らに追いつけなくなります。どうか僕達を行かせてください」
「君達たった二人に、王が救えるのか?君の話では、王以外の全員が寝返るのだろう?」
「望みがないのなら、ここまで来ていません。僕達には仲間がいます。王を救うために、神に集められた者達です。僕達で不可能なら、他の誰にも成し遂げる事はできないでしょう」
セヌスは大きく息を吐いた。自分の立場も考えた上で、彼は檻の鍵を外した。兵士に命じて、腕につけられていた錠も解かれた。
「私はここの陣の責任者だ。本当なら、王を守るためついていきたいが、これぐらいしか出来ない事を許してくれ」
「お心遣い感謝します」
レイは深く頭を下げた。セヌスは軍人らしく、士気を上げるように声を上げた。
「早く出発の準備を。武器と食料はこちらですぐに用意する」
レイとハルカはいよいよその時が来たのだと、ただならない緊迫感で高揚さえしていた。
「行きましょう」
「おう」
二人は揺るがない瞳で頷き合うと、駆け足で荷支度へ向かった。
声をかけられるなり、後ろにもたれ掛かって寝ていたハルカは飛び起きた。
目をぱちくりさせてレイを見返す。辺りはすっかり夜だった。見張りの兵士が手にしている小さな松明だけが、ここ一帯の輪郭を作っていた。
「ごめん。起きてるつもりだったのに」
レイは静かに首を振った。
「ここが牢屋でなければ、しっかり治療しなければいけない身体です。起こしたくなかったのですが」
ハルカはレイの様子を不思議そうに見つめた。
「これからどうするんだ?」
既に彼の中では答えが見つかっているようだった。レイはこの状況に似合わない、自信ありげな笑みを浮かべた。それと同時に遠くから歩いてくる足音が聞こえた。
ハルカは暗い彼方を注意深く見極めようとする。人物よりも早く、白い隼が矢のようにまっすぐこちらめがけて飛んできた。ハルカはとっさに身構えたが、隼は器用に檻をすり抜けると、レイの膝の上に止まった。無駄な作りが一つもない、しなやかで美しい、真っ白な鳥だった。遠くで燃える松明を浴びて、艶やかに輝いていた。
口をぽかんと開けているハルカを見て、レイは嬉しそうに笑った。
「僕の使いなんです。これから、アンリ様の跡を追ってもらいます」
レイは数秒隼と見つめ合ってから、「行け」と合図を送って、使いが空高く飛んでいくのを見送った。
ハルカが心配そうに姫の姿を思い浮かべているのを見たレイは、励ますように言った。
「絶対に会えますよ」
足音は気づけばすぐそこまで来ており、見張りの兵士は畏まってお辞儀していた。二人の視界に入ってきたのは、キヌンと同じような身なりの軍人だった。レイは既に顔見知りの相手だった。彼は緊迫した面持ちでレイ達の檻の前にかがんだ。
「セヌス様。ご足労いただきありがとうございます」
ハルカは状況が理解できず、首を傾げながら二人の様子を見守った。
「あの手紙に書いてあったことは本当なのか」
「ええ。ここへ来られたという事は、あなたもうっすらと感じておられたのではないですか?」
セヌスは何とも言えず俯いた。
「何を書いたんだ?」
ハルカがすかさず小声で訊ねた。
「キヌンの悪巧み全てですよ」
レイは真剣な表情で、悩んでいるセヌスを見た。包み隠さない神官の言葉に彼はぴくりと反応した。レイは更に畳み掛けた。
「時間がありません。これ以上遅れれば、彼らに追いつけなくなります。どうか僕達を行かせてください」
「君達たった二人に、王が救えるのか?君の話では、王以外の全員が寝返るのだろう?」
「望みがないのなら、ここまで来ていません。僕達には仲間がいます。王を救うために、神に集められた者達です。僕達で不可能なら、他の誰にも成し遂げる事はできないでしょう」
セヌスは大きく息を吐いた。自分の立場も考えた上で、彼は檻の鍵を外した。兵士に命じて、腕につけられていた錠も解かれた。
「私はここの陣の責任者だ。本当なら、王を守るためついていきたいが、これぐらいしか出来ない事を許してくれ」
「お心遣い感謝します」
レイは深く頭を下げた。セヌスは軍人らしく、士気を上げるように声を上げた。
「早く出発の準備を。武器と食料はこちらですぐに用意する」
レイとハルカはいよいよその時が来たのだと、ただならない緊迫感で高揚さえしていた。
「行きましょう」
「おう」
二人は揺るがない瞳で頷き合うと、駆け足で荷支度へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる