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第二章 鬼囃子編

082 かいしんのいちげき

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『姫、現世への帰還、心よりお祝い申し上げます』

 メルトは早速浜辺を走り回って、ごろごろと転がったり寄せては返す波に喧嘩を売ってかみついたりしている。
 そういやメルトって海見るの初めてだったな。
 
「うむ。こんなナリになってしまったがのう。乳もぺたんこじゃ」

 幼女にかしづいてる四メートルの巨人ていうのも不思議と迫力があっていい。

『僭越ながら元かぐふぉっ! ぶべっ』

 とか思ったら腹パン--からのビンタか。
 見た目は可愛らしい幼女だがパワーは健在のようで、四メートルもある巨体が腹パンでちょっと宙に浮いたよ。
 恐るべし鬼姫。
 砂煙を上げてぶっ倒れるテロメアだが……まぁそれを言ったお前が悪い。
 世の中には言っていい事と吐くべき嘘が存在するんだ。
 覚えておけよ。
 特に吐くべきお世辞ってのを覚えような。

『ぎ……御意……ぐふう……!』
「テロメアよ。わらわが何て?」
『な……なんでも、ございませぬ……』
「よし。さて、どれ、わらわも水と戯れてくるとしようかの。テロメアついてくるのじゃ」
『は! このテロメア全身全霊を賭してお相手仕ります!』

 グーパンとビンタで吹っ飛ばされたってのにピンピンしてやがる。
 テロメアも高ランクの鬼だし、何ともないのだろうな。
 
「あーだーむーさーまっ!」
「お、お待たせ……」
「着替え終わったの……か……ぐふっ」
 --効果はばつぐんだ! アダム様に会心の一撃!

 いや、マジでわりと理ちゃんの言う通り……。
 リリスは自分のグラマラスボディを自覚しているのだろう。
 真っ赤なビキニが褐色の肌に合っていて、健康的な躍動感がある
 肩紐もほっそいやつで首に一回巻きつけるタイプのやつ。
 でも胸の部分はしっかりと支えられていて、際のラインに金の刺繍が入っている。
 下も紐で結ぶタイプのやつか……際どい……。
 実にけしからん……。

「ど、どうかな?」

 モニカは錫杖と同じく純白のビキニだが、リリスのように攻めている感じではなく、清楚なビキニといった感じ。
 腰元は短めのパレオで覆われているが、胸元の大きめなリボンが特徴的なもの。
 胸は大きすぎず小さすぎず、しかしながらしっかりとその存在を主張していて谷間もばっちりデス。
 しかも胸の下に腕を回してちょっと強調してるし。
 これが聖女水着の破壊力か……。

「ふ、二人ともよく似合ってるよ。うん」
「本当ですの!? やりましたわ!」
「えへへ、こういう水着初めてだからちょっと恥ずかしいな。でもありがとう」
「いえこちらこそありがとうございます、とても眼福です」
 --アダム様の心拍数が上昇、血流が一箇所に集中しは--

 おいやめろ理ちゃん、いらん情報を流すな。
 どこにも集中しとらんわ。
 でも心拍数が上がっているのは事実なんだけれども。
 普通あがるだろ。
 だって美女二人の水着だぞ。
 半裸だぞ。
 こういうのに馴染みが浅い俺にとってはかなり刺激が強い。
 特にリリスなんてどこに目をやればいいのかが分からない。
 
「アダム様ーどうしたんですの? もっとしっかりじっくり見てくださいまし」
「わっ、馬鹿! やめろ!」

 そんな俺の様子を察したのか、リリスは半目になって悪どい笑みを浮かべつつ体を寄せてくる。
 腕で胸を挟んで思い切り寄せながら下からえぐり込むように俺の視界に飛び込んでくる。
 
 --リリス選手の強烈な一撃、効いています、しっかりと効いています!

 うるせえええ!
 っとにもう、理ちゃんも海に来たからってちょっとテンション上がってるのか?
 でも理ちゃんてこっちにはいないし、むしろどこの次元に生きてる意思なんだろうか。

 --私は狭間の存在、あまねく世界を見続ける観測者のようなものですね。

 ということらしい。
 狭間ってうのは第四の壁の向こう側?
 
 --いえ、そこはある種神々の領域、私が介入する事は出来ません。

 ほーん。
 神々の領域か……そもそも第四の壁ってなんだ?

 --それは私にも理解しかねます。

 理ちゃんでも手の届かない場所か。

「行きましょうアダム様!」
「わ! ひっぱるな!」

 リリスにぐいぐいと手を引かれ、俺の思考は一時中断、そのまま波のベッドに放り投げられた。
 バッシャアン、という音と派手な水しぶきが上がり、俺の体がぐるぐると波に揉まれる。

「てめぇ! やりやがったな! そりゃそりゃ!」

 俺は即座に立ち上がり、両手で波をすくって思い切りリリスにぶちまけた。

「きゃっ! やりましたわね! 食らいなさいモニカ!」
「えぇ私!? わぷっ! ちょっとぉ! このう!」

 モニカも巻き込まれ、そのまま三人での乱戦が始まった。
 そこにメルトが面白がって参戦し、ブレスを使って上手い事波をかけてくる。
 
『ゆきますぞ! それぇい!』

 テロメアはと言えば少し沖合いに立ち、自慢の両手で波を思い切り押しこみ、大きな波を発生させていた。
 ミミルは漂流物であろう木の板の上に寝そべってうまい具合に波に乗っていた。
 なにあれめっちゃ楽しそうじゃん。
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