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二章 旅立ちの日

18.まさかのトンデモ能力?

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「まさか……」

 気怠さや眠気が妙に急に来たな、とは思った。
 歩き回ったりはしたけれど、たかがそれだけでこうも気怠くなるほどの疲労は溜まらない。
 ベッドでゴロゴロして眠くなるのはまぁ、不可抗力ともいえるけれど、この微妙な気怠さと眠気は覚えがある。

『ガイアス様、無闇に大きな魔力を使った場合。身体機能に影響が出ます。魔力が枯渇すれば身動き一つ取れなくなります。なので己の中にある魔力との対話は必須。己の魔力プール、許容量はどれほどなのか。どれほど使えば影響が出始めるのか。今回の授業でそれをしっかりと学んで下さい』

 アリエスとの授業のワンシーンが脳裏に過ぎる。
 魔法を使うわけではなく、自分の魔力を使って水晶に変化を与えるという授業。
 魔力を多く注げば水晶は光を増し、その色を変える。
 赤、青、オレンジ、白。
 そんな実技授業の終わり頃、今と同じような気怠さと眠気を感じた事がある。

『緻密な操作をすればするほど、威力を高めれば高めるほど、複雑な魔法を使えば使うほど、魔力というのは比例的に減っていきます。しっかり覚えてくださいね』
 
 僕は多分今、無意識的に魔力を使った。
ごくごく自然に魔法を使ったのだ。

「オニキス」

今度は小粒のオニキス。
 ぽぅ、と掌の上に小さな魔法陣が浮かび、その中心から漆黒の宝石オニキスが掌に落ちた。

「まじか」

 衝撃。
 まさにその二言。
 びっくりして驚愕した。
 思わず驚きの言葉が重複してしまうくらいには驚いた
 開いた口が塞がらない、蒼天の霹靂、どんな言葉を並べてもこの衝撃を言い表す事は難しい。
 だってそうだろう? 
 宝石の名前を口にしただけで、掌からそれが出てきてしまうんだから。
 これが宝石……いや、鉱石魔法の力なのか……!
 魔力が続く限り、宝石を生み出せる……!

「いやーっはっは! ホントにー? 俺が目指すは元手のかからない宝石商人ですかー?」

 お金が無くなったら宝石を生み出して、それを売ってお金にして、また無くなったらまた生み出して……。
 なんてこった……!
 働かずにして生きていけてしまう……!
 お金が無くなったらどうしよう、ちゃんと働けるかな、そもそも雇ってくれるのかな、なんて不安がやっぱり僕にもありましたとも。
 一般の働き方なんて僕には分からないし。
 なんせ王宮育ちなもので、一般常識とか不安でしか無いんですよ。
 
「いや、そんなぐうたらな事では駄目だ。しっかりきっちりちゃんと働いて、体に汗水流して得るお金に価値があるのだ。見聞を広める為にも。この宝石はしまっておこう。もしもの為のなんとやら、だ」

 それに僕は物の価値、市場を知らない。
 この宝石がどれほどの値で取引されるのかも分かってない。
 なら僕は市場を知ることが大事だ。
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