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二章 旅立ちの日

17.僕と宝石と鉱物と

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 鉄、銅、錫、銀、金その他にもエトセトラエトセトラ。
 うつ伏せになって辞典を読みつつ足をパタパタさせ、ベッドに落としては上げ落としては上げを繰り返す。
 今目を通しているのは宝石のページ。
 宝石なんて王宮で腐るほど見てきたからなぁ。

「ルビー」

 パタドサ。

「エメラルド、サファイア」

 パタドサ、ドサ。
 
 質の良い宝石は魔力の伝導率も高いので、よく魔導師の杖や魔道具なんかにも使われたりする。
 宝石の色と四属性には親和性もあり、火属性にはルビーやガーネット、水属性にはサファイアやラピスラズリ、風属性にはエメラルドや翡翠、地属性にはブラウンジャスパーや琥珀を使う、というような定説がある。

「ふぁあー……アリエスさんの杖には……なんだっけ、属性系じゃなくて純粋に魔法力を高める為の……拳くらいの大きさの……なんだっけな、スターライトジルコンだっ……」

 ゴスッ!

「けかぁっ!! ぐっふぉぉ……!」

僕の言葉が終わるか終わらないかのタイミングでそれは起こった。
ゴロゴロしていたせいなのか、少し気怠く、眠くなってきたその時。
 何かが、硬質な何かが僕の腰あたりに落ちてきた。
 あまりに突然、あまりに突拍子もなく。
あまりにも無防備、あまりにも無抵抗な僕の腰の骨にソレはウルトラダイレクトに着地した。

「いったぁ……! ぁあ……?!」

 腰をさすろうと手を回し、首を回す。
 そこに見えた光景に、僕は「たぁ……」と言って開いた口がさらに開いた。

「これ……アリエスさんのと同じ……?」

 手で鷲掴みにしたソレをマジマジと眺める。
 眺めれば眺めるほどに綺麗な宝石。
 頭の中で思い描いた、拳大のスターライトジルコニアが、まるで「来ちゃった」とばかりに燦然と輝いていたのだった。

「はぁああぁああーーーー!? ってあれ!? ちょっと待て!?」

 過大表現でも何でもなく、ベッドから飛び跳ねて起きた僕の足元、さっきまでパタパタやっていた所の周りには――。

「ルビー……サファイア……エメラルド……」

 僕が辞典を読みながら呟いた宝石が、所在なさげに、部屋の明かりを反射して小さく煌めいていた。
 煌めく宝石達を手に取りしげしげと眺める。
 宝石を王宮で腐るほど見て来た僕だからわかる。
 これはどれも、王宮にある宝石と同じレベルの質の良さだ。

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