国から見限られた王子が手に入れたのは万能無敵のS級魔法〜使えるのは鉱石魔法のみだけど悠々自適に旅をします〜

二章 旅立ちの日

49.助けたい思い

『ニャんじゃ、お主あの女子を助けたいのか？』
「まぁ、たった二日の縁だけど……見てみぬフリは出来ないよ」
『じゃがお主にニャにが出来る』
「それは……そうだけど……」
『分からんのニャならば、あの女子に呪術的なものをかけた術者本人を滅するしかなかろ』
「とは言っても、そいつがどこのどいつかも分からないんだぞ」
『くかか！　このワシの前でそのような世迷言を発するとはニャ、愚かよの』
「分かるのか？」
『愚問じゃ』
「……そうか、さすがだな」
『ふん、褒めた所でニャにも出んわ。これはお主に助けてもろうた恩に報いるものでもあるからの』
「滅する、って随分物騒な物言いだよな」
『術者を滅しても残る呪いもあるのじゃが、生憎とあの女子にかけられているのは残らないタイプじゃ。良かったの、主人様よ』
「うん……そう、だな」

　術者を滅する、それはすなわち術者の命を奪うという事と同じだ。
　果たしてそれが僕に出来るんだろうか。

『ニャに、お主が出来んのならワシがヤればよかろうに。主人様とワシは一蓮托生ニャのじゃからな』
「そうなのか？」
『うむ。ワシがワシとして今ここに存在しているのも、お主がワシを定義してくれたからこそであり、定義の大元であるお主がいニャくニャればそれはワシも消えるという事ニャんじゃよ』
「そうか……」
『じゃからお主が手を汚す事はニャい。汚れ仕事はワシの仕事ニャ』
「ありがとう。でも、もし僕がやらなきゃいけないときが来てもいいように……覚悟だけは決めておくよ」
『上出来ニャ』

　という見栄を張っても、思考が繋がっているチャロには僕の言葉が見栄だと分かっているんだろう。
　だからこその上出来だという言葉であり、突っ込んでも来ないのだろう。
　なんせ僕ってばヘタレだからなぁ。
　荒くれ者をしばき倒すのとはわけが違う。
　まぁ、その時が来ないとなんとも言えないけどね。
　
「マスター、ごちそうさまでした。おいしかったです。お代はここに置いておきますね」
「はい、かしこまりました。よい一日を」

　カウンターにモーニングの代金を置いて、僕は街へと出た。
　特に目的もないのだけど、とりあえずは下流域の行っていない場所でも巡ろうかと思っている。
　リンネの事もあるけど、だからと言って観光を諦める僕ではない。

『というよりお主。ワシをここから出してはくれぬのか』
「あぁ、それもそうだな」

　意思の疎通もはかれているし、何より僕とチャロは一蓮托生らしいからな。
　出しても問題ないだろ。
　見た目も紫色のちょっとデカイ猫にしか見えないし。
　という事で僕はケージを金属球へと戻し、チャロを開放した。