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二章 旅立ちの日
50.増殖する手足
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『んん―――いやはや、あの中はどうも窮屈でニャ。しかしお主、随分変わった魔法を使うのう』
そう言うチャロの目線は、僕が持つ金属球に向けられている。
爛々と輝かせた目線が向けられ、尻尾はゆらゆらと揺れていた。
虎視眈々、チャロの姿を見て、僕の頭にその言葉が浮かんだ。
今の光景ほど、この虎視眈々という言葉が似合う場面はないだろう。
猫は球場の物や、ひらひらした物が好きだという。
きっとチャロは金属球を見て、内に眠る猫の本能が騒ぎ立てているのだろう。
ようは遊びたいんだ。
僕はそう思った。
「……よし」
僕は金属球から一本の細い糸を伸ばして、掌に巻きつけた。
そして金属球をゆっくり、するすると糸を伸ばしながらゆっくりと下ろしてみた。
『フゥーー……(ニャ、ニャニをする……』
「んー? どうしたー?」
『グニニ……オニャウニャロラロ……(くっ……抗えぬ! 身体の奥底から湧き上がる情動がっワシを蝕んでいく!』
苦しんでいるような楽しんでいるような、そんな妙な呻き声を上げているチャロの眼前に降りてゆく金属球。
それに合わせて、チャロの視線もゆっくりと降りてゆき、呻き声のトーンも上がっていく。
「それ」
「ニャッ!」
手首で反動を付け、チャロの目の前で金属球を揺らしてみると、チャロは素早く前足を動かして金属球を弾いた。
弾き、追い、飛びかかり、咥え、離し、また弾いて飛びかかる。
「ほれほーれ、まだあるぞ」
同じ物をもう一つ生成し、チャロを弄び始める僕。
仕方ない、だって可愛いんだもの。
「ウニャッ! ウニャニャニャ!(にゃめろ! フォオオ! おのれパステト! 猫神の分際でワシにニャにをした!)」
自称暗黒神の爪であるというのに、猫という本能に抗えないチャロは見ていてとても可愛いらしい。
猫神とかパステトとか言ってるけど、僕にとっては何のことやらさっぱりだが、きっと僕の知らない神同士の交流があるんだろう。
猫を崇めている地域もあると聞くし、きっとそこらへんの話だろう。
「ニャッ! ニャロロロ!(ふっ! はぁっ! お主貴様! ワシを弄ぶでニャい!)」
今は金属球を四つに増やし、チャロの周りをくるくる移動させている所だ。
弾いたり蹴ったりしたとて、金属球は糸で繋がっているのでどこかにいったりはせず、弾けば戻り蹴れば戻りと、チャロを見事に翻弄していた。
「フォオーー!(おのれ洒落臭い! ワシの本気を見せてやるわい!)」
と言ったチャロは一度僕から距離を取り、一声ニャッ! と鳴いて体を弓のようにしならせた。
そして次の瞬間――。
「ニャオウニャニャニャニャア!(ホォォオアタタタァ!)」
チャロは一気呵成に飛びかかり、今までとは段違いの速度で金属球に手を伸ばした。
そして――。
「ナォーーゥ!(ふっ、勝った!)」
計四つの金属球は全て、チャロの手の、いやチャロのぷにぷにの肉球に挟み込まれていた。
――一対ずつの手に。
「勝ったじゃなーーーい!」
『ぬ? ニャんじゃ! 文句でもあるのか!』
「大有りだわアホぅ! 外で何してんだ!」
地面にごろりと横たわり、やり切った、みたいな表情をしているチャロ。
その腹部からはなんと、長さも太さもバラバラな二対の猫の手が伸びていた。
四対の猫の手の中にしっかりと握られた金属球。
そう言うチャロの目線は、僕が持つ金属球に向けられている。
爛々と輝かせた目線が向けられ、尻尾はゆらゆらと揺れていた。
虎視眈々、チャロの姿を見て、僕の頭にその言葉が浮かんだ。
今の光景ほど、この虎視眈々という言葉が似合う場面はないだろう。
猫は球場の物や、ひらひらした物が好きだという。
きっとチャロは金属球を見て、内に眠る猫の本能が騒ぎ立てているのだろう。
ようは遊びたいんだ。
僕はそう思った。
「……よし」
僕は金属球から一本の細い糸を伸ばして、掌に巻きつけた。
そして金属球をゆっくり、するすると糸を伸ばしながらゆっくりと下ろしてみた。
『フゥーー……(ニャ、ニャニをする……』
「んー? どうしたー?」
『グニニ……オニャウニャロラロ……(くっ……抗えぬ! 身体の奥底から湧き上がる情動がっワシを蝕んでいく!』
苦しんでいるような楽しんでいるような、そんな妙な呻き声を上げているチャロの眼前に降りてゆく金属球。
それに合わせて、チャロの視線もゆっくりと降りてゆき、呻き声のトーンも上がっていく。
「それ」
「ニャッ!」
手首で反動を付け、チャロの目の前で金属球を揺らしてみると、チャロは素早く前足を動かして金属球を弾いた。
弾き、追い、飛びかかり、咥え、離し、また弾いて飛びかかる。
「ほれほーれ、まだあるぞ」
同じ物をもう一つ生成し、チャロを弄び始める僕。
仕方ない、だって可愛いんだもの。
「ウニャッ! ウニャニャニャ!(にゃめろ! フォオオ! おのれパステト! 猫神の分際でワシにニャにをした!)」
自称暗黒神の爪であるというのに、猫という本能に抗えないチャロは見ていてとても可愛いらしい。
猫神とかパステトとか言ってるけど、僕にとっては何のことやらさっぱりだが、きっと僕の知らない神同士の交流があるんだろう。
猫を崇めている地域もあると聞くし、きっとそこらへんの話だろう。
「ニャッ! ニャロロロ!(ふっ! はぁっ! お主貴様! ワシを弄ぶでニャい!)」
今は金属球を四つに増やし、チャロの周りをくるくる移動させている所だ。
弾いたり蹴ったりしたとて、金属球は糸で繋がっているのでどこかにいったりはせず、弾けば戻り蹴れば戻りと、チャロを見事に翻弄していた。
「フォオーー!(おのれ洒落臭い! ワシの本気を見せてやるわい!)」
と言ったチャロは一度僕から距離を取り、一声ニャッ! と鳴いて体を弓のようにしならせた。
そして次の瞬間――。
「ニャオウニャニャニャニャア!(ホォォオアタタタァ!)」
チャロは一気呵成に飛びかかり、今までとは段違いの速度で金属球に手を伸ばした。
そして――。
「ナォーーゥ!(ふっ、勝った!)」
計四つの金属球は全て、チャロの手の、いやチャロのぷにぷにの肉球に挟み込まれていた。
――一対ずつの手に。
「勝ったじゃなーーーい!」
『ぬ? ニャんじゃ! 文句でもあるのか!』
「大有りだわアホぅ! 外で何してんだ!」
地面にごろりと横たわり、やり切った、みたいな表情をしているチャロ。
その腹部からはなんと、長さも太さもバラバラな二対の猫の手が伸びていた。
四対の猫の手の中にしっかりと握られた金属球。
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