欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

文字の大きさ
98 / 298
第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー

二五九話 カミングアウト

しおりを挟む
「どう?」

「ダメだね。フィガロも別働隊と鉢合わせて戦闘中らしい」
 
 僕はウィスパーリングを切り、逃げ込んだ廃屋内からそっと外を伺いながら得た情報をそばに居るシャルルへと伝えた。

「そっか」

 王城からほど近くにあった屋敷の廃屋内には僕、シャルル、ドライゼン王に守護騎士のランチア勢と、ヘカテー王女にアーマライト王とアストラ、ロンシャン兵を含めたロンシャン勢の大所帯が隠れていた。
 時刻は深夜だというのに、様々な場所で戦闘が行われており、この人数で下手に動けば簡単に見つかってしまうだろう事は容易に想像出来る。
 それほどまでに敵の目は厳しく、革命軍が持つ戦力の大きさは予想以上の規模だった。

「王城を抜けたはいいけど……なんなのよこの包囲網! さすがロンシャン連邦国ね! 自分の国ながら裏切った兵力のその一部がこれとは恐れ入るわよ」

「ヘカテーよ、あまりそう言うな。悲しくなるわい」

「アーマライト王よ。この反乱は少しばかり規模が大きすぎるのではないか?」

 王族達は廃屋の中に転がっていた比較的無事なソファに座り、色々と話をしているがシャルルだけは僕のそばに来て、同じように外の様子を伺っていた。

「随分と元気なんだね。君も座って休んでいたらどうだい?」

「お気遣いどうも、でもいいの。フィガロが戦ってるのに休んでるわけにもいかないでしょ」

「休むのも一つの戦法だと思うけれどね。まぁいいよ、しかし随分と衣装替えをしたものだね」

「どう? 似合うかしら? メイドの格好なんて生まれて初めてよ」

「フッ……だろうね」

「リッチモンドさんは……フィガロとどういう関係なの? フィガロはこの国に来るまで、クライシスさんと二人で生活してたから……友達や仲間はいないはず。それと、貴方が冒険者として登録したのもフィガロと同時期よね」

「リッチモンドでいいよ、シャルルちゃん。さすがに王族だね、よく調べている」

 目の前で鋭い眼差しを向けてくる小さな少女、シャルルが王族だとしてもアンデッドである僕には関係の無い事だ。
 そういえば、この子とちゃんと話す機会はこれが初めてだった。
 フィガロからシャルルの話は聞いていたけど、お互いにすれ違いで中々マトモに顔を合わせた事がなかった。

「一緒に冒険する人の事を予め調べるのは当たり前だと思うわよ」

「調べられる情報網があるからそう言えるのさ。何にせよ、僕も君と同じくフィガロに恩がある者さ。決して怪しい者じゃないし、お師様、クライシスさんに世話になった事もある」

「そうなのね。じゃあ聞くけど……」

「何かな?」

 シャルルは一瞬目を泳がせ、聞くべきなのかを思案しているように見えたものの、その迷いはすぐ断ち切られたらしく、再び強い眼差しで僕を見つめてきた。

「貴方……人間じゃないわよね。一体何者なの?」

「へぇ……こりゃ驚いた。どうしてそう思うんだい?」

「どうしても何も貴方、息をしていないじゃない。肌だって冷たいし、それに……纏っている雰囲気がその……人間のものじゃないわ」

「よく見ているんだね。本当に驚きだ」

 シャルルの問いに驚いたのは事実だ。
 お師様が僕に教えてくれた変異の術はおいそれと見抜けるようなものじゃないし、アンデッドの気配はなるべく遮断しているはずなのに……この子は少し共にいただけであっさりと見抜いてしまった。
 これが王族の力だとでも言うのだろうか。
 確かに僕には呼吸も食事も睡眠も必要無いし、外気温の変化も全く関係無い。
 それに着ているローブだってゆったりとした物で、呼吸をする時の胸の上下は分かり辛いはずなのだ。

「私ね、観察眼がいいのよ。昔から他人の顔色や動向を見ながら生きてきたから……ちょっとした変化もすぐ分かるの」

「それは誇らしげに言う事じゃないと思うけれどね?」

「うるさいわね。人には色々と事情があるのよ、さぁ話して。貴方は何者なの?」

「こんな時に聞く事かい?」

「こんな時だから聞くのよ。貴方を信用していないわけじゃないけど、ハッキリさせておくべきよ」

 少しだけ頬を膨らませ、腰に手を当てて僕を睨むその姿がとてもコミカルで小動物のように見える。
 本人からすればそんな事は無いのだろうし、凄んでいるつもりなのだろう。
 そんなシャルルがとても微笑ましく、フィガロはきっとこういう所に惹かれたのかな、などという場違いな考えが頭に過ぎった。

「聞いてるの?」

「あぁはいはい。フフフ……聞いているさ。でも一つだけ約束して欲しい」

「何よ?」

「僕の本当の姿を知っても怖がらないで欲しい。そして仲間でいて欲しい」

「……分かったわ」

「ありがとう」

「じゃあ私も最後に聞くけど、貴方はフォックスハウンドの仲間で、ここにいる皆の味方なのね?」

「勿論さ。フィガロとお師様に誓うよ」

 シャルルが僕の前に小さな手を差し出した。
 その意図が分からず、差し出された手とシャルルの顔を交互に見ていると、彼女は強引に僕の手を取り強く握った。

「さぁ、教えて」

「やれやれ、君がこんなに強引だとは思わなかったよ……僕はね……」

 僕は握られた手をそっと離し、その手の部分だけ変異の術を解き、静かに差し出した。

「アンデッド、リッチなのさ」
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。