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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー
二五八話 いさぎよさ
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俺が呆然としていると、目の前の茂みから奥へと甲高い笛の音が鳴り響いた。
それに合わせて大人数が移動する気配を感じた俺は、急いで魔法を発動させ、茂みの奥へファイヤーボールを手当り次第に投げ込んで行った。
「ぐわっ!」「撤退! 撤退だ!」「うわああ!」「逃げるなら逃げるって先に言ってほしいぐぎゃああ!」「散開しろ! 的を絞らせるな!」
どうやらウルベルトは撤退の指示も無く、一人で逃げて行ったらしい。
俺よりも一足早く状況を察した兵士が、撤退の笛を吹いたのだろう。
ウルベルトには逃げられてしまったが、目の前の獣魔操奇部隊の本隊をみすみす逃すワケにはいかない。
現存する兵士達がどのくらいいるかは分からないが、足音や装備が擦れる音からすると本隊だけあり、かなりの大人数のようだ。
「逃がしません! ディス・エクスパンション【ファイヤーアロー】」
十式展開した一〇〇発の炎の矢が茂みを突き抜け、操奇部隊の兵達を無造作に貫いていく。
さらに追加で十式展開し、それをしばらく繰り返した。
咄嗟にとった行動だが、普通に考えればただの虐殺でしかない行為だという事に気付き魔法の発動を止めた。
しかし時すでに遅し。
あれほど聞こえていた悲鳴や絶叫はピタリと止み、俺の耳に聞こえるのはごうごうと燃える火の手の音と、後方でいまだ戦闘中のロンシャン兵と命令系統を失った獣魔兵が争う音だけだった。
風に乗って人が燃えた言いようのない汚臭と、焦げ臭い匂いが俺の鼻を突き吐き気が込み上げてくる。
「うぶ……」
胃液が喉を登り、口の中が吐瀉物独特のあの酸っぱい感じで満たされる。
自分がやったこととは言え、あまりにも惨たらしい結果になってしまった。
だがここは戦場であり、これは戦争なのだと自分に言い聞かせてこみ上げたものを無理やり飲み下し、敵の亡骸達に少しだけ手を合わせた。
「私は私の正義を貫きます。どうか安らかにお眠りください」
手を合わせ黙祷を捧げた後、気持ちを切り替えるべく自らの頬を思い切りひっぱたく。
バチィン! という乾いた音と共に鋭い痛みが頬に走る。
「よし。もう大丈夫だ。大丈夫、やろう」
それだけ呟いて踵を返し、残りの獣魔兵を殲滅するべく一気に駆け出したのだった。
「操奇部隊は壊滅しました。ウルベルトは巨大なフクロウを使役され取り逃してしまいました。申し訳ございません」
壮年のロンシャン兵と相対していた大熊型の獣魔兵を背後から一刀両断に斬り伏せ、そう告げた。
俺の報告を聞いた壮年の兵はだんだんと喜びの表情へと変化していき、小さくガッツポーズを取った後綺麗な敬礼をして言った。
「確かに聞き届けました! ご無事で何よりです辺境伯殿!」
「さぁ、残りを片付けて他の部隊と合流しましょう!」
「はい! 貴方様がいれば百人力、いえ、千人力です!」
気付けばホワイトとピンクが後ろに控えており、壮年兵の真似をしているのか、同じような敬礼をしている。
二人とも特に目立った外傷はないので、一安心だ。
だがロンシャン兵達は負傷兵が多く、さらに一匹の獣魔兵に対して二、三人で相手をしている。
戦力的に不利なのは否めず、適当に獣魔兵の数を減らしたのち、負傷兵の手当てに移行するとしよう。
「【フレイムスピア】!」
突進を仕掛けていた四足型の獣魔兵の横っ腹に炎の槍を叩き込み、身につけていた防具ごと貫いた。
目の前の敵が瞬殺された事に驚いていた若めのロンシャン兵は俺に敬礼をしたのち、再び他の獣魔兵のもとへ走っていった。
どうやら士気は衰えていないらしく、ロンシャン兵達の表情もどことなく明るい。
俺とウルベルトの攻防戦を目にしていたのか、戦況が良い方向に動き始めたからなのかは分からないが、この勝負の勝ちはもらったと確信出来た。
「しかし辺境伯殿はお強い……強いという言葉すら霞むほどのそのお力、今しばらく我らロンシャンへお貸しください」
「もちろんです。あなた方を助けるという事はシャルルやドライゼン王、ランチアの皆を守る事に繋がります」
「はぁ……なんと寛大なお方か……こうなったのも我らロンシャンの責だというのに」
「その話はあとで、私も仲間と合流したいのでさっさと片付けましょう!」
「はは!」
もはや消化試合と化したこの状況を手早く終わらせ、シャルル達の元へ急がなければならない。
俺が行く頃には戦闘が終了している可能性の方が高いが、安心するにはまだ早いのだ。
と、四体の獣魔兵の頭を魔力弾で撃ち抜きながら思う。
あの後リッチモンドからの連絡は無いので、特に困った事にはなっていなさそうだけれども。
「ランチア魔導王朝辺境伯殿のおかげで操奇部隊は壊滅した! 残党の獣魔兵を掃討せよ! 勝利は我らの下にあり!」
「「「おおおおーーー!」」」
それに合わせて大人数が移動する気配を感じた俺は、急いで魔法を発動させ、茂みの奥へファイヤーボールを手当り次第に投げ込んで行った。
「ぐわっ!」「撤退! 撤退だ!」「うわああ!」「逃げるなら逃げるって先に言ってほしいぐぎゃああ!」「散開しろ! 的を絞らせるな!」
どうやらウルベルトは撤退の指示も無く、一人で逃げて行ったらしい。
俺よりも一足早く状況を察した兵士が、撤退の笛を吹いたのだろう。
ウルベルトには逃げられてしまったが、目の前の獣魔操奇部隊の本隊をみすみす逃すワケにはいかない。
現存する兵士達がどのくらいいるかは分からないが、足音や装備が擦れる音からすると本隊だけあり、かなりの大人数のようだ。
「逃がしません! ディス・エクスパンション【ファイヤーアロー】」
十式展開した一〇〇発の炎の矢が茂みを突き抜け、操奇部隊の兵達を無造作に貫いていく。
さらに追加で十式展開し、それをしばらく繰り返した。
咄嗟にとった行動だが、普通に考えればただの虐殺でしかない行為だという事に気付き魔法の発動を止めた。
しかし時すでに遅し。
あれほど聞こえていた悲鳴や絶叫はピタリと止み、俺の耳に聞こえるのはごうごうと燃える火の手の音と、後方でいまだ戦闘中のロンシャン兵と命令系統を失った獣魔兵が争う音だけだった。
風に乗って人が燃えた言いようのない汚臭と、焦げ臭い匂いが俺の鼻を突き吐き気が込み上げてくる。
「うぶ……」
胃液が喉を登り、口の中が吐瀉物独特のあの酸っぱい感じで満たされる。
自分がやったこととは言え、あまりにも惨たらしい結果になってしまった。
だがここは戦場であり、これは戦争なのだと自分に言い聞かせてこみ上げたものを無理やり飲み下し、敵の亡骸達に少しだけ手を合わせた。
「私は私の正義を貫きます。どうか安らかにお眠りください」
手を合わせ黙祷を捧げた後、気持ちを切り替えるべく自らの頬を思い切りひっぱたく。
バチィン! という乾いた音と共に鋭い痛みが頬に走る。
「よし。もう大丈夫だ。大丈夫、やろう」
それだけ呟いて踵を返し、残りの獣魔兵を殲滅するべく一気に駆け出したのだった。
「操奇部隊は壊滅しました。ウルベルトは巨大なフクロウを使役され取り逃してしまいました。申し訳ございません」
壮年のロンシャン兵と相対していた大熊型の獣魔兵を背後から一刀両断に斬り伏せ、そう告げた。
俺の報告を聞いた壮年の兵はだんだんと喜びの表情へと変化していき、小さくガッツポーズを取った後綺麗な敬礼をして言った。
「確かに聞き届けました! ご無事で何よりです辺境伯殿!」
「さぁ、残りを片付けて他の部隊と合流しましょう!」
「はい! 貴方様がいれば百人力、いえ、千人力です!」
気付けばホワイトとピンクが後ろに控えており、壮年兵の真似をしているのか、同じような敬礼をしている。
二人とも特に目立った外傷はないので、一安心だ。
だがロンシャン兵達は負傷兵が多く、さらに一匹の獣魔兵に対して二、三人で相手をしている。
戦力的に不利なのは否めず、適当に獣魔兵の数を減らしたのち、負傷兵の手当てに移行するとしよう。
「【フレイムスピア】!」
突進を仕掛けていた四足型の獣魔兵の横っ腹に炎の槍を叩き込み、身につけていた防具ごと貫いた。
目の前の敵が瞬殺された事に驚いていた若めのロンシャン兵は俺に敬礼をしたのち、再び他の獣魔兵のもとへ走っていった。
どうやら士気は衰えていないらしく、ロンシャン兵達の表情もどことなく明るい。
俺とウルベルトの攻防戦を目にしていたのか、戦況が良い方向に動き始めたからなのかは分からないが、この勝負の勝ちはもらったと確信出来た。
「しかし辺境伯殿はお強い……強いという言葉すら霞むほどのそのお力、今しばらく我らロンシャンへお貸しください」
「もちろんです。あなた方を助けるという事はシャルルやドライゼン王、ランチアの皆を守る事に繋がります」
「はぁ……なんと寛大なお方か……こうなったのも我らロンシャンの責だというのに」
「その話はあとで、私も仲間と合流したいのでさっさと片付けましょう!」
「はは!」
もはや消化試合と化したこの状況を手早く終わらせ、シャルル達の元へ急がなければならない。
俺が行く頃には戦闘が終了している可能性の方が高いが、安心するにはまだ早いのだ。
と、四体の獣魔兵の頭を魔力弾で撃ち抜きながら思う。
あの後リッチモンドからの連絡は無いので、特に困った事にはなっていなさそうだけれども。
「ランチア魔導王朝辺境伯殿のおかげで操奇部隊は壊滅した! 残党の獣魔兵を掃討せよ! 勝利は我らの下にあり!」
「「「おおおおーーー!」」」
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