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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー
二八四話 女々しくて
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「まどろっこしい事は無しにしたい、単刀直入に言わせて欲しい」
「は、はい。何でしょうか?」
アーマライト王の強い視線を受け、何事かと身構える。
「今のうちにヘカテーを貴殿の領地で預かって欲しいのだ。突然の嘆願、誠に申し訳無いのだが……何とかならんだろうか?」
「はぁ……え? えええ!? 本気ですか!?」
「本気も本気だ。頼む!」
アーマライト王は椅子から立ち上がり、九〇度の綺麗なお辞儀をして言った。
あらかじめドライゼン王には話していたのだろう、ドライゼン王は黙って俺達のやり取りを見ていた。
「……理由をお伺いしても?」
「うむ……此度の戦争は規模がかなり大きい。報告によれば王城のある中心街だけではなく、ロンシャン連邦国の主要な街までも被害が及んでいるらしいのだ。そして主要な街にいる権力者達が次々に捕えられており、革命軍の目的も少しだけハッキリしてきた」
「目的、ですか」
「奴らは王制の廃止を声高にしていたそうだ」
「そんな……! という事は……」
「王族である我らが狙われるのは自明の理。私も処刑されるのは嫌だが、ヘカテーはまだ若い、あの子を失いとうないのだ。頼む」
席についたアーマライト王から吐き出された重大な事実に肌が泡立ち、背中にもひんやりとしたものが流れた。
「亡命、というヤツですか……」
「有り体に言えばそうなるな。革命軍は他にも何かよからぬ事を企んでいるに違いないのだ。この内乱はもはや収拾がつかないところまで来てしまっている、寝返る者達も多く、黒龍騎士団もまるまる寝返ったという報もあった。この戦い、私の負けだ。どうにもならん……」
手で顔を覆ったアーマライト王の言葉に力は無く、投げやりの感情のようなものを感じ取った俺は思わず立ち上がり、声を荒らげて言った。
「諦めるんですか! まだ何もしていないじゃないですか! これから反撃って時にクヨクヨしてどうするんですか! 寝返ったから何ですか! ここで諦めたら今貴方についてきている兵達はどうするんですか! 死んでいった方々にどう顔向けするのですか!」
「よせ、フィガロ」
「ドライゼン王も知っていたんですか!? これでいいはずがありません!」
ドライゼン王が静かに窘めるが、はいそうですかと引き下がれるわけもない。
諦めてアーマライト王を処刑させるためにここまで来たんじゃない。
革命軍と必死に戦い、散っていった兵達の無念はどうなるというのか。
俺が少し寝ている間に何があったのだろうか。
ここに来るまでは意気揚々と部隊を指示していたではないか。
「なぜ突然諦めようと思ったのですか? 何が原因なのですか? 私は納得出来ません」
「それは……そうだな……貴殿の健闘をも蔑ろにする行為だ。しかしな……機能しなかった通信用魔導技巧が息を吹き返し、伝わってくる情報により敵の強大さをまざまざと知らされた。ここに到着し数時間、情報が入ってくる度にな……」
「そう、ですか……ですが……私は諦めたくありません……無礼な物言い、大変申し訳ございませんでした」
伝わってきた情報に打ちひしがれ、項垂れるアーマライト王はとても小さく見えた。
カッとなって言ってしまったが、王は王だ。
これがこんな状況でなければ、とっ捕まっても仕方ないかもしれない。
「よい。貴殿の言う事はもっともだ、無礼だとも思わん。貴殿の気持ちはよく分かった。私も諦めたくは無いのが本心だ、しかしヘカテーの事は考えていて欲しい。仮にこの戦いを制したとしても不穏分子がいつ牙を剥くか分からんのでな」
「わかり、ました」
納得はしきれていないが、どうやらアーマライト王も考えを改めてくれそうではある。
敵の総司令であるガバメントを下したというのに、争いは収まることを知らないようだった。
それとも……ガバメント以外に革命軍を指揮している人物がいるとでも言うのだろうか。
だとすれば収拾のつかない争いにも道理が通る。
寝返ったとされる黒龍騎士団、ガバメント率いる赤龍騎士団、三つの騎士団のうち、二つの騎士団を取り込んだ革命軍はきっと攻勢に転じる。
陥落した王城からアーマライト王が救出された事も、革命軍には既に伝わっているだろうけど、肝心のアーマライト王の居場所は割れていないはずだ。
革命軍から奪ったこの時刻塔も大量の携帯食糧を保有している。
ここは確実に取り返しに来る。
様々な過去の戦争の文献を見ても、食糧というものはかなり重要なファクターだ。
革命軍が来るのならこちらも迎え撃つ事になる。
明日か明後日か、もしかしたら数秒後かも知れない。
来るなら来い。
こっちにはクライシスもリッチモンドも、守りの国最硬と呼ばれるドライゼン王の障壁もある。
徹底抗戦をしてやろうじゃあないか。
「改めて言いますが、私は諦めません。このフィガロ、全力で参戦させて頂きます」
「あぁ、分かった。ドライゼン陛下より貴殿の類まれなる強さは聞いている。何でも恐ろしい悪魔を葬ったとか……その力、期待させてもらいますぞ? 次期国王陛下殿」
「あー……はは、はい。宜しくお願いします」
ドライゼン王とアーマライト王は不敵な笑みを浮かべ、俺を真っ直ぐに見つめる。
俺はその視線を正面から受け止め、リッチモンド達と話をすべくその場を後にしたのだった。
「は、はい。何でしょうか?」
アーマライト王の強い視線を受け、何事かと身構える。
「今のうちにヘカテーを貴殿の領地で預かって欲しいのだ。突然の嘆願、誠に申し訳無いのだが……何とかならんだろうか?」
「はぁ……え? えええ!? 本気ですか!?」
「本気も本気だ。頼む!」
アーマライト王は椅子から立ち上がり、九〇度の綺麗なお辞儀をして言った。
あらかじめドライゼン王には話していたのだろう、ドライゼン王は黙って俺達のやり取りを見ていた。
「……理由をお伺いしても?」
「うむ……此度の戦争は規模がかなり大きい。報告によれば王城のある中心街だけではなく、ロンシャン連邦国の主要な街までも被害が及んでいるらしいのだ。そして主要な街にいる権力者達が次々に捕えられており、革命軍の目的も少しだけハッキリしてきた」
「目的、ですか」
「奴らは王制の廃止を声高にしていたそうだ」
「そんな……! という事は……」
「王族である我らが狙われるのは自明の理。私も処刑されるのは嫌だが、ヘカテーはまだ若い、あの子を失いとうないのだ。頼む」
席についたアーマライト王から吐き出された重大な事実に肌が泡立ち、背中にもひんやりとしたものが流れた。
「亡命、というヤツですか……」
「有り体に言えばそうなるな。革命軍は他にも何かよからぬ事を企んでいるに違いないのだ。この内乱はもはや収拾がつかないところまで来てしまっている、寝返る者達も多く、黒龍騎士団もまるまる寝返ったという報もあった。この戦い、私の負けだ。どうにもならん……」
手で顔を覆ったアーマライト王の言葉に力は無く、投げやりの感情のようなものを感じ取った俺は思わず立ち上がり、声を荒らげて言った。
「諦めるんですか! まだ何もしていないじゃないですか! これから反撃って時にクヨクヨしてどうするんですか! 寝返ったから何ですか! ここで諦めたら今貴方についてきている兵達はどうするんですか! 死んでいった方々にどう顔向けするのですか!」
「よせ、フィガロ」
「ドライゼン王も知っていたんですか!? これでいいはずがありません!」
ドライゼン王が静かに窘めるが、はいそうですかと引き下がれるわけもない。
諦めてアーマライト王を処刑させるためにここまで来たんじゃない。
革命軍と必死に戦い、散っていった兵達の無念はどうなるというのか。
俺が少し寝ている間に何があったのだろうか。
ここに来るまでは意気揚々と部隊を指示していたではないか。
「なぜ突然諦めようと思ったのですか? 何が原因なのですか? 私は納得出来ません」
「それは……そうだな……貴殿の健闘をも蔑ろにする行為だ。しかしな……機能しなかった通信用魔導技巧が息を吹き返し、伝わってくる情報により敵の強大さをまざまざと知らされた。ここに到着し数時間、情報が入ってくる度にな……」
「そう、ですか……ですが……私は諦めたくありません……無礼な物言い、大変申し訳ございませんでした」
伝わってきた情報に打ちひしがれ、項垂れるアーマライト王はとても小さく見えた。
カッとなって言ってしまったが、王は王だ。
これがこんな状況でなければ、とっ捕まっても仕方ないかもしれない。
「よい。貴殿の言う事はもっともだ、無礼だとも思わん。貴殿の気持ちはよく分かった。私も諦めたくは無いのが本心だ、しかしヘカテーの事は考えていて欲しい。仮にこの戦いを制したとしても不穏分子がいつ牙を剥くか分からんのでな」
「わかり、ました」
納得はしきれていないが、どうやらアーマライト王も考えを改めてくれそうではある。
敵の総司令であるガバメントを下したというのに、争いは収まることを知らないようだった。
それとも……ガバメント以外に革命軍を指揮している人物がいるとでも言うのだろうか。
だとすれば収拾のつかない争いにも道理が通る。
寝返ったとされる黒龍騎士団、ガバメント率いる赤龍騎士団、三つの騎士団のうち、二つの騎士団を取り込んだ革命軍はきっと攻勢に転じる。
陥落した王城からアーマライト王が救出された事も、革命軍には既に伝わっているだろうけど、肝心のアーマライト王の居場所は割れていないはずだ。
革命軍から奪ったこの時刻塔も大量の携帯食糧を保有している。
ここは確実に取り返しに来る。
様々な過去の戦争の文献を見ても、食糧というものはかなり重要なファクターだ。
革命軍が来るのならこちらも迎え撃つ事になる。
明日か明後日か、もしかしたら数秒後かも知れない。
来るなら来い。
こっちにはクライシスもリッチモンドも、守りの国最硬と呼ばれるドライゼン王の障壁もある。
徹底抗戦をしてやろうじゃあないか。
「改めて言いますが、私は諦めません。このフィガロ、全力で参戦させて頂きます」
「あぁ、分かった。ドライゼン陛下より貴殿の類まれなる強さは聞いている。何でも恐ろしい悪魔を葬ったとか……その力、期待させてもらいますぞ? 次期国王陛下殿」
「あー……はは、はい。宜しくお願いします」
ドライゼン王とアーマライト王は不敵な笑みを浮かべ、俺を真っ直ぐに見つめる。
俺はその視線を正面から受け止め、リッチモンド達と話をすべくその場を後にしたのだった。
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