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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー
二八五話 目標
しおりを挟む「というわけなんだよなぁ」
両王との対話を終えた俺はシャルルとリッチモンドを見つけ、話の内容を伝えた。
「陛下が弱気になるのも無理無いわよ。私も少し耳に挟んだけど……主要な街はほとんど革命軍の手の内みたいだし」
「彼自身どうする事も出来ない歯がゆさなんかもあるんだろうさ。あまり責めるなよ」
話を聞いた二人に窘められ、肩を竦めながら俺は言った。
「あの時はつい……まぁでも、今後どうなるかは分からないけど、俺は全力を尽くすだけだ」
「熱くなるのはいいけどね。迷宮の時みたいな事はやるなよ?」
「……気をつけるよ。でも魔法の効果範囲やら威力やらがいまいち把握出来なくてさ……そう考えると一般的に使われている魔法を生み出した先人達は凄いよな」
「何? フィガロが何かやったの?」
「実はねぇ」
「その話は今度だ今度!」
「えー! いいじゃない!」
「ま、あの一件でフィガロも色々と成長したと思うよ」
「うるせーやい!」
俺とリッチモンドとシャルルが歓談していると、パーテーションの影からウル達が顔を出し、こちらを伺っていた。
「やぁ、もう食べたのかい?」
「は、はい、お邪魔では無いでしょうか」
と、リッチモンドが声をかけるとウル達がゆっくりと出てきてそんな事を言った。
「改めてよろしくね、私はシャルルよ」
「は! お目汚し失礼致します、シャルルヴィル王女殿下」
シャルルが手をひらひらしながら自己紹介をするとウル達が一斉に跪いた。
どうやら既にシャルルは自らの身分を明かしていたらしいが、今の服はロンシャン王城で拝借したメイド服。
服からは高貴さや王女の威厳などは微塵も感じられないが、シャルルの持つ王族特有の雰囲気というか、オーラのようなものを感じ取ってシャルルの身分を信じたのだろう。
気付けばウル達の背後に強化兵達の姿もあった。
相変わらずの仁王立ちだが、来ている服はズタボロになっていた。
「そう言えばクライシスは?」
「お師様なら気になる事がある、って言ってどこかへ行ってしまったよ。適当に戻るから心配ご無用、だそうだよ」
「そっか」
相変わらずクライシスは自由な人だな。
敵地のド真ん中で一人ふらつくなんて芸当は彼にしか出来ない事だ。
それから数時間は、久しぶりに腰を落ち着けてゆっくり出来た。
お世辞にも美味しいとは言えない携帯食糧を食べて、シャルルのシキガミであるお狐様が周囲の家屋から拝借してきた紅茶やお茶菓子などをつまみながら歓談に耽っていた。
ウル、シロン、ハンヴィー、アハトの四人はシスターズという名称をシャルルから貰い頭を下げていた。
話が弾む中、ふと時刻盤を見れば時刻は既に夜の二〇時を過ぎていた。
もし敵が夜襲をかけるつもりなら、これから日が昇るまでが最も警戒するべき時間となる。
ウル達を含めた非戦闘員は約一五人、ほかの兵達が周囲四ブロック分を捜索したところ、このような数になったようだ。
ウル達以外は地域住民と聞いた、みなこれからの事が不安で仕方ないだろう。
「とりあえずシスターズは他の避難民と一緒に居た方がいいんじゃないか?」
「お言葉ですがフィガロ様、もしよろしければ私共はリッチモンド様やフィガロ様、シャルルヴィル王女と共に……」
「ダメだね」
ウルが代表で意見を口にしたが、逡巡する間もなくリッチモンドが否定の言葉を口にし、さらに言葉を続けた。
「だってそうだろう? 君達はその貧弱な体で武器も持たず何が出来る? 邪魔なだけだ。それにわかっていると思うけど今は戦争中だ。死ぬかも知れないんだ、足で纏いは連れて行けないね」
リッチモンドが突き放すように言うと、シスターズは俯き言葉に詰まる。
俺としても連れて行く気は無かったし、申し訳ないがリッチモンドの言う通りだ。
シャルルも黙って聞いている所を見ると、やはり同意見なのだろう。
「申し訳ないけど、君達を同伴させるわけにはいかない。君達の身元は俺が引き受けるけど、それは君達が生きていてくれなければ意味が無い。冷たい言い方かも知れないけど分かって欲しい」
「私だって戦えるんだわ!」
俯いていた四人の中で唯一声高に言葉を発したハンヴィーが、鋭い視線を俺達に向けた。
「私は獣人、コヨーテの獣人です。衰えていたとしてもそんじょそこらの通常人種なんかには負けないんだわ!」
「なら僕に一発目入れられたら考えよう」
「リッチモンド様に……?」
「僕は魔導師だ。近接戦闘はあまり得意じゃない、そこまで言うなら一発くらい入れられるだろう?」
リッチモンドが煽るように手招きし、見下すように視線を送る。
ハンヴィーは戸惑いながらも拳を握り、決意ヲ込めた視線でリッチモンドをひたと見据えた。
「リッチモンド様に私の力を認めさせる良い機会だわ」
「御託はいいからさっさと来なよ。この距離なら君のその体でも拳は届くだろ?」
「後悔しないで欲しいんだわ!」
リッチモンドの挑発を受けたハンヴィーはしっぽの毛を逆立て、文字通り牙を剥いてリッチモンドへ飛びかかった。
「確かに早いね。でも届かない」
「そんな……!」
ハンヴィーの拳は確かに早かった。
相手が魔法使いレベルの人間なら確かに一撃は決まっていた。
でもその程度の拳ではリッチモンドを捉える事など不可能だつた。
ハンヴィーの小さな拳はリッチモンドの掌にすっぽりと覆われ、引けども引けども動くことは無い。
「これで分かったろ? 君は弱い、だから邪魔だ、連れて行けない。大人しく待っていてくれたまえよ」
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