ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

文字の大きさ
65 / 73

65 タロス、ダレク無双

しおりを挟む
「とりあえず! 今はこの現状をなんとかしましょう!」
「お前、現状を把握してるのか?」

 ヘルメットを外したダラスが、周囲を一瞥して言った。
 ダラスさん少し痩せたな、と俺は場違いな感想を抱きつつ、

「はい、モンスターの視界から大体は分かっているつもりです」

 と胸を張って答えた。

「となると、あの甲冑の奴らもクロードの仲間か」
「話せば長くなりますが、そう思っていて構いません」
「そうか、なら敵対勢力を傷付けずに無力化する。できるか?」
「お茶の子さいさいですよ」
「それでクロード、この婦人達は?」

 話が切れたと判断したアスターが、俺の後ろに佇む二人の女性を顎でしゃくるように指した。

「このお二人は」
「カレンでーす! アスターさん? 彼女いますかー?」
「ちょっとカレン何言ってるの? 私はサリア、魔導士よ」
 アスターの腕に抱き付くように飛び込んだカレンと、それを呆れた顔で見つめるサリア。
 
「カレンさんにサリアさんですか、お二方もご助力に?」

 腕に抱き付かれているというのに、アスターは平然とした態度で淡々と質問を投げかける。
 正直アスターはかなりの美男だ。
 この反応を見るに、俺の知らない所では女にモテモテ、腕を絡め取られるなんて日常茶飯事だったのだろう。
 クソ。
 羨ましい。

「そうだよー、クロードが二人を助けたい~って言うから付いてきたの!」

 カレンはいつもより一段高い声で答え、サリアも同調するように頷いた。
 ダレクも「俺もな!」としっかり付け足してくれた。
 
「(サリアさん、カレンさんキャラ変わってませんか)」

 さりげなくサリアのそばに移動して、こっそりと耳打ちをする。

「(変わってないわ。彼女、顔の良い男には弱いのよ。酒の席で散々あの子の過去の色恋を聞かされたわ。賢者である前に一人の女、口癖のように言ってたわね)」
「(そうですか)」

 なるほど、俺と初めて会った時にはあんな態度にはならなかった。
 いわゆるそういう事だろう。
 泣いてもいいですか。
 軽く頭を振って気持ちを切り替え、ダラスの目を見る。

「表門の方にも三百体ほどのタロスを――そこの甲冑の方々ですが――配置してあります。今は表も膠着状態になってます」
「そうか。だが助けるとは?」

 説明を聞いたダラスがカレンの言葉を拾って首を傾げるが、

「その説明は後です、今はここを制圧することを」
「そうだな。ふん、言うようになったなクロード。頼りにしている」
「ありがとうございます!」

 ヘルメットを被り直したダラスは、動けないでいる革命軍を見回した。
 そして――。

「我はテイル王国正規軍ダラスである! 革命派の者どもよ! 大人しく武器を捨てて投降せよ! 我らが目的はこの屋敷の主人である! もう一度言う! 投降せよ!」

 大きな声を張り上げ、革命軍に呼びかけるものの。

「ふざけるな! 俺達はお前達王国軍を許さない! あの事件以来、お前達は街を壊し俺達の生活を奪った!」
「そうだそうだ!」
「王国に死を!」
「愚王ガイアに鉄槌を!」
「怯むな! かかれ!」
「「「おおおお!」」」

 ダラスの呼びかけも虚しく、革命軍はそれぞれの武器を振り上げて鬨の声を上げた。

「やはり無駄か」
「当たり前ですよ中将」
「しかしな、無駄な犠牲は出したくないのだ」
「心中お察しします」

 革命軍はタロスにも攻撃をしかけて始めていたので、命を奪う事なく制圧せよ、とよ指示を出した。

「クロード、奴らは自爆するすべを持っているんだが、恐らく爆破系の魔法石を所持していると思われる。気をつけろ」
「分かりました」

 ダラスから言われた事をそのままタロス達に伝えると、タロス達は素早く動き、襲い来る革命軍を次々と昏倒させていった。
 そして懐を漁り、赤く輝く拳大の魔法石を抜き取った。
 タロスは流石進化系パワードスーツと言うべきか、甲冑の姿からは到底想像できないスピードで戦場を走り回り、正規兵のサポートまで回っていた。
 そしてダレクも水を得た魚のように生き生きと大剣を振るっており、一振りで数人の敵が吹き飛んでいる。

「な、何だコイツら! 人間の動きじゃないぞ! うぐぁっ!」
「ビリー! てめぇ! よくもビリーをっがはっ!」

 タロスは一言も言葉を発さずに、ダレクは猛獣のような雄叫びを上げながら暴れ回り、戦闘開始から約十分で決着が付いてしまった。

「私は表を見て来るわ。後で合流しましょ」
「あ……あ、はい」

 サリアは散歩にでも行くような気軽さで、革命軍ひしめく屋敷の中に足を踏み入れた。
 勿論革命軍の皆様もサリアを放っておくわけもなく襲いかかるが、

「ぐあっ!」
「ひいいいっ!」
「うわああ!」

 屋敷の中に悲しい犠牲者の声が次々と木霊していったのだった。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...