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第いち幕
突然現れたソレ
しおりを挟むーーよく晴れた日の昼下がり。鬱蒼と生い茂る木々の中に建つ古びた神社に男、御神楽司は足を運んでいた。司は大きく伸びをすると、人ひとりが横になれる程大きな苔石に腰を下ろす。すると何処からか小さく丸い動物が司の足元へと歩み寄ってきた。
「ブナウ…」
「ダルマ、相変わらずブサイクな鳴き声だな。」
「ブナー!」
「う゛、おま…」
鳩尾に頭突きをかましたダルマと呼ばれた動物。その足を掴み持ち上げる。逆さまになったダルマはまた「ブナウ」と1つ鳴いて大人しくなった。
「お前人の言葉が理解出来てるんだろ。なにもんだ?」
「ブナー」
「喋れたりしねぇもんか?ほれ、なんか喋れ。」
「ブウ…」
毎度この調子で進展がない。だが、そんなやり取りさえ司にとっては有意義なものだった。
「わあ!ぶさかわネコちゃん!!」
「っ!?」
背後から突然聞こえた第三者の声に司はダルマの足を離し、勢いよく振り向いた。そこに居たのは1人の女。見た目からして幼い…10代前半だろう。一見普通の少女だ。しかしだからこそ司は警戒した。
「いつからそこにいた」
問うと目を見開き立ち竦んでいた女は、ハッとしたように頭を左右に振った。
「気付いたら…」
「は?」
「あの、それより此処は何処…?」
「……」
「えっと…あ!私は木梨春音、普通の女学生です。」
警戒する司をよそに女、春音は1人で話し続けた。好きな食べ物だとか嫌いな食べ物、得意な事や趣味だとかいった入学早々の初対面同士の自己紹介を1通り。最初こそ警戒していた司だったが、次第にそれがバカらしく思えてきた。
「ーーで、それと…」
「もういいから黙ってくれ。」
「はい!」
「俺は…司。此処は言子島、辺りは海に囲まれてる。」
「コトネジマ?聞いたことないけど…」
「ずっと田舎だからな。地図にも載ってないらしいし。」
司は言いながら空を見る。実際、この島が外でどんな風に描かれているかなんて知ったこっちゃない。何より島から出た事の無い司にとっては"らしい"という憶測でしか言い表すことが出来ない。
「そのネコちゃんは司さんの飼いネコですか?今流行りのブサかわちゃんですね!」
「ねこ…?」
司は春音の視線を辿り足元でペタンと伸びているダルマを見た。それから春音へ視線を戻し、訝しげに目を細める。
「コレは"ビョウ"だ。確かに漢字で書くと"猫"って書くけどな。」
「へ?」
春音は首を傾げる。
「…もしかして島の外から来たのか?」
何故突然にこんな所に現れたかの方法は分かりかねるが、この島の外から来たと言うなら納得がいった。
きっと島の外には人体を粒子化して転送するような技術があるんだろう。そしてビョウをネコと呼ぶ。となると"ネコ"と呼ばれる"人"はいないんじゃないだろうか?そんな考えが泉の様に次々と頭に浮かび上がってくる。
「これから家に来ないか?外の話聞かせてくれよ。」
「え?」
「茶くらい出す」
「……」
言われて春音は少し訝しげな表情を見せた。急な司の態度変化に信用していいのだろうかと感じたのだ。だがしかし、歳も近そうな司に対し春音の疑心感は薄かった。と言うのも先に声を掛けたのは春音の方だったからだ。
「(お茶くらいならいいよね?変な人じゃないよね?)じゃあ、少しだけ。」
「じゃ行くか!」
「はーい…」
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