上 下
1 / 4

1◆田中視点

しおりを挟む
俺は田中、どこにでもいるかもしれない社会人だ。

突然だが、俺にはお狐様が取り憑いている。

ちょっと前にいなり寿司食べながら走っていたら、踏んでしまったのが彼との出会いだった。

~回想~

「遅刻遅刻ー!会社に遅刻しちゃうー!」

いなり寿司をもぐもぐ食べながら走る俺は、曲がり角で思いっきり何かを踏む。

「ぎゃーっ!?」

「ファッ!?」

驚いた俺は、何を踏んでしまったのか立ち止まって足元を見てみた。

そこには、狐の耳と尻尾のある美人が倒れていたのだ。

なんだただのコスプレイヤーかと思っていたら、その人は目をカッ!と開き俺に襲いかかってくる!

「油揚げーーーっ!!」

「えっ!」

俺の食べかけいなり寿司は奪われ、その人が一口で食べてしまう。

あまりの早業に俺は硬直したよ。

その人は、恍惚としながらいなり寿司の……正確には油揚げの食レポを始め、俺に対して取り憑くと何故か決めてしまった。

どうやら、彼は油揚げを求めて自分の神社から家出という名のハントの旅に出たらしい……。

「最近は不景気で、誰も私の神社に油揚げを供えてくれないんです。あぁ、嘆かわしい……昔は良かったです……本当に。だから私、自分で油揚げをハントするために神社を出たんです。ふふっ、私に油揚げを供えてくれたのも何かの縁、貴方に取り憑くことにします!」

「……いなり寿司、俺から奪ったの間違いでは?」

「細かいことは気にしないでください」

「……そうか。俺は田中だ」

「私は八雲です」

~回想終了~

俺にしかみえないらしい八雲は、美味しそうに油揚げをもぐもぐしながら幸せに悶え苦しむ。

「油揚げが私を満たしていく!まるでこの美味しさは麻薬のような中毒性です」

猫にマタタビのように尻尾を激しく振り、とても可愛いので俺のスマホで動画撮影している。

あとで八雲にみせてやろう。



俺は八雲をじっとみて、八雲について考える。

八雲は狐の獣人みたいに耳と尻尾が獣で、それ以外は普通の美人な人間にみえる。

髪は白髪ロングでストレート、だからなのか狐になると白い狐になるんだ。

ちなみに、本来の姿だと尻尾が7本になるらしい。

普段は邪魔だから1本に変化させているのだとか……。

瞳は金色で、肌は色白。

華奢で、雰囲気だけなら儚い系美人。

ちなみに、中身は残念系可愛い人。

服は最初は着物だったんだが、セクシーなのがいいって言ったら、油揚げと引き換えに俺の着てほしい服に変化させてくれるようになった。

八雲が俺にしかみえないのをいいことに、羞恥プレイも油揚げをあげればできてしまう。

油揚げのためなら、八雲はどんなに恥ずかしい服も着てくれて最高としか言いようがない。
しおりを挟む

処理中です...