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4◆田中視点
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夢をみた。
神主っぽい男の人が話しかけてくる夢だ。
「あの子は寂しがり屋なんだ」
「あの子?」
「あの子は誰にもみえない。あの子の声も誰にも聞こえない。だからあの子は、寂しがり屋なんだ」
「!」
その人は誰かわからない。
でも八雲のことを言っているんだとなんとなく分かった。
もしかして、八雲のいた神社の神主だろうか?
「僕があの子を見える人と知った時、あの子はそのことにどれほど喜んでくれたことか。あの子の好きな油揚げを僕が作って持っていくことに、どれほど喜んでくれたことか………」
これはもしかしたら、夢枕というやつかもしれない。
でも、どうして急に?
俺は不思議に思った。
「………幸せだった。僕もあの子も。僕が寿命で死んだ、あの日までは………」
「!!」
寿命。
人間には当たり前にあるものだけど、たぶん八雲には………ない。
もしかしたらあるのかもしれないけれど、多分それは人間とは比べることができないほどのものだろう。
「あの子を泣かせてしまった。あの日から、またあの子はずっと孤独だった。それが、僕の心残りだったんだ」
あぁ、そうか。
八雲のことが心配だったから、夢枕に立っているんだな。
そう理解した俺は、彼に返事をする。
「八雲のことを大切にするから、安心してくれ」
「あんまりエッチな要求ばっかりしないでね?あの子は油揚げのためなら、服も脱ぐし空も飛ぶけど………ちゃんと大切にしてよ?」
え、八雲って飛べるの!?
彼の前で飛んだことあるの!?
たぶん、きっと、言葉の綾というやつだろう。
………いや、八雲なら妖術で飛べるのかな。
尻尾七本あるしな………。
それはともかく。
「任せろ」
「うん。田中さん、八雲をお願いします。八雲に優しくしてくれてありがとう。あと、僕がきたことは内緒ね?八雲は純粋だから、きっと気にしてしまう」
「わかった」
「………僕はもういかないと。田中さん、さよなら」
彼は手を振りながら輝き、そしていってしまった。
………名も知らぬ神主さん。
俺、八雲のことが好きだよ。
だから、エッチなことはやめない。
けど、手作りの油揚げが作れるように頑張る。
たくさん八雲に美味しい油揚げを食べさせて、笑顔にさせる。
だから、安心して成仏してね。
翌朝目覚めると、ちょっと酒臭い八雲がベッドで白い狐になって寝ている。
尻尾七本の本来の姿バージョンだ。
スマホで写真を無音設定で連写してから、八雲の寝顔をじっとみつめた。
八雲は、真夜中に友達と飲みに行ったんだ。
酔っていても白い毛並みは白いままなんだな。
モフッと撫でて思う。
いつか俺に寿命がきても、それはどうしようもないことだ。
でも、それまではずっと一緒にいよう。
八雲を寂しくさせないように、一緒に楽しく幸せに。
完
★
読んでくれてありがとうございました!
神主っぽい男の人が話しかけてくる夢だ。
「あの子は寂しがり屋なんだ」
「あの子?」
「あの子は誰にもみえない。あの子の声も誰にも聞こえない。だからあの子は、寂しがり屋なんだ」
「!」
その人は誰かわからない。
でも八雲のことを言っているんだとなんとなく分かった。
もしかして、八雲のいた神社の神主だろうか?
「僕があの子を見える人と知った時、あの子はそのことにどれほど喜んでくれたことか。あの子の好きな油揚げを僕が作って持っていくことに、どれほど喜んでくれたことか………」
これはもしかしたら、夢枕というやつかもしれない。
でも、どうして急に?
俺は不思議に思った。
「………幸せだった。僕もあの子も。僕が寿命で死んだ、あの日までは………」
「!!」
寿命。
人間には当たり前にあるものだけど、たぶん八雲には………ない。
もしかしたらあるのかもしれないけれど、多分それは人間とは比べることができないほどのものだろう。
「あの子を泣かせてしまった。あの日から、またあの子はずっと孤独だった。それが、僕の心残りだったんだ」
あぁ、そうか。
八雲のことが心配だったから、夢枕に立っているんだな。
そう理解した俺は、彼に返事をする。
「八雲のことを大切にするから、安心してくれ」
「あんまりエッチな要求ばっかりしないでね?あの子は油揚げのためなら、服も脱ぐし空も飛ぶけど………ちゃんと大切にしてよ?」
え、八雲って飛べるの!?
彼の前で飛んだことあるの!?
たぶん、きっと、言葉の綾というやつだろう。
………いや、八雲なら妖術で飛べるのかな。
尻尾七本あるしな………。
それはともかく。
「任せろ」
「うん。田中さん、八雲をお願いします。八雲に優しくしてくれてありがとう。あと、僕がきたことは内緒ね?八雲は純粋だから、きっと気にしてしまう」
「わかった」
「………僕はもういかないと。田中さん、さよなら」
彼は手を振りながら輝き、そしていってしまった。
………名も知らぬ神主さん。
俺、八雲のことが好きだよ。
だから、エッチなことはやめない。
けど、手作りの油揚げが作れるように頑張る。
たくさん八雲に美味しい油揚げを食べさせて、笑顔にさせる。
だから、安心して成仏してね。
翌朝目覚めると、ちょっと酒臭い八雲がベッドで白い狐になって寝ている。
尻尾七本の本来の姿バージョンだ。
スマホで写真を無音設定で連写してから、八雲の寝顔をじっとみつめた。
八雲は、真夜中に友達と飲みに行ったんだ。
酔っていても白い毛並みは白いままなんだな。
モフッと撫でて思う。
いつか俺に寿命がきても、それはどうしようもないことだ。
でも、それまではずっと一緒にいよう。
八雲を寂しくさせないように、一緒に楽しく幸せに。
完
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読んでくれてありがとうございました!
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